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Think About 2030コミュのVol.19 『黒い牛乳』

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V・シヴァ『食糧テロリズム』(http://goo.gl/jsf1)という本を読んで、年甲斐もなく血が逆流しました。
前回書いた「1万円札のオークション」は行き着くところまで行っているようです。

同書は、特にインドや東南アジアを舞台にした「緑の革命」(農業)、「青の革命」(漁業)、牧畜業の「白い革命」(いずれも先進国の巨大アグリビジネスが仕組んだもの)の実体を取り上げ、これらのグローバル・ビジネスがいかに現地の国々を飢えさせ、生態系を破壊し、農民や漁民の生命を奪ってきたかを具体的な数値を挙げて暴き出しています。

「緑の革命」では、遺伝子組み換えで独占的に販売する種、種とセットになった農薬や化学肥料を使わせることで、地元の生態系を完全に破壊し、農民を借金漬けにしてきたこと。

「青の革命」では、同書から引用すると「地球規模の漁獲量は過去40年の間に4倍に増大した。このような大量の収穫は工業的漁船団の爆発的増加によって可能になった。毎年350万kmもの合成魚網を使用しているが、これは地球88周する長さに当たる」。
地球を88周する長さの流し網で海の魚を一網打尽。しかも、この漁獲で約半分の魚が商品にならず、死んだまま廃棄されているそうです。
また、恐ろしいことに、魚にも遺伝子組み換え技術が導入され、すでに、1年ちょっとで成長するサーモン(通常は3年必要)を創りだしているとのこと。

著者はこうした農・漁業ビジネスを「やり逃げ産業」と呼んでいます。インドでは1993年から10年間で農民の自殺が10万人を超えたそうですから確かに「テロ」に近い。しかし、テロリズムは何らかの政治的主張を伴なう暴力ですが、この場合の動機は金儲けだけ。

日本の魚の消費量は世界一ですが、昨今、買い負けが話題となっています。BSEなどの影響で魚の需要が増した欧米、消費量が拡大している中国などに買い負けているとのこと。

皆さんは中国の上流階級に属する人がいったい何人ほどいるかご存知ですか?
私も最近知ったばかりなのですが、その数は1億5000万人。日本の総人口よりも多い。
近年の経済成長ぶりからすると、この数は2倍にも3倍にも膨らむでしょう。
こうした上流階級を狙った「やり逃げ産業」は今後とも増え続けるに違いありません。

「白い革命」(牧畜業)も、出るのはため息ばかり。
現在、アメリカでは約30%の牛がソマトロフィン(成長促進剤)などのホルモン剤が投入され、乳量を飛躍的に伸ばしているとのこと。
BSE騒動ではイギリスは370万頭の牛が焼却処分にされました。草食動物の牛に肉骨粉を与える。ありていに言えばムチャクチャ。目的のためなら手段を選ばず。
他にも様々な薬剤が投入されているそうです。
同書によれば、鶏もまた抗生物質、砒素化合物、サルファ剤、ホルモン、染色料、ニトロフラン剤といった薬品からなる「現在的な」食事で育てているそうです(有機栽培では牛糞や鶏糞を良く使いますが、こうした排泄物を使っても大丈夫なのでしょうか?)。

日本の酪農はどうなのか?・・・中洞正著『黒い牛乳』という本によれば、現在の酪農は乳脂肪率3.5%以上を基本としており、各乳業メーカーは3.8、4.2といった成分の濃い牛乳が主流になっているとのこと。
しかし、牧草だけの飼料では3.5%以上を満たすことが難しく、酪農家は北海道のような広大な牧場でも放牧を止めざるを得ず、狭い牛舎で満飼いにし、何が混入されているかも分らないアメリカ輸入の濃厚飼料を使わなければならない。
仔牛は生まれてすぐに人工飼料で育てられ、牛舎から一生外に出ることもなく、搾乳の邪魔になる角や尻尾まで切られて、抗生物質や栄養サプリメントを与えられ、病気を防ぐ薬漬けとなっている。
そして、酪農家は働けど働けど、借金が膨らむばかり・・・。どうもビジネスの構造はインドと似てなくもない。

経済学者のヴェブレンは「ビジネスはインダストリーを駆逐する」と書きましたが、この分だとインダストリーどころか、地球も人間も死に追いやってしまいそうです。

しかし、希望は持ち続けたい。
『黒い牛乳』の筆者の中洞さんは、アメリカ式酪農ではなくアルプス式の山地酪農を自ら実践し、全国に広めようと活動しています。
牛は人間が考えるよりはるかに丈夫で賢いらしく、山へ放牧すればどんな急斜面でも平気、どんどん山奥まで食糧を得にゆき、マイナス30度の厳寒にも耐えるそうです。
その結果、放牧した山は、表土の流出を防ぐ最適の作物である野芝の見事な草原に変わる。

国土の6割を占める山林の荒廃は本当に深刻な課題です。
金もかからず、牛の世話もなくなり、BSEや薬害の不安から解放され、美味しい乳を生み出す「楽農」(同書より)。これが山林の荒廃を防ぐとしたら、なんと素晴らしいことか。

ちょっと今回は書評のようになってしまいますが、行政やJAの厚い壁を乗り越えて独自のミルクプラントを立ち上げるに至った中洞さんの闘いの記録『黒い牛乳』は、近年まれに見る良書と言うべきでしょう。

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