小津安二郎コミュの小津安二郎監督の映画「麦秋」を聴きに行った。

今日は北鎌倉の円覚寺で、女優の中井貴惠さんによる、音語り「麦秋」を聴きに行った。これは小津安二郎監督の映画「麦秋」を小津映画のプロデューサーだった山内静夫さんが中井貴惠さんのために朗読劇に仕立て上げたもの。中井貴惠さんは小津映画の常連だった佐田啓二の娘さんで、中井貴一のお姉さんに当たる。
山内静夫さんのことは何度も書いているが、鎌倉文士で白樺派の文豪・里見弴先生の息子さんで、前鎌倉文学館館長である。地元鎌倉の名士中の名士で、御年92歳。ぼくは山内さんに息子のようにかわいがられており、山内さんの鎌倉のご自宅でよく酒盛りをしているという昵懇の関係。鎌倉で山内さんの存在を知らなかったらモグリである。
「麦秋」は原節子が紀子という役を演じる、小津監督の紀子三部作(他は「晩春」、「東京物語」)のひとつで、昭和26年公開。
今日は第一部が中井貴惠さんと山内さんによる「小津安二郎の思い出を語る」という対談で、第二部が音語り「麦秋」だった。山内さんと中井貴惠さんのコンビによる小津映画の音語りも今年で8年目、6本に上る。山内さんは小津映画の最高傑作が「麦秋」だといっておられた。情景が目に浮かぶような、素晴らしい口演だった。
終演後、山内静夫さんと楽屋で話していると、桜田淳子さんが現れた。中井貴惠さんの友達で、「麦秋」では原節子が秋田弁をしゃべるシーンがあるのだが、今回、中井さんは桜田淳子さんに秋田弁を教わったそうである。彼女は「花の中三トリオ」でぼくと同い年だが、若々しかった。山内さんのことを「先生」と呼んでいた。大体、ぼくのように「山内さん」と気軽に呼ぶほうが稀で、山内さんは普通は「先生」と呼ばれるほど偉い方なのである。日本映画史の生き字引。小津安二郎監督の甥っ子である長井秀行さんもいらしていた。長井さんも鎌倉在住で、顔が小津監督と生き写しなのだった。ちなみに小津監督と佐田啓二さんのお墓が円覚寺にあるのである。
写真は中井貴惠さんと山内静夫さんとぼくとのスリーショット。