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「雨のあとに虹」 コミュニティコミュの雨のあとに虹 その125

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「高村も出世して遠い存在になったな。」
矢島は自分の部屋で寛ぎながら妻の早苗に言った。
「私は高村さんが大きな活躍をすると思っていましたよ。」
早苗は静かに言った。矢島も俊之の実力を認めるひとりであるが俊之が総武のトップに立つとは考えていなかった。いずれどこなかの商社に入社するかだろうと考えていた。経営コンサルタント会社を立上げて大手企業と提携することはあるかもしれないが総武のトップになるとは矢島も考えが及ばなかった。
「お前は俺より高村の方を理解しているようだな?」
矢島が言うと
「バカを言わないでよ。」
早苗は言った。
「30年の付き合いがある俺も驚いているよ。」
矢島が言うと
「高村さんには人を引き付ける何かがあるから驚かなかっただけよ。」
早苗は言った。矢島も早苗と同じものを俊之に感じていた。

「久しぶりね。」
浅野昭子は久美子に言った。式典が終わり市民センターの前は成人式を迎えた若者たちでいっぱいであった。振袖姿の昭子は久美子の同級生である。久美子は地元の同級生と会うのは久しぶりで懐かしさを感じていた。今日の成人式は特別な日になるから思いっきり騒いでみたい久美子であった。
「これからや約束があるからごめんね。」
久美子は昭子に言った。
「それは残念ね。」
昭子は残念そうに言った。
「次に帰って来た時には誘ってね。」
久美子は言った。
「久美子が帰って来た時にゆっくり会おうよ。」
昭子が言うと
「今日はごめんね。」
久美子は言った。
「式典が終わったからこれから久美子の分まで騒いて来るね。」
昭子は明るい声で言った。男性はスーツ姿で女性は振袖姿というあでやかな姿である。名実ともに大人になった記念に羽目を外すのはお祭り気分で楽しいものである。
「ゆっくり会いたいね。」
久美子は昭子に言った。
「あらためて会う時間をつくろうよ。」
昭子は優しく言った。

 俊之を乗せた電車は静かに駅のホームに入って来た。都心から郊外に来る電車は平日なら空いているが今日は祝日であるために混雑していた。通勤ラッシュの混雑ではなくても休日にしては人が多かった。寒さも忘れるほどにスーツと振袖姿の若者に囲まれた俊之は周囲の熱気で暑さを覚えた。俊之が改札口を出て周囲を見回わすと
「俊さん!」
久美子は言った。俊之は久美子を見た。久美子が振袖姿で右を上げているのが俊之の眼に入った。白塗りの化粧と言われるが久美子は自然に少しだけファンデーションを塗っていた。薄化粧が若さを演出していた。
「式典は楽しかったかい?」
俊之は久美子に言った。
「市長の話は少し退屈でした。」
久美子は言った。
「市長の話はまじめだから仕方がないよ。」
俊之が言うと
「そのあとのコンサートがとても良かったですよ。」
久美子は言った。
「成人式のコンサートは印象に残るね。」
俊之が言うと
「バラードの曲が多かったから落ち着いて最後まで楽しく聴けました。」
久美子は言った。俊之は久美子の話を聞きながら歩いていた。ふたりは近くにある公園まで歩いて来た。
「大人になると言っても特別なものはないよ。」
俊之は言った。
「そうかも知れないです。」
久美子が言うと
「すべては日ごろの積み重ねだよ。」
俊之は言った。久美子のから離れて俊之が写真を撮ろうとすると
「おふたりのお写真を撮りましょう。」
大木の陰から現れた翔太は言った。俊之と久美子は翔太を見た。翔太は珍しくスーツを着ていて成人式を迎えた人のようにおしゃれである。
「翔ちゃん。」
俊之は言った。
「写真を撮りますよ。」
翔太は笑みを浮かべて言った。翔太がカメラをふたりにカメラを向けると
「笹川さんもお忙しいのにすみません。」
久美子はカメラを構えた翔太に言った。
「久美子さんは高村さんと腕を組んでください。」
翔太はプロのカメラマンのような口調で言った。
「はい。」
久美子は俊之の左腕に自分の右腕を絡ませて言った。
「自然な感じがいいですね。」
翔太は言った。
「翔ちゃんはプロのカメラマンみたいだね。」
俊之は翔太のペースに乗せられて言った。

「体調が良いみたいですね?」
多恵子は榊原に言った。
「仕事をしていないから身体に負担がかからないからだよ。」
榊原は言った。病室は静かであった。。静かな病室にいると榊原は時間や曜日の感覚がなくなっていた。
「先生が明日か明後日には手術の日にちを決めてくださいますよ。」
多恵子が言うと
「俺もおしまいだな。」
榊原は力なく言った。
「そんなことはありませんよ。」
多恵は言った。
「手術が成功する保障はないだろう?」
榊原は多恵子に言った。
「手術で癌を切除すれば快復が出来ると先生がおっしゃっていましたよ。」
多恵子が言うと
「俺は本当に手術をすれば俺は治るのか?」
榊原は言った。

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