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BDについてもっと知りたい!コミュの『Silence(シランス)』

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 Comès(コメス)作『Silence(シランス)』(Casterman [カステルマン]、1980年刊)、読了しました。例によって日仏学院の図書館で借りたものです。カステルマン社がかつて出していた有名な雑誌『(A Suivre [ア・シュイーヴル])』(1978年2月から1997年12月まで刊行)に掲載された作品で、「Roman ( à suivre ) [ロマン・(ア・シュイーヴル)]」という叢書の1つとして単行本化されています(『(A Suivre)』はなぜかこのように書名にカッコがつくんですが、これなんなんですかね?)。現在、カステルマンから出版されている Hugo Pratt(ユーゴー・プラット)の『La ballade de la mer salée(塩辛い海のバラード)』(http://mixi.jp/view_bbs.pl?id=12917408&comm_id=424387)と同じようなソフトカバーの装丁で、ページ数やカラーの点でBDの大勢に逆らった作りが個人的には好きだったりします。未読ですが Forest(フォレスト)/Tardi(タルディ)の『Ici Même(イシ・メーム/まさにここで)』も同じようなフォーマットをしていて、カステルマンが出しているこの辺のBDは、90年代以降のオルタナ系BDの走りなんじゃないかと思ったりしてるんですが、どうなんでしょう? さて、コメスに話を戻すと、1942年にベルギーで生まれた作家とのこと。ウィキペディアの解説によると、ユーゴー・プラットの精神的継承者と見なされているようですが、絵的には、以前コミュで紹介されたホセ・ムニョス(http://mixi.jp/view_bbs.pl?id=13916626&comm_id=424387&page=all)に近い気もします。ただ、ムニョスの方がはるかに洗練されていてスタイリッシュな印象を受けますね。コメスの絵も時に非常にスタイリッシュなんですが、どこか土俗的なと言っていいような一面があります。そういえば、ムニョスもプラットの影響を受けているということですし、そうすると、プラット→コメスというラインも全然理解できますね。そんなこんなで、梗概は以下のとおり。

 物語の舞台は Ardenne(アルデンヌ)地方の小村 Beausonge(ボーソンジュ)。この美しい名を持つ小村の有力な地主 Abel Mauvy(アベル・モーヴィ)には、シランスという名の使用人がいる。その名のとおり、シランスは、人の話を聞くことはできるものの、生まれつき言葉を話すことができない。彼は主人の意地悪な仕打ちを意地悪と思わないくらい純朴な青年で、誰に対してであれ、憎しみを抱くことなどなかった。だが、主人の方では彼に何とも言い知れぬ不気味さを感じていて、村の魔術師 la Mouche(ラ・ムッシュ[蝿の意])を呼んでお祓いをしてもらったりしている。ある日、アベルの友人 Toine(トワーヌ)の仕事の手伝いを言いつかって、シランスはトワーヌの家を訪れる。仕事の合間にシランスは納屋を見つけ、興味を抱くが、なぜかそこに入ることを禁じられる。その夜、納屋のことが気にかかり、密かにアベルの家を抜け出し、トワーヌの納屋に忍び込むシランス。ここしばらく人が入った形跡はないが、そこには衣装やら人形やら、芝居に使ったと思しい品々が置かれている。シランスは普段目にしたこともない品々に夢中になる。と、何者かが納屋に入ってくる物音が… 主人のアベルが捕えに来たのだと思い、怯えるシランス。が、姿を現わしたのは la Sorcière(魔女)と呼ばれる老女だった。会話を交わしたことこそなかったが、シランスは彼女の顔に見覚えがあった。盲目の彼女は常に黒眼鏡をかけているのだが、なぜかシランスの存在に気づいている様子である。一しきり芝居の一場を演じてみせた彼女は、シランスに「お前を護ってやろう」と告げ、次の夜、同じ時間に、魔女の家を訪れるように言い残してその場を去る。明くる夜、決められた時間に家を訪れたシランスに、魔女は彼の出生の秘密を語る。元々、魔女は名を Sara(サラ)と言い、夫 Georgio(ジョルジオ)とともに第2次世界大戦の戦火を避けてこの町を訪れたジプシーであった。戦争中ということもあり、男手が足りなかった村人たちは2人がやってきたことを喜び、村への滞在を許可する。トワーヌの納屋に住ませてもらうことになった2人は、農作業を手伝う傍ら、時折芝居を行なって日々の糧を得ていた。ある日、夫のジョルジオは手伝いに訪れた農家の娘 Violante(ヴィオラント)に恋をし、2人は恋仲になる。しかし、ヴィオラントは出征中の村人アベル・モーヴィのいいなずけであった… そして、2人は愛し合っているところを、帰省したアベルに目撃され、ジョルジオは彼の手で殺されてしまう。アベルの殺人は村人たちによって揉み消され、ヴィオラントは既にジョルジオの子を宿していたのだが、アベルと結婚することに。だが、そのヴィオラントも産褥で命を落としてしまう。生まれた子どもは唖だった… そして、それこそがシランスなのだ。夫を殺された魔女サラは1人ひっそりと暮らしていたが、ヴィオラントが死ぬと、彼女に憎しみの矛先が向かう。アベルは村人たちと語らって彼女を捕え、彼女の邪眼が全ての元凶だとして、その両目をくり抜いてしまう… かくして、彼女は残りの人生をアベルとボーソンジュの村人たちに対する復讐に費やすことになる。魔女の話を聞き、自らの出生の秘密を知ったシランスの心に、かすかながら憎しみの感情がきざす。その憎しみの萌芽を利用して、アベルに対する復讐を企てる魔女。数十年前の凶行に対する復讐はなされうるのか…!?

 という感じでしょうか。「Silence(シランス)」とは普通名詞で「沈黙」のことですが、ここでは人名で用いられているので、あえて「シランス」のままにしておきました。ここまでが物語の前半で、この後、物語は意外な展開を示します。白痴的と言っていいくらい純真無垢なシランスが、いかに憎しみを知り、そしてそれを知った後、どのような行動を取るのかというのが物語の肝です。パラパラめくった限りでは、若干重そうかなという印象を持ったんですが、物語に入り込んでしまえばそんなに気になりませんし、むしろぐいぐい引き込まれていく感じです。過去の陰惨な事件も語られたりするんですが、読後感的には爽やかなものがあります。上でも触れましたが、絵的にはスタイリッシュな部分もあり、雪の夜を描いたページなど、非常にかっこいいです。ウィキペディアの説明によれば、墨を使って描いているらしい。登場人物の描き方などは時にジャック・タルディを思わせるところもありますね。上の要約紹介の後にラ・ムッシュと魔女の間で魔術合戦が繰り広げられるシーンがあるんですが、これが非常に素晴らしい。魔女を攻撃しようとするラ・ムッシュが蛙を捕まえ、この蛙を茨のようなもので縛り、身動きをできなくし、さらには口を縫い合わせて壜の中に閉じ込めることで、魔女の身動きを取れなくするなーんて場面があって、蛙的にはいい迷惑でしょうが、ちょっとかっこいいです。後は、魔女によってアベルにかけられた呪いをラ・ムッシュが鉢植えに転化すると、鉢植えの花がポロポロと崩れ散っていくところとかね。1980年にこれだけの作品が描けているわけで、その後どんな作品を描いているのか非常に気になるところです。ちなみにこの作品は、2001年に全2巻のカラー版も出版されているようです。Fnac のサイトでちょっと見ましたが、そんなに悪い感じではありません。カラーと言ってもけばけばしさはなく、渋めの感じです。ただ、雪の夜のシーンとか、白黒で描いた方が明らかに面白いと思うんですが、どうなんだろう…?

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