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ねこ時計コミュの『蜘蛛の巣のなかへ』

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舞台はウエスト・ヴァージニア州キンダム郡の暗い谷間と、廃坑となった町・ウェイロード。この町に、北カリフォルニアで教員として働くロイが20年ぶりに帰郷してくる。余命幾ばくもないと診断された父親の最期の日々を過ごすためである。

ロイが永らくこの町に戻らなかった理由、それは弟アーチーが引き起こした殺人と、その後、留置所のなかで自殺したという事件から逃げるため、更にこの事件を境に心変わりしてしまった恋人・ライラから離れるためだった。

しかし帰郷してから、この20年前のアーチーの事件がさまざまな謎に満ち、まるで蜘蛛の巣がかかった向こう側に続く小径のように、ロイの眼前に広がって来る。

事なかれ主義で、できれば僕は物事に深く関わりたくありません…というタイプのロイだが、A型の血液型なのか、牡牛座なのか、我慢したり、平穏無事だと思い込もうとしながらも、最後には爆発したようになるという性格で、物語は進んでいくのであった。

射手座のおれはこの小説を読みながら、主人公のロイに対して何度こう言ったことか。
「お前、アホか!とろとろするな、もっと直情的にならんかい!」
そういうことを言うおれもどうかと思うが、それほど「まどろっこしい」のだ。

だがロイは、余命幾ばくもない頑固で自分勝手な父親から激情することを教えられる。ようやく中盤に差し掛かって、ロイはこんな風に考えるようになるのだ。

「わたしたちの大部分は突然人生を決定する選択をしてしまう。
 だが、立ち止まってじっくり考え抜いた人たちが、
 それよりずっとましな選択をしているかというと、
 かならずしもそうとは言えない」

まだ奥歯に物が挟まったようなセリフなのだが、だいぶマシになって来ているのだ、これでも。

傲慢でねちゃつくような笑い方をする保安官とその父の元保安官。ロイの敵はこの父子なのだが、彼らが企んだ「蜘蛛の巣」がひと網ごとにすくい取られていく。そこには内気でおとなしい弟・アーチーとその恋人のグロリアが嵌められた罠が見え始め、ロイの元恋人・ライラに対しての性的脅迫などが明らかにされていく。そしてロイはこの性的脅迫を知った時点で、牡牛座の性格を遺憾なく発揮して、爆発するのだ。ライフル銃を持って飛び出すロイ。そしてそれをバッドで殴り倒す死にかけの父。アメリカの親子関係はさすがに暴発力があるなあ。

この小説は、サスペンスとしてではなくアメリカの父子物語、崩壊していく家族の物語としても読めるだろう。主人公の性格的な問題に躊躇してしまった点で、〈★★★☆☆〉としよう。

『蜘蛛の巣のなかへ』
トマス・H・クック著 村松潔訳 文春文庫 ¥638+税

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