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四月馬鹿。コミュの【二次創作BL】戦国BASARA、長曾我部元親と伊達政宗。(上)

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※現パロ大学生。
※(下)は性描写あり。



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 2011.晩夏 戦国BASARA
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【肉食獣の戯れ】


遮光カーテンの隙間から凶暴な陽射しがちらちらと差し込んで政宗の顔を撫でた。目元にやってきた半ば強制的な目覚めに、あからさまな不快の唸りをあげる。陽光から逃れようと寝返りを打ったが、頭部に降り注ぐ光は逃れようのないものだ。
思わず舌を打つ。
寝返りによって、肩口まではカーペットの上にあった身体が全身フローリングに投げ出される。夏独特の湿気でべた付いた床に腕の肌が張り付いて尚のこと不快になった。
「shit...」
流石に床で寝こけてしまったためか、身体のあちこちに軋みが走る。これ以上惰眠を貪るのは不可能とみて、一思いにがばりと身体を起こす。視界がぐらり、歪んだ。二日酔いとまではいかないが、酒が大いに残っている。
暫く壁に凭れてそのままボーっとして、視界の不明瞭さに目を擦ってかぶりを振ると、惨憺たる図が飛び込んできた。

昨日の夕方、サーフィン同好会の合宿から戻ったばかりの元親に電話をしたのは政宗だった。
一ヶ月ほど避暑のため、語学鍛錬の名目で行っていたヨーロッパから帰国早々、愛用しているバイクの調子が悪くなったのだ。そのまま合宿帰りで荷物を置きにキャンパスにいるらしい元親に連絡をとると、すぐさま彼の“倉庫”にてバイクのメンテナンス(もとい修理)をして貰った。
(因みに“倉庫”とは工学部の元親及び元親の“野郎共”の聖域であり、早い話が使われなくなった古いサークルのクラブハウスを改装・修繕して、元親が勝手に我が城にしている場所である。金は取るが、格安でパソコンから大学祭の看板までなんでも修理・創作してくれるという点で、もうそのまま企業にしてしまえと大学内で思っている者は教員陣を含めて多い。)

倉庫で修理を待っていると、普段ツルんでいるメンツの一人、慶次から電話が入った。聞けばどうやら三股していたラストの一人にフラれたのだと言う。傷心の友人に対して「しょうがねえなぁ……」と不憫になった二人は慶次も倉庫に呼び、ぐだぐだとあーだこーだしている内にすっかり夜も更けていた。
そのまま三人は大学近くに下宿する元親の部屋へ雪崩れ込んで久々の宅飲みをしたのだが、これが惨憺たる今の有様を呼んだ。
ビールやチューハイの空き缶はそこらに転がってポン酒の安いパックは倒れ、柿ピーは中途半端な量を残して机に雪崩れ、ビーフジャーキーやスルメは開いて半端に食べ残された袋菓子のいくつかに下敷きになっている。おまけに手を拭いたりなんだりしたティッシュの残骸が集まるゴミ箱付近の床は「あー外したぁー」という適当なテンションの所為でもはやゴミ溜めであり、コンビニで適当に買ってきた残暑のおでん70円均一セールは残った汁をそのまま冷やしていた。そしてトドメと言っていいのは夜は涼しくなったから、とクーラーを入れずにいたため扇風機がそのまま回り続けており、幾つかの袋菓子の細かな中身が風に乗って若干机へ舞い出ていることである。

政宗は酒臭い部屋の風を無意味に回す扇風機の電源を切ると、取り敢えずカーテンのちらちらとなびく隙間を音を立てて閉めた。その代わりに両端が若干引っ張られて余計に光を入れているのは気に留めないことにする。
ふと時計を見遣ると既に13時を廻っており、立派な昼間であるからして、電気が消え遮光カーテンを引いている室内でもほの明るい。そして、
「sticky... (あちぃ……)」
のである。その暑さを気に留めているのかいないのか、家主であるところの元親は未だ寝こけていた。
「Hey,元親。」
つんつんと足先で元親の膝裏をつつく。よく見れば玉のように汗をかいているくせに、寝汚く寝ている様がなんとも言えず彼らしい。
が、政宗はこう見えて存外常識人である。それは同居している片倉小十郎がそうであるからなのか、一応他人の家に訪問した時の常識として、家主に許可なくエアコン等を入れたり冷蔵庫の中身を漁ってはならない(但し、時と場合による)ということくらいは持ちあわせていた。これが“時と場合による”場合の“時”と“場合”なのか計りかねるため、一応家主を起こそうと試みる。
「元親、wake up...」
(駄目だコイツ。ちっとも起きやしねぇ。)
政宗はその場にしゃがみ込むと仕方なく、触りたくもない“男の汗ばんだ”肩に手を置き、揺すろうと試みた。途端。元親が低く唸って腕を払う。手を落とされた政宗はドキリとした。
黒いタンクトップから覗く肩はしっかりと幅があり、二の腕にはなにもしていなくて判るほどの筋肉が均整を持って付いている。寝汚く寝ているため無造作に捲られた腹には、割れた腹筋と生まれつきだという傷に似た痣がふた筋。
……同じ男でもこいつの体格は羨ましくなるほどしっかりしている。政宗とて背が低いわけでも鍛えていないわけでもないが、この体躯のよさはない。それは慶次にも言えることだが、骨格からガタイ良くできているこいつらに嫉妬するのは世の男性諸君なら共感して然もありなん、というところだろう。…とは言え単純にこいつらがデカく、自分が平均というだけのことではあるが。
そしてもう一点、政宗の目を引いたのは自分と同じ隻眼だ。普段は政宗も元親も眼帯をしている。ヘアバンド的なデザインのものから白い簡素なもの、フォーマルな場にも対応できるシックなものまで、一生のお付き合いになるであろう眼帯に関してはそこらへんのアニメ好きな女子たちよりもバリエーション豊富にご存知だ。
その、ヘアバンド的なデザインの濃紫色の眼帯が、今は少し上にズレているのである。知り合った頃の元親から聞いたところ、傷をして失明しているらしいということは知っていた。ただ、傷の正体を確かめたことはない。
───……ほんの、興味本位で。
眼帯の間にするりと指を差し入れてみる。確かにざらりとした傷のようなものがあった。すると、
「んあ"?」
非常に不機嫌そうな声を上げて元親が目覚めたのである。慌てて手を引っ込める政宗をよそに、元親は緩慢な動きで仰向けに寝転ぶ。
「……あーー、政宗…か?」
「Wake in a bad temper...!」
「あ?今なんつった?」
「『寝起きが悪すぎだこの野郎』」
「あー……悪りぃ、悪りぃ。…しっかし、あっちぃな。」
胸元の汗を半ば無意識にタンクトップで拭いながら元親は身を起こした。先ほどまで不可解な行動を取っていた政宗に一瞥をくれるとばさりと額から眼帯を外す。
「ったく、見たかったんなら言えよ。お互い似たようなモンだろが……」
残されている方の右目を擦りながら気だるげに眼帯を二つ折ると、辺りに落ちている携帯を開いて眺めた。どうやら時間を確認したらしい。
在りし日の政宗は自分の顔の醜い様に絶望し、泣き暮らしたこともある。が、対する元親はそういうことを気にも留めず、寧ろ「ハクが付くってモンよ」とでも言わんばかりに眼帯を楽しんでいる風潮にあった。
元親の眼帯の下から覗いた左目元は斜めに引き攣れたような深い傷があり、これによって殆ど目が開かないのだという。
「まァ、中身の目ン玉も見えてねぇから開いたところで意味ねえけどよ。」
「───その傷は……?」
「んぁ?言ってなかったっけか。高2ン時にサーフボード乗ってて岩に打つかってな、このザマよ。」
「それでも辞めねぇ辺りに、アンタの馬鹿さを見たぜ……」
半ば呆れとも取れる形で嘆息すると、政宗はその場にどっかとあぐらをかいた。

「あれ、それより慶次は。便所?」
元親は部屋の惨憺たる状況よりも昨日いた筈の友人の居所を尋ねる。
家主は元親であるのでこれをどうにかするのは最終的には元親なのだが、無駄に潔癖な同居人のせいでこういった環境をどうかと思う程度のモラルが植えつけられたのか、この状況よりソッチかよ、と政宗は更に呆れ声で返した。
「アンタ覚えてないのかよ、慶次なら昨日の夜中に出てったぜ?」
「あ?覚えてねぇよ、なんだそれ。」
「ま、あんだけ飲んでりゃ…」
元来、政宗は人よりも酒が強い方だ。同居人の片倉とドッコイくらいで酒を楽しめる。ただ二人とも本格的に廻ると目が据わってグダり初めたが最後、周囲が対処出来なくなるという悪癖持ちでもある点も述べなくてはならない。
対して慶次は酒を楽しめるが標準的な酒量で酔う。そして酔うと眠くなるのだそうだ。とは言え昨日はそこそこテンションが上がってくるぐらいのところで打ち切りとなったが。
───そして元親である。この男、ザルかと思うほど、酒にめっぽう強い。高知県出身の者は皆俺くらいは飲むぜ、と宣う元親に「いやいやいやいや、それはないだろ」と周囲が止めに入るほどだ。だが、酔えば酔うほど態度と記憶が大雑把になり、最終的に沈没するまで飲めや謳えやでドンチャンやるのが好きらしい。事実、元親の近くにはウイスキーや焼酎などの度の強い酒のビンが転がっていた。

昨晩、あたりめを齧りながら焼酎を飲み、相当キている元親をよそに、慶次の携帯が鳴った。政宗が話を摘み聞くところ、女からの呼び出しのようだった。
「……──で、電話終わって『二人目の彼女からお許しが出たみたい☆』とかなんとか言って、嬉々として帰ってったぞ、アイツ。」
「えー‥マジかよ、なんなんだよもうお前ら。」
情けない声で言いながら元親は手近にあったトニックウォーターに手を伸ばす。温くなった上に気の抜けた水の不味さはピカイチだったが、それ以上に体が水分を欲していた。ごくりと喉を二回鳴らして、政宗に差し向ける。政宗は手に取ったペットボトルをゆらゆら揺らして続けた。
「ゆーて、アンタだって女の一人二人見繕ったんじゃねーのか、海で。」
「あん?そりゃ一夜の彼女は二人釣れたが、野郎共と飲んでる方が楽しいんだもんよ。…ってか、そういうお前はどうなんだよ、どうせ彼女持ちだろが。このリア充め。」
「あ?honeyな、とっくに別れたぜ?」
「は?いつ!」
「出国前。」
「聞いてねぇよ!」
「言ってねぇよ。」
「大体なんでだよ?あの茶髪が内巻きにくりんってしてた子だろ。相当可愛かったぞ?ショーパンはいてるあのこう……腰から太ももにかけてのラインが……」
「アンタほんと、ケツ派だよなぁ……いや、確かに胸もそこそこあって中々良かったぜ?ただなー。」
「ん?」
「どうにも、面倒臭くなるんだよな……」
「あーー…」
「「わかる」だろ。/よな。」
───…と、納得してしまうのがこの二人なのである。
元親は大学に入ってからマトモに彼女を作っていない(高校の頃、一人だけ年上の彼女を持ったことがあるらしいが)。尤もこの男、趣味が釣りにサーフィン、機械弄り…と、到底女子と共有できそうなものがなく、唯一黄色い声援を受けそうなサーフィンにも、ヨット部やサーフィン同好会の“野郎共”が絡んでいるのである。
対して政宗はと言えば、クラブでDJをやるのが趣味の洋楽野郎で、冬はスノボ、それ以外はクラブ、おまけにバイリンガルMCという、女子からキャーキャーモテまくりの人種‥ではあるのだが、いかんせん長続きしない。
政宗がよくターンテーブルを回すクラブでバーテンのバイトをしているのが元親であり、それがきっかけで知り合ったこの二人だが、性格の気質が似ているのか、要するに安定せずとっかえひっかえなのである。
「に、比べて慶次はなぁ……」
「だよな。」
「てゆっかアイツ、この夏三股してたんだろ?二番目の彼女って、どういうことだよ?」
「だから、二番目にバレた彼女だろーよ。やっぱり寂しいっ、会いに来てっ!とか言われたんじゃねーの?」
女からの呼び出しで早々にこの部屋を出て行った慶次はと言えば、二人とは対照的に獲物とは絶対に付き合う、というスタンスを保っていた。本人曰く、“恋してこその青春”なんだそうだ。
「ま、アイツのことだし、他にストックもいんだろうけど……」
「ホント、ご苦労なことだよな。しかし、なんであんなに“付き合う”ことに執着できるかが俺としては謎だわ。」
「…まーよ。ただ、だからいっつも『慶次は二番手』とかって言われんだろ?それならもっとその場限りで楽しめるようにしたほうが、よっぽどこう生産的というか……」
「よせ元親。どうせアンタが言ったとこで負け犬のナンチャラにしかならねーよ。」
と、そこまで言って、政宗は先ほど渡されたトニックウォーターに初めて口をつけた。思っていたよりも炭酸が残っており、小さな予想外に口の端から零れた雫が喉元を伝う。それをタンクトップを伸ばして額の汗をぐい、と拭っていた元親は目の端で捉えていた。
政宗の喉仏はくっきりと形がいい。そこに伝う水滴に男ながらに唾を飲み込む。対面して座る政宗はペットボトルを空にしてから顎を伝う水滴を腕で拭った。思いの外汗をかいており、ずるりと滑る感覚がどうにも不快だ。
───が。政宗ははっきりと、自らを目の端で捉えた元親の喉仏が上下したのを見逃さなかった。
政宗の訝しげな視線に、少しでも不躾な視線を送った罪悪感をかきたてられ、元親は視線と話題を外そうと努めた。
「にしても、あっちぃな。片付けてエアコン入れっか、なぁまさむ──…っ?」





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