東海道本線沿線観光コミュの水無瀬川／水無瀬の滝

　水無瀬(ﾐﾅｾ)川は、大阪府高槻市大字川久保付近に源を発し、三島郡島本町大字広瀬で桂川に注ぐ一級河川で、支流の滝谷川に懸かる落差約20ｍの水無瀬の滝と共に万葉の昔から歌枕となって来た。

　水無瀬川関連の和歌には以下のようなものがある。
　「言急かは中ゆ淀まし水無瀬川絶えてそ事をありこすなゆめ」柿本人麿/万葉集
　「恋にもぞ人は死する水無瀬川下ゆわれやす月に日に異に」読人不知/万葉集・巻四・598
　「あひ見ねばこひこそまされみなせ河なににふかめておもひそめけむ」読人不知/古今集・巻十五・恋歌五・760
　「みなせ川ありてゆく水なくはこそつひにわが身を絶えぬと思はめ」読人不知/古今集・巻十五・恋歌五・793
　「ことに出でて言はぬばかりそ水無瀬川下に通ひて恋しきものを」紀友則/古今集・巻十二・恋歌二・607
　「水無頼川をちの通路みつ満ちて舟わたりする五月雨のころ」西行/山家集
　「見わたせは山本霞む水無瀬川夕は秋と何おもひけん」後鳥羽院/増鏡
　「水無瀬山せきいれし滝の秋の月おもひ出ずるも涙なりけり」藤原家隆/壬二集(ﾐﾆｼｭｳ)
　また、清少納言も『枕草子』で「川はみな瀬川」と述べている。
　
　水無瀬川の西岸は、東大寺の荘園水無瀬荘があった地でもある。天平勝宝年間(749～757)に聖武天皇の勅で設けられた摂津国最古の荘園で、面積は２町４反64歩(約29000?)の小規模なものだったが、淀川・木津川水運を利用して西国からの年貢を東大寺に運ぶ際の中継地として重きを成した。平安末期から鎌倉末期にかけて周辺の開墾が進められ、荘園面積は３倍以上に広がった。戦国時代末期に消滅し、現在は石碑が一本建つのみだが、今も「東大寺」の地名が残る。
　水無瀬の滝は紅葉の名所として知られるが、名神高速道路脇にあるため、風情は失われている。
　水無瀬の滝近くの春日神社は、奈良の春日大社を勧請(ｶﾝｼﾞｮｳ)したもので、武甕槌命(ﾀｹﾐｶﾂﾞﾁﾉﾐｺﾄ)・経津主命(ﾌﾂﾇｼﾉﾐｺﾄ)・天児屋根命(ｱﾒﾉｺﾔﾈﾉﾐｺﾄ)・比売神(ﾋﾒﾉｶﾐ)を祭る。名神高速道路建設地にあったため場所を移転し、社殿も一新された。
　水無瀬荘跡西方には、水無瀬荘関連のの瓦を焼いた鈴谷瓦窯跡がある。

　山崎駅から西北へ1.5km。