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黒魔亭コミュのなんとなくつくった

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 夜も更け、月の明かりも雲に覆われたというのに、都会の空は明るかった。

 街の明かりが、彼をじりじりと炙っているかのように映えている。

 空が暗ければ暗いほど、街は浮かび上がっていた。




 「随分、見通しが良いものだな! ……全てが、手に取るように分かる!!」
 双眼鏡を片手に、思わず笑みがこぼれる。
『あんまり声を出さないように。一般人にバレるようでは、セラフィム失敗ですよ』
 通信機から、若い男の溜息が漏れていたが、夜風がそれをかき消した。
「しかし、これは素晴らしいものだよ、君。私は今、誰よりも高いところにいるというのに―――」
 人はみな、前だけを見て歩いている。
 皆、同じような表情で、今日を生きている。
 “平和”な証拠だ。
「まあ、体が少々苦しいが、そこは大人の余裕でなんとかなっちゃうかな。うむうむ」
 彼の胴から下は、クッション付きのベルトで縛られ、それが時折、痛みを与えてくれる。
「でもさあ、これホントすごいよ。“光学迷彩凧”っていったかね、これ。誰が作ったんだい?」
『企業秘密に決まってるじゃないですか……』

コメント(11)

もう1人はしずるか?しずるなのか?
「企業に縛られる形でしか生きていけない人間はこれだからなあ」
 プリプリプリ、と妙な擬音をたてて笑い始める。
『……』
 ―――私は違うぞ、と。
 彼は口にこそ出さなかったものの、遠まわしにそれを表してみせた。
 通信機の先の同僚も、溜息をつきつつ、理解していた。
 二人の職場において、彼ほど、己の幸福を吹聴している人間はいない。
 裏の顔こそ、裏社会のエージェント“セラフィム”を名乗ってはいるものの、普段の彼は、中学校のいち教師。
 元々、子供が好きだった性分もあり、充実している毎日を送っているようだ。
 同僚の男も、そんな彼を少なからず羨んでいたのかもしれない。特に、からかう様子もなく、ただ黙っていた。
「さて、私はいつもとは違うパトロールを堪能したことだし―――」
『ああ、そろそろ御帰宅ですか』
「……否」
 彼は、悪戯っぽく笑ってから、通信を切った。
 目線の先には、闇のドームと化した、小さな山。
 その中にある一筋の灯りが、じんわりと、灯台のように自己主張をしていた。
「すまんな。少し寄り道をしたくてね」
 はたはたとコートが靡く。
 少し風が強くなった。
 気流がこうも変化するのは、彼にとっては些か計算外のことである。
 目標は、あと数キロほど離れた地点の洋館。
 彼にとっては、初めて扱う乗り物に四苦八苦しながらも、ようやく到着といったところだ。
 ふと、己の背後に括られた機材を顧みる。
 金属の骨と薄い膜は、完全に闇に溶け込んでおり、冷たい感触と小さな唸り声だけが存在を知らしめている。

―――不規則な存在に身を任せ、夜闇を漂流して。……なんだ、いつも通りじゃないか。

 ぼんやりと浸っていると、風の音に、別の不協和音が。
 ひょう、と一度。
 気がつけば、凧には別の人物がしがみついていた。
 丁度、頭の一つ上の鉄骨が、重みで泣き声をあげる。
「誰だね、一体」
 さも迷惑そうに、黒いコートの男は気配だけを頼りに言い放つ。
 自分でも意外なほど、重厚で落ち着いた声が出ていた。
「これは、一人用なんだ。降りてくれたま―――」
 そこまで言いかけて、頭上からの熱量の増加に気がつく。
 見上げれば、人の形をしたものが、全身から青い炎を昇らせていた。
 しまった、と自らの油断を悔いるよりも先に、体全体に衝撃が奔る。
 空中での爆発により、凧が大破したのである。
―――こんなのも、いつもどおりじゃあないか。
 そんなことを考えつつ、支給されたパラシュートを展開した。
夜風に撫でられる、木立のざわめき。
心地好い空気に包まれる中、幼い子供の声がした。
『ねえ、おじさん。一緒に遊びましょうよ』
『そうだわ、折角見舞えたのだもの。それがいいわ』
『そうよね。こんなに素敵な夜だもの』
1人。否、3つか。
臓物を、冷えた鑢で擦られる様な感覚を憶えた。
しかし、無邪気な。
人見知りをしない、子供の声だった。
「やれやれ。もう少し、浸っていたかったのだがね……」
ちょうど、腕立ての姿勢で、頭を持ち上げる。
小さな黒い影法師が3つ。
彼を囲う形で、見下ろしていた。
昔話に聞いた、のっぺらぼうのように、顔のない3つの人形。
人の形はしても、明らかにヒトではないものだということが窺える。
彼は澄ました顔で肩をすくめ、小さく咳払いをしてみせる。
「ふむ。ちょっと、そこ、いいかな」
遠慮がちに、つとめて丁寧な仕草で、影の間に割り込もうとする。
心なしか、影法師たちは少し戸惑ったような雰囲気を出した。
それを見て、彼は初めて笑顔をみせた。
「いや、私は逃げたりはせんよ。ただ、そこにさ」
影法師の背後に落ちているものを指差してみせる。
「そこにある、ハットを取らせて貰いたいだけなんだがね。……それに―――」
両手でマントを開いて見せ、ばつの悪そうな表情を浮かべる。
「それに、泥ん子になったマントを祓いたいのだが。ほら、そこにいると君たちに埃がかかってしまうよ?」
それを聞いた影法師たちは、少し安堵したように、胸を撫で下ろすジェスチャーを見せた。
『皆、逃げてしまうの。私、退屈で死んでしまいそうだったわ……』
呟き、黒い面の口が、ぱっくりと三日月状に裂ける。
くすくすと肩を揺らす3つの影法師。
『気に入っちゃった。貴方のお名前、なんていうの?』
『ごめんね、私、お名前がないの』
『さきに名乗るのが礼儀なのにね』
口々に言葉が流れるが、全て同じ声なので、どの影法師がどの台詞を投げ掛けているかは分からない。
彼は黙って、ハットを深く被り、服を払う。
「名乗ってもいいが、一つ条件がある」
ゆったりとした、慣れた仕草で、パイプに火をつける。
―――すぱ、すぱ、すぱ。
3回ふかしてから、軟らかな煙を舌の上で転がし、一息つく。
実際、彼の背負っているプレッシャーは生半可なものではなかった。
降り立った時から、山全体を覆う寒気。
紛らわせるには、煙の毒気で誤魔化すしかないと判断したのだ。
3つの影から立ち昇るのは、己を遥かに上回る能力の余波。一口に、妖気と呼称すべきなのだろうか。
しかしそれでも、彼は精一杯の虚勢を顔に貼り付けて、マントを翻してみせる。
子供の前での彼は、いち教師なのだから。
「ふふふ。私の名は、土筆野。土筆野、圭愁というんだよ」
やっぱりパソからじゃないと、空白がちゃんと発動してくれないみたいだね。
見づらいこと、この上ない。自動的に「」以外の文頭に空白をつけてくれる機能、欲しいよね。
我々には脳内変換つー便利ツールがあるじゃないか。

だから大丈夫。ファミ(以下自主規制
 都会の小山と言えど、電灯のない野の夜は暗い。
 風のざわつきで、何とか樹にぶつからないように歩ける。……その程度。
 右も左も分からない状態のまま、土筆野は影法師たちに引っ張られ、歩いていた。
『ツクシノ先生、お話の続き、聞かせて!』
『ツクシノ先生、伊藤博文が不良だったって本当なの?』
「はっはっは…、そうだね。彼は喧嘩が好きで―――」
 とりとめのない話。
 だが、彼らに先生と呼ばれて、悪い気はしなかった。
 自分が、どこへ連れていかれるかは、だいたいの想像がついていた。
 だから、敢えて聞かないことにしている。
 今、“先生”との会話を求めている彼らに対して、野暮な事はしたくない。
 そして、彼らの正体についても目星はついているのだが―――。
「野暮は、せんよ」
 一言、呟き、視線を背後に回してみる。
 繁っているクヌギの木々の間から、街の灯りが漏れていた。
 季節外れのクリスマスツリーの様だ、と思った。
 更に、自分の現状と照らし合わせ、可笑しくも思った。
「赤けりゃ、サンタクロースだったんだがね」
『ねぇねぇねぇ、サンタクロースってなに?』
 影法師のうちの1人が、興味津々といった感じで、土筆野の前を一周してみせた。
 他の影法師も、首をひねる仕草をする。
 どうやら本当に、サンタクロースを知らないらしい。
「物で子供を釣ろうとする、宗教の狗さ。赤い服を好む。ここでいう赤は、赤と言うよりも朱なのだが―――」
 言うなり、マントを翻す。
 瞬時に、闇に溶ける漆黒の姿から、朱の服装に切り替わった。
『すごい!』
 3つの影法師は、跳び跳ねて喜んだ。
『ツクシノ先生、マジシャンなの?』
「マジシャン、は知っているのかい。……まぁ、そう呼ばれていた時期もあったねぇ」
 遠い目をしつつ、マントの裏を見せる。
「リバーシブルなんだ。このマントと帽子」
 悪戯の見つかったような、ばつの悪い表情をしてみせる。
『ツクシノ先生、サンタクロースだったんだ』
『宗教の狗だね!』
「はっはっは、よせやいよせやい」
 遊園地に遊びに来た家族のように、笑う。
「久しぶりだな、こんなに気分がいいのは」
 彼は懐郷に似た感覚を憶えていた。
 今や取り返しようの無い感覚かと思っていただけに、高々と笑うことは出来なかったが、それでも満足していた。
 そんな気分も束の間、眼前にはいつの間にやら、巨大なシルエットが迫っていた。
 それを見つけた影法師たちが声を上げる。
『あ、着いたよ』
『お屋敷にご招待!』
 壁には蔦が繁り、噴水には苔が被さっていたが、それでも立派な屋敷だった。
「やはり、ここか……」
 呟き、溜め息を1つ落とす。
 土筆野にとっては、忘れ得ぬ場所。
 しかし、努めて忘れようとしていたものでもあった。
「とすると、君はやはり―――」
 周囲を見回した頃には、影法師の姿は消えていた。
 代わりに応えるように、正門の鍵が開く音がして、道には光が灯り、屋敷の正面の扉が開いた。
「やれやれ。正面から訪ねるのは私の性分じゃないんだが」
 急に、さっきまで吹いていた強い風が、思い出されたかのように再び舞い始めた。
 マントを上下に揺らされながら、示された道を歩く土筆野。
 一際大きくマントが翻ったかと思うと、彼の服装は、朱から漆黒へと戻っていた。
あ、全角スペースなら、携帯からでも受け付けるんだね。
今まで半角×2でやってたから受け付けなかったのかwww
見舞えた は 見(まみ)えた じゃないかなあと思った。何か意図があるならいいんだけど。
まさかの変換失敗www
他にも多数見つけたけど、書きません★

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