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生き残れ。〜災害に備えよう〜コミュの【想定03】地震・通勤電車

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この物語は、様々な災害に直面し、最悪の結果になって
しまった状況を想定したフィクションです。
登場人物は、災害の危機に対して、何か「正しくない」行動を
取ってしまっています。
どのように準備や行動をすれば災害から生き残れる可能性が
生まれたかを考えてみたいと思います。
何か気付かれましたら、コメントをお願いします。

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【想定03】
20××年 12月19日 午後6時20分
東京都板橋区某所
通勤快速車内
羽島孝之 42歳 デザイン事務所代表

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本当に久しぶりだった。小さなデザイン事務所を切り盛り
する羽島にとって、いわゆる通勤ラッシュ帯の電車で帰宅
できることなど年に数回程度だ。普段は良くて終電近く
だし、電車が無くなってタクシーを使うことも、徹夜さえ
も稀ではない。
今日は大きな仕事がアップして、その後時間がぽっかり
開いたので、スタッフを早く帰して自分もさっさとオフィス
を後にした。久しぶりに子供と話ができそうだ。

東京都心部から埼玉方面を結ぶこの路線は、ひどい混雑で
有名だ。今日も10両編成の車内は、どの車両も満遍なく
身動きできない程の混雑だ。
前から2両目、前の方のドア近くに立っていた羽島は、
この電車でどれだけの人数が「家に帰れる」のかぼんやり
考えていたが、電車が揺れた弾みで手すりのポールに
押し付けられ、胸を強く圧迫されて呻いた。

電車は都心部を抜け、郊外の高架橋の上を走っている。
あと15分もすれば、羽島の降りる駅に着く。
もうすぐ都県境を流れる川を渡る鉄橋にさしかかる筈だ。
窓の外はもうすっかり暮れて、遠くの街の明かりが
、ゆっくりと流れて行く。

その時、羽島は電車の揺れとは明らかに異なる、縦方向の
重力加速度を感じ、身体がふわっと浮いたような気がした。
すぐに今度は下から突き上げられるような強い振動を感じた。
車内にざわめきが走る。
「地震だ…大きいぞ!」
揺れはどんどん大きくなり、このままでは電車が脱線する
のではないかと思い始めた時、電車に非常ブレーキがかかった。
普段、駅に停まる時の数倍の減速度だ。車内の全員がたたらを
踏むようなドドドという音と共に、車両の後方から、まさに
黒山のよう乗客が押し寄せて来た。車内は悲鳴と怒号が
渦巻く。何人がが支えきれずに床に転び、後ろから崩れ落ちて
来た人の波にのしかかられ、踏みつけられた。ドア近くに
いた羽島は、ポールにしがみついてなんとか人の波の直撃は
避けられた。このまま止まれれば、助かる…。

運転席では地震発生と同時に、全列車即時停止を指示する
運行指令からの無線が飛び込んで来た。
「運行指令から管内全列車運転士、大地震発生、全列車は
直ちに抑止、列車防護措置を取れ。繰り返す…。」 
運転士は時速80キロから非常ブレーキをかけた。
すぐに襲って来た猛烈な横揺れに振り回され、脱線する前に
止まれるか自信がなかったが、歯を食いしばってブレーキ
ハンドルを押し込み続けた。

その時、運転士は前方の光景に目を疑い、声にならない叫びを
上げた。
「軌道変位!」
まっすぐ続いているはずの高架上の線路が、150メートルほど
前方でS字状に曲がっている。さらに目を凝らすと、鉄筋コンクリート
ラーメン構造の高架橋が、間を繋ぐゲルバー桁の部分で水平に
2メートルくらいずれているのが見えた。ゲルバー桁はおそらく
大きく破断するか落下していて、線路は約15メートルに渡って
S字状にうねりながら宙に浮いているのだ。

運転士は、落橋している場所までに自分の列車が停止できない
ことを悟った。おそらく時速40キロくらいで突っ込んでしまう
だろう。その時になって、自分の背後の車両から悲鳴と怒号が
聞こえて来るのに気づいた。超満員のこの列車が突っ込んだら…。
この状況を車掌に連絡し、車内放送する時間の余裕など既に
無く、自分自身の逃げ場も無いこともすぐに悟った。

羽島は電車の速度が落ちるのに合わせるように、地震の揺れも
収まって行くのを感じた。車内では数名の重傷者も出たようだが、
電車の速度が緩み揺れが小さくなるにつれて、極限まで高まった
不安と恐怖が、なんとかなりそうだという期待に置き換えられ
つつあった。その時、先頭車両から、短い警笛が連続して響いて来た。
何を意味するかはわからなかったが、その緊迫感から、何か
差し迫った危険に対する警告だろうということは想像がついた。
羽島は本能的にポールを両手で抱きこむと、衝撃に備えて身構えた。

電車はゆっくりと、落橋部分にさしかかった。すぐに先頭の台車
が脱線し、宙ぶらりんの線路から外れてがくんと頭を下げ、その
瞬間電源が落ちて全車両の照明が消えた。先頭車両はそのまま
後方の車両に押されて前進し、高架から角度を増しながらずり落ち、
反対側の高架橋に激突した。先頭車両のすし詰めの乗客は、車両が
ずり落ちるにつれてどんどん前方に押し込められ、激突した瞬間には
激しい減速ショックで車両の長さの3分の2くらいまで瞬間的に
圧縮された。特に車両前方では圧死、内臓破裂、重篤な骨折が
多数発生したが、状況はさらに悪化していった。

先頭車両はさらに後方の車両に押し出され、ほとんど垂直に
なって高架橋から転落し、約20メートル下の地面に激突した。
羽島の乗った2両目も続いて押し出され、先頭車両に引きずられる
ように、ほとんど棹立ちになって高架橋から転落していった。
一瞬無重力状態になった暗闇の車内で、羽島は自分の身体が
夢の中のように軽々と浮き上がったあと、悲鳴の渦の中へ飲み込まれて
行くのを、最後に感じた。

コメント(9)

こんにちは。正に今も通勤電車にゆられています。

この物語を読んで、リアルな恐怖を感じました。

でも、対策としてはラッシュアワーを避けて通勤する…くらいしか思いつきませ。

他にどうすれば良いのか、ぜひ教えてください。


これは・・・難しいですねあせあせ(飛び散る汗)
自分が今、会社員でないので、だんだんと通勤電車の感覚が薄れて行ってますが、
旦那さまが毎日乗るものなので、この場合はどうしたらいいか、とても気になります・・・

思いつくことと言ったら・・・あまり前方の車両には乗らない、くらいでしょうか・・・

ふと、JR福知山線脱線事故の映像を思い出しました。

他の対策を、私も是非知りたいです。
下は川ではないのですよね?
川なら落ちる前に飛び込むべきかと思ったのですが。
あとはなるべく各駅停車に乗るとか?

あとは運を天に任せるしかないですね。
>さやさん ふぅふぅさん ちえさん

実はこの想定についてだけ、ちょっとお詫びしなければなりません。
羽島氏は、間違った行動はしていないのです。それどころか、一部は
効果的に被害を避ける行動もしています。

現実には、公共交通機関に乗ったら、震災時に自分でできる対策は多く
ありません。ただ、被害を最小限に食い止めるポイントがいくつかありますので、
それを織り込みました。他の想定と同列にすべきか迷ったのですが、多くの
人が直面する可能性が大きい通勤中のケースですので、敢えて書きました。
東京近郊の方はお判りかと思いますが、イメージはJR埼京線です(もちろん
埼京線が特に危険という訳ではありませんよ)

大規模地震発生時、鉄道は線路の変形(=軌道変位)によって脱線する
可能性があります。その際に発生する急激な「減速ショック」から身を
守らなければなりません。

通勤電車でどなたも経験があると思いますが、ちょっときついブレーキ程度でも
乗客がドドドっと将棋倒しになりかかることがあります。ある研究所による
シミューレーションでは、時速80km/h程度からの脱線時に想定される
減速ショックによって、いわゆる「スシ詰め」状態の乗客が、車輌の長さの
三分の二にまで瞬間的に圧縮されてしまうそうです。鉄道車両一両の長さは
20m程が多いのですが、その中に詰まった乗客が、一瞬で13m程度にまで
圧縮されたらどうなるか。想像を絶します。

それを避ける方法はふたつ。シートには座れないものと想定すれば、車輌の
ドア部分で、ドアから二列目くらいまでの間にいるか、車輌の最後部に
いるということです。羽島氏はドア付近のポールにしがみついて、倒れ掛かる
人の波を逃れましたが、これがもっと大きなショックだったら、猛烈な力で
ポールに押し付けられて、重傷を負うのは必至です。

もうひとつ。
ここでは最後まで書いていませんが、10両編成の電車がすべて高架から
落下するとは考えられません。5両目以降に乗っていたら、最悪のケースは
避けられたでしょう。この想定をはるかに超える速度と衝撃だったはずの、
あのJR福知山線事故でさえ、5両目以降は線路上に留まっていたのです。

過去の鉄道事故を見ても、長い編成のすべてが脱線転覆したような事故は
皆無だと思います。そう考えると、とにかく編成の後半、できるだけ後ろに
乗るということが、非常に効果的な防御方法だと言えると思います。
追記です。

これは満員の通勤電車の場合を想定したわけですが、これが新幹線電車が
最高速で走行ている場合はどうでしょうか。

これは、国鉄時代に研究され、正式に発表された想定ですが、最高速度での
脱線転覆における人的被害の想定は、ただひとつだそうです。
それは「全員死亡」。

最高速度付近の新幹線は、飛行機と同じなんですよ。こればかりは
運を天にまかせるしかなさそうです。
てばさん>

早速のご回答ありがとうございます。

今帰りの電車ですが、さっそくいつもと違う後方車両に乗ってみました。

福知山線事故の件を拝見して、過去の事故や災害から学ぶべき事、推測できる事はたくさんあるんだな…と改めて思いました。

勉強になります。ありがとうございます。
>さやさん

とりあえず後方車輌、さらに進行方向の逆側に乗っていれば、大抵の
鉄道事故での受傷危険度を、大きく下げられると思います。

でも、鉄道大好きな私は、わかっていても先頭に乗っちゃうんですよ(笑)
そこはもう開き直りです。

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