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lll小説『月迷三国志』lll連載中コミュの第六章:[連合軍解散と月迷軍の再起]六〜七

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第八章は一〜五から読んでください
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劉義の足は完治したわけではないにしても馬に乗っての旅ならば支障はなかった。恵瑠を連れお世話になった礼を述べ出発した。
さすがに生まれ育った村民との別れ際では涙を流していたが、今、隣に馬を並べてちらっと顔を覗くと冒険にでも出るかのような晴れ晴れした表情をしていた。

「劉義将軍。しばらくこの道を行けば襄陽に続く行路に辿り着きます」
「うむ、では襄陽を経由する事にしよう。少し急がないといけないが夕暮れには辿り着けるだろう」

入り組む山道をしばらく下ると二人は襄陽へと続く行路に出てきた。
襄陽への行路はだだっ広い草原で地平線が見える程であった。
劉義らはとにかく襄陽へと馬を走らせた。
無言のまま駆けた。恵瑠は難なく付いてきている。なかなか馬の扱いも手馴れたものであった。日はすっかりと昇り、汗が滴りだしてきた。だが心地よい風も吹いており気分は爽快だった。
とにかく駆けに駆けた。時々馬の速度を加速させると必死でついてこようとする恵瑠が妙にかわいく見えた。しっかりしてはいてもまだ十六なのだ。
早朝に村を出てから既に数時間は経っているだろう。適度に小休憩をしてまた広大な草原を駆ける事を繰り返した。
更にしばらく駆けて日が大分傾いてきた頃前方にかすかに大軍の行軍が見えてきた。

「なんであろうか・・・。襄陽へと向かって進軍しているようだな」
「わかりませんが、方向はまっすぐに襄陽方面だと思われます」
「とにかくもう少し距離を縮めるとしよう」

どうやら数千近い軍勢のようだ。ゆったりと進軍していた為すぐに距離が縮まった。旗が見えてきて、遠めに字を読むと[来]とある。

「ん・・・。もしや・・・。いやあれは来兄弟の旗に間違いない。」
「来兄弟ですか?お知り合いでありますか?」
「董卓戦で共に戦った者達だよ。無論、彼らは積極的ではなかったがね」

そういってかすかに笑みを浮かべる劉義であった。

「恵瑠一気に接近するぞ。付いて来い」

そう言って急に馬の速度をあげた。
最後尾に追いつき、大将がどこに居るのか見渡した。
そして確認するとその方向へと駆けた。

「おい。お前ら何者だ」

当然だが、大将を囲む騎馬隊の者が駆け寄ってきて声を荒げた。

「我は董卓戦で共に戦った。月迷軍の劉義と申す。来兄弟に目通り願う」
「しばしまたれよ。大将にお伝えいたす」

程なくすると全軍に停止命令がだされ、さっきの男が大将の元に案内してくれた。

「いや、これは劉義将軍ではありませんか。ご無事でしたか。洛陽で周翔殿がえらく深刻な顔をしておりましたからな・・・。一部の諸侯らは死んでるだろうと噂していた程ですよ・・」
「来知殿。この通り健在ですよ。勝手に殺さないで頂きたい。」

笑みを浮かべつつ劉義は来知と言葉を交わした。

「後方から駆けて来た所に出くわしたもので、一言挨拶をと思いましてね。洛陽からの帰還でありますか」
「はい。もう洛陽に残っていても仕方ないですからね・・。かといって帰る場所といえば襄陽しかございませんので」
「そうでありましたか。我々月迷軍は最後の最後にとんだ惨敗をきしてしまったのでね。恥ずかしい限りですよ」
「劉義殿もしよければこのまま我々と共に襄陽まで付いてきてください。私らの館でお休みくだされ。あと六十里(20km程)も駆ければ漢水に着き船で渡ればすぐに襄陽ですよ。襄陽から書簡なども送っておかれ、ご健在ぶりを伝えておかれるのもよろしいでしょう」
「それはありがたいですな。是非よせていただきましょう。」

日が暮れる前には襄陽に辿り着き、来兄弟の案内で館に寄せてもらう事になった。
来兄弟とは不思議な縁である。劉延がたまたま情報収集の際に出会って、
董卓戦の時も時々話す機会もあった。
二十程の大小の勢力が結集した董卓戦ではお互い最小の軍勢であった事もあって、
自然に話す機会も多かった。
劉義は来兄弟の人柄が嫌いではなかった。
どこか安心感のある雰囲気を感じさせられた。ただ結局董卓戦においては、
積極的に戦闘に繰り出した月迷軍と違ってほとんど戦線に出ようとしなかった来兄弟の意図は分かりかねる部分もあった。
極力沈黙を破らずにいたのだ。
来兄弟が所有しているという館は実に立派であった。
客間に通されたが、実に豪華なつくりだ。
名門の兄弟であるとは聞いていたが館を見るだけでそれが実感として理解できた。
なぜ父の跡を継いで襄陽の太守にならなかったのだろうか。
彼等のどちらかが跡を継げばこの領地が手に入ったではないか。
零陵と違って支那の中心にあるこの地を継がない選択をしたのも興味深い。
父親の死後、太守を辞退した詳しい経緯(イキサツ)知ってみたくなっていた。
今、荊州の州牧は劉表である。
来兄弟はその劉表との繋がりも強大なのだと劉延が言っていた事があった。
それ故客将扱いとはいえ、ほぼ無条件で兵糧も支給されているのだという。
劉表自ら挨拶に来る事もあるのだという。
しかもこの地方の豪族との繋がりも濃いと言ってもいいだろう。
いやむしろ来家そのものが豪族の代表みたいなものかもしれない。
不思議な人達だ。どうしても来兄弟が一体何を目指しているのかなかなかみえてこなかった。
襄陽に滞在している間にそれとなく話を聞いてみることにするのがよいだろう。
敵になりうるのか味方になりうるのか見極めるのも大事な事だ。

「来知殿。実に立派な館でござるな。驚きました」
「お気に召していただきましたか?どうぞゆるりとおくつろぎください。劉義将軍に再会でき光栄でございますよ」
「光栄だなんて、何をおっしゃいますか。零陵の太守に過ぎない田舎者ですよ」
「いやいや。董卓戦でのご活躍ぶり感銘を受けました。それからもし零陵へ書簡を送られるのでしたら、この筆と紙を使ってください」

来知は終始笑顔だった。庶民にはなかなか手のでない茶を注いでくれた。
山奥で育った恵瑠は何か落ち着かない様子であった。
目を丸くしながら辺りをみまわしていた。
そこへ使用人が入ってきてなにやら来知へと手渡した。

「劉義将軍。お召し物がだいぶ痛んでいるようですのでどうぞこの服をお使いください。もしよければ鎧の修復も頼んでおきましょう。馴染みの呉服屋で腕のいいのがいますから。恵瑠さんにも新しい服を用意しなければなりませんな。」
「それはありがたい。この鎧には思いいれがあるので零陵に戻ったら修復に出そうと思っていたものですから。恵瑠も遠慮せず服を頂いてきなさい」

零陵宛に書いた書簡を使用人に手渡し庭を少しばかり散策すると、
すっかり日も暮れて戻るとすぐに夕食の支度ができたと知らせてきた。
客間から出て案内されるままについてゆくとすでに来兄弟が席についていた。
色々な話をしつつ出される上質な食材を使ってはいるが、
しかし割りと庶民的な料理に舌鼓をうった。
もっと宮廷料理の様なものがでてくるのかと思っていた劉義にとっては意外でもあったが、むしろこういう庶民的な料理が出された事で来兄弟へ不思議な親しみを感じさせられた。
思えば麗欄もそうだった。来兄弟程ではないがもともと地方の豪族の娘であったのに、世を正すんだと月迷軍を立ち上げたのだ。
豪族の娘のくせに決してお高く留まっていなかった部分に好感を抱いたのかもしれない。
庶民の生活ぶりに馴染んでいたし違和感もなかった。
庶民と言っても中流階級の事である。
大多数の庶民はその日食べるものにも困っているのだから。
劉義が麗欄に付き従う事を決めたのはその庶民の感覚を共有できたというのも大きかった。
この来兄弟にも麗欄の様な空気を感じさせられる。
もちろん気品もあるのだが、庶民的親しみも持ち合わせてる感がする。

食事が済むとしばらく話に花を咲かせた。
楽しい時間であった。来知は話出すととまらない。
それに比べ兄の来哉はどちらかというと物静かだった。
しかし決して無愛想だというのではない。
ホントに伝えたい事は言葉短く口を開く。
ある意味ではバランスが取れているのだとも言える。
聞き上手と言ってもいいかもしれない。
話の場に居る事を嫌っている様でもないのだ。ただにこやかにうなずいている。
笑い声の絶えないひと時であった。
劉義も久々によくしゃべった。恵瑠も初めて聞く話に興味津々らしい。
話が尽きてしばらく静寂が部屋に漂った。茶をすする音だけが聞こえてくる。
すると来兄弟は目を合わせて何か小言で話始めた。
何を話しているのかこっちには聞こえない。
だが不意に二人は姿勢を正し、劉義の方に向き直って改まった顔になった。
そして来哉が口を開いた。

「劉義将軍。我々が董卓戦に挙兵し出向いたのは一体なぜだと思われますか」

突然まじめに質問を投げかけた来哉に劉義は少しばかりあたふたしてしまった。

「さー・・・。私には分かりかねる質問ですな。無論董卓討伐の為という名分でありましたからね・・・ですがわざわざ質問するという事はそういう事ではなかったということでしょうか」

一瞬間をおいて来哉は劉義の顔をまじまじと見つめにこりと笑って続けた。

「我々が董卓戦に数千の兵を従えて出陣した訳は、表向きは勿論董卓討伐ですが、実は全国から集まる諸侯の中から我らの大将となる者を見極める為だったのです。」

劉義はわかったようなわからないような風でただ小さくうなずいている。

「いきなりこのような事を言っても返答に困るかもしれませんが、我らを是非劉義将軍の麾下に加えていただけませぬか」

あまりに突然の申し出に目を丸くする劉義であった。
しばらく沈黙が続いた。劉義も返答しかねている様子である。
だが来哉も来知もいたって真剣なまなざしである。

「正直・・。意味がわかりませんな・・・。何かの冗談ですか?」
「いえ。嘘偽りなく言葉の通りでございます。勿論返答にお困りになる気持ちもよく理解できますが、我々は真剣に申しておるのです。」
「しかし、私はたんなる片田舎の太守にすぎませんし・・・。勿論この支那の行く末を気にかけているのは確かですよ。ですが・・・。私にはあなた方を迎えする程の財力もなければ名声もありません。」
「財力の心配をしていただく必要なないですし、だからこそお力添えしたいのですよ。決して思いつきで直訴しているのではないのですよ。我々にとって財も家系もそれ程重要ではないのです。いかに生かすか。そしてそれを生かす事で我々がいかに生きるのか・・・。劉義将軍同様、我々もこの支那の乱れに憂いでいるのですよ。董卓戦での諸侯等を見られましたでしょう。連合したのも表向きではなかったでしょうか。皆あの時は打倒董卓を名目にしては居ましたが、解散した今となっては、天下を狙っている狼の集まりだったと我々には思われます。私利私の為ではなく真に支那の領民の為に戦わねばなりません。お気づきではなかったでしょうが、我ら兄弟はずっと集まった諸侯等の言動をつぶさに観察していたのです。ゆえに積極的に戦闘に加わりませんでしたが・・・。つまり先ほども申し上げました様に大将を探していたのですよ。そして月迷軍の存在を目の当たりにしました。実は長沙での月迷軍の評判も調べておりますよ。零陵での民政も・・・。」
「なんと・・・。そうだったのですか・・。話を聞くと驚くばかりですが・・・・」
「今零陵に舜憂というものがお邪魔しているのですが、まだご存知ないでしょうがね・・・。舜憂殿は襄陽で下級文官として仕官しておったのですが、たまたま知り合う機会があって仲良くなり劉表殿に頼んで我らの元で軍の管理を手伝う事になったのです。舜憂殿は董卓戦に付いてきていて、董卓戦で氾水関と対峙していた頃、舜憂がいうには実は襄陽を経つ前に月迷軍に親しい学友の趙慶殿より書簡が届いていたという話をしてくれました。それで月迷軍が気になっていた我々は舜憂殿に趙慶殿に書簡を返して零陵の偵察をしてもらうように指示したのです。つまり董卓戦の間に本陣から馬を駆けて襄陽へと帰還してもらったのです。そして今では零陵にて趙慶殿と再会し民政の手伝いもしていると書簡が届いております。」

来哉は一端間をおいて改めて頭を下げ

「どうぞ我ら来兄弟を麾下にお加えくださいませ。どこまでも付き従わせていただく所存にございます。襄陽への帰路で偶然出会ったのも宿命と感じずにはおれません」

来知も頭をさげた。
劉義は断る事ができなかった。しばらく無言で考え込んだ後、うやうやしく申し出を承諾した。こうして晴れて来兄弟は月迷軍の未席に加わり、ほぼ無傷の兵約五千も月迷軍に編成される事となったのである。
思いもよらない強力な援軍を得て、天が月迷軍を後押ししているのだと感じた一方、世の乱れを正すという志を抱いてから今こうして大きく月迷軍が動きだしつつあることに、もう後戻りはできないぞと言わんばかりに天の無言の威圧の様なものも感じずにはいられなかった。それ故この時劉義の心中は喜びの反面、不安も入り混じっていたのである。
本物の覚悟を決めねばならぬ時が訪れつつあると気を引き締める劉義であった。





劉義から書簡を受け取った周翔はおおいに喜んだ。無論趙慶もである。
十数日以内には帰還すると知らが着たのでとりあえず頭を抱える問題はなくなったのである。劉義将軍を迎える準備も整えて、捜索に出ていた劉延の部隊にも帰還するよう書簡を送った。

十数日が立ったある日。物見の塔から守兵が大声で何か叫んでいるという報告が周翔らの元に届いた。李雪が臨戦体制をとるよう指示を出しているらしい。
周翔は急いで城門近くに駆けつけてきた。城門が既に閉じられていて守兵によれば数千もの大軍が進軍してくるのだと言う。
一体何が起こっているのか・・・。もしや孫堅が攻めてきたのだろうかと不安をかきたてられた。だが、この時期に来るはずがないではないか。予想が外れたのだろうかとも考えて見たが・・・。とりあえず十数人の精鋭を引き連れて城門を開けさせその大軍に向かって馬を走らせた。一里程(約350m)まで近づくと面白い事にその大軍を先導しているのが劉義の様である事がわかった。だが油断は禁物だ。もう少し近づいて見る事にした。すると大軍は一時停止して、劉義らしい一騎だけがかけ寄ってきた。

「おう。周翔副将。久方ぶりだねー。」
「劉義将軍でしたか・・・。どこぞの誰が攻めて来たのかとびっくりしましたよ。それにしても後方の大軍はなんなんですか」
「いや〜、話すと長くなるのだが、簡単にいうと皆月迷軍なのだ。細かい事は後で話すとしてとりあえずこの兵士等を受け入れる体制を至急整えてもらえぬか」
「了解いたしました。それにしてもよくご無事で」

そういって周翔は手を差し出した。そして力強く握手をした。
その握手はどんな言葉よりも深く多くの事を伝えているかのようであった。
周翔は握手をした途端なんともいえぬ安堵感を感じたのだった。
心のどこかで劉義の生存の責任を感じていたからである。
仕方ない状況であったとはいえやはり回避できたかもしれないと言う自責の念を捨てきれずにいた為だった。
肩から重石が取り除かれた様に感じられた。
よくぞ戻られた。腹の底からそう声が出掛かったがあえて口には出さなかった。


劉義が城門から入場すると盛大な出迎えがなされた。零陵の民の多くも城門付近の広場に集まっていた。
早速幕僚達を集めて今までの経緯を簡単に語り、また来兄弟の紹介も済ませた。
半年程前に出陣した頃と比べて見違えるような零陵の活気に満足げな顔を劉義はしていた。
その晩劉義の帰還祝いと来兄弟の歓迎をかねて盛大に宴会が開催された。
宴会が盛り上がってきた所で周翔は立ち上がって口を開いた。

「皆のもの。劉義将軍の無事な帰還を祝って杯を手に取っていただきたい。董卓戦での厳しい戦い乗り切りこうして再度集結できた事、そして死んだ者達を悼み劉義将軍のもと志を新たに誓うとしよう!」

杯を持った手を高らかに突き上げると皆もそれにならった。

「劉義将軍一言お願いします」
「董卓戦での最後の追撃戦で壊滅状態まで追い込まれ・・・。一時はこれまでかと死も覚悟しました。されど我らここに月迷軍の再起をかけて決起する時がきたようです。月迷軍に栄光あれ!」
「栄光あれーー!!」

劉義に続いて皆も呼応し大きな声が響き渡り一斉に杯の酒を飲みほすのであった。


第六章:八〜九
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