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小説を書いてみよう!コミュの四神降臨 復活編

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これは「四神降臨」の続編です。こちらを読まれてから入られたほうがいいかもしれません^^;

http://mixi.jp/view_bbs.pl?id=16911243&comm_id=2013350

復活編は書き方が異なります。なんていうのかなあ「日記風?」な書き方というべきでしょうか・・・。

実はまだ結末を決めないまま書いているので、手探りで書いている状態です。というより私の書き方が、思いついたストーリーをダダダって一気に書き上げるスタイルですので・・・。ですので起承転結っていうのがないに等しいことが多々あります^^;

時代設定は現代日本。中心的には京都市内中心ですけど・・・。どんな結末か・・・たぶんオチが弱いと突っ込まれそうな予感・・・。
実はファンタジー系って漫画でさえあまり読んだりしないものですから、(実はホンワカ恋愛物がすき)どう書いたらいいものかわからないのです^^;それなら書くなって言われそうですが、自分への挑戦というのか・・・・。ですので、お手柔らかに・・・。

あ、まだ小説ブログでは細々と連載中です^^;

画像は書き始める前によくする人物設定です。小説というより漫画人間ですから^^;私って・・・。文章力のなさが・・・ばればれです^^;

コメント(68)

(麻沙耶の視点です^^;)
(5) 誘惑2

「今度一緒に勉強しようよ。」

と紫苑君に誘われたんだ。ちょうどお母さんが紫苑君を家へ上がってもらいなさいって言うもんだから、僕の家で勉強することになったんだ。

初めて友達というものを家に上げる。もちろん母さんは大喜びで、朝からケーキなんか焼いて準備していた。僕も好きな紫苑君が家に、そして僕の部屋に入るってことで、昨日は緊張して眠れなかった。

「麻沙耶。黒田君が来たわよ。」

と言うから僕は急いで玄関へ行った。僕は早速部屋へ案内をする。

「やっぱりいいとこのお坊ちゃんだよね。でかい家。うちなんかちっちゃいよ。」
「そんなことないよ。ただ古いって言うだけの家だから。さ、勉強しよ。」

僕と紫苑君は並んでお互いわからないところを教えあったり、お母さんが用意したお茶とケーキを食べたりして過ごしたんだ。ホント楽しい時間。もし僕が女の子だったら・・・即ここで告白するんだけどね・・・。きっと男の僕が紫苑君に告白したとしても相手にされないだろうな・・・。紫苑君はスポーツ万能で、成績優秀。そして女の子に人気がある。そんな紫苑君が僕に気があるなんて思えないよ。この前のかわいいだってきっと社交辞令だよね・・・。

「なあ、麻沙耶。」
「何?紫苑君。」
「お前、僕の事好きなのか?」
「え?」

そういうと紫苑君はいきなり僕を押し倒してキスしてきた。ちょっと待ってよ!!!心の準備が・・・。

「僕さ、男同士の恋愛ってどういうもんか知らないけど、麻沙耶のことが好きだよ。そこらじゅうにいる女よりもかわいいしさ。麻沙耶といると安心するっと言うかさ。おかしいかな・・・?男が男を好きになるって・・・。」
「そ、そんなことはないよ。僕も紫苑君が好きだから・・・。」

そういうとまたキス・・・。

それ以上のこと?ないよ。でも、この日から、僕と紫苑君は友達以上の関係で、表向きは普通の友達を演じているけれど、二人きりになると、手をつないで、時々キスしちゃったりなんかしてさ。恋人同士って感じで・・・。僕が女ならおかしくないんだけど・・・・。でもこれは真実の愛じゃないんだよね・・・。真実の愛じゃ。
(紫龍の視点です^^;)
(6) 復活の儀式

「紫龍。もうそろそろ、玄武をここにつれておいで・・・・。そしてこの黒龍王の水晶に玄武の憎しみの力を封じ込めるのです。そうすればきっと黒龍王は復活するわ・・・。」
「憎しみ?どうして憎しみが必要なのですか?」
「黙りなさい。あなたは私の言うことさえ聞いていればいいことなのよ。ここへ連れてきて、この水晶の前であなたは玄武を裏切るのです。そうすればきっとあなたへの憎しみ、悲しみがこの水晶へ吸い込まれる。」

裏切る?そんなことなんかできないよ・・・・。

麻沙耶は僕の大事な友達。友達を裏切ることなんてできないよ・・・・。でも父を復活させるため、必要不可欠なことらしいけれど、どうして憎しみの力が必要なのだろう。

もちろん僕は母の言われたとおりに次の日自宅という名のこの儀式が行われる間へ麻沙耶を連れて行く。麻沙耶は異様な雰囲気におどおどしていた。そりゃそうだろ?大きな神殿がある家なんてそう多くはないはず。麻沙耶は信者さんと話している。

「黒龍はねえ、海の神なのだよ。最近、海産物が減少したり、特に海難事故が多いだろ?私たちは黒龍さんを祭って、そういうのがなくなるのを願っているんだよ。決してこの宗教は怪しいものじゃない。教祖様もお優しいし、祈るたびに心の闇が消えていくようだ・・・。」

実は信者の体内中に眠る憎しみ、悲しみなどといった心の闇を父の水晶が吸い取ってそれを餌にしているようなものらしいけれど、そのためか、心に悩みを持つ人たちが最近よくここに訪れるようになったんだよね。それがいいことをしているのか、悪いことをしているのか、この僕には判別できない。母がすることすべてが黒龍族にとって善。そして絶対的。僕が麻沙耶を裏切ったところでどうやって味方につけるというんだ?きっと母には策があるのだろうけれど、わからないよそんなの・・・。
(麻沙耶視点)
(7) 恨み、悲しみ、憎しみの力

 信者たちは帰っていき、僕は紫苑君のお母さんと話をする。信者さんたちの言うようにホント優しそうな人。紫苑君のお母さんは用事があると部屋を出て行く。すると紫苑君は僕の前に座って真剣な顔で言うんだ。

「麻沙耶。やっぱりさ、僕たちは友達のほうがいいと思うんだ。」
「え?」
「僕さ、気がついたんだ。僕は麻沙耶のこと恋愛感情じゃなくて、純粋に友達として好きなんだって・・・。だっておかしいじゃん。男が男を好きになるって!変だよ。腐ってる。」

腐ってるって?だって僕は紫苑君のことが好きで、紫苑君も僕のことが好きだから・・・この前キスしたんでしょ?そんなそんな・・・。やっと僕は心が通じ合える男の子とめぐり合えたと思えたのに・・・。僕は・・・。

もちろん僕はその場に泣き崩れた。すると、紫苑君のお母さんが部屋に入ってきたんだ。

「紫苑、麻沙耶君に何かひどいことを言ったの?とてもいい子なのに!ゆっくり話を聞いてあげるわ。紫苑、あなたは自分の部屋の入っていなさい。」
「はい・・・。」

紫苑君は部屋を出て行った。僕は紫苑君のお母さんに誘導されるまま、言いたいことを相談した。もちろん紫苑君のお母さんは優しい表情ですべてを受け止めてくれたんだ。そして僕に水晶玉を手渡し言うんだ。

「この水晶玉は、麻沙耶君の嫌なこと、苦しいこと、悲しいこと、すべて心の闇になることを吸ってくれます。麻沙耶君。この水晶玉を抱きしめて、願いを掛けて御覧なさい。そうすれば心は清々しくなるから・・・・。」

僕は言われるまま、今まで男として生まれてきて悔しかったこと、悲しかったこと、さまざまないじめに対する恨み、憎しみをこの水晶玉にぶつけたんだ。するとこの水晶玉は眩く光り、ふっと消えてしまったんだ。

「え?」
「どう?少しは心の闇がなくなったかしら?」
「そういえば・・・。でも水晶は?」
「いいのです。あなたのおかげで救われたものがおりますからね・・・。気にしないで。そうそう、紫苑には私からきつく叱っておくわ。だからもう泣かないで、いつまでも紫苑のお友達でいてあげてね。きっと一晩ゆっくり眠ったら、あなたは生まれ変わったように気分がいいはずよ。」

僕は紫苑君のお母さんの話を信じ、紫苑君の家を後にする。また悩み事があれば、ここに相談に来よう。そうすればきっと嫌なことを忘れられる・・・。
(8) 復活

「ふ、うまくやったものだな・・・。」
「これはこれは、黒龍王様。お帰りなさいませ。」

麻沙耶が去ったあと、一人の男が現れる。これはまさしく黄龍に封印された黒龍王の人型の男。麻沙耶の悲しみ恨み憎しみの心のおかげで封印が完全に解かれたのだ。黒龍王は、黒龍妃の前に座り、密談をする。

「さすが、玄武の力は相当なもの。この私でも解くことができなかった最後の封印を見事解いてくれた。あの少年、確かにあの時の玄武の姫君の転生した姿。今思うだけでも憎たらしいあの小娘。まあいい・・・。紫龍、いや紫苑に例の事ばらしてはならぬぞ・・・。私が封印される前に紫苑の本当の力を封印しているからいいものを、真実の姿を知った時にはわが黒龍族は再び危機にさらされる。」
「わかっておりますとも・・・。いまだ一神、現れておりませんわ。」
「んん・・・。例の朱雀の皇子、今回は関わるものではなかったようだな。」

もちろんこの話は誰にも聞こえない心の声。もちろん別室にいる紫龍いや紫苑には聞こえない。

「ということはわかるか?黒龍妃よ・・・。」
「はい・・・決して紫苑をあちら側につかせてはいけないということでしょうか?」
「そういうこと・・・。今のところ玄武もわれらの手の内にある。この玄武を霊の神として覚醒させ、こちらにつけさえすれば、四神降臨はぜず、そしてにっくき黄龍も降臨しまい。あと紫苑の事だが・・・。例の事に気がついた場合、私はあいつを喰う。喰らって朱雀覚醒を食い止めなければならんのう・・・・。あいつと赤の勾玉が出会う前に処分することにはなるとは思うが・・・・。本当にお前の母心というもののおかげで、こういうことになるとは思わなかったが・・・・。」
「わかっております。私が責任を持って気がつかせないようにいたします。」

この夜、密談は長く続く。もちろん紫苑はこの内容をまったく知らないのである。
第6章 朱雀 (1) 静寂

 おかしい、最近何も起こらない。魔物の出現も、頻発していた天変地異までも・・・。おかしすぎる。気を集中させても何も感じない。毎日が淡々と過ぎていく。そのせいであろうか、私の持っている赤の勾玉は静まったまま。

いつものように史学準備室に集まるメンバー。しかし玄武である近衛君はいっこうにに我等と交わろうとはしない。今まで青龍である竜哉様を慕ってよく側にいたものだが・・・。それどころか、不思議な気を持つ少年黒田紫苑君の側にいることが多い。

紫苑君と一緒にいるようになってから、彼はとても明るくなった。私は人の心を見る能力があるのだが、以前彼の心は憎しみ、悲しみでいっぱいだった。それがどうだろう。最近は清々しい心である。きっと黒の勾玉のおかげではないかと思うのだが、少し気になることがある。紫苑君は例の黒龍を崇める新興宗教団体に出入りしているというのだ。もちろん近衛君も・・・。ここの宗教、御神体といわれる水晶に相談するだけで、気が清々しくなるという。それはそれでいいと思うのだが、黒龍が絡んでいるということからか気になってしょうがないのだ。

 私は近衛君や紫苑君の日本史の授業も担当している。淡々と過ぎていく授業。相変わらず仲のいい二人。席が隣同士ということもあるのだろう。しかしふとした拍子に紫苑君の今まで感じたことのない気を感じてしまう。なんというのかわからないのだが、時折私と同じような気が感じられるのだ。

それは朱雀の気。私はなぜこのような気が感じられるのかが疑問だった。

 朱雀王族で今人間界にいるのはこの私だけ。王族だけではない。朱雀といわれるものは人間界に私しかいないのだ。以前、黒龍が朱雀国を襲った際に、王族、朱雀国民のほとんどが殺されてしまった経緯がある。何とか難を逃れた朱雀王、朱雀東宮、朱雀妃、そして一部の朱雀国の者たちで朱雀国を再建してきた。その者達以外に朱雀は存在しないと思われている。というより存在しない。

 以前のことだが、私の母、朱雀王妃に私には双子の妹がいると聞かされたことがある。朱雀というものは生まれるとき必ず雄と雌の双子だという。妹は母と一緒に連れ去られ、その後行方がわからないというのである。もしかして紫苑君は?しかし紫苑君は男だ。妹であるはずはない。きっと気のせいに違いないのである。
(2) 心の奥底

 ある日、紫苑君が史学準備室にやってきた。もちろん私が呼んだ。

「失礼します。なんですか?源先生。」
「資料作成を手伝って欲しいと思ってね・・・。」

これは口実である。こうでもしないと彼はここへ来ない。もちろん側には玄武に関わるものの近衛君。本当に不思議な気を持つ少年、紫苑君。色々な気が混じっているというのか。私は作業を指示し、いつものメンバーに加え、紫苑君と近衛君とともに資料を作成する。作業をしつつも、紫苑君の気を探ってみるが、強烈は気で跳ね返される。おかしい。そのあと、急激な邪悪な気に襲われ、私は気を失いそうになった。この気は・・・。黒龍!まるで私に紫苑君を探らせないように結界を張っているかのようであった。

「紫苑君、君にはお父さんがいないようだね。」
「いえ、最近父は帰ってきたんです。」

私は色々聞いてみるのだけれど、紫苑君はわからないの一点張り。物心つく前から彼の父は側にいなかったらしいので、知らないという。ただ、ずっと家の中にいて、母親と何か話しているだけで、そして滅多に彼の前に現れないらしい。現れたとしてもいつも紫苑君をにらみつけ、一言も口を利かないらしいのだ。

しかし近衛君の印象は正反対。やさしい印象で、近衛君をかわいがり、色々と相談に乗ってくれるいい人らしい。

 するとまた私は紫苑君の気を感じる。まただ。近衛君と目を合わし、話しているときには必ず感じるのだ。その時を狙って私は気を探ってみる。すると彼の心の中に入ることができた。近衛君の玄武の力が、紫苑君の閉ざされた心を開いているようだ。私自身心に入ることができるといっても、はっきり映像として感じるのではない。気として感じるのである。彼の心の奥底は清い気で満たされている。しかし核心に入ろうとすると、いきなり邪悪な気で閉ざされてしまったのだ。私はこの行いのせいかは知らないが、大変疲れてしまった。でもあの心の奥底の気はまさしく朱雀の気。私と同じ・・・。まったく同じ。
(3)朱雀の国

 私は休日、祠にこもり考え事を一日中していた。どうすれば紫苑君の心の闇、邪悪な気を取り除き、そして心の奥底の清い心、朱雀の気を引き出すことができるのだろうか。私はふと思い出し、私の生まれ故郷である朱雀国へ行ってみることにした。久しぶりに訪れる朱雀国。まだまだ再建途中ではあるが、父である朱雀王は人間界に住む私を快く迎えてくれた。

「父上、私は人間界で不思議な少年に出会いました。」
「不思議な少年?」

私は父にことの一部始終を話した。すると父は言葉を失ったのだ。それっきり話をしない父は私にあるものを渡したのだ。それはある札。人間界で言う命名札というべきか。そこにはこう書かれている。

『第二皇子 朱央  第二姫皇子 紫苑』

と。
私の妹の名前、それは紫苑というのである。母は黒龍族に捕まった少しの間、ずっと紫苑を抱き『紫苑、紫苑』と声をかけていた。しかしある日紫苑は取り上げられ、そして母は黒龍王に朱雀の力を吸収するために喰われたのだ。母は紫苑が処分されているものと思い込んでいた。もしそれがわが妹、紫苑であれば、どうして黒龍の側にいるというのだ?そしてどうして男の子として育っているのだ?

 母は私が人間界に戻る間際、あるものを手渡す。それは朱雀のしるし。朱雀のものが必ず持っているというあるもの。そのあるものを私は大切に抱き、人間界へ戻ったのである。
(4) 朱雀の印

 朱雀の印とは口ではよく表せないのであるが、とても綺麗な宝石のようなもの。生まれた時に抱いた状態で生まれてくる。朱雀それぞれの色と形があり、私の場合は朱色である。だから朱央と名づけたらしい。そして紫苑は赤紫色の石。とても綺麗な赤紫。高貴な色で光り輝いている。まるでこの前あの少年紫苑君の心の奥底の清い心そのものだった。このことで私は紫苑君が私の妹ではないかと憶測する。しかしどうして男の子として育っているのか?それだけが疑問だった。しかしどうすれば紫苑を助けることができるのだろうか?あのまま黒龍の側にいたら、きっと紫苑はだめになってしまう。祠で私は紫苑の朱雀の印を見つめ、考え込んだ。

「朱雀様。どうかしたんですか?」

と亜樹が声をかけてきた。

「なんでもありません。ちょっと気になる少年がいてね。知ってるかい?3年生にいる黒田紫苑君を・・・。」
「はい。結構女の子に人気あるんですよね。何か?」
「あの少年は人 じゃない。」
「人じゃない???では?」
「朱雀かもしれないんだ・・・。それだけじゃない。もしかしたらこの私の双子の妹・・・。でもどうして少年なんだ?」

めずらしく悩む私を見てか、亜樹は私に言ったのだ。

「もしかしたらそういう術があるのかもしれませんね、朱雀様。何ていうのかなあ・・・操り人形というか・・・。亜樹はそういうことあまり知らない・・・。そういう秘術があるのかもしれません。」

そうだ・・・。龍族の筆頭である青龍王龍希様なら、龍族に伝わる秘術を知っているのかもしれないのだ・・・。龍が操る術の事なら、龍希様に一度お会いして聞いてみるのも手・・・。早速私はすぐに青龍国へ向かった。
(5)龍族の秘術

 私は青龍国へ向かった。はじめ朱雀の皇子である私を衛兵たちは追い返そうとしたが、赤の勾玉を見せると、衛兵たちは頭を下げ、青龍王龍希様の前へ案内した。

「お久しぶりです、龍希様。」
「ああ、朱雀の皇子。今日は何か?」
「実は龍族に伝わる秘術はないかと伺いに参ったのです。」
「秘術?」

私は龍希様に色々話し、聞いてみたのだ。すると龍希様は顔を曇らせていうのだ。

「性を変える術はあるにはある。しかしそれは禁じられた秘術でね・・・。術を掛けられた者の体には相当負担がかかると聞いた。そしてその秘術はまさしく黒龍のみ使う秘術。」
「解くことはできないのですか?」
「できないことはないが・・・。まずは黒龍の呪縛からその少年を引き離さないといけないよ。早く術を解かないと命に関わるかもしれん。そうだ、気休めにしかならないと思うが、これを渡しておこう。」

と、龍希様はつぼに入ったものを渡す。

「これは青龍の聖水だ。邪悪なものを払拭してくれる。この聖水をその少年に飲ませると、邪悪な結界を払拭できるかもしれない。一度試してみたらいい。」
「ありがとうございます。一度試してみます。」
「んん・・・。」

私はその聖水の入ったつぼを大事に抱え、人間界へ戻る。本当にこの聖水が結界を取り除くことができるのかどうかはやってみないとわからないが、やってみる価値はあるのかもしれないのだ。
(6)姫君

 私は人間界でのいつもの生活へ戻る。龍希様からいただいた聖水を小さなビンに入れ持ち歩く。本当に授業以外は接点のない紫苑君と近衛君。呼べば史学準備室に来るかもしれないが、先日の事があり、敬遠されているのは確かな話・・・。しかしまず紫苑君にかけられた黒龍の結界を解かなければ何も始まらない。本当にこの聖水が役に立つんだろうか?勿論みんなで集まり論議するが、なかなかいい方法が見つからない。私はいつものように自分の祠で考え込む。ここは私の気の源というか、ここにいれば私は落ち着く。考え込むうちに夜になっていた。すると私の後ろで人の気配がする。

「亜樹か?夕飯はいらない・・・・少し考えさせてくれ。」

でも何も反応は無い。気を集中してみると亜樹の気ではない・・・これは・・・。これはもしかして・・・。私は振り返る。そこには人影。

「朱央様・・・。」

そこに立っていたのはある女性・・・。その顔はまさしく・・・玄武の姫君、近衛麻耶姫様。麻耶姫様は私の側に近寄ると座り頭を深々と下げる。

「麻耶姫様・・・。」

麻耶姫様は涙を流し私に詫びを入れる。

「申し訳ありません・・・。私のもう一つの姿・・・・麻沙耶が・・・。麻沙耶が・・・魔王、黒龍の封印を解いてしまいました・・・。私というものが側にいながら・・・。あの子の憎しみ悲しみの心が、私の力を超えてしまったようです・・・。」
「え?黒龍が復活したと?どうしてそのような・・・。」

麻耶姫様は詳しい経緯を話す。玄武に関する者麻沙耶君は黒龍の水晶玉に心の闇をぶつけたというのか?でもどうして麻耶姫様がここに?それを私は姫様に問う。

「それは・・・黒龍の力で、生の力の源である私を追い出したのです。ですからあの子の体には霊の力のみが残っています。今は何とか覚醒をしておりませんから、黒の勾玉のおかげで平静を保っておりますが、このまま黒龍の側にいると霊の力が覚醒を・・・。そうしないと四神が・・・四神が揃いません。私・・・私が責任を持って阻止します。ですので、朱央様が悩んでおられる聖水の件、私に任せていただけないでしょうか?」

麻耶姫様が?麻耶姫様がどうするというのだ?
でもしかし・・・。
黒龍が復活したとなると、早く紫苑君を黒龍の呪縛から解き放たないと・・・。紫苑君がいればきっと麻沙耶君は、こちらに付くに違いない。

私は麻耶姫様に聖水を託した。きっと麻耶姫様なら・・・玄武の姫君、麻耶姫様ならやり遂げてくださる。あの方の心は正義の心。何が起きようとも揺るがされない強い心をお持ちの方・・・。任せよう・・・。紫苑君の事も麻沙耶君の事も・・・。
(7)聖水

 最近麻沙耶の体調が思わしくないらしい。毎日僕は麻沙耶を迎えに行くんだけど、母親が出てきて心配そうに言うんだ。

「ごめんなさいね黒田君。麻沙耶ったら今朝も頭が痛いとか言って起きてこないのよ。熱測ってみたら微熱だし・・・。病院へ行くように行っても嫌がるのよ。受験生だというのに・・・だめねえ・・・。このままだとそのまま上の大学かしら・・・。ホントごめんなさい。毎日迎えにきてくれているのに・・・。」
「いえ。」

麻沙耶は僕の自宅へ遊びに来るたびに体調が悪くなっている。どうしてなんだろう・・・。僕は大丈夫なのに・・・。

僕は受験生のための特別授業を終えると家路に着く。もう夕方に近い。でも夏だからまだまだ明るいのだけれど・・・。途中一人になる道があるんだけど、そこに見慣れた人物が立っていた。

「麻沙耶・・・。体調・・・。」

麻沙耶はいつもの微笑で僕に近づいてくる。

「僕、大丈夫だよ。どうしても紫苑君の顔が見たくなって、家を抜け出してきたんだ。」

本当に麻沙耶のかわいい清々しい顔・・・。久しぶりに見たような気がする。

「のど渇いてない?今日ね、おいしい水をこっそり汲んできたんだ。すごくおいしい水。これを飲んだら僕元気になったんだ。最近紫苑君、元気が無いだろ?飲んでみたら?」
「麻沙耶。」

麻沙耶は飲んで飲んでと、僕に薦める。麻沙耶が薦めるものならきっと大丈夫だ・・・。僕は麻沙耶に薦めされるまま、その水を瓶からぐいっと飲み干した。麻沙耶は微笑んで僕を見つめている。

「どう?紫苑君。おいしいでしょ。・・・・・体の中から悪いものが出ていく感じかしら?」

え?声が・・・急に・・・。
ふと麻沙耶のほうを見る。するとさっきまで微笑んでいた麻沙耶が・・・。
誰?この女性は誰?

僕は体中に痛みを感じ崩れ落ちる。すると僕を暖かく包み込むような感覚・・・。こんな感覚ははじめてだ。そして体の痛みがふっと消える。
さっきの女性が僕を抱きしめ涙を流している。どうして泣くの?この女の人は誰?
(8)真実

「紫苑君、あなたは間違ったことをしているの。私の癒しの力と、先ほど飲んだ聖水・・・。あなたは黒龍の皇子じゃない。あなたは操られているだけ・・・。私があなたの苦しみを開放してあげる。だから安心して・・・。かわいそうな紫苑君・・・。」

僕は母さんにもこんなことされたことはなかった。これが本当の心の暖かさ?僕が黒龍の皇子じゃないってどういうこと?

「あなたは誰?」
「私は麻沙耶の中に住んでいたの。でも黒龍に追い出されてしまった。私は生の力の源・・・。私はあの子の本当の姿。あの子の前世、玄武に関わる者・・・。近衛麻耶。いい?本当の黒龍の惨さを見せてあげる。」

この女性は僕の額と彼女の額を合わせて映像を見せる。

僕が父と信じていた黒龍王・・・。三神を喰らい、魔王となった・・・。そして人々を苦しめ、町をむちゃくちゃにし、そして・・・そして・・・最後の一神まで喰らおうとした・・・。人々が死に、そして苦しむ姿・・・。本当に無残な姿・・・。そういうことを行っていたのは父と思っていた黒龍王。そしてその残忍な魔王を封じ込めたのは黄龍・・・。あれほど憎いと思っていた黄龍は・・・黄龍は人々を救った?そして現れた鳳凰・・・。黄龍と鳳凰は人々に平和をもたらしたのか?

 女性が額を離す。

「紫苑君・・・あなたは朱雀。本当は朱雀の姫君。まもなくあなたは覚醒するわ・・・。お願いがあるの・・・。麻沙耶を助けて。助けることが出来るのはあなただけ・・・。このままじゃ麻沙耶はだめになってしまうわ・・・。」
「だめになる?」
「ええ、あの子は今、霊の神として覚醒しようとしている。霊の神は何かご存知?霊の神は死の神、そして破壊の神・・・。魔王の黒龍に付いてしまったら・・・。あなたならわかるでしょ?」

わかる・・・。黒龍に死と破壊の神が付いてしまったら・・・この世は破滅する。死の世界になる・・・。でもどうしたら助けることが出来る?僕は女性に聞いてみる。

「あなたには麻沙耶に対する愛がある。あなたは姫君。あの子を想う事はおかしくない。あの子に愛情を・・・。精一杯の愛の力を注いであげて。そうしたらきっとあの子は元に戻るわ・・・。」
「でも・・・。」
「安心して、私が協力する。私も早くあの子の体に戻らないと・・・消滅してしまうのだから・・・。ほら・・・紫苑。あなたの体から朱雀のオーラが・・・。」

僕は赤いオーラに包まれる。そして僕の体の奥底には真っ赤な火の力・・・。これが朱雀の力なのか?

(9)朱雀覚醒

 気が付くと僕の後ろに同じ気を持った人が立つ。振り返るとそこには歴史の非常勤講師・・・確か源朱央先生。いつの間にここへきたのか?座り込んでいる僕に手を差し伸べて微笑む。

「覚醒したね・・・紫苑。」
「え?」
「私は朱雀の皇子。君の双子の兄だよ。私の妹、紫苑よ。」
「でも僕は男だよ?」
「今の姿は術によるもの。黒龍王が倒れれば、元の姿に戻ることが出来るという・・・。ほら、これは紫苑の母君から預かったもの・・・。そしてこれを・・・。」

兄という朱央先生は僕に赤紫の石と、赤勾玉を大事そうに胸元から取り出し、手渡す。そのうち赤い勾玉は眩く光ると宙に浮き、僕に吸収される。

「やはり紫苑が今回の朱雀に関するものであったか・・・。」
「朱雀に関するもの?」

朱雀に関するものとは四神の一つ朱雀を呼び出すことが出来るという者。魔王を倒すことが出来るのは黄龍のみ。黄龍を呼び出すためには四神の力が必要だという。その一神が僕なの?もちろん兄という朱央先生は頷く。そして僕にもう黒龍に近づくなというんだ。近づくと何をされるかわからないというんだけど・・・。

僕は今日から朱央先生の自宅、朱雀神社にお世話になることになった。
本当にこれでいいの?
黒龍の皇子として生きてきた僕は、本当にこれでいいの?
でも体の奥底から湧き出る力・・・。
これは龍族のものではない。それだけははっきりいえる。


四神降臨 復活編 第7章 救出 (1)黒龍

「何?紫苑が帰ってこないと!!!」
「はい・・・今魔獣に探させております・・・。もしかして紫苑は・・・。」

黒龍王が鎮座する間に現れる一体の魔獣。その魔獣は息絶え絶えで黒龍王の前に現れる。

「朱雀が・・・・。朱雀にかかわる者が・・・・現れました・・・・・・。」

そういうと息絶え、粉々に消え去る。黒龍王は床を強く叩き、いう。

「しまった!!!紫苑が覚醒したか!!!あれほど赤子の時に抹殺せよといったものを!!!」
「黒龍王様。しかし、玄武は黒龍の手の中に・・・。玄武に関わる者の体から『生』を追い出したではありませんか・・・。まもなく『霊』の神として覚醒するでしょう。」
「んん・・・そうだな・・・。魔獣に命じ、玄武をこちらに・・・。」

黒龍王は顔をしかめ考え込む。それを見た黒龍妃は怯える。黒龍王は魔獣を呼び、玄武を呼び出そうとする。この魔獣は紫苑に変化し、麻沙耶のいる近衛家に忍び込む。麻沙耶は自室のベッドで体の痛みに苦しんでいるのである。

「麻沙耶・・・。」

麻沙耶はその声に反応し、痛みに耐えながらも起き上がる。

「紫苑君・・・・?」

魔獣は麻沙耶に近づき、手を握り微笑む。

「麻沙耶・・・。苦しい?」
「どうしてここにいるの?」
「僕は麻沙耶が心配でたまらないから・・・。あのさ、麻沙耶を楽にしてあげるって母さんがいってたから・・・。迎えに来たんだ。さ、行こうよ。」

麻沙耶は頷き、着替え始める。そしてそっと自宅を抜け出した。麻沙耶はこの魔獣を紫苑と信じ、手をぎゅっと握って魔獣と共に暗い夜道を歩き出す。
(2)阻止

 黒龍の巣窟迄あと少しというところで麻沙耶は立ち止まる。そして前方を見つめた。そこには手を広げ、これより先に行かすまいとする女性の姿。

「麻沙耶・・・行っちゃだめ・・・・。行ったらあなたは・・・・破壊の神になってしまう。」
「え?誰なの?」

と麻沙耶は問いかける。

「麻沙耶!こんな女の言うこと聞く必要はない!さあいこ!」

魔獣は麻沙耶をぐいっと引っ張る。この力は尋常ではない。

「痛いよ!紫苑君!!!」
「いいから早く来い!!」
「辞めてよ!痛い!」

麻沙耶は力いっぱい魔獣の手を振り放した。するとまた前には人影が・・・。

「麻沙耶!行くな!!!僕はここにいる!そいつは僕じゃない!!!」

街頭の明かりに照らされて浮かび上がる紫苑の姿。麻沙耶は混乱し、その場に座り込む。その隙に女性が麻沙耶に抱きつく。

「だめよ、麻沙耶。麻沙耶は間違ったことをしているの。元の麻沙耶に戻って頂戴・・・。優しい麻沙耶に・・・。」

その女性は精一杯の癒しの力で麻沙耶の結界を張る。すると魔獣は元の姿に変化する。そして紫苑に襲い掛かる。

「紫龍!裏切ったな!!!」
「僕は黒龍の皇子じゃない!!!烈火!!!!」

紫苑の掌から、強烈な火が飛び出す。

「ぎゃ!!!!」

魔獣は火に包まれ、あっという間に灰になってしまったのだ。するとたくさんの魔獣が襲い掛かる。

「うわーーーーー!!!!」

と紫苑が叫ぶと、強烈な光りと共に紫苑は火に包まれ、襲い掛かる魔獣を次々と倒していった。

「麻沙耶、よく見なさい!あの魔獣は黒龍の手下なのよ!あなたもああいう者の手下になりたいの?!麻沙耶は平和が大好きなはずよ。私はあなたの中で共にずっと平和を願っていた。お願い、元に戻って・・・麻沙耶。紫苑はあなたのために戦っているのよ。朱雀に関わる者として・・・。あなたは玄武に関わる者・・・。他の青龍、白虎に関わる者と共に黒龍を倒して、平和を取り戻してちょうだい!」

麻沙耶は何も言わないままじっと紫苑を見つめていた。
(3)癒しの力

 紫苑は襲い掛かる魔獣をすべて倒し、荒い息づかいで膝を付く。麻沙耶は紫苑に詰め寄る。

「紫苑君!!!どうしてここまで僕のために・・・。」

紫苑は痛みに耐えながらも微笑む。

「それは僕は麻沙耶が好きだから・・・。麻沙耶を愛しているから・・・。」
「でも僕たちは男同士だよ。そんなの無理だ。」
「無理じゃない・・・。僕は男なんかじゃない。本当は女らしい・・・。黒龍の術で・・・男に変えられ利用されていたんだ。麻沙耶・・・よかった無事で・・・。」

そういうと紫苑は気を失う。

「紫苑!!!」

麻沙耶は紫苑を抱きしめ泣き叫ぶと、玄武のオーラに包まれるのである。すると見る見るうちに紫苑の体にあった傷が消えていく。

「え?」
「麻沙耶、それがあなたの玄武の力・・・。玄武の癒しの力よ。よかった・・・。破壊の力の覚醒を阻止できた・・・。」
「ところであなたは・・・?」
「私は近衛麻耶。もう一人のあなたよ。ずっとあなたの中で生きてきた。そしてあなたを支えてきた。あなたがいくらいじめられても我慢できたのは私がいたからかもしれないわね。あなたがなよなよしているだけの男の子だったら、もうこの世にはいなかったかもしれないわね・・・。麻沙耶。あなたは他の四神の仲間と手をとり、世を乱す黒龍を倒してちょうだい。もうあなたは弱くない。もともとあなたは弱くなんかなかった。私があなたの中にずっといる限り・・・。」

すると女性の姿は麻沙耶の体内へ消える。

「んん・・・。」

紫苑が目を覚まし、起き上がる。

「おはよう紫苑君。って言ってもまだ夜だけどね。」

紫苑はその言葉に噴出す。

「麻沙耶。僕は朱央先生と暮らす。先生は僕の兄さんなんだ。僕はもう黒龍と縁を切る。だから麻沙耶。もう黒龍のところには行かないよね。約束してくれる?」

麻沙耶は微笑む。

「うん。僕はもう行かないよ。僕は紫苑君が大好きだから。ずっと一緒にいたいから。」

二人はキスを交わす。約束のキスを・・・。
第8章 覚醒 (1)源〜みなもと

 あの日からいつものメンバーに紫苑と麻沙耶君が加わった。これで四神に関わる者が揃ったということだ。私はこれからこの4人を導かないといけない。これから黒龍はどのように我らに挑むというのか?前回、黒龍は四神のうち三神を喰らい魔王となった。今回はどう動くというのか?どんな力があるというのか・・・。

「あの・・・僕の情報が役に立つかわからないけれど・・・。」

と、紫苑が私に言う。紫苑は私の住む神社の厄介になっている。そして紫苑を完全浄化するために、祠で寝起きしている。ずいぶん表情も豊かになり、朱雀の気も増して来ている。まだ朱雀変化は出来ないが、時間の問題であると思う。紫苑の情報・・・黒龍の事か?

「僕の育ての母、黒龍妃は黒龍王復活前に言っていたことを思い出して・・・。」
「言っていたこと?」
「日本海溝周辺で起こっている不明事件・・・俺は黒龍王復活のためであると・・・。」

今まで日本海溝周辺で起こった行方不明事件のリストを見てみる。天然ガス、原油などを積んだタンカー、貨物輸送機、米軍の最新ステルス戦闘機、そして核燃料を積んだ米軍潜水艦・・・。もしかしてそれらを吸収したのか?天変地異との関係は?どうして黒龍は神獣から魔獣となったのだ?疑問ばかり浮かんでくる。

「兄さん、もし、核を力の源にしたらどうなるの?核って相当な力があるんでしょ?」
「んん・・・。専門外でよくわからないが・・・。大きな街一つは吹っ飛ぶだろうね・・・。それ以上かもしれないな。そうなると黄龍の力で封印できるかどうか・・・。黄龍の力がどれほどのものかは出現しないとわからない。前出現時は黒龍を簡単に封印していたが・・・。」
「どうやって黄龍が出現するの?四神が集まっただけじゃだめなんでしょ?」
「そうだね。あの時は青龍の皇子であった龍哉様が生贄となり、黄龍を降臨させた。今回もそういうパターンになるのだと思う。」

紫苑は難しそうな顔をして考え込む。本当にこの私もどのような闘いになるのか想像が出来ない。
(2)ある人

 紫苑は朱雀に覚醒してからというもの学校には行っていない。というか、学校の生徒たちは私たち以外紫苑の存在を忘れ去っていた。もっぱらいつものメンバーが集まるのはこの朱雀神社の祠となっている。

紫苑は神職の衣に身を包み、笑顔でメンバーを受け入れる。特に麻沙耶君は紫苑と会うために毎日のように訪れているのだ。何をしているかって?もちろん四神についての話もするが、関するもの4人のうち、3人は受験生だろ?勉強道具を広げて受験勉強。特にもうすぐ期末試験になるのだから・・・。

 ある休日、麻沙耶君がふと話をする。
「最近、僕の中のもう一人と向かい合って話をするんだ。色々昔の事について聞いたよ。以前はもう一人の自分は僕の体から出てくることはなかったんだけど、最近は僕の意志でも出て来てくれることが出来るようになったんだ。昨日だって夜中話した。どうしても彼女はある人に伝えたいことがあるんだって・・・。」

はじめ私は、麻沙耶君は何を言っているのかと理解できなかった。もう一人の自分?彼女?話を聞いているうちにフッと気を感じ気がつく。そう麻耶姫の事であるのだと。

「そういえば、俺、よく夢を見るよ。ある陰陽師の夢を・・・。色々その人は俺に秘術を教えてくれた。そして秘術の書かれた書物のありかも教えてくれたんだ。安倍家筆頭の父さんでさえ知らなかった書物の存在。それを読み返してみたんだけど・・・。そして一度試してみたんだ。」

聖斗君は秘術を使って前世の自分を呼び出したらしい。そして自分はこのあとどうすればいいのかなどを聞いたらしいのだ。前世とは安倍西斗・・・。まさしく白虎に関わる者。安倍西斗もある方に会いたいと最後に言い残して体内へ消えていったという。

ある人とは・・・?たぶん龍哉様ではないか?

(3) 再会

 「あの・・・もう一人の自分が出たいって言うんだけど・・・。」

と、麻沙耶君が言った。麻沙耶君は気を集中し、フウッと息を吐く。すると麻沙耶君の体から人影が出てくる。その人影は麻沙耶君の横に座り、お辞儀をする。その人とは麻耶姫様である。麻耶姫様は竜哉様をじっと見つめている。竜哉様はこの現象に驚いた様子で、麻耶姫を見つめていた。すると麻耶姫様は口を開く。

「お久しぶりでございます。龍哉様。」

麻耶姫様は微笑む。

「僕は龍哉じゃない。竜哉なんだけど・・・。」

麻耶姫様は竜哉様の目の前に座りなおす。

「竜哉君、あなたは気がついているはずです。あなたの中のもう一人の自分を・・・。そして力を・・・。認めたくないだけではなくて?」
「え?」

そしてフッと麻耶姫の横に現れる陰陽師の姿。その姿はまさしく白虎に関わる者・安倍西斗である。祠の端に控えていた白狼はフッと立ち上がり、安倍西斗の前に平伏す。西斗は白狼を撫で、微笑む。

「お久しぶりでございます。とてもお会いしとうございました。後陽成院様。そして麻耶姫様。」

私もその輪に加わる。先の四神に関わる者の再会というべきか・・・。すると竜哉様の表情が柔らかになる。これはまさしく龍哉様がよくしておられた表情。やさしく微笑む表情は我等をよく和ませて頂いた。

「皆のもの、久しぶりですね。朱央・・・。お前はここまでよく四神に関わるものを集めてくれた。この竜哉という少年を通して見せていただいたよ。そして龍磨に白狼、よく復活を遂げた。さて、黒龍のことだけれども・・・。ここのところおとなしいと思われていたが、徐々にではあるが、魔の気が増加しているのがわかるか?朱央・・・。」

そういえばそうである。黒龍の気というよりも魔族の気がこの日本を包み込んで来ている。

「そしてここのところの天変地異・・・。原因はわかっている。それは清い気で包まれていたこの日本に魔の気が増大してきたことによる歪み・・・。魔の気を払拭さえすれば、収まると思うのだが。」

龍哉様は何もかも知っているというのか?
(4) 戸惑い

 龍哉様は色々と思うことを話してくださった。そのすべてがうなずける内容であった。そしてその内容は今まで私が疑問に思っていたことすべて納得させる内容。ただ一つだけ、なぜ黒龍は神獣から魔獣となったのか、それだけは解決できなかったのだが・・・。

「あと青龍だけだね、覚醒していないのは・・・・。しかしこの青龍もいずれ覚醒する。竜哉という少年は自分の立場にいまだ戸惑っている。自分の立場がはっきりわかったときに一気に覚醒するであろう。そして青龍が覚醒した時に四神が降臨する。そして四神に関わる者のいずれかが生贄となり、黄龍を降臨させるだろう。それが誰であるかまではこの私にはわからないが・・・。」

ということは先の戦いのように青龍が生贄になるとは限らないというのか?
すると生贄は誰なのであろうか?
そして竜哉様が戸惑っていると?

いつの間にか麻耶姫様も西斗も消え、竜哉様も普段の表情になっていた。もちろん竜哉様に今話していたことの記憶はほとんどなかった。

 四神のうち、朱雀、白虎、玄武は覚醒しているという。後は青龍。先の戦いでもそうであった。最後の覚醒したのは青龍である龍哉様。最後の青龍が覚醒しない限り、四神は降臨しない。四神が降臨しない限り、黄龍は降臨しないのだ。竜哉様、何を戸惑っておられるのか?あなたの力が覚醒しない限り、この世界は・・・。この世界はどうなるのかお分かりにならないのか?
第9章 復讐 (1) 四魔獣

 ここのところ竜哉様は塞ぎがちである。やはり体内に眠る青龍の力に戸惑っておられるのであろうか。もちろん徐々にではあるが竜哉様の体内奥底に眠っている青龍の気は増してきているのは確かである。あとは竜哉様の気持ちによるものと考えてもいいものだろうか。
 最近また全国的に地震が頻発してきた。相当被害も出て来ている。先日現れた先の青龍に関する者の龍哉様がいっておられたこと、善と悪の歪みがさらに増して来ているのであろうか。

 夏休みに入り、勉強会と称して四神に関わる者たちが、ここ朱雀神社に集まっている。もちろん勉強もお互い教えあっている。私の妹であり、朱雀にかかわるものである紫苑はずいぶんと黒龍の気が浄化され、以前まで強張っていた表情も柔らかくなり、私の信仰者たちとも仲良くやってくれている。

「兄さん、やはり最近の地震って、歪みによるものなの?最近夜うなされるんだ。清い気がここ京都に追い詰められてきているんだ。周りは邪気ばかり。どうなるの?どうすればいいの?」
「んん・・・・。実を言うと私にもはっきりとはわからないんだ。もちろん魔族の気は増して来ている。そしてここのところ魔族が徘徊しているのもわかる。先日も散歩の折にこの朱雀の町にも現れるようになった。同じようなことを青龍の町に住む龍磨、白虎の町に住む白狼からも報告を受けた。今のところまだ弱い魔族の徘徊であるが・・・。そうだ、紫苑。黒龍のもとにはどのような魔獣がいたのだ?」
「よくわからない。いつも僕が見るのは黒い陰なんだ。そうだ、強烈な気を持つ三頭の魔獣がいた。姿ははっきりとわからないんだけど・・・。」

この仕事をして最近耳にした事がある。それは魔族にも四神のようなものがあるということ。その一角が黒龍と・・・。裏四神というべきか。ということは・・・?裏黄龍もあるというのか?そこまではまだ未確認である。


(2) 偵察

 夜が更け、紫苑に就寝の挨拶をするとふと異様な気を感じる。もちろん眠ろうとしていた紫苑も感じ、布団から飛び起きる。

「兄さん何?!」
「魔獣だ。それも相当な気を持っている。朱雀神社の結界まで入り込んで来ているのだからな。まもなく次元が変わる・・・。」

私の予感したとおり、耳鳴りがすると空気が張り詰める。次元が変わったのだ。私たちは表に出て様子を伺う。朱雀神社の鳥居の上に眩い赤い眼を持つ黒い陰。姿かたちはまるで鳥のよう。朱雀?いや違う。朱雀の長い飾り尾がない。鶏冠も。しいて言えば、鷹か?その魔獣は人型に変化し、鳥居の上に座り、異様な微笑。

「何者!」
「我は四魔獣の一角、黒鷹。」

私は即朱雀に変化し、朱雀の気を放つ。それに負けじとその魔獣(というより魔鳥か?)も邪悪な気を放つ。陰と陽の気がぶつかり合い、爆風が起こる。

「今夜は挨拶に伺ったまでのこと。まだ四神に関わる者、紫苑は完全覚醒してないと見た。黒龍殿はお喜びになる。なぜって?今の力で我に勝てると思っているのか?」

魔獣は大きな声で笑うと、姿を消す。と、同時にもとの次元に変わる。

夜空を見上げると満天の星空。そして南の空には輝く赤い星。そして新月に近いのか、三日月・・・。それも細い・・・細い三日月の夜であった。何も出来なかったからか紫苑は立ち尽くしていた。

「僕は・・・僕は・・・。」
「紫苑・・・大丈夫だ・・・必ず・・・必ず完全覚醒する。」
「本当に?」
「ああ、紫苑の気を見るとわかるよ。あともう少し・・・黒龍の気が完全に抜け切れば・・・そうすればきっと完全覚醒し、私のように変化できるはず。」

紫苑は苦笑して朱雀の祠へ戻っていった。
(3)策

 やはり他の関わる者のもとにも同じような魔獣が訪れたようだ。特に襲撃するわけでもなく、ただ単に睨みつけて消え去るという。そしてさらに日本各地の地震が頻発になり、日本国中の通常生活は困難になって来ている。日本経済も落ち込み、私の所属している部署からもどうなっているのかと催促されるのである。

 清々しい夏の日差しに包まれていたこの京都も最近曇りがちになり、雷雨を伴った豪雨に見舞われることも多くなった。人々不安も増大し、犯罪なども増えていく。もうこのままでは美しい日本という国は壊滅してしまう。このまま黒龍をはじめとした魔族を放置できない。

「ねえ、兄さん。この僕が黒龍をおびき寄せようか?」

と紫苑が言うのだが、危険すぎる。紫苑は黒龍の側にいたのだ。今段階では四魔獣の一角さえ倒すことは出来ないであろう。この私でさえ無理かもしれないのだ。

「でもさあ、兄さん。いつまでもあっちが仕掛けてくるのを待っていたら、この国はだめになるよ。もっと被害が拡大するよ。それでなくてもこの国は麻痺してきているのに・・・。任せておいてよ。僕は黒龍の巣窟のことは詳しいよ。ずっとそこで住んでいたんだから。」
「それはそうだけど・・・。紫苑。お前にはまだ無理だ。」
「でも!兄さん!いつまでもあっちが仕掛けてくるのを待っていていいのか?僕が何とか囮になるよ。早く魔族の計画を食い止めないといけないんだよ!!!兄さん!何とかなるよ。僕には仲間がいるから・・・。麻沙耶も、九条君も、安倍君も・・・。龍磨や白狼。そして兄さん・・・。だから・・・。いいでしょ?僕は早く元の姿に戻りたいんだ。そしてこの美しい国を元通りにしたいんだ!」

しょうがない・・・。紫苑に任せるしかない・・・。

「紫苑・・・これを持って行きなさい・・・。」

私は紫苑に私の朱雀の印を手渡した。

「兄さん・・・これ・・・。」
「いいんだ。きっとこの印が紫苑を守ってくれるから・・・。この印は私の分身。私の力の一部が吹き込まれている。完全に覚醒していない紫苑でも、これさえあれば、何とかなると思うから・・・。」

紫苑は私の朱雀の印をぐっと握り締め、紫苑の朱雀の印とともに胸元にしまいこんだ。
(4)青龍の夢の中で・・・

 ある日僕、九条竜哉は夢を見る。昔の禁色(天皇・上皇または東宮のみが着用できる色)の装束を着た一人の男が僕に問いかける。

「なぜお前はわからないのか?戸惑っているのか?」

僕にはその男が何を言っているのかわからなかった。僕は何に戸惑っているのか・・・。

「お前は青龍。青龍の血が流れているのだ。そして青龍の青の勾玉がお前を青龍に関する者として認めた。お前には力がある。水、そして雷雲を操る力を・・・。」

僕が青龍?僕にはそんな力はない。ただの人間で・・・。

「お前の体には鱗の様なあざがあるね?それは青龍のしるし・・・。以前に比べ、あざが目立ってきたと思うが・・・。」

僕は目が覚め、鱗状のあざがある腕を見てみる。確かに以前に比べ、鮮やかになっている。そして広がっている・・・。

「竜哉様・・・。」

いつの間にきたのか?龍磨。僕の守護龍と言う男・・・。

「竜哉様の気の乱れを感じましたのでこちらへ・・・。」
「なあ、龍磨。僕って何をすればいいんだろう。朱央先生に青龍に関わる者として扱われているんだけど・・・。本当に僕に青龍の力ってあるんだろうか?」
「もちろんです。自分の力を信じてください。竜哉様はまさしく先代の青龍に関わる者龍哉様の生まれ変わり・・・体の中に龍哉様の存在がある限り、力はございます。」

どうしたら覚醒するというんだろう。
最近、夢の中で出てくる龍哉という男。
日に日に鮮やかになる鱗のようなあざ。
でも何とか感じる・・・僕の体の中にはとてつもない力がある。
それは何なのか・・・。
もしかしてこれが戸惑いというものなのか?
龍哉という男の言う言葉を信じたらいいのか?
本当にわからないよ。
青龍、そして覚醒がどういうものかということを。
(5)白虎の苦悩

「なあ、白狼。この前の魔獣、どう思う?」
と俺は白虎を守護するもの「大神・白狼」に問いかけてみる。

 俺は昔から陰陽師で有名な安倍家の嫡男。有名な安倍清明は俺の先祖。父は陰陽師。普段は国家公務員として文科省の職員をしているんだけど、何か不可思議なことが起きると陰陽師として密かに活動する。俺はもちろん小さい頃から父に一子相伝の陰陽師の秘術を学び、ある程度の事は出来る。

 先日現れた黒い狼の様な魔獣・・・。俺はいろんな秘術を使って立ち向かったのだけれども、ことごとく破られ、自分に自信をなくした。

「聖斗様。上辺だけの技では通用しないといったはずです。体の奥底に眠る白虎の力を引き出さなければ・・・。」
「白虎の力?」
「白虎は大地と風を操る力。疾風、竜巻・・・。色々とございます。」
「どのようにすればそのような力が?」
「それは自分を信じること・・・。そうすればきっと白虎の力がみなぎってくるはずです。先日の魔獣はそこらにうようよしているものとは格が違う。半端な力では通用しないということでしょうか?」

なんとなくわかるよ。なんとなくね。そこらにうようよしている魔獣くらいなら普通の陰陽師の術で何とかなる。でも先日の魔獣の力は魔獣が言っていたとおり四魔獣の一角にふさわしい力を持っていた。四魔獣の力を合わせると最強の魔獣が降臨するといっていた。まだまだ俺の力では四魔獣の一角さえ倒せないだろう。四神が降臨して黄龍が降臨したとしても本当に勝てるのか?本当に俺は白虎に関する者としてふさわしいのか?

「聖斗様。何を戸惑っておられます。あなたの体内におられます先代の白虎に関するもの、西斗様がきっとお力を引き出してくださいます。」

俺は自宅にある神棚に榊を奉納し、気を集中する。まもなく戦いが始まるように感じる。そのときが来るまで俺の気を最高の状態にしなければならない。どこまで白虎の力を引き出すことが出来るかわからないが・・・・。
(6)囮

 今日は新月の夜。新月の言うものは魔族が一番活発といわれている。満月が陽で新月が陰。

僕は兄さんとともに朱雀神社を出て黒龍のいる巣窟へ向かう。示し合わせたわけではないが、自然と集まる四神に関わる者たち。特に玄武に関わる者である麻沙耶は僕の顔をみて心配そうに見つめてくれている。白虎に関わる者である安倍君は少しでも魔族から僕を守ろうと守護札を僕に分けてくれた。僕はその守護札を胸元にしのばせ、黒龍の住む漆黒の森へ入っていく。

僕は今までこの森奥深くの古い屋敷に住んでいた。昼間でも暗いこの森は、新月の真っ暗い夜はさらに気持ち悪いものがある。

「紫苑君・・・本当に大丈夫?」

と、麻沙耶が僕の腕をつかんで言うんだ。もちろん僕は微笑んで、麻沙耶の手を離す。この森をよく知っている僕以外、誰が囮になり黒龍を誘き寄せることが出来るのか?

「紫苑様これを・・・。これは青龍族の聖水でございます。何かあればこれを開け、魔族にかけてください。時間稼ぎにはなると思います。あと一口お飲みください。」
「ありがとう。龍磨。」

龍磨はわざわざ青龍国からこの聖水をもって来てくれたらしい。この聖水のおかげで僕は黒龍の呪縛から開放された。僕は龍魔の言うとおり、一口聖水を口に含み、気合を入れる。やはり聖水の力というものはすごい。最後までしつこく残っていた黒流の邪気が一気に払拭され、僕の朱雀の力が解放されたようだ。もちろん他の四神に関わる者たちも僕と同じように一口聖水を口に含む。

「兄さん、行って来ます。」
「んん・・・。無茶はするなよ。」

兄さんは僕をぐっと抱きしめ、送り出した。
(7)復讐

 僕はとてつもなく不気味な漆黒の森の中へ足を踏み入れる。明かりがなければ何も見えない深い森。よくこのようなところで平気に暮らしていたものだ。僕は指先から炎を出し、明かり代わりにする。やはり周りには低俗な魔族がうようよしているのがわかる。時折不気味な笑い声で僕の事を裏切り者と罵る。
なぜ襲ってこないのだ?それどころかこの僕を誘導するように道を開けるんだ。森の奥に明かりが見える。あれが僕の住んでいた屋敷だ。そして僕は何かに導かれるように屋敷にある儀式の間へ。ここに大抵黒龍はいる。

「よく来たな、紫龍。いや、朱雀に関するもの紫苑。」

暗い部屋の奥から黒龍王の人型がでてきた。そして側には僕の育ての母・・・。僕は覚えている。小さい頃一時的であったが、母の表情をしていた育ての母・・・。もちろん僕を利用するために育てていたのではないというのはわかる。僕を可愛がり、大切にしてくれた。

「父さん、いえ、黒龍王。この僕を元の姿に戻してください。あなたしか戻せないと聞きました。お願いします。」

黒龍王は僕に近づき、僕の胸ぐらをつかむ。

「この裏切り者め・・・。ここまで育ててやったものを・・・。我らの計画は台無しだ・・・。人間どもに復讐をしようとしているというのに・・・。」
「復讐?」
「お前を喰らう前に、言っておいてやる。我らがどうして神獣から魔獣となったのかを・・・。」

黒龍王はさらに僕の胸ぐらを締め上げ、話を続ける。

「人間どもは我らの神聖な領域を荒らし、何も穢れを知らない我が子たちを化け物のように皆殺しにした。所用で国を離れていた私と妃は残忍な光景を見て意を決した。我らはもともと海の神。そして闇の神。日の神があり闇の神がある。闇がなければ日はない。日の神である青龍、そして闇の神である黒龍。黒いこの鱗は化け物にしか見えないかもしれないが、何も我らは人間どもに悪いことなどしてはいなかった。我らは復讐のために魔族に寝返った。お前は知らないであろうが、魔族へ寝返ったことによる全龍族を巻き込んだ争い。黒龍族はあの時に壊滅したのだ。その生き残りが私たち。そしてその時から完全に我らは魔族となった。わからないであろうな・・・お前には。朱雀の姫皇子であるお前にはな・・・。」

 そうか・・・人間との間にそのようなことがあったのか・・・。だからってこの美しい日本を壊滅状態にするなど、許せない!

黒龍王は、僕の首を締め上げる。

「死ね!紫苑。お前が死ねば四神は降臨せず、そして黄龍は現れん!!!」

僕は意識が朦朧となる。僕の胸元にしまっていた聖水の入った器、聖斗君からもらった守護札、そして兄さんと僕の朱雀の印が黒龍王の足元に落ちる。

ああもうだめだ!僕は黒龍王に食われてしまうのか???
(8)朱雀変化

 黒龍王に首を絞められ僕の意識は遠のいていく。僕の胸元にしまっていた大切なものすべてが黒龍王の足元に落ち、聖水の入った器は割れ、聖水は飛び散った。もうだめだと思った瞬間黒龍王の手が緩んだ。

「ぎゃー!!!!」

守護札、朱雀の印が聖水に反応し、とてつもない陽の気が僕の周りを包み込んだ。そして黒龍王はもがき苦しんでいる。僕は大切な朱雀の印を拾い、胸元に大切にしまう。

「おのれ!紫苑!!!!」

黒龍王はもがきながら人型から黒龍に変化した。黒い鱗の龍に青龍の青い気が包み込んでいる。黒龍王の気は一時的だろうけれど弱まった。黒龍王は僕の腕を掴みにらみつける。

「紫苑!お前を喰わせろ!!!」
「い、嫌だ!!!」

僕はいつの間にか真っ赤な朱雀のオーラに包まれ、身が軽くなった。そして僕の体は宙に浮いている。そして飛び散る炎の羽。長い炎の飾り尾。そう僕は朱雀に変化したんだ。

炎の羽は屋敷に火をつける。僕に襲い掛かる魔獣たちを焼き尽くし、僕は天高く舞い上がった。それを追いかけるように先日朱雀神社に現れた黒い鷹。火の着いた漆黒の森の上で、にらみ合いが続く。仕掛けてきたのは黒鷹。完全に覚醒したこの僕に襲い掛かる。もちろん僕は完全覚醒した上に、ここに来る前に飲んだ聖水、そして兄さんの力の一部が吹き込まれた朱雀の印があったからか、力の差は歴然だった。

「ギャ〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!」

僕の放った烈火が見事に命中し、黒鷹は炎に包まれ落下していったんだ。その炎は漆黒の森にさらに引火。大火事となった。遠くで聞こえる消防車のサイレンの音。僕は急いでもとの姿へ戻り、兄さんたちの待つ森の入り口へたどり着いた。この炎の中、黒龍王はどうなったのか?これくらいで倒れるような奴ではないのはわかっている。
第10章 五神降臨(1)襲撃

 完全覚醒し、朱雀の姿から人型に変わり戻ってきた紫苑。その途端に次元が変わる。来る!とてつもない邪気が。

「兄さん!来るよ!四魔獣の一角は倒した!あと三魔獣!!!」

まず現れたのは黒狼と黒蛇。我らに向かって襲い掛かる。紫苑、龍磨、白狼、そして私は変化し、身構える。聖斗君は札に呪文をかけ、白狼に貼り付け、呪文を唱える。白狼が黒狼に向かい飛び掛ると同時に竜巻が現れる。

「行け!白狼!疾風!!!」

竜巻にさらに白虎の技である疾風が加わり、竜巻の中は激しくなる。竜巻の中では白狼と黒狼が戦っている。私たちはもう一角の黒蛇と対決。麻沙耶君は竜哉様に結界を張り、襲い掛かる低俗魔獣を追い払う。竜哉様はおどおどしながら私たちの闘いを見つめていた。未だ躊躇っておいでか?あと竜哉様が覚醒すれば!四神が降臨する!

「みんな下がって!!!!」

と聖斗君が叫び、呪文を唱え、指先を地面につける。すると地面は地響きをし、地割れをするのだ。油断をした魔獣たちはその地割れの中に落ち込んでいく。もちろん黒蛇も黒狼も・・・。白狼は???

「封!」

聖斗君のその言葉で地割れは元の状態に戻ろうとしたそのとき、地割れの隙間から白狼のみが飛び出してきた。これが白虎の力か?まさしく地と風の神。これで四魔獣のうち三魔獣倒したことになる。
(2)黒龍王魔王変化

 四魔獣のうち三魔獣を倒した。残るはあと一魔獣の黒龍。黒流の棲家である漆黒の森は紫苑が放った朱雀の炎によって燃え上がった。漆黒の闇に燃え上がる森は夜空を真っ赤に染める。

「あ、雨・・・。」

と紫苑が言う。ポツポツと降り始めた雨は次第に雷を伴った豪雨になる。その豪雨は漆黒の森の火を消していく。

ああ強烈な邪気。これは黒龍によるもの。漆黒の森の中心部よりすさまじい邪気が襲い掛かってくる。私たちは身構える。来るぞ!黒龍!!!

「来た!兄さん!」

漆黒のオーラが漆黒の森を覆いつくすと目の前にはとてつもない大きさの赤い眼をした魔物が仁王立ちしている。まさしく魔王変化した黒龍。荒い息と陰の気を放ちながらこちらを睨みつける。

 我ら四神のうち完全覚醒したのは三神。残るは青龍。私は振り返り竜哉様のほうを見る。竜哉様は突然現れた黒龍の姿に驚いているのがわかる。

「龍磨!竜哉様をお守りせよ!今の段階では無理だ!」
「は!」

龍磨は守護龍変化し、竜哉様の前に立ち守りを固める。

『ふふふふ・・・・・・・・。』

不気味な声で笑う黒龍。

『あの時と同様、まだ青龍は覚醒していないのか・・・・。それなら都合がいい・・・。』

まさしくそうだ!まだ竜哉様は覚醒していない。あと一歩だというのに・・・。早く黄龍を降臨させないと!!!!
(3)青龍覚醒

 『青龍がまだ覚醒していないというのであれば都合がいい。さてどいつからやってやろうか・・・。なあ紫苑。この裏切り者め!!!』

黒龍は紫苑めがけて邪気を放つ。不意をつかれた紫苑は変化する暇もなく吹き飛ばされる。

「紫苑君!!!」

麻沙耶君が紫苑のもとへ走り、衝撃で気を失った紫苑を抱き上げる。私は朱雀に変化し、最大限の結界を張る。

「紫苑君!紫苑君!」

麻沙耶君は紫苑を抱きしめて癒しの力を放つ。そして紫苑は気がつく。

「ありがとう麻沙耶・・・。」

こうしている間も黒龍はとてつもない邪気を我らにぶつけてくる。何とか私と聖斗君の結界ではねのけていても限界がある。徐々に薄まる結界。

「竜哉様!自分に自信を!!!自信を持ってください!!!竜哉様!!!」

守護龍、龍磨が黒龍の邪気を払いながら竜哉様に向かって叫んでいる。すると皆も竜哉様に声をかけるのだ。

「九条!何をしている!助けてくれ!このままでは俺たちの結界が!!!」
「そうだよ!安倍君のいうとおりだよ!九条君。癒しの力しかない僕も結界を張っているんだ。このままではだめだ!!」
「いつまでためらっているの!!!僕はもとの姿に戻りたいだけじゃない!この美しい日本を守りたい!そしてこの清々しい世界で一人の人間として生きたいんだ!!!いいのか!いつまでも漆黒の闇に覆われる世界で!!!」

座り込んでいた竜哉様がすっと立ち上がり、仁王立ちしている龍磨の前に立つ。

「そんなの嫌だ!!!!僕は平和が好きなんだ。この美しい日本が好きなんだ!!!魔獣になんか好き勝手にさせない!!!」

竜哉様は吹っ切れたのか、強烈な青龍のオーラに包まれ覚醒を果たす。さすが四神の筆頭青龍のオーラはすさまじい。劣勢に思われていた我らの力が増大する。怯んだ黒龍は青龍の聖なる気を受け、体制を崩す。これで四神が揃った。四神に関する者すべてが覚醒を果たしたのだ。
(4)四神降臨

 四神に関する者すべてが完全覚醒した。四神に関する者すべての体が眩い光に包まれる。青龍は青、朱雀は赤、白虎は白、玄武は緑の光。ああこれで四神が降臨する。体制を崩した黒龍は立ち上がり、四神に関するものに向かって襲い掛かる。

「白狼!龍磨!!!四神に関するものを守護せよ!!!」

我ら三体は変化し、四神に関する者の前に立ち、時間稼ぎをする。もちろん我らの力でかなう相手ではない。特に今回、黒龍は核をはじめとしたエネルギーを吸収し、力を増大させた。本当に時間稼ぎにしかならないだろう。そして我らの命の保障もない。しかし我らが怯んでいる場合ではない。我らの命など惜しくはない。

さすがに黒龍の力は凄まじい。我らの力など、赤子同然ですぐに吹き飛ばされる。白狼、龍磨は虫の息。さすがに朱雀の皇子である私も薄れ行く意識の中で私は四神が降臨する瞬間を目撃することが出来た。

 四神に関わる者の光が柱となり、青龍は東、朱雀は南、白虎は西、玄武は北の方向へ飛び散る。そして眩い光りが漆黒の闇を照らし、そして降臨する四神。まさしく以前目撃した四神・・・。四方を四神が取り囲み、黒龍を睨みつける。しかし余裕の表情の黒龍。なぜだ?なぜそんなに余裕な表情でいることが出来るのか?私は意識を失い倒れこんだ。
(5)黄龍降臨

 四神が降臨した。はじめてみる四神。これからどうすればいいの?僕は兄さんに聞こうとした。しかし兄さんは倒れこんでいた。ピクリともしない。

「兄さん!!!」

僕は倒れこんだ兄さんの元へ駆け寄ろうとした。すると僕の体が光る。

『紫苑、お前は黄龍降臨の生贄に選ばれた。さあ!呪文を唱えよ!』

四神のうちの一神『朱雀』が僕に話しかける。この僕が生贄?もちろん生贄についてのレクチャーを兄さんに受けた。もちろん呪文も・・・。生贄になるってどういうこと?もしかしてこのままこの世からいなくなるの?僕は不安でたまらなかった。すると僕の手を誰かが握った。

「紫苑君。僕も一緒に生贄になるよ。ずっと一緒だよって約束しただろ?」
「麻沙耶・・・。」

そして安倍君も九条君も僕のところにやって来て僕の手を握り締める。

「朱雀!僕ら4人は一心同体だ!一人欠けるなんて考えられない。僕たち4人で生贄になるよ!朱雀!そして僕の神、青龍!」

九条君が朱雀と青龍へ向かい叫んだんだ。

「そうさ!白虎!俺も九条と同じ考えだ。4人で力を合わせて黒龍を倒す。そしてもとの美しい日本に戻すんだ!!!」
「いいよね、玄武。4人の力を合わせて最強の黄龍を降臨させようよ!」
「みんな・・・。いいよね、朱雀・・・。」

四神すべてが頷き、4人すべての体が光り輝く。そして足元には五行星が浮かび上がり、僕たち4人で一緒に呪文を唱える。

『・・・・我ら四神に関わる者が生贄となり御願い奉る!黄龍降臨!』

僕ら4人の体がさらに光り、眩い光が漆黒の闇を照らす・・・。
(6)完全消滅

 私は眩い光で目が覚めた。何とか命は助かったようだ。白狼も龍磨も荒い息をしながら立ち上がり、黄龍降臨に立ち会う。そういえば4人の姿がない。誰が生贄になったというのだ?もしかして4人で生贄になったのか?

 眩い光が消え、現れる黄龍。まさしく黄龍が降臨した。さすが神獣の筆頭、黄龍の気は凄まじく、陽の気が充満する。特に前回に比べて、黄龍の力が増大しているのがわかる。やはり4人が生贄となったからなのか?

『深海深く封印したはずの黒龍よ。またお前は人間に復讐をしようとしているのか?』
『ふ、今の私は以前の私ではない。黄龍よ。私はたくさんの力をこの体に蓄えた。にっくき人間どもを苦しめるのが私の願い。穢れも知らない私の子たちを皆殺しにした人間への復讐。同じ目に遭えばいいのだ。ちっぽけな人間どもは・・・。』
『人間の皆がそういうものではない。一部に過ぎない。人間は弱い。弱いからこそ恐怖に襲われると何をしでかすかわからない動物ではある。しかし人間には愛がある。愛は恐怖に勝つ。お前にもあったはず。子を想う愛。家族を想う愛。そして一族を想う愛!』
『愛などもうどうでも良い!』
『まだわからぬか!黒龍よ!わかった。もう二度と黒龍族に機会は与えぬ。我は黒龍を完全封印する!もう復活などありえない。この世から黒龍を完全消滅させる!!!』

黄龍はさらに力を増大させ、黄金のオーラを全身から放出する。対抗するように黒龍も漆黒のオーラを放出。しかしやはり力の差は歴然だった。四神に関わる者すべてが生贄になったからか、以前の黄龍の力よりも4倍強い。黒龍は黄龍に襲い掛かるが、聖なる力で吹き飛ばされる。しかし怯まない黒龍に黄龍は苛立ち、黄龍は反撃する。ぶつかり合う巨大な二体の神獣と魔獣。凄まじい衝撃波が起こる。私の残り少ない力で結界を張り、白狼と龍磨を守護する。黒龍は力を使い果たしたのか、力を無くし倒れる。荒い息づかい・・・。最後の力を振り絞って黒龍は頭を上げるのだが、すぐに黄龍によって地面に叩きつけられた。黒龍は倒れこんだまま人型となり、虫の息で動かないのである。

『終わったか・・・。』

はじめてみる黄龍の人型。白い肌に金色の髪。そして黄金に輝く瞳を持つ黄龍の人型。黄龍は黒龍に近寄り、黒龍の胸元に輝く黒龍の水晶玉を取り出し、天高く投げ、呪文を唱えるのだ。すると黒龍の水晶玉は木っ端微塵に砕け散り、消え去ると同時に黒龍の姿も消え去った。

『朱雀の皇子、朱央。これで黒龍の復活はないであろう。龍族の一角を失うことは残念なことだが、しょうがない。朱雀の皇子よ。よくここまで四神に関わる者を集めてくれた。皆純粋で平和を愛するいい者達ばかりであった。この者たちの愛がある限り、人間に愛がある限り、魔王が現れようとも、我は何度でも復活し、降臨する。では我は再び深い眠りにつく。このあとのことは鳳凰に任せる。ではこれからのことを頼んだよ。朱雀の皇子よ・・・。』

そういうと黄龍は微笑みながら消えるのだ。
最終章 鳳凰降臨 (1)鳳凰降臨

 黄龍が消え、東の空が赤く染まっていく。夜明けだ・・・。そして天空には平和の象徴である鳳凰が聖なる光を放ちながら舞うように飛んでいる。私や白狼、龍磨に降り注ぐ聖なる光り。傷ついた体は回復した。そして漆黒の森は生命が漲る森へと変わっていた。振り返ると満面の笑みで向かい合う4人。無事に帰ってきたんだ。四神に関する者たち。

「兄さん!!!」

紫苑が私めがけて走り出し、飛びつく。

「僕やったよ!みんなの力で黒龍を倒したよ!!!」
「そうだね紫苑・・・。でも・・・まだお前の姿は・・・。」

まだ紫苑の姿は男のままだった。すると鳳凰が私たちの前に舞い降りる。鳳凰は人型になり、紫苑の前へ・・・。鳳凰の人型は女性・・・。なんて綺麗な人型なんだろう。鳳凰は姿が戻らないことによるショックで座り込んでいる紫苑の頭に手を置き、目を閉じる。すると紫苑の体は赤紫の光に包まれ、その光が消えるとそこにいたのは髪の長い少女・・・。これが紫苑の本当の姿というのか?紫苑は怖々閉じていた目を開け水溜りに写る自分の姿を見つめる。顔は私に似ているものの、姿かたちはまさしく少女。紫苑は自分の長い髪を不思議そうに触りながら私のほうを見つめる。

「兄さん・・・?僕・・・。」

声も少女の声に変わっていた。

「これが本当の僕の姿・・・・?」

白い肌に桃色の唇、茶色の瞳に茶色の髪。聖斗君や竜哉様は紫苑の本当の姿に顔を真っ赤にして見つめているのだ。学校にいるどんな少女よりも可愛く、美しい・・・。紫苑は麻沙耶君の方を見つめ、微笑む。

「麻沙耶・・・。」
「紫苑君・・・・?」

麻沙耶は紫苑に近寄り座り込んでいる紫苑に手を差し伸べる。紫苑は麻沙耶君の手を握ると立ち上がり、麻沙耶君に抱きつく。麻沙耶君ははじめ複雑な顔をしていたのだが、フッと微笑むと紫苑をぎゅっと抱きしめた。なんと微笑ましい光景なのだろうか・・・。
(2)願い事

 僕はもとの姿に戻った。もう僕って言うのはおかしいんだけど・・・。本当に僕は女の子だったんだね。長い髪、細い体、そして大きくもなく小さくもない胸、そして丸みのあるお尻・・・。顔は兄さんに似ているけれど、やはり女の子って感じの顔。双子だもん。麻沙耶ははじめ僕の姿を見て戸惑っていたんだけど、僕を僕と認めてくれた。初めて僕を女としてぐっと抱きしめてくれた。

麻沙耶はやっぱり男の子だよ。その力は力強かった。おとこおんなじゃない。この胸のドキドキ感。やはりこれは恋だよね・・・・?麻沙耶もなんだかたくましく見える。黒龍との戦いをともに戦ってきたから?ひとまわりもふたまわりも麻沙耶は成長した。男らしくなったよね?

 美しい瑞鳥鳳凰は微笑みながら僕たちを見つめていた。

「あのね、私からあなたたちに贈り物があるの。」

と、鳳凰が言う。贈り物?

「あなたたちの願いを叶えてあげる。何でもいいとは言えないけれど、一人一つ言ってごらんなさい。もちろん朱雀の皇子、守護龍、白狼も言って御覧なさい。あなた方はよくがんばってくれたもの・・・。」

みんなは考え込む。そして一人ひとり言っていく。九条君は平和。安倍君は天変地異がなくなること。守護龍・龍磨は立派な守護龍として守るべきものを守りたいと、白狼はずっと安倍君と一緒に過ごしたいと、麻沙耶は僕のために男らしくなりたい、そして僕は・・・。

「あの・・・鳳凰。僕、いえ、私は・・・人間になりたい。朱雀じゃなくて人間に・・・。」
「どうしてなの?不死鳥のあなたが・・・。せっかく覚醒したのに?」
「それが嫌。兄さんが言っていた。愛するものがみんな老いて死んでいくのを見届けなくてはならない苦しさ。永遠の若さなんていらない。私は麻沙耶と一緒に人間として生きたい。麻沙耶と一緒に歳を重ねて最後まで寄り添いたいから・・・。だめかな?兄さん・・・。」

兄さんは私の言葉に微笑んで頷いてくれた。もちろん鳳凰も私の願いを受け入れてくれた。最後に兄さんの願い・・・。

「私は何も要らない・・・。しいて言えば、紫苑をはじめみんなが幸せに暮らせさえすれば何もいりません。それでいいですか?鳳凰様・・・。」
「わかりました。皆さんの願い、受け入れましょう。」

鳳凰は変化して天高く飛び立ち、眩い光を放つ。とても清々しい聖なる光・・・。私は体の中の朱雀が消え去り、生まれ変わったような感覚を覚えた。鳳凰が消え去ると、まぶしい朝日が昇ってきた。

「兄さん、これ返すね。」

私は兄さんに朱雀のしるしを手渡した。もちろん私の分も含めて。

「これは紫苑の・・・。」
「もういい。もう私は朱雀の姫皇子じゃないから。朱雀の印は必要ないの。私の本当の父と母は私が人間になったことを怒るかなあ・・・。」
「そんなことはないよ。紫苑が決めたことなんだ。」

麻沙耶が私の側に来て微笑む。私は麻沙耶の体に身を預けて光り輝く朝日をみんなで見つめた。本当にひさしぶりに清々しい朝がやってきた・・・。
(3)平安

 例の戦いが終結し、私は担当部署に提出する報告書をまとめた。

行方不明になっていた船、潜水艦、飛行機は不思議なことに無事に現れ、何事もなかったかのように帰還。現代の神隠しだと騒がれている。そしてあれほど頻発していた地震をはじめとした天変地異もあれ以来ぴたりと消え、この美しい国日本に平和が訪れた。

担当部署以外の人には理解できない内容の報告書。知らない人が見たとしてもこれはフィクションであると思うのであろう。そして報告書の最後にこう要望書きを付け加える。

『朱雀に関する者である我が妹、紫苑に正式な戸籍を与えてください。そして18歳の普通の人間の少女として扱っていただけるようによろしくお願いします。』

と書き記した。

「兄さん!ごはんだよ!」

と、巫女の格好をした紫苑がいつものように夕飯を呼びに来る。本当に紫苑は人間になった。もう朱雀のオーラなどまったくない。ここのところずっと紫苑は麻沙耶に会っていない。というよりも会ってはいけないのだ。これはしょうがないこと。政府から紫苑のこれからのことについての指導がない限り、動けないし、また外界との接点も禁じられているからだ。もちろんそれは麻沙耶君をはじめ、竜哉様、聖斗君にも説明した。ちょうどいいではないか・・・。彼らは受験生だ。この夏休みの間、今まで怠っていた勉強に精を出すのもいいものだと思うのだが・・・。紫苑もいつ普通の女の子としての生活が始まってもいいように、朱雀神社の娘亜樹とともに勉強をしている。そしてバイトとして巫女をやってくれているのだ。

 本当に今までのことが嘘のように平和な生活・・・。私は今までのようにまた生き神としての生活が始まるのだろうか・・・。せっかく教諭として慣れてきたところであるのに残念だけれど、教諭というのは私の仮の姿。いつまでもこの姿でいることは許されない・・・。

 しかし平和はいいことだ。私もいつ何時指令が来ても言いように充電をしないといけないからね。
(4)再会

 「お姉ちゃん!早くしないと遅れるよ!」

と亜樹ちゃんが私に声をかける。私は夏服のブラウスのボタンをかけ、緑色のリボンをつける。今日から私は高校3年生。そして2学期が始まる今日、私は大好きな彼がいる学校へ編入する。

私は亜樹ちゃんの家の養女となった。政府から戸籍をもらったの。今日から私は源紫苑。お兄ちゃんの源朱央は本年度いっぱいまで先生として働く許可が政府から下りた。初めて3人で通学する。相変わらずお兄ちゃんは口数の少ないイケメン歴史教師。誰も双子だって信じないよね。

昨日お世話になっている父親代わりの宮司さんとこの学校に来た。そして転入するクラスも決まったの。大好きな彼と同じクラスだったらいいななんて思いながらお兄ちゃんと職員室へ。私の担任は女の先生。この人は元私が黒田紫苑と名乗っていた時の担任・・・ということは・・・?

私は始業式前の教室に担任とともに案内される。そして廊下で待つ。

「ほらほら!座って!今日は転入生がいるのよ!珍しいでしょ?さ、源さん入って。」

私は先生の言うとおりに教室に入る。私を見た男子生徒がおお!!って・・・。

「源紫苑さんです。もともと海外のほうにいたらしいのだけれど、ご両親が亡くなられて、親戚のいる京都へ・・・。さ、自己紹介を紫苑さん。」

私は教室を見回した。相変わらずまだ阻害されているの?私の大好きな麻沙耶・・・後ろの席・・・。私の姿を見て真っ赤な顔をして見つめている。

「源紫苑です。京都に越してきたばかりでよくわかりませんが、よろしくお願いします。」

そういうと先生に席を指定される。

「近衛君、手を上げて・・・。」

麻沙耶君が恥ずかしそうに手を上げる。

「紫苑さん、近衛君の横の窓際が開いているから、そこがあなたの席よ。」

ここは私が黒田紫苑と名乗っていた時の机。そして横には大好きな麻沙耶・・・。休み時間私は麻沙耶の前の席に座って微笑む。

「いつも一人でいるの?一人でいるの楽しい?可愛い顔だね。私好きだよそんな顔。」

そういえば私がはじめて麻沙耶に会った時、同じようなことをいったの。覚えてる麻沙耶?すると麻沙耶はにこっと笑って私に言うの。

「お帰り、紫苑。待ってたよ。きっと紫苑は帰ってくるって信じてた・・・。」

そういうと麻沙耶は私の手をぎゅっと握り締めて手の甲にキス。そして立ち上がって私の手を引き、私と教壇に立って言うの。

「おい!みんなよく聞け!紫苑に手を出すな!紫苑は僕の彼女なんだからな!!!」

クラスのみんなは今まで男しか好きにならないと思っていた麻沙耶の言葉に驚いていた。信じられない顔をしているクラスのみんなに麻沙耶は私を抱きしめてみんなの前でキス!ちょっと強引だけど・・・。でも私はうれしかった。麻沙耶は私のことを忘れていなかった。急に涙がこみ上げてきて私は麻沙耶の胸の中で泣いたの。もちろんうれし涙よ・・・。

クラス中は大騒ぎ。でもいいの。私達は本当に愛し合っているんだから・・・。
(5)未来

 もうあれから何年経ったのかしら・・・。私は下賀茂神社内の一室にいる。純白の白無垢を着て・・・。

いろいろあったなあ・・・。少女だった私は今はもう立派な女性。養父母の朱雀神社の宮司さん夫婦は本当の娘のように今まで面倒を見てくれた。もちろん大学も出してくれた。普通の人間の生活。

「紫苑、準備できた?」

と、今日から私の旦那様になる人が声をかける。その人は私の白無垢姿を見て微笑む。

「何?恥ずかしいじゃない。じっと見ないでよ・・・。麻沙耶。」
「紫苑、すっごく綺麗だから・・・。」

そう私は玄武に関わる者だった近衛麻沙耶と結婚する。

ここまで来るのに色々反対された。だって麻沙耶は旧五摂家の次期当主。名門中の名門の長男。麻沙耶のご両親は名家のお嬢様と結婚させたかったらしいんだけど、麻沙耶は私を選んでくれた。きちんとご両親にも紹介してくれて、うまく行くと思ったんだけど、反対されたの。だって私は両親もいない、そして小さな朱雀神社の養女だから・・・。麻沙耶は何年もかけてご両親を説得してくれたんだけど結局首を縦に振らなかった。

「紫苑。しょうがない・・・最後の手段だよ・・・。」

といって既成事実をつくろうって・・・。はじめは私は反対したの。だって祝福されて結婚したい。でもそれではいつになっても結婚できないよって言われて首を縦に振った。そして私の体の中に新しい命が宿った。

「大丈夫だよ。うちの両親は処分しなさいとは言わないよ。だから安心して・・・。」

私は麻沙耶にすべてを任せることにした。案の定麻沙耶のご両親はしぶしぶ首を縦に振ってくれたの。そして結婚してからは麻沙耶の配慮で、当分麻沙耶のご両親と別居することに決めたの。

神聖な神前結婚。ふと振り返ると外にはお兄ちゃん。相変わらず若いまんまのお兄ちゃん。そして側には私達の他の四神に関わる者たち。私たち夫婦の門出を祝ってくれている。式が終わると親族での記念撮影。すると麻沙耶がご両親にいうの。

「ねえ父さん、母さん、あの3人も一緒に写っていい?あの3人は僕の大切な友達なんだ。」
「ああ、麻沙耶の友達ならいいだろう。」

3人が合流して記念撮影。本当にうれしそうなお兄ちゃんの顔。ホント九条君や安倍君と変わらない若さ。きっと麻沙耶のお父さんはみんな同級生と思っているんだろうな・・・。

「さあ!写しますよ!!!花嫁さん、もっと笑って!!!花婿さんも!!はい!」

出来上がった写真はホントに幸せそう。

平和で美しい国、日本。私はこの国に生まれてよかった。これからもずっと平和だといいな・・・。どうか四神が、そして黄龍が降臨しない世の中であり続けますように・・・。


(完)


何とか終了させました。
本当に長い文章ですみませんでした。
ではまたよろしくお願いします。

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