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五つ星の本のみを紹介しあう会コミュの山田詠美『ぼくは勉強ができない』

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ぼくは確かに成績が悪いよ。でも、勉強よりも素敵で大切なことがいっぱいあると思うんだ―。17歳の時田秀美くんは、サッカー好きの高校生。勉強はできないが、女性にはよくもてる。ショット・バーで働く年上の桃子さんと熱愛中だ。母親と祖父は秀美に理解があるけれど、学校はどこか居心地が悪いのだ。この窮屈さはいったい何なんだ。凛々しい秀美が活躍する元気溌刺な高校生小説。
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高校を卒業するくらいから何年かの間山田詠美の作品が私のバイブルだった。
私は彼女の作品を読むことで初めて、何がかっこよくて何がかっこ悪いのか、物事を判断するための自分の基準を明確に持つということを知った。まわりを見渡しても、そんなことを言う大人は誰一人としていなくて、私はその新しい考え方に夢中になった。この本の主人公、時田秀美を特にかっこいいと思っていた。
そして、今になればそれがよくわかるのだけれど、彼女の作品はただでさえ過剰な思春期の自意識を強力に助長する。
少しずつ大人になるにしたがって(現実世界の儘ならなさを知り、あるいはたくさんの作家のたくさんの本を読んでいるうちに)、だんだんと自意識をそぎ落としていくことが必要に思えて、彼女の作品から遠ざかっていたのだったけれど、今何年かぶりに『ぼくは勉強ができない』を読み返してみて愕然とした。

ああ、この本はまさに、自意識をいかにそぎ落とすかがテーマの作品だったんだ。

エイミーはあとがきでこんなふうに書いている。
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主人公の時田秀美は高校生だが、私は、むしろ、この本を大人の方に読んでいただきたいと思う。なぜなら、私は、同時代性という言葉を信じていないからだ。時代のまっただなかにいる者に、その時代を読み取ることは難しい。
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若者の特権は過剰な自意識をもてあましてあらゆるものに疑問をぶつけること、身に余る服を着てそれでも精一杯胸を張り大通りを闊歩すること。そして、大人になるということは、疑問を一つ一つ理解し、理解できないものは理解できないものはとして受け入れながら、あらゆるものを柔らかく包括していくこと。
35歳の私は、改めてこの作品を読んで、妙にすっきりと腑に落ちてしまったのだけれど、それは、私が大人になったということなのだろうか?
思えば遠くに来たものだなあ。

では、同時代にあってこの作品を読んだことは私にとってどんな意味を持つのか。
この作品を読むことで一時的に分厚い自意識を身にまとい、それを少しづつそぎ落としてきたこと。そぎ落としたものは無駄で、初めからなくてもいいものだったのか。
それは違う。
一度体に取り入れたものであるからこそ、捨てた後もそれが無駄なものであるということを実感として認識することができるのだ。
体に取り入れなかったものについて、語ることはできない。

さて、今一児の母となった私は、秀美の母のようになれたらと思う。
この気持ちもまた、あとで思い返せばかわいらしいと思うようになるのだろうか。

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(本文より)
「私は、教師の教えたことで、役に立ったと思ったこと、あんまりないわ。勉強のことでなく、精神面でのことだけど。あとで苦労したっていいじゃない。痛い目にあわなきゃ学べないこと、沢山あるわ」
「誰でも、あなたのように思うとは限りませんよ、時田さん」
「そうね。でも、あなたのように誰もが思うとも限らないわよ」
「困った人だな。秀美くんはあなたに似てしまったようだ」
「そんなことないわ。あの子はあの子よ。奥村さんは、私を素人と呼んだけど、そうでもないわ。私は、秀美を、素敵な男性に育てたい。大人の女の立場から言わせてもらうと、社会から外れないように外れないように怯えて、自分自身の価値観をそこにゆだねてる男って、ちっとも魅力ないわ。そそられないわ。私は、秀美を不良少年にしたいとは思わない。だって、ださいもん。でもね、自分は、自分であるってことを分かっている人間にしたいの。人と同じ部分も、違う部分も素直に認めるような人になってもらいたい。確かに、あの子は、まだ子供。でも、何かが起こった時に、それを疑問に思う気持ちを忘れて欲しくないのよ」
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コメント(6)

>noonさん
私も何回かこの本を人にあげたことがあります。
自意識について。
おばさんの言うことはそんなに気にせずに、今感じていることを大切にして下さいね。そしてまた何年かしたらまた読み返してみてください!
勉強にバイト、友達と遊んだり恋をしたり、毎日楽しんでね♪

>ジュリさん
「○(マル)を付けよ」の章でしたっけ?あの章は私もかなり好きです!
私も高校生の頃から詠美さんの本はバイブルになってます。
独特の世界観というか・・・『混じらないモノの見方』っていうのかな??
なによりも『ぼくは勉強ができない』を読んで、憧れた部分はたくさんあるけれど、「勉強なんかできなくたっていい!」とは思わなかったのをよく覚えています(笑)
この歳になって、そしてこのコミュニティに参加してから、まったく嫌になるくらいの出会いがありました。今回の『ぼくは勉強ができない』も『山田詠美』という作家も、知らなかった今までの人生。何だかもったいない気がします。

青春時代をはるか彼方に置き去りにし・・・そもそも、人に誇れるほどの時間をその当時過ごせたのか、はなはだ疑問ですが・・・将来への不安がそれなりに安定した生活にすり替わっていく現在、この強烈な個性を放つ作品を客観的かつ冷静に楽しめたと思います。

読み終わって自問してみました。「もしも、10代の頃にこの作品に出会えたとして、今ほど笑って受け入れられたのだろうか?『眠れる分度器』のような、自分自身の生活に投影するには、あまりにも痛みを伴う作品を含むこの本を。」と。

それでも、ハッキリとは分からなくても、何かが自分の中に芽生えたかもしれないです。今となっては分かりませんが・・・。

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