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五つ星の本のみを紹介しあう会コミュのT.カポーティー『カメレオンのための音楽』

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野坂昭如訳

***
(表紙裏より)
現実にあった、『冷血』を上回る残虐な連続殺人と刑事の絶望的な戦いを描く中篇「手彫りの棺」。表題作「カメレオンのための音楽」など、悪魔と神、現実と神秘のあわいに生きる人間を簡潔にして絶妙の筆致で描く珠玉の短編群。マリリン・モンローについての最高のスケッチといわれる「うつくしい子供」など人の不思議さを追及した会話によるポートレート集。三部からなる、巨匠カポーティー、最後の傑作を野坂昭如の翻訳で贈る。
***

対象となる人物を徹底的にみつめ描写した作品群。

優れた写真家が写した写真が饒舌に被写体を物語るように、一篇一篇から対象となる人物の肖像がありありと浮かび上がる。
カポーティーの丁寧に色を塗り重ねてゆくような筆致の中に、各人が抱える心の暗闇が丁寧に塗りこまれている。その闇は外に現れるか現れないかは別としておそらくすべての人が抱える闇と繋がっていて、カポーティーの美しい文章と相まって、だからこそこんなにも引き込まれてしまうのだろうか。

マリリン・モンローとの対話『うつくしい子供』が読みたくて手に取ったのだけれど、期待を裏切らない素晴らしさでした。マリリンのぴんと張り詰めた脆さ、その儚さゆえの輝きが、短い文章の中に凝縮されていました。

***

(「うつくしい子供」より)
マリリン あたしがどんな女か、マリリン・モンローは本当にどんな女か、そう人に訊かれたら──ねえ、なんて答えるつもりなのって訊いたの覚えてる?(彼女の口調はからかうようであり、馬鹿にするようでもあったが、真剣味があった。本音を訊きたかったのだ)あたしはとんまだって言うんでしょうね。お菓子のバナナ・スプリットみたいだって。
T.C 当然ね。だけど、それに付け足して……。
(あたりは暗くなってきた。彼女は空や雲と共に闇にまぎれ、空や雲よりも遠ざかっていくように見えた。私はカモメの鳴き声よりも大きな声を出して彼女を呼び戻したかった。マリリン!ねえ、マリリン、何もかもがなんで決まりきったように消えてなくなるのだろうか。人生ってなんでこんなにいまいましく、くだらないのだろうか、と)
T.C えーとね……。
マリリン 聞こえないわよ。
T.C えーとね、君はうつくしい子供だとね。

***


@@@@@

蛇足ですが、作品の中で顔に星型の痣のある盲目の男性の元にたくさんの人がいろいろな相談に訪れ何がしかの謝礼を払っているっていうのがあってそこから『ねじ巻き鳥クロニクル』を、一人暮らしの老女が冷蔵庫に死んでしまった猫を冷凍して保管しているっていうのから『海辺のカフカ』を、ぱぱぱっと思い出してしまいました。
村上春樹さん、カポーティをモチーフにしたのかもしれませんね。
(願わくば、春樹さんの訳で『カメレオン』が読みたいです)




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コメント(12)

T.カポーティーという作家をまったく知らなかったので、インターネットで調べてみました。(ふむふむ。)・・・ちなみに村上春樹さんも名前は知っているんですけど、恥ずかしながら一度も読んだことは無いです。人気作家はわざと遠ざけたくなるへそ曲がりの性格が災いして、損をしている経験も度々あるんですけどもね。

改めて、読書の世界はまだまだ広いなって痛感しました。頑固な食わず嫌い屋さんの私にも、オススメありましたら紹介してください。って言うか『カメレオンのための音楽』を読みなさいっ!!って事ですよね?
>dashさん
カポーティー初めてでしたら、『ティファニーで朝食を』とか『誕生日の子どもたち』とかあの辺りからの方がとっつきやすいかもしれません。自分で五つ星に挙げておいてなんですが、『カメレオン』はちょっと妖しく癖のある作品集です。

村上春樹さんは好きな作家にカポーティーを挙げておられますし、もしカポーティーが気に入りましたら是非読んでみてくださいね。(何から読むのがいいかしら…。『羊をめぐる冒険』あたりかな?よかったら是非♪)
>あまがえるさん

ご安心を・・・・と言うか”妖しく癖のある作品集”と聞いたら、反対に食指が動いてしまいました。(いや、決して危ない人じゃないですよ。)

早速図書館で借りようかと思ったのですが、現在貸出中。折を見て読んでみます。村上春樹さんも追々って事で・・・。

どうもありがとうございました。
図書館に『遠い声、遠い部屋』があったので読んでみました。しかーし、『カメレオン』は今だ貸し出し中・・・・・。(残念)
『カメレオンのための音楽』、ようやく読み終わりました。野坂昭如氏のご苦労の賜物か、はたまたカポーティの腕のなせる業か、大変読みやすい文体で構成された作品集でした。

外国人作家の作品は数々読んでいるのですが、非常に読みにくい作品に出会うのもしばしば。作者が悪いのか、はたまた訳者が悪いのか、それとも自分の力不足が原因なのか・・・・。その点、この作品はひっかかりも無くスムーズに読めました。

ビデオ屋で映画『カポーティ』のポスターを見かけて、「おぉ、カポーティってこの人の事か!」と、今更気が付いた今日この頃でした。
数月前この原書を読んで、一番印象的なのは「手彫りの棺」でした。すばらしい作品でした。
カポーティーの文字は魅力的で、手を離れないほどすぐ読んで終わりました。できるだけ原書を読んだほうがいいと思います。
>クリシさん

やはり原書を読むべきですよね。日本の小説よりも海外の小説の方を多く読んでいる私としては、キチンと原書を読んだ方が良いと常々感じています。英語の授業でロアルド・ダールの『The Twits』をテキストに勉強したこともありますが、それでも一苦労するくらい英語が苦手です。
>dashさん
>クリシさん
『カメレオン』読まれたのですね。
野坂さんの訳は確かにとても読みやすいですね。

翻訳とはやはり二次情報ですし、カポーティの文章は原文もとても美しいようなので原書で読みたいのは山々なのですが、私も英語力の無さに阻まれて・・・。くぅ〜

映画『カポーティ』、面白そうですよね。
こんにちは。
私は今「カメレオンのための音楽」を読んでる途中です。
あまがえるさんがピックアップされていた「うつくしい子供」の場面なんですが
なんか泣きそうになりました。
この場面までの描写から一気に(これまでの描写が素晴らしいこそ)
「マリリン!ねえ、マリリン、何もかもがなんで決まりきったように消えてなくなるのだろうか。人生ってなんでこんなにいまいましく、くだらないのだろうか」
ていう気持ちまでカポーティが一緒に連れてってくれる感じでした。
他の瞬間長い人生がいまいましくくだらないと思う程の
瞬間をどれくらい経験できるんだろう、
そのあまりの儚さに憤慨するような経験をしたいと思わされました。
そして短い間にこんなに気持ちを持ってかれる文章があるだなんて!
なんなんだこれは!!
という感じです。


私も原文を読んでみたいです。
英語力があったなら。

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