原題：明月照尖東(With or Without You)
香港 キャリアナ･フィルム･プロダクション作品 92年 91分 カラー 日本劇場未公開(ビデオ→DVD→ＴＶ)
製作：リチャード･チェン／ハーマン･ヨウ 監督：テイラー･ウォン 脚本：ラム･チュウ･ウィン／ラム･ゲイトー アクション指導：リン･マン･ホワ カー･スタント指導：バーン･ベイ･レイ 音楽タッツ･ラウ
出演：(３点リーダー以降の人名は日本語吹替版ビデオのキャスト)
レオン･ライ(黎明)=ウォン…藤原啓治
ジャッキー･チュン(張學友)=プリンス…菅原正志
ロザムンド･クァン(關之琳)=ジョイ…岡本麻弥
ン･マンタ(吳孟達)=タット…辻親八
マーガレット･リー(李殿朗)=ママ
チン･トン(程東)=トン
−解説−
『天使の涙』(95年)などのレオン･ライ(黎明)と『ベルベット･レイン』(2004年)などのジャッキー･チュン(張學友)という香港が誇る２大スターが共演したアクション･ドラマ。香港警察の青年刑事が美貌のホステスと恋に落ちる。しかし､彼女は暗黒街で悪名をとどろかせる殺し屋の愛人だった…。ほかに『冒険王』(96年)などのロザムンド･クァン(關之琳)､『少林サッカー』(2001年)などのン･マンタ(吳孟達)､『火龍』(87年)などのマーガレット･リー(李殿朗)らが出演。『黒社会』(89年)などのテイラー･ウォン(黃泰來)監督､92年作。
−物語−
プリンス(張學友)は相手が警官でも平気で殺す暗黒街きっての冷酷なヒットマンだ。彼にはジョイ(關之琳)というホステスの愛人がいる。恋人と別れた青年刑事ウォン(黎明)は､パトロールで立寄ったナイトクラブでジョイと出会った。ウォンがジョイのクラブで酔って拳銃を紛失し､結局口の利けない客引がスリ取ったことが判明するが､その間ふたりは急接近し恋に落ちていく。そしてジョイの誕生日の夜､ふたりがドライブするジープに嫌がらせを仕掛けてきた男､それは１年ぶりに香港へ戻ったプリンスだった。彼は爆弾を抱えてナイトクラブへ立籠もり､駆付けたウォンにジョイとの逃避行を要求する。
｢爆烈都市/Fire City｣名義での予告編動画↓
香港 キャリアナ･フィルム･プロダクション作品 92年 91分 カラー 日本劇場未公開(ビデオ→DVD→ＴＶ)
製作：リチャード･チェン／ハーマン･ヨウ 監督：テイラー･ウォン 脚本：ラム･チュウ･ウィン／ラム･ゲイトー アクション指導：リン･マン･ホワ カー･スタント指導：バーン･ベイ･レイ 音楽タッツ･ラウ
出演：(３点リーダー以降の人名は日本語吹替版ビデオのキャスト)
レオン･ライ(黎明)=ウォン…藤原啓治
ジャッキー･チュン(張學友)=プリンス…菅原正志
ロザムンド･クァン(關之琳)=ジョイ…岡本麻弥
ン･マンタ(吳孟達)=タット…辻親八
マーガレット･リー(李殿朗)=ママ
チン･トン(程東)=トン
−解説−
『天使の涙』(95年)などのレオン･ライ(黎明)と『ベルベット･レイン』(2004年)などのジャッキー･チュン(張學友)という香港が誇る２大スターが共演したアクション･ドラマ。香港警察の青年刑事が美貌のホステスと恋に落ちる。しかし､彼女は暗黒街で悪名をとどろかせる殺し屋の愛人だった…。ほかに『冒険王』(96年)などのロザムンド･クァン(關之琳)､『少林サッカー』(2001年)などのン･マンタ(吳孟達)､『火龍』(87年)などのマーガレット･リー(李殿朗)らが出演。『黒社会』(89年)などのテイラー･ウォン(黃泰來)監督､92年作。
−物語−
プリンス(張學友)は相手が警官でも平気で殺す暗黒街きっての冷酷なヒットマンだ。彼にはジョイ(關之琳)というホステスの愛人がいる。恋人と別れた青年刑事ウォン(黎明)は､パトロールで立寄ったナイトクラブでジョイと出会った。ウォンがジョイのクラブで酔って拳銃を紛失し､結局口の利けない客引がスリ取ったことが判明するが､その間ふたりは急接近し恋に落ちていく。そしてジョイの誕生日の夜､ふたりがドライブするジープに嫌がらせを仕掛けてきた男､それは１年ぶりに香港へ戻ったプリンスだった。彼は爆弾を抱えてナイトクラブへ立籠もり､駆付けたウォンにジョイとの逃避行を要求する。
｢爆烈都市/Fire City｣名義での予告編動画↓
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コメント(2)
テイラー･ウォン(黃泰來)監督が87年に手掛けた｢愛と復讐の挽歌｣2部作の新版…と邦題では謳っていますが､物語の繋がりは全くありません。但し2部作という作劇方法と"香港ノワール"というジャンルは共通しているので､実はこの邦題にもさほどの違和感は感じないんですよね。
80年代に日本で発売された香港映画関連の書籍を確認すると､テイラー･ウォンはジョニー･マック(麥當雄)の下で監督を続けている旨が記載されています。確かに当時はそうでした。実際｢愛と復讐の挽歌｣2部作もジョニー･マック(麥當雄)のプロデュース作です。ただテイラー･ウォンの監督作の場合､ジョニー･マックとは関係ないデビュー作の時点から､一貫したある種の"作家性"ともいえる共通した特徴があるように思えるのです。まずはそこから言及して参りましょう。
CMディレクターから映画界へ進出したテイラー･ウォンの監督デビュー作は､日本でも80年代なかばにビデオ発売されています。デビット･チャン(姜大衛､画像中)主演の『激突!少林拳対忍者』(81年､画像左)です。武俠小説の大家･古龍の原作を映画化したファンタジー色の強い時代劇アクション映画なのですが､ココで既に｢愛と復讐の挽歌｣2部作にもつながるテイラー･ウォン監督"らしさ"が表出しています。まず彼の演出は基本｢群像劇｣がメインという点です。そこで特徴的なのが､主人公をあえて魅力的には描かず､感情移入しづらい平板かつ類型的なキャラクターにすることで､物語の進行役又は狂言回しに徹しさせ他の悪役や脇役を活かすという作劇法です。デビット･チャンはショウ･ブラザースの映画でスターとなり､現在もTVBのドラマ等で現役で活躍中の文字通りレジェンド･アクターです。しかし『激突!少林拳対忍者』では､終始無愛想で独善的かつ尊大にも見えるキャラクターです。勿論武俠小説ならではの設定があるのですが､それがわからないとちょっと感情移入はしづらい役どころです。結果『激突!少林拳対忍者』が日本で紹介された際には､デビット･チャンの魅力はほぼ伝わりませんでした。そういえば『愛と復讐の挽歌』が日本で公開された際も｢『男たちの挽歌』(86年)と比べてチョウ･ユンファ(周潤發)がパッとしない｣という評価が散見されましたけど､アレも実は演出だったというワケですね。更に同じテイラー監督の『黒社会』(89年)でもやはりユンファは主役でも前に出るキャラクターではなかったですよね…。
では､｢群像劇｣でかつ主役の描写を投げっ放し気味にしてどうするのか？ 前述通り悪役や女性キャラクター､また時には取るに足らない小さな役にまで､物語を動かす重要な役割を与えたりするのです。先に述べた作品例でいえば｢愛と復讐の挽歌｣2部作では､悪役のアレックス･マン(萬梓良)が強烈なインパクトを残し､若手のアンディ･ラウ(劉��華)やポーリン･ウォン(王小鳳)の活躍も鮮烈でしたし､前篇『野望編』(ソフトのみ)にのみ登場するアラン･タム(譚詠麟)も俳優として新境地を拓きました。そしてテイラー監督デビュー作『激突!少林拳対忍者』では､デビット･チャンと対照的なキャラクターとして"一匹狼"と名乗る風来坊が登場します。単純な悪役でもなく､かといって善玉でもない。真面目なのかふざけてるかわからない性格。女好きでありながら武術は凄腕。しかし最後は自分の思わぬ素性を知り愛した女性を失い､深い悲しみと復讐の念を胸に悄然と去っていく…､この複雑なキャラを演じているのが何と! 日本人俳優の倉田保昭さん(画像右)なんですね。70年代初めから現在に至るまで､悪役を中心に香港や台湾の映画に70本以上出演した倉田さんですが､そのフィルモグラフィー中でも最も異色の役どころではないでしょうか。
このように主役だからと特別扱いはしない､悪役や脇役とも並列にしてむしろ彼らを引立たせる。悪役であれば､最初から単純に悪と設定せず､どのように悪に染まっていったかまで掘下げる。管理人も全作品見たワケではないので断定はできないですが､テイラー･ウォン監督作にはそうした通底する側面を強く感じます。では､本作『新･愛と復讐の挽歌』はどうなのか？ 次項よりご案内して参りたいと存じます…。
80年代に日本で発売された香港映画関連の書籍を確認すると､テイラー･ウォンはジョニー･マック(麥當雄)の下で監督を続けている旨が記載されています。確かに当時はそうでした。実際｢愛と復讐の挽歌｣2部作もジョニー･マック(麥當雄)のプロデュース作です。ただテイラー･ウォンの監督作の場合､ジョニー･マックとは関係ないデビュー作の時点から､一貫したある種の"作家性"ともいえる共通した特徴があるように思えるのです。まずはそこから言及して参りましょう。
CMディレクターから映画界へ進出したテイラー･ウォンの監督デビュー作は､日本でも80年代なかばにビデオ発売されています。デビット･チャン(姜大衛､画像中)主演の『激突!少林拳対忍者』(81年､画像左)です。武俠小説の大家･古龍の原作を映画化したファンタジー色の強い時代劇アクション映画なのですが､ココで既に｢愛と復讐の挽歌｣2部作にもつながるテイラー･ウォン監督"らしさ"が表出しています。まず彼の演出は基本｢群像劇｣がメインという点です。そこで特徴的なのが､主人公をあえて魅力的には描かず､感情移入しづらい平板かつ類型的なキャラクターにすることで､物語の進行役又は狂言回しに徹しさせ他の悪役や脇役を活かすという作劇法です。デビット･チャンはショウ･ブラザースの映画でスターとなり､現在もTVBのドラマ等で現役で活躍中の文字通りレジェンド･アクターです。しかし『激突!少林拳対忍者』では､終始無愛想で独善的かつ尊大にも見えるキャラクターです。勿論武俠小説ならではの設定があるのですが､それがわからないとちょっと感情移入はしづらい役どころです。結果『激突!少林拳対忍者』が日本で紹介された際には､デビット･チャンの魅力はほぼ伝わりませんでした。そういえば『愛と復讐の挽歌』が日本で公開された際も｢『男たちの挽歌』(86年)と比べてチョウ･ユンファ(周潤發)がパッとしない｣という評価が散見されましたけど､アレも実は演出だったというワケですね。更に同じテイラー監督の『黒社会』(89年)でもやはりユンファは主役でも前に出るキャラクターではなかったですよね…。
では､｢群像劇｣でかつ主役の描写を投げっ放し気味にしてどうするのか？ 前述通り悪役や女性キャラクター､また時には取るに足らない小さな役にまで､物語を動かす重要な役割を与えたりするのです。先に述べた作品例でいえば｢愛と復讐の挽歌｣2部作では､悪役のアレックス･マン(萬梓良)が強烈なインパクトを残し､若手のアンディ･ラウ(劉��華)やポーリン･ウォン(王小鳳)の活躍も鮮烈でしたし､前篇『野望編』(ソフトのみ)にのみ登場するアラン･タム(譚詠麟)も俳優として新境地を拓きました。そしてテイラー監督デビュー作『激突!少林拳対忍者』では､デビット･チャンと対照的なキャラクターとして"一匹狼"と名乗る風来坊が登場します。単純な悪役でもなく､かといって善玉でもない。真面目なのかふざけてるかわからない性格。女好きでありながら武術は凄腕。しかし最後は自分の思わぬ素性を知り愛した女性を失い､深い悲しみと復讐の念を胸に悄然と去っていく…､この複雑なキャラを演じているのが何と! 日本人俳優の倉田保昭さん(画像右)なんですね。70年代初めから現在に至るまで､悪役を中心に香港や台湾の映画に70本以上出演した倉田さんですが､そのフィルモグラフィー中でも最も異色の役どころではないでしょうか。
このように主役だからと特別扱いはしない､悪役や脇役とも並列にしてむしろ彼らを引立たせる。悪役であれば､最初から単純に悪と設定せず､どのように悪に染まっていったかまで掘下げる。管理人も全作品見たワケではないので断定はできないですが､テイラー･ウォン監督作にはそうした通底する側面を強く感じます。では､本作『新･愛と復讐の挽歌』はどうなのか？ 次項よりご案内して参りたいと存じます…。
本作は｢香港四大天王｣の一角であるレオン･ライ(黎明､画像左)が主演の刑事で､同じ四大天王同士のジャッキー･チュン(張學友､画像中)がダブル主演に近い形で殺し屋に扮しているのですが､結果から言えばジャッキー･チュンの狂気にあふれた演技が評価され､悪役ながら彼の代表作となりました。コレって前項で述べた｢愛と復讐の挽歌｣２部作におけるアレックス･マンのケースと同じですよね。ジャッキー･チュン自体悪役は初めてではないのですが､本作での役どころが彼の俳優としての個性と資質を余すところなく引出しているのは間違いないです。何よりテイラー･ウォン監督が思い入れをもって撮ってるのは､明らかにジャッキー･チュンの方なんですよね…。
レオン･ライは､どうにも優柔不断な面が眼に付いて､やはり主役ながら感情移入しづらいキャラとなってしまってます。むしろ相棒役のン･マンタ(吳孟達)の方が気のいい感じが立ってますし､ワンポイントですが口の利けない客引の青年に重要な役割を与えるなど､ここでもテイラー･ウォン監督らしい演出が目立ちます。
ヒロインをロザムンド･クァン(關之琳､画像右)が演じてますが､コレはまさしく大輪の花のごとき美貌を誇った当時の彼女だからこその配役でしょう。レオン･ライやジャッキー･チュン双方にとってのファム･ファタル(運命の女)となる重要な役のはずですが…､テイラー監督はあまり関心が無いようで(爆)､やはりどこか突放したような描写なんですね。確かに超絶美人なのですが､キャラが薄っぺらくて感情移入はしづらいです。
というワケで､邦題の元ネタである｢愛と復讐の挽歌｣２部作以上に､テイラー監督の作家性が際立った作風となっています。前項で｢愛と復讐の挽歌｣２部作はプロデューサーであるジョニー･マックの色が強い｢実録(犯罪)映画｣の要素もあるため見えづらい面がありましたが､今回はよりフィクショナルでロマンチックな世界観なので､かえって可視化されたのですね。
とはいえ､作家性がどうという以前に１本の娯楽映画としては面白く出来ています。前述したように肝腎の主人公とヒロインの存在感が薄いのが難ですが､それ以外のキャストの妙味はそれなりに愉しめますし､ナイトクラブや夜の屋外など暗めのシーンが多い為か､撮影を担当したハーマン･ヨウ(邱禮濤)による映像美も印象的です。アクションも随所に爆破やガン･アクションなど派手な見せ場が用意されていて飽きません。
ちなみに､劇中では敵味方に分れ､芸能界ではライバル同士のレオン･ライとジャッキー･チュンですが､記者会見では和気あいあいとしております。驚くのは劇中あれだけの凄味と存在感を出していたジャッキー･チュンが､実はレオン･ライよりも小柄で華奢だったという事実ですね。今となっては貴重である記者会見の模様が動画で挙がっていますので､オフの二人の様子もお楽しみください↓
『新･愛と復讐の挽歌』記者会見動画(日本語字幕無し)
レオン･ライは､どうにも優柔不断な面が眼に付いて､やはり主役ながら感情移入しづらいキャラとなってしまってます。むしろ相棒役のン･マンタ(吳孟達)の方が気のいい感じが立ってますし､ワンポイントですが口の利けない客引の青年に重要な役割を与えるなど､ここでもテイラー･ウォン監督らしい演出が目立ちます。
ヒロインをロザムンド･クァン(關之琳､画像右)が演じてますが､コレはまさしく大輪の花のごとき美貌を誇った当時の彼女だからこその配役でしょう。レオン･ライやジャッキー･チュン双方にとってのファム･ファタル(運命の女)となる重要な役のはずですが…､テイラー監督はあまり関心が無いようで(爆)､やはりどこか突放したような描写なんですね。確かに超絶美人なのですが､キャラが薄っぺらくて感情移入はしづらいです。
というワケで､邦題の元ネタである｢愛と復讐の挽歌｣２部作以上に､テイラー監督の作家性が際立った作風となっています。前項で｢愛と復讐の挽歌｣２部作はプロデューサーであるジョニー･マックの色が強い｢実録(犯罪)映画｣の要素もあるため見えづらい面がありましたが､今回はよりフィクショナルでロマンチックな世界観なので､かえって可視化されたのですね。
とはいえ､作家性がどうという以前に１本の娯楽映画としては面白く出来ています。前述したように肝腎の主人公とヒロインの存在感が薄いのが難ですが､それ以外のキャストの妙味はそれなりに愉しめますし､ナイトクラブや夜の屋外など暗めのシーンが多い為か､撮影を担当したハーマン･ヨウ(邱禮濤)による映像美も印象的です。アクションも随所に爆破やガン･アクションなど派手な見せ場が用意されていて飽きません。
ちなみに､劇中では敵味方に分れ､芸能界ではライバル同士のレオン･ライとジャッキー･チュンですが､記者会見では和気あいあいとしております。驚くのは劇中あれだけの凄味と存在感を出していたジャッキー･チュンが､実はレオン･ライよりも小柄で華奢だったという事実ですね。今となっては貴重である記者会見の模様が動画で挙がっていますので､オフの二人の様子もお楽しみください↓
『新･愛と復讐の挽歌』記者会見動画(日本語字幕無し)
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