[mixi]センター試験倫理問題解説　2010年 - 「倫理」が好き

[3] mixiユーザー 01月19日 07:34

第 2 問　　次の又章を読み、下の問い(問 1～ 8 ）に答えよ。（配点24）

□クラブではレギュラーになれなかったことに拘ったり、馬が合わない人とはグループを組むことを避け続けたり、恋をすればその人のこと以外考えられなくなったりする。このように、人は様々なことに囚われながら生きている。ここでは、既成の価値観や考え方などに対する囚われについて先哲の思索に触れてみよう。
□囚われは、身近な問題意識をきっかけに気づかれることがある。苦の問題を克服しようとしたブッダは、a生老病死という苦も、我執こそがその根本原因であることを洞察した。また魂の動揺を問題としたbストア派のゼノンは恐怖や欲望などの情念は誤った価値判断に囚われることから生ずるものと理解した。
□ところで先哲の巧みな譬えは我々の因われに気づかせるとともに、自らの考えを相対化することで、囚われから自由になれることを示している。プラトンは人間を洞窟の中で縛られた囚人に譬え、我々が感営的なものにしか目を向けないことを問題にした。
□ここでは感覚的世界はcイデア界の影であり善のィデアへの魂の向き直りが哲学の目的とされた。一方世俗的な価値観に囚われているとしてd儒家を批判した荘子は胡蝶の夢の寓話のなかで蝶と自分の区別はないと説いた。さらに是非や善悪などの対立は相対的なもので人為や対立を超えたひとしい絶対的世界こそ真実だとして、この世界の有様を( 4 )と呼んだ。
また囚われから離れられるには囚われに気づくとともにより良き生き方が示唆されるからであろう。イスラーム以前のアラプの人々は、e多神教である部族の宗教に従うことが正しい道であると考えていた。彼らのなかにイスラームに惹かれる人々が現れた理由のーつは部族の保護を得られなくなった社会的弱者を救済し、互いに連帯する生き方がクルアーン（コーラン）の中で提示されたことであろう。パウロもまた、はじめは ( 5 )に代表される従来の律法を厳格に守ることに固執していた.。しかし、イエスの教えと出会うことを通して自らの傲慢さに気づかされた彼は、イエスの福音の中にf新しい生を見いだすこととなった。
人は気づかないまま何かに囚われていることがあるが，自分の考え方を相対化する心のあり方を身につけるということは、囚われている自分に気づき、より良き生き方へと心の窓を大きく開くことになるだろう。

問 1 文章中の ( 4 )と( 5 )に入れるのに最も適当なものを、次のそれぞれの?～?のうちからーっずつ選べ。
( 4 )｛?逍遥遊　?万物斉同　?無為自然　?心斎坐忘｝
( 5 )｛?三宝　?四書　?五戒　?十戒｝

( 4 )解説　http://www7a.biglobe.ne.jp/~yasui_yutaka/genryushisou/shoshihyakka.htmに荘周について詳しい解説があるので参照してください。

逍遥遊－何ものにもとらわれない自由気ままな境地に遊ぶこと。
万物斉同－大きな観点にたってみれば、物事の大小、善悪、美醜など細かい異同はどうでもよく、万物は斉しく同じだと捉えてよいという考え方。
無為自然－物事はありのままがいいので、人為的にいじくって歪めないようにしようという考え方
心斎坐忘－一切の分別判断を捨て去って心を虚しくして「道」と一体化すること
「人為や対立を超えたひとしい絶対的世界こそ真実」だとして、この世界の有様のことなので、「万物は斉しく同じだ」ということが正解。

[4] mixiユーザー 01月19日 12:18

解説 ( 5 )の解説
?三宝―仏教でいう三宝とは、仏・法・僧のこと。『憲法十七条』に「篤く三宝を敬え、三宝とは仏・法・僧である。」と記述されています。
?四書―儒教で四書とは、論語・孟子・大学・中庸のことをさす。
?五戒―仏教で五戒とは、五つの戒めで「不殺生戒・不偸盗戒・不飲酒戒・不妄語戒・不邪淫戒」のこと。
?『バイブル(聖書)』で十戒とはモーゼが出エジプトの際、シナイ山で授かった十の戒めのこと。

「一、あなたはわたしの他に何ものも神としてはならない。　　
二、あなたは自分のために, 刻んだ像を作ってはならない。　
三、あなたはあなたの神, 主の名をみだりに唱えてはならない。　　
四、安息日を覚えて, これを聖とせよ。　　
五、あなたの父と母を敬え。　　
六、あなたは殺してはならない。　　
七、あなたは姦淫してはならない。　
八、あなたは盗んではならない。　
九、あなたは隣人について，偽証してはならない。
十あなたは隣人の家を貪ってはならない。」　　　
　パウロは熱心なユダヤ教徒で『バイブル』のモーセの十戒を守って、それに背いたキリスト教徒を弾圧していたので?が正解

[5] mixiユーザー 01月19日 15:08

問2の解説
四諦（したい）とは苦諦・集諦・滅諦・道諦の四つの真理です。これは煩悩の原因を明らかにして、その原因を取り除き、魂の平安を得ようとする考え方です。

?苦諦－仏陀は先ず人生が四苦八苦に満ちているという一切皆苦の自覚から出発します。四苦とは生まれる苦しみ，老いる苦しみ，病める苦しみ，死の苦しみつまり生老病死を意味します。それらに怨憎会苦（厭な人に会う苦しみ），愛別離苦（愛する人と別れる苦しみ），求不得苦（求めても得られない苦しみ），五蘊盛苦（心身から生じる苦しみ）を加えて，人生は苦しみに満ちているとしたのです。何か自分だけが苦しんでいると考え，世間に対して僻んでいる人がいますが，人には人それぞれの不幸があって，それぞれの苦悩を生きていると覚れば，少しは楽になり，妬みや僻みがとれて素直に生きられるのです。
　ただし苦諦は苦だと認識するのはそれを克服するためですから、諦めるわけではありません。

?集諦―苦の生じる原因，渇愛にあるという真理が集諦です。人はいたるところで対象に渇愛します。快楽を求め，個体の存続を求め，権勢や繁栄を追い求める渇愛に囚われているのです。苦の原因が渇愛だというだけですから、集諦では他者に功徳をつむなんて話はでてきません。

?滅諦―この渇愛を放棄し，そこから離れることができれば当然，渇愛が原因になっている全ての苦から脱却できるのです。これが苦の止滅の真理である滅諦です。我執への囚われをなくせば、苦を滅することができるというわけですから、離れようとしているわけです。

?道諦―ではどうすれば渇愛から離れ，苦を止滅できるのでしょうか。その修行法が苦行や快楽の両極端を離れ、静かに瞑想して覚りを得る中道、そして八正道だという真理が道諦です。これが正解です。

[6] mixiユーザー 01月20日 06:51

問3解説古代のストア派はヘレニズム期から古代ローマ帝国期に活躍した。ストアと呼ぶのは、開祖ゼノンを中心にアテナイの彩色柱廊（ストア・ポイキレ）で語らっていたからである。
□ストイシズムは禁欲主義と訳されるが、それはストア派が人間の本性は理性にあるので、人間たるもの情欲によって理性を乱されてはならないというストア派の理性主義的なポリシーに由来している。
□またストア派は、自然法思想を生み出した。理性は神々と人間は共有していて、それは自然を貫いているものであると捉えているので、だれもが理性によって納得できる自然法に基づいて生きるべきだとした。

?開祖ゼノンはアテネに住んでいた。
?人間理性は情欲に左右されてはいけないという立場である。
?自然法思想と一致している。正解　
?ストア派は理性主義

[7] mixiユーザー 01月20日 06:59

第2問の問2と問3の問題を飛ばしていたようなのでここに書き込みます。

問 2 下線部a に関して、ブヅダの教えをまとめた四諦の各々についての説明として最も適当なものを、次のそれぞれの?～?のうちからーつ選べ。

?苦諦：自分の欲するままにならない苦は、努力で克服するのではなく、人生は苦であると諦めることで，心の平安を得られるということ。

?集諦：あらゆる存在、因と縁が集まって生ずるから、実体のない我に固執せず、他者に功徳を施すことで救いが得られるということ。

?滅諦：滅は、もともと制するという意味であるが、欲望を無理に抑えようとせず．煩悩がおのずから滅することに任せよということ

?道諦：快楽にふけることや苦行に専念するという両極端に近づくことなく、正しい修行の道を実践することが肝要であるということ

問3 下線部bに関して，ストア派の人々が説いた「自然に従って生きよ」とは何を意味するのか。最も適当なものを．次の?～?のうちからーつ選べ。

?文明化された都市においては理性的な判断を惑わすものが多いため、自然の中で魂の平静を求めて生きよ．という意味

?感情に左右されやすい人間の理性を離れ、自然を貫く理法に従うことにより、心の平安を得て生きよ、という意味。

? 人間の理性を正しく働かせ、自然を貫く理法と一致することで、心を乱されることなく生きよという意味

?人間の理性を頼みとして努力をするのではなく、自然が与えるもので満足することを覚えよという意味

[8] mixiユーザー 01月20日 09:23

問4 下線部c に関してプラトンの考え方に合致するものとして最も適当なものを次の?～?のうちからーつ選べ。

?イデアは個物に内在する真の本質であり、感覚ではなく，知性だけがそれを捉えることができる。

?イデアは生成消滅しない真の存在であり、感覚ではなく，知性だけがそれを捉えることができる。

?イデアは個物に内在する真の本質であり、感覚は知性の指導のもとにそれを捉えることができる。

?イデアは生成消滅しない真の存在であり，感覚は知性の指導のもとにそれを捉えることができる。

問4の解説
　プラトンのイデア論は、知を重んじるギリシア的主知主義の典型です。

□五感によって感じ取るのではなく、理性によって概念的に把握することが求められるわけです。ですから物事の本質は、感覚で見て分かるのではなく、イデアとして理性だけが存在する「イデア界」で前もって知られている必要があると考えました。

□たとえば小動物が現れた時に、それが犬か猫かを区別するには予め犬なり猫なりがどういうものか、イデア(観念)を持っていて、それを当て嵌めなければ区別できないということです。

□そのイデア自体は生成消滅しないで常に存在するという意味で、真実在であるというのです。

正解は?

http://www7a.biglobe.ne.jp/~yasui_yutaka/genryushisou/helle.htm
「11イデアの世界」をよく読んで理解しておいてください。

[9] mixiユーザー 01月20日 22:41

問5 下線部d に関連して、次のア～エは諸子百家の思想家たちの考え方であるが，それぞれ誰の思想であるか。その組合せとして最も適当なものを下の?～?のうちから一つ選ペ。

ア　人は先王によって定められた礼を身に付ければ、争いを未然に防ぐことができ、各自が社会規範を守れば社会秩序は維持される。

イ　天命によって天子となった者もひとたびその徳を失えば新たな有徳の者に取って代わられるが，その革命には武力も認められる。

ウ　高い徳を積んだ人格者が政治に当たれば、その徳はおのずから国民を感化して秩序が保たれ、国家は安寧に統治される。

エ　厳正な法に基づく信賞必罰によって利己的な本性を抑止すれば、国民は罰を恐れて悪事をなさず、安定した国家統治が実現できる。

?ア韓非子　イ孟子　ウ孔子　エ荀子
?ア韓非子　イ荀子　ウ孔子　エ孟子
?ア荀子　イ韓非子　ウ孟子　エ孔子
?ア荀子　イ孟子　ウ孔子　エ韓非子
?ア孔子　イ荀子　ウ韓非子　エ孟子
?ア孔子　イ孟子　ウ荀子　エ韓非子

問5の解説
アは礼によって治める礼治主義なので荀子か孔子

イは、天子の血統で皇帝が世襲されるが、やがて徳が衰えると、別の家系に天命が下って、天子の姓が易(かわ)るという易姓革命論なので、孟子。これで?か?に限定される。

ウは徳で治める徳治主義で孔子か孟子。これで?に決定。

エ法に基づく信賞必罰というのは法治主義なので韓非子。正解?

http://www7a.biglobe.ne.jp/~yasui_yutaka/genryushisou/shoshihyakka.htm
「諸子百家の思想」をよく読んで区別がしっかりできるようにしておくこと。
詳しくは「中国思想史講座」の「諸子百家の思想」を参照してください。
http://www7a.biglobe.ne.jp/~yasui_yutaka/chinashisoushi/mokuji.htm

[10] mixiユーザー 01月22日 10:55

問6　下線部eに関してムハンマドの思想が旧来の多神教と対立した要因のーつに挙げられるものとして最も適当なものを次の?～?のうちからーつ選べ。

?ムハンマドが説いた唯一神の教えは、部族制に基づいた多神教を否定し、アッラーの前でのすべての人間の平等を主張することで部族の枠を越えた共同体の形成を促した。

?旧来の多神教ではモーセやイエスの説いた神であるヤハウェをアッラーと並べようとするが、ムハンマドが説く唯一神の教えはヤハウェを認めようとしなかった。

?部族制に基づいた多神教は、メッカのカーバ神殿と結び付いた偶像崇拝的要素を有していたので、ムハンマドはメディナへと移住し（聖遷），以後カーバ神殿での礼拝そのものに反対した。

?ムハンマドを救い主として信じることは六信のーつであるにもかかわらず，旧来の多神教を信奉する部族の長たちはムハンマドの宗教的権威を認めようとしなかった。

問6解説

□唯一神信仰には、ユダヤ教・キリスト教・イスラム教が挙げられます。この三者の関係を知らないと、この問題が解けないだけでなく、現代の世界平和の問題も理解できません。ユダヤ教はユダヤ人の民族宗教ですが、ユダヤ人の祖先がヘブライ人と言いまして、唯一神信仰はヘブライ人の中から生まれたといわれています。

□キリスト教は、ユダヤ教の中のメシア(救世主)信仰を引き継いでいます。特にイエスをメシアと認める信仰がキリスト教なのです。ちなみにキリストとはメシアのギリシア語であって、人名ではありません。

　イスラム教は、ユダヤ教の唯一絶対神信仰を継承します。ただしユダヤ人は神が授けた律法(トーラー)を守らなかったために、神に見捨てられたと考えています。ユダヤ人に代わって自分たちが神への絶対帰依(神にすべてまかせて、命令には絶対服従する)を貫くのがイスラム教です。イスラムというのは「絶対帰依」という意味です。

□ですからイスラム教からみればユダヤ教のヤハウェとイスラム教のアッラーは全く同じ神です。ただユダヤ人に授けた古い律法はヘブライ語だったので、最後の預言者であるムハンマドはアラビア人なので、アラビア語で新しく授けたわけです。それが『クルアーン』に書かれていて、これを絶対に守りなさいということです。

□イスラム教から見れば、キリスト教は預言者であったイエスを神の子だとして神格化したので、唯一神信仰をキリスト教は裏切ったことになります。

?は正解です。部族の枠を越えたアッラー信仰の共同体をウンマと呼びます。
?ヤハウェがアラビア人にはアッラーという名前で信仰されているということです。
?イスラム教の聖地はメッカのカーバ神殿で、一生に一度はカーバ神殿に参拝することをハッジと呼び、五行の一つです。
?ムハンマドは救い主(メシア)ではなく使徒(ラスール)です。あるいは最後の預言者です。

□ムスリム(イスラムを実行する信徒)の信仰と儀礼を六信五行と言います。

六信とは「神・天使・経典・預言者・来世・天命」を信仰することです。

五行とはシャハーダ（信仰告白）・サラート（礼拝）・サウム（断食）・ザカート（喜捨）・ハッジ（巡礼）を行うことです。はじめはこれの他にジハド（聖戦）もありました。

http://www7a.biglobe.ne.jp/~yasui_yutaka/genryushisou/kirisutokyo.htm
「7イスラムの思想」を参照のこと。

[11] mixiユーザー 01月23日 23:51

問7下線部fの内容の説明として最も適当なものを次の?～?のうちからーつ選べ。

?律法を知らない異邦人に対しても回心を促し、預言者によって新しくされた律法に生きる喜びを伝道する生き方

?過去のパリサイ派としての生き方を悔い改め、自ら罪を贖(あがな)うことで、将来は救われるという希望にあふれた生き方

?律法を守ることのできない者であっても、罪を赦(ゆる)す神の愛を信じることによって、互いに相手を大切にする生き方

?罪人を排除するのではなく、憐れみの心をもって接し、律法的に正しい者へと成長を促す、教父にふさわしい生き方

問7解説□パウロは、ユダヤ教のファリサイ派の人で、イエスの復活を信仰する人々を弾圧していました。ファリサイ派はあくまで律法を守ることによって神の国に入れるという信仰でしたが、イエスの復活を信仰している人々はイエスの聖霊によって救われると信仰していたからです。

□パウロに弾圧されて、拷問にかけられたりしたキリスト者たちは、パウロを恨むどころか、イエスがメシアであることを知らないパウロを憐れみ、パウロのために祈ったわけです。憎しみに対して愛で報いたわけですね。

□この愛の攻撃が結局効いたのでしょう。パウロはそこまで人間を変えることができたイエスの教えが、インチキだとは思えなくなって、回心したのです。
?ユダヤ教の律法主義を批判したイエスによって、パウロが回心させられたので間違い。

?パウロはファリサイ派としてキリスト教徒を弾圧したことを反省して、悔い改めましたが、その罪は自分で贖うことはできません。すでにイエスが贖罪の十字架について罪を贖ってくれているということを信じるしかないのです。

?イエスの贖罪の十字架によって、罪は贖われていますから、それを信仰すればいいわけで、イエスが我々を愛したように、隣人を愛して生きていけばいいということです。?が正解

? 罪は贖うことはできないのですから、罪人のまま神の愛によって救われるわけです。キリスト者は、自分たちがイエスを十字架につけた罪人だと自覚していますから、罪人たちを甦生させて救ってやろうというような傲慢な態度はとりません。

http://www7a.biglobe.ne.jp/~yasui_yutaka/genryushisou/kirisutokyo.htm
を参照のこと。

[12] mixiユーザー 01月24日 09:58

訂正　第2問の本文で「感営的」とあるのは「感覚的」の間違い。
第2問　問7の解説?で「罪人たちを甦生」とあるのは「罪人たちを更生」の間違い

問8 　本文の趣旨に合致する記述として最も適当なものを次の?～?のうちからーつ選べ。

?誰にとっても囚われから自由になるのは難しいことであるが，自らの囚われを見つめることができたとき、それは囚われから解き放たれ、より良き生き方の端緒が得られたことを意味している。

?人々がより良き共同体を形成するために最も必要なことは、それぞれの人が自分にとって当然のことと思われている価値観に対する囚われを捨て，他者と同じ価値観を共有することである。

?囚われに気づくことは難しいだけでなく、直接的に指摘されてもなかなか受け入れ難いため、先哲たぢは巧みな比喩による示唆が最も有効な方法であると考え、これを用いることに精力を傾注した。

?囚われは、情念による判断の誤りを理性によって克服できるという過信から生ずるものであるから、そのような傲慢を捨てることによってこそ、より良き生き方への門口に立つことができる。

解説問8 本文の趣旨は最後の段落にある場合が多いので、最後の段落が趣旨になっていることを確かめて解答すると要領がよい。現代文の要領と同じ。

最後の段落
「人は気づかないまま何かに囚われていることがあるが，自分の考え方を相対化する心のあり方を身につけるということは、囚われている自分に気づき、より良き生き方へと心の窓を大きく開くことになるだろう。」

?は最後の段落の言い換えなので正解。
?囚われから自由になることと、価値観を共有することは別。価値観を共有するということは、共有する価値観に囚われるということになる場合もある。
?比喩の有効性がテーマではない。
?理性の傲慢を批判することがテーマではない。

[13] mixiユーザー 01月26日 09:24

第3問　次の文章を読み、下の問い(問1～8）に答えよ。（配点 24）

人は出会いによって新たな思想や生き方を切り開いていくことがある。ここでは日本の先人の例を通して、出会いをきっかけにどのように思想が展開し深化していったかについて考えてみよう。
　仏教をさらに深く学ぶため唐に渡った空海は，密教の僧恵果に出会った。帰国した空海はそれを真言密教として体系化し，{　13 } と－体化することで即身成仏できると説いた。また自らの罪業に思い悩んでいた親鸞は、比叡山を下り、京都の六角堂で参籠していたときにa観音菩薩から夢告を受けたという。その後法然の門下に入り，朝廷によるのb念仏停止に連座して流罪となった。恵信尼と巡り合い妻としたのはその頃である。阿弥陀仏の救済力を説く親鸞はこの出会いを通して凡夫としての自覚をいっそう強め、彼の思想は人々に受け入れられていった。
戦国の動乱による民衆の苦しみを憂え、自身の無力を嘆いたc臨済宗の僧藤原惺窩は早くから儒学を志してもいた。惺窩は、慶長の役で連行された朝鮮の朱子学者姜沆に接し、その学識と人格に強く心を動かされる。惺窩がd身を転じ儒学者として独立した背景のーつにはこの出会いがあった。一方当時の身分社会では低い地位にあった商人たちのなかにも日々の生活のなかで出会った信仰や学問をもとに、新しい思想を生み出す者が出てきた。例えば、{　14 }は、神道や仏教，儒教と老荘思想などを取り入れ独自の実践的哲学である心学を打ち立てた。
近代に入り、西洋諸国の仲間入りをするためにe文明開化路線を推進する人々が現れる。しかし、アジア諸国の思想や美と新たに出会うことで、それまでになかった思想を展開する者もいた。その代表的な人物である柳宗悦は朝鮮の日用雑器と出会い，それを生み出した名も無き工人たちの無私の心に触れた。柳はそこに芸術家が創り出した美術品に優る生活のなかで磨かれた美を直感し、日本の職人の工芸品にも同じ美を見いだしてそれらを民芸と呼んだ。この美に対する独特の捉え方に基づいて、柳は，陶芸、木工、染織などのf近代化の流れのなかで忘れ去られた手仕事の価値を広く知らしめ、その保存と再生に生涯を捧げた。
以上の人々は自らの思想や人生を展開するにあたって、出会いを重要な契機としていることが分かる。いずれも　{　A } と言えよう。

[14] mixiユーザー 01月29日 18:16

問 1 文章中の｛　13 ｝・｛　14 ｝に入れるのに最も適当なものを、次のそれぞれ ?～?のうちからーつずつ選べ。
｛　13 ｝?弥勒菩薩　?法蔵菩薩　　?釈迦如来　　?大日如来
｛　14 ｝?安藤昌益　　?石田梅岩　?荷田春満　　?富永仲基

問１解説　
□空海は真言密教ということが先ず頭になければできません。密教とは宇宙の本体仏である法身仏が「大日如来」として秘密に説かれた教えです。これは人間として生まれて悟りを開かれ、法を説かれた釈迦如来の顕教と区別されます。

□密教経典といえば、『大日経』『金剛頂経』が代表的ものです。『理趣経』がよく唱えられますが、これは『金剛頂経』の一部です。『理趣経』は人間の欲望や快楽を肯定し、セックス讃美から始まっています。「妙適清浄の句、是菩薩の位なり…交接の恍惚の境地は本質として清浄であり、菩薩の境地にある。」

?弥勒菩薩は、梵名マイトレーヤ弥勒はゴータマ・シッダッタの次にブッダとなることが約束された菩薩（修行者）で、シッダッタの入滅後56億7千万年後の未来に姿を現われて、多くの人々を救済するとされています。それまでは兜率天で修行（あるいは説法）しているといわれます。『法華経』に出てきます。

?法蔵菩薩は、自分が成仏するときには一切衆生を自分の浄土に救いとることが出来るのでなければ、成仏しなくてもいいという誓願を建てられて見事に成仏して阿弥陀如来に成られたということなので、浄土教では阿弥陀如来の御名を唱えれば誰でも極楽往生できると説かれています。

?釈迦如来は顕教を説かれたのです。

?大日如来－密教の如来です。摩訶毘盧遮那仏Mahaavairocana（マハー・ヴァイローチャナ）であり、偉大なる光明という意味であるとされます。ヴィローチャナ(Virocana)が太陽神なので、それで大日如来と漢訳されたといわれます。これが正解

[16] mixiユーザー 01月30日 08:53

アニリン三大健等でしたね。

問１｛　⒕　｝の解説

例えば、{　14 }は、神道や仏教，儒教と老荘思想などを取り入れ独自の実践的哲学である心学を打ち立てた。

　これは心学の樹立者ということで、江戸時代の町人学者石門心学の?石田梅岩が正解だと分かります。石田梅岩は、主観への執着を捨てて、天地の心と一つになる「天人合一」の立場を強調して「心学」を唱えました。ぼうふらは人をささないけれど、蚊になると人をさすということで、商人には商人の武士には武士の道があるとしました。商人道徳として「正直と倹約」を説き。「実（まこと）ノ商人ハ先モ立，我モ立ツコトヲ思フナリ」（『都鄙問答』）と述べています。

?安藤昌益（1703～1762) は八戸の医者でしたが, 『自然真営道』『統道真伝』を著し，不耕貪食（ふこうどんしょく）する階級がいて, 直耕直食（じきこうじきしょく）する農民から収奪する階級社会を法世（ほっせ）として根底的（ラジカル）に批判しました。全ての人が土地を耕して作物を造る自然世（じぬんせ）に復帰すべきだとしたのです。

?荷田春満（1669～1736) は国粋主義者で「ふみわけよ大和にあらぬ唐鳥の跡をみるのみ人の道かは」という歌をのこし, 情熱的に日本の古典を研究しました。国学の五大人の一人ー僧契沖、荷田春満、賀茂真淵、本居宣長、平田篤胤

?富永仲基（1715～46) は『出定後語』で，神・儒・仏の思想史を発展の相において捉え，それらを相対化しました。つまり冷静に各思想家の思想形成の営みを分析して，思想の発展法則を示したのです。「加上の法則」と言いまして、後世の継承者が始祖の説の不十分なところを自説で補う際に、それが元々始祖の説であったかに加上してしまうことを指摘したのです。

[17] mixiユーザー 01月31日 11:31

問２　下線部ａに関して次の文章は，観音菩薩が夢のなかで親鸞に告げたとされる言葉である。この文音と本文を併せて理解した場合，親鸞の信仰の特徴についてどのようなことが言えるだろうか。最も適当なものを，下の ?～?のうちからーつ選べ。

あなたが宿業あってもしも女性と結ばれるならば，私がその女性となってあなたと結ばれよう。一生の間あなたを尊いものとして照らし，臨終においてはあなたを導いて極楽浄土に生まれさせよう。（覚如『御伝鈔』による）)

?親鸞は、この世で恵信尼を妻としたことで観音菩薩にも結び付き、僧でも俗でもない立場から生活に根ざした教えとして他力信仰を説き広めた。

?親鸞は、この世で恵信尼を妻としたことによる罪業を贖うために観音菩薩にも帰依し、そのことを通して生涯にわたって他力信仰を説き広めた。

?親鸞は、異性に対する煩悩に苦しんだが、観音菩薩に帰依することで煩悩を抑えることができ、人々の苦しみに心を寄せて他力信仰を説き広めた。

?親鸞は、異性に対する煩悩に苦しんだが，観音菩薩の智恵と－体化することで煩悩を克服し、生まれ変わりの思想として他力信仰を説き広めた．

解説　問２　
『本願寺聖人伝絵（ほんがんじしょうにんでんね）』が親鸞聖人の正統な伝記として浄土真宗で伝えられています。親鸞の曾孫である本願寺第3世の覚如による著作で、特に詩の部分は御伝鈔（ごでんしょう）、絵を御絵伝（ごえでん）というのです。

□親鸞が最初に結婚した女性は恵信尼だったと『御伝鈔』に書いてあるわけではありません。『尊卑分脈』という貴族の家系を記した書物では、関白九条兼実の娘玉日と京都で結婚したことになっています。ところがこの話は教祖が高貴な家柄で、高貴な娘と結婚したことにして格を上げるための潤色だろうとされて、近代以降は疑われていたのです。しかし最近は、『親鸞聖人正明伝』にもある玉日との結婚は、やはり実話だったという研究が有力になりつつあります。

?「恵信尼を妻としたことで観音菩薩にも結びつき」、玉日のことがあるので、恵信尼を出すのは問題がありますが、それは問わないとして、この部分はいいとしましょう。「僧でもない俗でもない」の「非僧非俗」といいまして、流罪で僧籍を朝廷から剥奪されたので、非僧だということです。それに「肉食妻帯」をして僧の戒を破っているという意味でも「非僧」といえるでしょう。非俗というのは、専修念仏を民衆にひろげる立場ですからその意味では非俗なのです。これが正解。

?観音菩薩に帰依しても罪業を贖えるわけではありません。「罪業を贖う」といえば、犠牲を払って罪を償うわけですから。

?観音菩薩に帰依しても煩悩を抑えることができないので、妻帯するほかないわけです。

?煩悩を克服するのではなく、煩悩を抱えたままで、南無阿弥陀仏を唱えると「自然法爾」といってあるがままに法に包まれるわけです。

□生まれ変わりは輪廻思想ですが、浄土教は阿弥陀浄土に救いとられるという発想で誰かに生まれ変わるというようには考えません。

□ただし『教行信証』では「二種回向」の信仰が核心だとしています。それは浄土に往生する「往相回向」で終わらずに、この穢土に戻ってくる「還相回向」も大切だという信仰です。これを輪廻思想と解釈することもできますが、現在の浄土真宗ではそうは考えません。

□浄土も穢土も実体的に捉えるのではなく、心のあり方として捉えているようです。ですから死んだら極楽浄土に行けるというのは、現在の浄土真宗の教えとは違うということになります。霊が実体としてあって、この世とあの世を往還するとは教団では考えていません。それで「ご霊前」と書かないように指導しています。

[18] mixiユーザー 02月01日 18:43

問3 下線部ｂに関して、法然が天台宗など旧仏教から迫害を受けた理由として最も適当なものを次の?～?のうちからーつ選べ。

?浄土に往生する手立てとして、他の様々な修行法によらずもっばら念仏を称えることを説いたため。

?旧仏教を改革しつつ、悟りを求める心を軽視する立場を批判して、民衆教化に努めたため。

?釈迦の没後次第に人心が乱れ、仏教が衰え、世がすさむとする思想を社会に広めたため。

?すべての生ある存在を救おうと願い．その願いが成就しない間は決して成仏しないと誓ったため。

解説問３

□比叡山延暦寺は天台宗の総本山で、元々は最澄が、法華一乗の思想に基づいて開いたものです。ですから『法華経』中心の信仰でした。しかし『法華経』の中に阿弥陀如来や観世音菩薩、弥勒菩薩などの信仰も出てきます。そしてすべての衆生を救うとされる「久遠の本仏」は密教の大日如来と同じだとして密教信仰も延暦寺では盛んになったのです。浄土宗の開祖である法然上人も、比叡山の僧でした。浄土真宗の親鸞、臨済宗の栄西、曹洞宗の道元、日蓮宗の日蓮なども延暦寺の僧だった経歴があります。

?法然といえば「専修念仏（せんじゅねんぶつ）」です。つまり阿弥陀如来に救ってもらうための修行といえば、「南無阿弥陀仏」と念仏を称えるだけの「称名念仏」だけでよいという教えです。それで僧も寺院も教団も他の修行も要らないことになるので、既成仏教からすれば、総否定されたことになるので、既成仏教から迫害されたのです。正解

?法然が称名念仏だけでよいとしたのは、既に時代は末法に入っていて、自力修行で悟りを開こうとする聖道門は無理で、念仏によって阿弥陀仏の慈悲救われる浄土門しか、往生極楽の方法はないとされたからです。つまり悟りを求めるのは現世では無理だという立場です。

?末法思想が弾圧されたのではなく、末法では仏教の修行を否定するような「専修念仏」が弾圧されたのです。

?は、いわゆる「弥陀の本願」とされるものです。「もし我成仏せんに、十方の衆生我が名号を称せん、下十声に至るまで、もし生まれずは正覚を取らじ」つまり法蔵菩薩はこう誓われたのです。「もし自分が仏に成ったとしても、世界中の生きとし生ける者は南無阿弥陀仏と十回称えても、自分の浄土に生まれさせることができないくらいなら、その程度の覚りなら覚らないほうがましである（つまりすべての人を極楽往生させられないのなら成仏しませんという意味）」

[19] mixiユーザー 02月02日 08:47

問 4 下線部ｃに関連して，日本臨済宗の開祖である栄西の教えとレて最も適当なものを，次の?～?のうちからーつ選べ。

?仏の眼差しから見れば，貧富や身分の上下は見せかけにすぎない。為政者は仏の眼差しを心にとめて人々に対するべきだ。

?このこの世界は欲望や苦悩に満ちている。この世をけがれた世として厭い，極楽浄土に往生することを願い求めなければならない。

?山川や草木といった心をもたないものさえも仏性をもち，ことごとく真理と一体になって成仏することができる。

?末法の時代であっても戒律を守り，坐禅の修行に励み，国家に役立つ優れた人物を育成することが重要である。

解説問４
　日本に臨済宗を伝えた栄西（1141～1215）は『興禅護国論』で「大鈍小智の類といへども、もし専念に坐禅せば、すなわち必ず道を得ん」と馬鹿でも悟れるとしています。『興禅護国論』の題名からも分かりますように、禅を興せば国が護れるというのですから、禅で覚った人間は、煩悩に惑わされないしっかりした人物になるので、国が栄えるわけですね。

□また曹洞宗を伝えた道元（1200～1253）も「人々皆仏法の器なり。かならず非器なりと思うことなかれ、依行（修行）せば必ず証をうべきになり」と教えられたと、弟子懐奘著『正法眼蔵随聞記』に伝えられています。これは人間が仏であることを自らの修行によって体現すぺきだというヒューマニズム宣言です。従って正解は?です。

?大乗仏教にはだれでも仏性をもっていて、成仏できるという思想があります。このことを「一切衆生悉有仏性（いっさいしゅじょうしつうぶっしょう）」といいます。

?源信は『往生要集』「厭離穢土，欣求浄土」を説きました。

?天台本覚思想（てんだいほんかくしそう）では「一切衆生悉有仏性」を踏まえて「草木国土悉皆成仏」を説きました。つまり草木や土もことごとく成仏するというのです。それはあるがままの姿こそが覚りの境地であるということです。人は人として生き、鳥は鳥として生き、花は花として生きればいいそれが、本来の覚りの姿だということです。だから次の「花」の歌詞に通じるものがあります。

「花」喜納昌吉作詞・作曲
川は流れて　どこどこ行くの　人も流れて　どこどこ行くの　そんな流れが　つくころには　花として　花として　咲かせてあげたい　泣きなさい　笑いなさい　いつの日か　いつの日か　花を咲かそうよ　泣きなさい　笑いなさい　いつの日か　いつの日か　花を咲かそうよ

[20] mixiユーザー 02月03日 08:43

問５　下線部ｄに関連して惺窩の思想的展開の説明として最も適当なものを，次の?～?のうちからーつ選べ。

?禅宗が支配層の支持を集めていたのに対し，民衆の強い支持を得ていた儒学の影響力の大きさに注目し，国教にすることを主張レた。

?実社会の利害にまみれた禅宗よりも，出世間を説く儒学の教えに深く共感し，権力者におもねることなく多くの優れた弟子を養成した。

?道徳や礼儀による社会秩序を説く儒学の教えに強く引かれ，儒学を五山僧の教養から独立させて，近世日本に定着させる端緒をなした。

?身分秩序を重んじ社会の安定を説く儒学に心を動かされ徳川家康に佳えて．幕藩体制を支える学問としての朱子学の基礎を固めた。

解説問５

　近世儒学の祖と呼ばれているのが藤原惺窩（1561～1619) です。彼は出家して相国寺で仏教や儒教の勉強をしていました。彼は包括的精神でいろんな教えを学んだ上で, 朱子学を選択してのです。彼が仏教では駄目だと思った理由は, 仏教では社会秩序は成り立たないと考えたからです。戦国の混乱から脱却してやっと平和統一に向かい始めたことによって, 儒教こそ社会秩序に適っていると思われたのです。

　彼は『行状記』に仏教をしりぞける理由を次のように述べています。「釈氏すでに種を絶ち, 又義理を滅す，是れその異端なる所以なり。」「種を絶つ」とは妻帯しないことで, これでは家が成り立ちませんから社会は崩壊します。また「義理を滅す」とは人倫関係から抜け出して, 出家するのですから, 社会秩序を打ち立てる思想にはなれないのです。

　惺窩は, 天道も性（本然の性）もイデア的な理として捉えています。それらは結局同じであって，人は理に従えば，天人は一つだとします。でも欲に従えば，人欲が徳に勝って天は天，人は人となってしまいます。ですから自分の心を以て万物の心と理で通じ会えば，道が通じて，万物は自分の思うままに育てることができるというのです。

?当時の儒学は難しい漢文の教養なので、民衆の支持というところまでいっていません。

?禅宗は出世間を説き、儒学は実社会の秩序を整えることを説きます。

?正解です。

?藤原惺窩は徳川家康から仕官を勧められますが、断って弟子の林羅山を紹介しました。

次のサイトの１朱子学の思想を学習しておいてください。
http://www7a.biglobe.ne.jp/~yasui_yutaka/nihonshisoushi/kinsei.htm

[21] mixiユーザー 02月05日 18:18

問6下線部ｅに関連して，次の文章は，福沢諭吉が文明について記述したものである。その説明として最も適当なものを，次の?～?のうちからーつ選べ。

□昔鎖国の時にありては，わが人民はもとより西洋諸国なるものをも知らざりしことなれども，今に至りてはすでにその国あるを知り，またその文明の有様を知り，その有様を我に比較して前後の別あるを知り，わが文明のもって彼に及ばざるを知り，文明の後るる者は先だつ者に制せらるるの理をも知るときは，その人民の心にまず感ずるところのものは，自国の独立如何（いかん）の一事にあらざるを得ず。（福沢諭吉『文明論之概略』）

?西洋よりも後れている日本は，東洋の伝統的精神のうえに，西洋文明をもっばら知撤・技術として積極的に摂取すべきである。

? 西洋文明を知ることでかえって模倣に陥り，独立が危うくなる可能性があるので，その受容には慎重であるべきだ。

?後れている文明が進んでいる文明に支配される理屈は誤りであることを，西洋文明の摂取においても主張しなければならない。

?後れている文明は進んでいる文明に支配されるため，人々はまず日本の独立に心を向け，西洋文明を摂取しなければならない。

解説問６ー福沢諭吉は頻出ですよ。

?は清末の洋務運動の立場です。「中体西用」を唱え、中国の伝統を護持した上で、そのために西洋の進んだ科学技術をまもるべきだというものです。日本では佐久間象山が「東洋道徳，西洋芸術」をスローガンにしました。

　福沢諭吉は、明治啓蒙思想の立場ですから，封建的な古い東洋道徳を脱却し，西洋の科学的精神，合理的精神も摂取すべきだという立場です。

?諭吉は西洋が進んでいて，日本は遅れている。後れていれば支配されるおそれがあるので模倣してでも西洋に追いつく必要があるという立場です。

?当時の啓蒙思想は進化論を認めていましたので，「後れている文明が進んでいる文明に支配される理屈は誤りである」とは言えませんでした。

?これが正解です。

「日本思想史講座」の「第四章　近代日本の思想」を学習しておいてください。
http://www7a.biglobe.ne.jp/~yasui_yutaka/nihonshisoushi/kindai.htm

[22] mixiユーザー 02月06日 09:16

問7 下線部ｆに関連して近代日本の思想家たちが経験した出会いの説明として適当でないものを次の?～?のうちからーつ選べ。

?新渡戸稲造は，キリスト教に出会い日本人はこれを土台として武土道の精神を育むべきであると説いた。

? 鈴木大拙は若いころに西田幾多郎と出会い，友人として切磋しつつ，禅思想の近代的研究に先べんをつけ，それを広く海外に紹介した。

?武者小路実篤は学生時代にトルストイの思想に出会い，その人道主義に共感して理想社会を目指して「新しき村」を建設した。

?折口信夫は，柳田国男に出会い，彼に学びつつ民俗学と国文学にまたがる研究を行い，日本の神の原像について考察した。

解説問７

?内村鑑三や新渡戸稲造らのキリスト教受容は，清廉・潔癖というところで武士道に通じるところがあるというので行なわれたものだといわれます。従いまして「武士道に接木されたキリスト教」と言われているのです。ですから「キリスト教に出会い日本人はこれを土台として武土道の精神を育むべきである」というのはさかさまですね。適当でないのを選ぶのですからこれを選んでください。

?同郷の西田幾多郎、藤岡作太郎とは石川県立専門学校（後の第四高等学校）以来の友人です。鈴木（本名貞太郎）、西田、藤岡の三人は加賀の三太郎と称されたそうです。『禅と日本文化』『日本的霊性』で有名です。英語で禅を世界に紹介した功績は大きいといわれています。

?武者小路実篤は白樺派の作家としても著名です。理想的な調和社会・階級闘争の無い世界（ユートピア）の実現を目指して、1918年に宮崎県児湯郡木城村（現・児湯郡木城町）に「新しき村」を建設したが、1938年にダム建設により村の大半が水没したため、1939年に埼玉県入間郡毛呂山町に新たに「新しき村」を建設した。両村は現在もあるようです。代表作は『友情』『愛と死』，野菜の絵に「仲良きことは美しき哉」「君は君　我は我なり　されど仲良き」などの文を添えた色紙でも有名です。

?折口信夫は「葛の花　踏みしだかれて、色あたらし。この山道を行きし人あり」と歌っていますが、これは自分が独創で見出したと思っていたのに，柳田国男が既に研究していたことに共感と驚きを感じていたことを表現したといわれています。

[23] mixiユーザー 02月07日 09:21

問3 本文の趣旨を踏まえて，｛　Ａ　　｝に入れる記述として最も適当なものを，次の?～?のうちからーつ選べ。

?人，思想，事物など出会った対象は様々であるが，その人格やそこに表現された心に正面から向き合うことで，かえって他者の立場から適度な距離を保ち，これを尊ぶ思想を培うに至っている。

?人，思想，事物など出会った対象は様々であるが，自分にとって重要な出会いを見逃さず，出会いを通して自己のあり方への自覚を深め，それがなければ成立しなかったような独自の思想を展開している。

?人，思想，事物など出会った対象は様々であるが，日常生活でまず巡り合うことのない対象から影響を受け，逆に対象に変化をもたらすことで，社会に大きな影響を与える思想を展開している。

?人，思想，事物など出会った対象は様々であるが，その対象に自身の悩みを委ね，同時に他者の悩みをも受け止めることで，自分の人生の目的だけに拘らない自由な思想に至っている。

解説問３

?空海は恵果と距離を保っているわけではないので間違いです。親鸞も恵信尼と距離を保つというのはおかしいですね。藤原惺窩と姜沆，柳宗悦と朝鮮の日用雑貨もそうです。

?これが正解です。対象はさまざまですが，いずれも自己を見つめ直して，その出会いがなければできなかった独自な思想をうみだしています。

?「日常生活でまず巡り合うことのない」というのは「朝鮮の日用雑貨」ではあてはまりません。「対象に変化をもたら」したというのは確認できませんね。

?「対象に自身の悩みを委ね」たことや「他者の悩みをも受け止め」たことは指摘されていません。

[24] mixiユーザー 02月07日 09:57

第 4 問　次の文章を読み，下の問い（問 1～ 8）に答えよ。

□私たちは科学の恩恵を受けているが，科学を生み出した思考のあり方を正しく理解しているだろうか。

□元来英語の《science》という語は,ラテン語のaスキエンチア(知識一般)に由来する言葉であった。それが今日言うところのサイエンス（科学）を意味するようになったのは,ガリレイやニュートンの力学など経験的方法に基づく知識としての近代科学が誕生した16 ～17世紀以降のことだと言われている。

□近代科学の特徴は経験の裏付けがない独断論を排し,経験的で合理的な思考法を尊重する点にある。具体的には，観察や{ 22 }などの方法を用いて,仮説を検証することを試みるのである。近代科学の成立にあたって,新しい学問の方法を提示して重要な役割を果たした人物にデカルトとべーコンがいる。デカルトは合理論の立場から,これ以上疑い得ない根本原理から出発して{　23 }演繹法を重視した。一方,bベーコンは，経験論の立場から真理を探究する方法としての帰納法を提唱した。しかしcヒュームは,経験科学を支える方法の確実性に疑いを抱き,懐疑論の立場に立つことになる。

□19 世紀になって近代科学が専門分化し複数形のサイエンシズ(個別諸科学）へと変化するにつれて自然科学の方法は,他の学問にも強い影響を及ぼすようになる。自然諸科学の方法を取り入れた新しい学問の立場はd実証主義と呼ばれコントのように，これを学問進歩の最終段階であるとする主張も現れた。しかし,20 世紀に入ると実証主義万能の風潮に対しては,現象学や批判理論などの立場から厳しい批判がなされることになる。

□現代では以上のような科学の基礎をなす思考法に対する理論的な反省だけでなく,科学の発展がもたらしたe新たな倫理的問題への現実的な対応を迫られてもいる。また,科学の名を借りたf擬似科学が流行するという現象も,今日的な問題であると言えよう。その意味で，現代とは科学を可能にした精神の正の側面と負の側面が明らかになった時代にほかならない。そう考えると,私たちは,ま近代以降の科学を支える思考法の特質を視野に入れつつ,人間と科学との関係についての反省を，さらに重ねていくことが必要となるであろう。

下線部は次の部分です。
aスキエンチア(知識一般)、bベーコン、cヒューム、d実証主義、e新たな倫理的問題、f擬似科学

[25] mixiユーザー 02月08日 08:49

問 1 文章中の{ 22 },{ 　23 }に入れるのに最も適当なものを,次のそれぞれの?～?のうちからーつずつ選べ。

{ 22 }｛?反省,?実験,?対話,?観想｝
{　23 } {?確実な推論を行う,?問答を繰り返す,?対立する主張を止揚する,?観察に基づき判断する}

解説問1
{ 22 }には「経験的で合理的な思考法」が入るので、経験できるものとしては?実験,が選択されます。イギリス経験論は「実験と観察の結果確かめられたもの」以外は前提にしないことが出発点です。

デカルトは絶対確実な真理から出発して,それを公理としてその上に、確実な推論で定理を積み上げていく演繹法を用いました。だから{　23 }は?が正解です。

?は問答法でソクラテスは問答法で吟味しましたね。問答法も弁証法の基礎です。

?の「対立する主張を止揚する」はヘーゲル弁証法のところで「アウフヘーベン」というドイツ語ででてきます。

?の「観察に基づき判断する」は共通点を見出して法則性を発見する帰納法です。

[26] mixiユーザー 02月09日 08:19

問 2 下線部aスキエンチア(知識一般) に関連して 13世紀に最盛期を迎えたスコラ哲学は中世におけるスキエンチアの典型とみなされる。そのスコラ哲学の説明として最も適当なものを次の?～?のうちからーつ選べ。

?存在忘却に陥った形而上学を解体し存在への問いを新たに開始する。

?ギリシア・ローマの古典を学ぶことによって人間の自立性を回復する。

?ギリシア以来の哲学を用い、キリスト教神学の教義を理論的に体系づける。

?ただ生きることではなく善く生きるための方法を対話によって学ぶ。

□スコラ哲学は修道院の付属の神学学校で発達したキリスト教神学のための哲学です。ちなみにスコラはスクールの語源になっています。

□その際に理論付けに用いられたのが、ギリシア・ローマの哲学で、特にプラトンとアリストテレスの権威は絶対で、無謬だとされていました。

□しかしこれはおかしいことですね。だってアリストテレスはプラトンのイデア論を批判して、「個物が実体だ」とか「個物にはエイドス(形相)とヒュレー(質料)がある」とかの論理学を打ち立てたのですから。

?存在忘却についてはhttp://tobarikaikei.typepad.jp/blog/2009/08/post-56b9.htmlから引用します。つまりこれはハイデガーですね。最近立命館大学の日下部吉信教授が『ギリシア哲学と主観性』(法政大学出版)をこの視点から書きました。

「ハイデガーによれば、プレ・ソクラティカーたちのフィシスとは、単なる物質的自然、死んだ自然ではなく、むしろ生成する自然、そして存在の根源そのものである。

　これに対して、プラトンが数学的な世界観（ピタゴラス主義）によって持ち込んだイデアという不変なるものは、存在そのもの(Sein)ではなく、あるものが「何であるか」という意味でのもの(Was-Sein)でしかなかった。

　この「本質－存在」に対置されるのが、現実に存在している物事としての「事実－存在」(Dass-Sein)である。プラトンが「本質－存在」を重視したのに対して、アリストテレスは「事実－存在」としての個体に注目した。これによって「形而上学」が始まったのだ、とハイデガーは言っている。

　しかし、ハイデガーは、プラトンはもとより、アリストテレスにも味方しない。なぜなら、「事実－存在」というものは、そもそも「本質－存在」と対になって現れたものであるにすぎないからである。

□むしろ、「本質－存在」と「事実－存在」という区別の根源にあるもの、その区別によって引き裂かれたもの、つまり「存在そのもの」としてのフィシスこそが重要なのだとハイデガーは考えるのである。その意味でハイデガーにとって、アリストテレスはプラトンよりもましだが、アリストテレスもプラトンとワン・セットなのであって、ここで形而上学が始まると同時に「存在そのもの」が隠蔽され、忘却されたのだとするのである。これがハイデガーの言う「存在忘却」の歴史の始まりである。

?神学ですから、人間存在の自立性よりもいかに神に依存しているかのほうが重要ですね。

?これがもちろん正解です。

?「肝心なことは、ただ生きることじゃなくて善く生きることじゃないでしょうか」といったのはソクラテスですね。

[27] mixiユーザー 02月10日 07:41

解説3 ベーコンの四つのイドラは最頻出の部類です。これができなければ、ほとんど点数はないということです。

□イドラというのはアイドルです。アイドルスターという言葉がありますが、元々は偶像という意味です。「まがいもの」ともいいます。偶像は本物ではないけれど、本物のように振舞ってそれなりに輝いているので、つい本物と思い込み易いのです。ということでベーコンはイドラを「思い込み」や「偏見」の意味で使っています。「偶像」という意味からちょっとわざとずらしているわけです。それで「おやっ？」と思わせて印象づける独特の言葉遣いをしているということです。

?「種族のイドラ」は、この種族は民族や人種ではありません。猫や犬や人のレベルでの種族です。人間という種族に属していることによる、人間特有の偏見があるということです。物事を割り切って捉えること、正確に測らないで、らしかったらそのものだと思ってしまう傾向です。それから物事を自分にとって都合よく受取ってしまいがちだということです。そういうことで詰めが甘いと、当然実験観察でも見間違えますし、ビジネスでもしくじってしまいますね。「個人的な性格の偏りや思い込み」ではありません。

?「洞窟のイドラ」が「個人的な性格の偏りや思い込み」です。中国の古いことわざで「井の中の蛙大海を知らず」と言いますが、個人は幼い頃に受けた教育や環境によって、特有の偏見が染み付いて、物事を客観的に判断できなくなっているところがあるのです。

?「市場のイドラ」は、市場という言葉に引っかかったら駄目です。市場では言語が使われますね。その言語を使うことによって、言語に対応するものが存在すると思い込んでしまう偏見があるということなのです。たとえば「運命」「天球」「アトム」などです。ベーコンの立場は、実験観察の結果確かめられたもの以外、信用してはいけないということです。それでいくと「神」や「不滅の霊魂」というのも実験観察できませんから、科学を語るときには持ち出したらいけないということになりますね。「言葉を簡単には信頼しないため,」ではなく、反対に「言葉を簡単に信頼してしまうため」です。要するにその言葉に対応する事象が存在するかどうかは、実験と観察によって確かめないといけないということです。

?「劇場のイドラ」は、当時シェークスピア演劇が盛況でして、シェークスピア劇はあまりに台本が素晴らしいので、観客は引き込まれて、リアルな世界を見ているような錯覚に陥ったわけです。

□ただこの場合もずらしがありまして、素晴らしい構成の台本だと虚構が現実だ、バーチャルがリアルだと思い込むように、権威ある学説は論理構成がしっかりしているので、つい納得させられてしまう、しかしいかに言ってることが理にかなっていると思っても、実験観察で確かめられていないものは信じてはいけないということです。

□特にプラトンとアリストテレスは無謬だとされていて、実験・観察なしでも信じられてしまうけれど、ギリシア科学はきちんと実験・観察で確かめられていないものが多いから信じてはいけませんということです。要するにいかに絶対的権威があっても、実験・観察で確かめなければ信用してはいけないということです。これが正解です。

　ところでベーコンはあまりに文章が巧みなので、シェークスピアの正体はベーコンではないかという説があります。ニーチェもそんなことを言っていたようですよ。もちろん証拠はありません。

[28] mixiユーザー 02月11日 09:46

問4 下線部cヒュームに関レて,ヒュームの懐疑論の説明として最も適当なものを次の?～?のうちからーつ選べ。

?科学の方法は絶対的な真理を保証するものではないのだから,すべての判断を停止することによって心の平静を保つべきである。

? 最も賢い人間とは，自分自身が無知であることを最もよく知っている人間なのだから，自己の知を疑うよう心がけるべきである。

?帰納法から導かれる因果関係は観念の習慣的な連合によって生じたのだから,単なる信念にすぎないことを認識すべきである。

?人間はたえず真理を探究する過程にある以上,真理は相対的なものでしかあり得ないので,つねに物事を疑い続けるべきである。

解説問4
□イギリス経験論によりますと,実験観察の結果確かめられたもの以外は根拠にできません。ですからすべて経験に基づいています。つまり経験から帰納されたものにすぎないのです。これまでの経験には適用できてもこれからの経験に適用できるかどうかは、分かりません。

□もしこれからもこれまでどおり経験できるとしたらの仮定の上にすぎないのです。従ってヒュームは「明日の朝太陽が東から昇るかどうか分からない」と懐疑論を唱えたのです。

?「判断を停止することによって心の平静を保つべき」というのは、ヘレニズム期の懐疑論者ピュロンの議論で、断定を避けて判断を停止するのを「エポケー」と言います。

?ソクラテスは問答法によって知を吟味して「無知の知」の自覚に導こうとしました。己の無知を知っていることにおいてソクラテスにまさる知者はいないということです。

?これは経験に基づいて観念につながりがあることを発見するのが帰納法ということなので、イギリス経験論の立場であり、正解です。

?これまでの真理を相対的としてより発達した真理を求め、より高度な真理への階梯とみなして、真理の体系を哲学体系にしようとしたのがヘーゲル哲学です。

[29] mixiユーザー 02月12日 16:15

問 5 下線部dに関連して実証主義と同じく人間や社会の捉え方に影響を与えた新たな理論のーつにダーウィンの進化論がある。その説明として最も適当なものを次の?～?のうちからーつ選べ。

?人間を含めた生物は，突然変異と自然選択に基づいて,環境に適応することにより,系統的に分化して,多様なものとなっていく。

?人間を含めた生物は部分としての器官からなる全体的な有機体であるが,社会も部分としての個体からなる有機的な集合体である。

?人間を含めた生物は,想象を絶するほど多様であるため,偶然の諸連鎖ではなく突然の創造によって誕生したと考えざるを得ない。

?人間を合めた生物は,遺伝的に優れた形質をもつ子孫を保護し，劣るとされる形質をもつ子孫を排除すべく管理されるべきである。

解説問5
19世紀は「ダーウィンの世紀」と呼ばれるほど進化論が科学の中心を占めるようになり、他の自然科学や社会科学にも進化論的方法が用いられるようになりました。

　ダーウィンは生存競争による自然淘汰説で、環境に適応できる形質を獲得した生物が生き残っていって進化したという学説を唱えました。

□他にラマルクの用不用説があります。つまりよく用いる器官は発達し、あまり用いられなくなった器官は退化、消滅するとう説です。

□そしてド・フリースの唱えた突然変異説です。自然に突然変異が起こりますと、環境に適応できない突然変異をした個体は滅びますが、うまい具合に環境変化に適合できる突然変異をした個体は生き残り、新しい種に進化していくというものです。

　現在ではダーウィンの進化論という場合は、広い意味でこれらの進化説を総合したネオ・ダーヴィニズムを指しています。

?はネオ・ダーヴィニズムを指しています。これが正解です。

?生物個体が器官の連関からなる有機体であるように、社会も個体や組織体を器官にする有機体だという「社会有機体説」の考え方です。

□これは進化論としては「適者生存の法則」を唱えたスペンサーが有名です。社会有機体説は進化論と対立するものではなく、社会有機体も「適者生存の法則」に基づいて進化するという考え方です。

□有機体という言葉を化学的に炭素を中心にする高分子化合物と捉えていると理解できませんよ。

?は生物は進化ではなく、突然の創造によって誕生したということは、創造主の存在を前提にしています。つまり人間や生物を作った神の存在を神話的に説明する宗教的な立場です。

?ダーウィンの進化論を応用して、農業では品種改良を人為的に行なっていますね。これを人間にも応用しようというのが、イギリスのフランシス・ゴルドンの「優生学」という考え方です。『遺伝的天才』という著書で展開されました。20世紀にはナチスのゲルマン民族の純血を守り、ユダヤ民族を絶滅させるような人種政策の根拠に使われ、日本でも最近までハンセン病患者の隔離政策にも影響したといわれています。

[30] mixiユーザー 02月13日 22:30

問6 下線部e新たな倫理的問題に関して,科学の発展に伴って,20世紀以降,新たに生じてきた倫理的問題の記述として適当でないものを次の?～?のうちからーつ選べ。

? 遺伝子技術を用いて身体能力の増強を図るドービング技法の開発

? 生態系に配慮せず自然を利用した帰結としての野生生物種の減少

? 一般市民を無差別的に殺りくする大量破壊兵器の非人道的な使用

? 人工的に培養したヒト初期胚の破壊を伴う多能性幹細胞株の樹立

解説問6
「科学の発展に伴って,20世紀以降,新たに生じてきた倫理的問題」となっていますから、20世紀以降の科学発展と関連あるかどうか考えるのです。

?「遺伝子ドーピング」には、特殊な酵素やタンパク質、ホルモンを産出する遺伝物質を生体に導入する方法と、特殊な能力を秘めた遺伝子を生殖細胞系列に組み込む方法があります。最近前者の「特殊な酵素やタンパク質、ホルモンを産出する遺伝物質を生体に導入する方法」が問題になっています。
メンデルの遺伝因子の仮説が1865年に発表されましたが、核酸の一種のDNAが遺伝因子であることが分かったのは1930年代からです。

?森林伐採による砂漠化の進行は古代文明からです。今から3500年以上前にシュメールのウルク王ギルガメッシュが森の守り神フンババを殺してレバノンの森を伐採して以来、砂漠化が進行していて、野生生物種は減少を続けています。古代メソポタミヤ文明やインダス文明の崩壊の原因は森林の伐採だったといわれています。これを選択すること。

?大量破壊兵器は、細菌兵器や毒ガスなどの生物化学兵器や核兵器などを指しますので、20世紀以降です。

?身体には様々な器官がありますね。それぞれの器官によって細胞が違うわけですが、それぞれの器官を構成する細胞になっていくのは、受精した卵が胚盤胞期になったときの胚の一部である内部細胞塊や、そこから培養されたES細胞、及びES細胞と体細胞の融合細胞、一部の生殖細胞由来の培養細胞のみに見られる特殊能力であったのです。多能性幹細胞株を作るには受精卵を材料にしていたわけです。つまり受精卵はすでに新しい生命として個体になる細胞ですから、それを破壊するのは殺人に等しいという倫理的な懸念があったのです。
iPS細胞の開発により、受精卵やES細胞をまったく使用せずに分化万能細胞を単離培養することが可能となったのです。これで万能細胞を作るのに受精卵を破壊しなくてもよくなったのです。

[31] mixiユーザー 02月14日 08:02

問7 下線部f擬似科学に関して,様々な定義があり得るが,次の文章を参考にして,疑似科学的な発言の例として最も適当なものを, 次の?～?のうちからーつ選べ。

□言葉の定義からして疑似科学には「科学のようで」「科学でない」という二つの条件が必要である。……
　「科学でない」ことのーつの目安として，その分野の中心的な主張が正統科学から否定されていることは疑似科学の重要な特徴だろう。……
　次に「科学のようで」という方だが,その分野の研究者たち自身は自分達のやっていることが科学的であると主張していたり,少なくとも科学の装いをまとっていたりすることも疑似科学の特微として入れておきたい。
（伊勢田哲治『疑似科学と科学の哲学』)

?「血液型性格判断が科学的に否定された場合でも,ふだんの会話の中で盛り上がる話題としてそれをもち出すのならば，全く問題はないよね。」

?「血液型性格判断が科学の教科書で否定されたとしても血液が生命を維持しているのだから，やはりそれは科学的に見て正しいはずだよね。」

?「血液型性格判断がある種の研究者により正しいと主張されたとしても,新たな反証によって否定され得るので,絶対視しない方がいいよね。」

?「血液型性格判断が現在までの研究で否定されたのなら，それを覆す明らかな証拠が出されない限り,科学の主張としては信用できないよね。」

解説問7

科学的、疑似科学的、非科学的に分類して疑似科学的を選べばいいわけです。

?「正統科学から否定されている」だけでなく「科学の装いをまとって」いないので非科学的です。

?「正統科学から否定されている」けれど、「血液が生命を維持しているのだから」という科学的な装いをまとっているので疑似科学的です。これを選択すること。

?一つの科学的発表があっても、それを絶対視してはならないというのは当然ですね、どんな「新たな反証によって否定」されるかもしれないのですから。きわめて科学的です。

?これまでの研究で否定されているものを、科学的だと主張してはならないことは当然です。科学的だと主張するためには、これまでの研究を覆す明らかな証拠が必要ですね。だからこれは科学的な主張です。

ところが正解表を見ますと?が正解になっています。誤植でしょうね。

[32] mixiユーザー 02月14日 09:00

一応正解表を元のサイトで見直しましたら?に訂正されているようです。

[33] mixiユーザー 02月14日 09:03

申し訳ありません。正解表の私の見間違えでした。

[34] mixiユーザー 02月15日 08:17

問8 近代科学の思考法に関する主張のうち，本文の趣旨に合致する記述として最も適当なものを,次の?～?のうちからーつ選べ。

?現代社会は科学の名を借りた非合理的な主張が広まりやすい危険な社会である。こうした社会で安全に暮らしていくためには，近代精神が生み出した帰納法や演繹法等を巧みに駆使して，科学的な思考を使いこなしていくことが不可欠である。

?人間は生まれながらにして様々な先入見に囚われているため，科学の危うさを見落としたり，科学もどきの言説にだまされたりする。そのようなことがないように，我々は経験的なデータを重視する実証主義的な態度を貫くことが重要である。

?現代人は多くの点で自然科学の恩恵に浴しているが，同時に，科学のもたらす負の遺産にも直面している。我々はこうした科学のあり方を意職しつつ，近代以降の科学の発展をもたらした思考法の可能性と限界を問い続けることが大切である。

?近代科学は人類を新たな思考の態度へと導いたが，その後の科学の展開において，様々な問題を生み出してもいる。このような科学の欠点を克服するために，我々は近代科学の思考法を乗り越える，さらに新しい思考法を確立する必要がある。

解説問８

　趣旨を問う問題は最後の段落に特に注意することが大切です。ほとんどの文章は最後の段落で趣旨を確認しているからです。「現代文」の読解問題にも通じることですから、このことを分かっているかどうかは、合格を左右すると考えてください。

?「現代では以上のような科学の基礎をなす思考法に対する理論的な反省」とありますから、帰納法や演繹法にも反省が必要です。

?実証主義万能に対しても現象学や批判理論から厳しい批判がありますね。

?近代科学のもたらした正の遺産と不の遺産をしっかり吟味して、近代科学の方法を改善しなければならないわけです。どんな可能性と限界があるかを見定めるということですね。これが正解です。

?近代科学には継承すべき正の遺産があります。これ抜きには文明を維持できないわけですから、近代科学を乗り越えるというのは、じゃあ帰納法や演繹法や実証主義を使わなくてもやっていけるのかということになります。それは無理ですね。

[35] mixiユーザー 02月15日 08:48

第 5 問　次の文章を読み，下の問い（問 1 ～7 ）に答えよ。（配点 20 )

安全な社会で暮らすことは，私たちの切なる願いである。同時に，個人の自由が十分に保障されていることも，私たちの幸福には不可欠である。では安全と自由というこの二つの理念はどのような関係にあるのだろうか。このことについて，架空の国の F 国とＳ国の市民（FさんとＳさん）の対話を読んで，考えてみよう。

Ｆ：私の住むＦ国では，個人の自由が何よりも大切です。護身用に銃やナイフを持つのも個人の自由。経済活動も規制が少ないから自由な取引が活発に行われています。『国富論（諸国民の富）を書いた｛　31　｝流の「小さな政府」の発想で，医療も福祉もすべて民間任せです。
Ｓ：だけどあなたの国ではまるでホッブズの言うａ自然状態みたいに，銃やナイフによる暴力が絶えないでしよう。不況で失業しても本人の責任にされるし．公的な医療や年金もないから，病気や老後の備えはすべて自己責任。それじゃ，安心して生活できず，かえって不自由じゃないですか。
Ｆ：確かにそういう批判もありますね。では，あなたの国にどうなんですか？
Ｓ：Ｓ国では，安全な暮らしが最も重視されています。ｂ社会保障が充実しているからゆりかごから墓場まで国が面倒を見てくれます。街には防犯カメラがどこにでもあるし，新聞やテレビ，ネット上の掲示板や電子メールも，政府が常にチェックしてくれています。地域社会では子どもの安全を守り高齢者の孤独死を防ぐために，ｃ個人情報の共有も進められています。おかげで安心して暮らせます。
Ｆ：なるほどね。でもあなたは息苦しくないんですか？それじゃｄオーウェルの描く監視社会ですよ。人々の活動が常に見張られていたら，自由に行動したり発言レたりできないでしょう。いくら安全のためとはいえ，個人の自由やブライバシーを二の次にする国では，かえって不安で暮らせませんよ。

F国とＳ国どちらの国でも幸福に暮らせそうにないと考える人は多いのではないだろうか。だが現代社会は常にこのいずれかに近づく可能性を孕んでいる。ｅ安全な暮らしと個人の自由をうまく両立させる原理はあるのだろうか，これは，現代に生きる私たちに課せうれた未解決の難問である。

下線部　ａ自然状態　ｂ社会保障　ｃ個人情報の共有
ｄオーウェルの描く監視社会　ｅ安全な暮らしと個人の自由をうまく両立させる原理

[36] mixiユーザー 02月16日 08:13

問 1 文章中の　31　に入れるのに最も適当なものを，次の?～?のうちから一つ選べ。

?アダム・スミス ? べンサム ?オーウエン ?マルクス

解説問1

『国富論(諸国民の富)』の著者で「小さな政府」の提唱者といえば、経済学の父といわれたアダム・スミスです。三大経済学書―三大経済学者を挙げなさいといわれますと、即座に

『国富論(諸国民の富)』－アダム・スミス,
『資本論』－マルクス,
『雇用・利子及び貨幣の一般理論』－ケインズ

が言えないとだめですよ。

?アダム・スミスは、人間はみんな私的利害に基づいて行動しようとするものなので、自由放任主義(レッセ・フェール)で政府が市場に介入しない方が、効率的なので、政府としては国防と治安維持の機能だけでいいという「小さな政府」を提唱しました。これを貧窮で苦しんでいる国民が大勢居るのに、政府を夜警の仕事だけにしようとする「夜警国家」論だと批判するものもいたわけです。

?ベンサムは功利主義の代表的な思想家です。彼は人間は「快楽」と「苦痛」という二つの主権者に支配されているとしました。最大の快楽、最小の苦痛が幸福、その逆が不幸です。幸福をもたらすものが善、不幸をもたらすものが悪だというわけで、「最大多数の最大幸福」が道徳や立法の原理であると説きました。代表作『道徳および立法の原理序論』

?イギリスのロバート・オーエン(1771 ～1858)は、イギリスの空想的社会主義者です。彼の代表作は『新社会観』です。かれは自分の経営するニュー・ラナークの工場の労働条件を改善し, 厚生施設や労務管理を近代化しました。この模範工場の運営に成功したのです。当時厳しい自由競争の時代でしたから，最大限の利潤を目指して，非情な労務管理をしないと競争に敗れて，潰れると思われていました。オーエンは労働者に良い待遇を与えることで，働きがいがあり，主体的に創意工夫が生まれて，生産性が向上するようにして，かえって経営を成功させたのです。
　次いでアメリカで愛と協同による共産村であるニュー・ハーモニー村の建設に挑戦しましたが失敗して，全資産を無くしてしまいました。それでも彼は挫けずに，イギリスに帰ってからは労働組合運動や協同組合運動を指導して労働者の地位と生活向上に尽力したのです。

?カール・マルクスは科学的社会主義の提唱者です。エンゲルスと共に『共産党宣言』を表しました。剰余価値理論に基づいて資本主義の原理を解明したのが『資本論』です。

[37] mixiユーザー 02月17日 09:31

問2 下線部a自然状態に関して自然状態に言及している思想家たちの著作の説明として最も適当なものを, 次の?～?のうちから一つ選べ。

?『リヴァイアサン』には，自然状態にある人間は一般意志に従い自由で平和に暮らしていたとある。
?『統治論(市民政府論)』には,自然状態は理性的な自然法が支配する平和な状態だとある。 ?『人間不平等起源論』には,自然状態における人間の一生は「きたならしく,残忍で, しかも短い」とある。
?『社会契約論』には,自然状態は各自が自己保存の権利を恣意的に追求する闘争状態だとある。

□社会契約論は、人間は自然状態の混乱から社会契約によって社会状態に発展したという前提があります。社会契約というのは独立した諸個人がまずいて、自己保存権を守る為にいっしょに国家権力を形成し、その権力に従いますという約束です。

□それで社会契約によってできる国家権力が強大な方がいいのか、市民たちが自然に作る秩序を補完する程度でいいのかで、自然状態がどうであったかというイメージが変わってくるのです。

□国家権力は地上最強の怪獣リヴァイアサンでなければならないとしたホッブズは、自然状態の混乱は激しかったとみるのです。つまり人間は元々欲望で動く自動機械だから、自然状態では富を奪い合って、「万人の万人に対する戦争状態」だったとしたのです。

□ロックは国家権力は、貧富の格差から生じた治安の乱れを矯正して、生命と財産を守ための道具だと捉えています。従って、自然状態は元々は互いの人格と財産を尊重し合っていたとみるわけです。それが貨幣の発生で、貧富の格差が生じて乱れ始めているので、その補整に必要だということで、極めて限定的な権力にとどめようとしているわけです。

?「一般意志」はルソーの用語です。ルソーは、全員参加の人民集会で全体の幸福を実現する観点に立って話し合った結果の多数決の意志が「一般意志」です。真の法律は一般意志でなければならないとしました。

?ロックの自然状態は元々は理性的だったということです。この場合の自然法というのは、自然状態の野蛮な法というのではなく、理性を正常に働かせれば、誰もが納得できる当然のナチュラルな法という意味です。正解。

?「自然状態における人間の一生は、きたならしく,残忍で, しかも短い」というのは、ホッブズの『リヴァイアサン』の記述です。

?ルソーは、自然状態を原始状態と未開状態と冶金と農耕・牧畜が導入された段階に分けます。闘争状態に入るのは、冶金で武器が製造され、農耕・牧畜で土地私有が始まって、奪い合うようになってからです。

□なお社会契約論はホッブズ・ロック・ルソーの比較が重要で、それがなかなかきちんと整理できていないのが現状です。特にホッブズを民主主義的に理解しようとするホッブズ研究の「オーソリティ」すらいるのです。それだけに理論的な力を磨くにはこの三者の比較をまずきちんとやることが肝要です。拙著『社会契約の思想』を熟読してください。
http://www7a.biglobe.ne.jp/~yasui_yutaka/nyumon/socialmokuji.htm

[38] mixiユーザー 02月18日 03:34

問 3 下線部ｂ社会保障に関連して日本では今日社会保障制度の見直しが議論されている。その背景に関する記述として適当でないものを次の?～?のうちから一つ選べ。

? 家族形態の多様化や女性の社会進出に伴い，家族機能の外部化が進んだ。
? 医療技術の発達に伴う死亡率の低下により, 老年人口の比率が高まった。
? 都市化や核家族化の進展により地域社会の相互扶助機能が強まった。
? 高度経済成長期を境にして，出生率が低下し少子化が急速に進んだ。

解説問3
?育児に関して、母親が働いていると保育所の充実が必要です。老人の介護も家族がにないきれないので、どうしても老人のための福祉施設の充実が必要ですね。

?現在5人いますと,そのうち一人は65歳以上で、一人は19歳未満です。ですから3人の労働人口で一人の老人と一人の未成年者を養育する必要があるということですね。

?「都市化や核家族化の進展により地域社会の相互扶助機能」は弱まっています。近所で地域社会が一緒に保育や介護をするということは,あまりないので国や自治体が福祉行政として取り組む必要があるのです。「適当でない」のでこれを選択すること。

?図表を貼り付けますので,それを見ればよく分かります。

[39] mixiユーザー 02月20日 09:51

問 4 下線部cに関連して次の図は,日本国内の地方公共団体が保有する高齢者や障害者の情報を防災や防犯のために関連する部局や自主防災・防犯組織といった団体と共有することをどのように考えるかについて尋ねた結果である。この図の説明ア～エについてその正誤の組合せとして最も適当なものを次ベージの?～ ? のうちから一つ選べ。

ア　総数で見ると,「防災・防犯のためであれば,積極的に個人情報を共有活用すべき」と答えた者は,ほぼ3 人に 2 人である。

イ総数で見ると,「防災・防犯のためであっても,個人情報を共有・活用しない方がよい」と答えた者は， 10 人中 1 人に満たない。

ウ　性別で見ると, 「防災・防犯のためであれば,必要最小限の範囲で個人情報を共有・活用してもよい」と答えた者の割合は女性で高くなっている。

エ　年齢別に見ると「防災・防犯のためであれば,積極的に個入情報を共有・活用すペき」と答えた者の割合は年齢層が高くなるにつれ高くなっている。

? ア正　イ正　ウ誤　エ誤
? ア正　イ誤　ウ正　エ誤
? ア誤　イ正　ウ誤　エ正
? ア誤　イ正　ウ正　エ誤
?　ア正　イ正　ウ誤　エ正
? ア正　イ正　ウ正　エ誤
? ア誤　イ誤　ウ誤　エ正
?　ア誤　イ誤　ウ正　エ誤

解説問4
この問題はあくまでグラフを正確に読み取る問題なので、自分の中のこれまでの知識や思い込みに囚われないで、グラフを冷静に読み取ることに徹してください。

アは「総数で見る」とあるので,「総数」以外は見ないことが大切です。「防災・防犯のためであれば,積極的に個人情報を共有活用すべき」と答えた者は29.3%なのでほぼ3人に1人もいませんね。だからアは誤です。

イも「総数」以外は見ませんよ。「防災・防犯のためであっても,個人情報を共有・活用しない方がよい」と答えた者は，6.8%ですから「10 人中 1 人に満たない。」は正です。

ア誤　イ正　になっているのは?と?だけです。

ウは「性別」を見てください。「防災・防犯のためであれば,必要最小限の範囲で個人情報を共有・活用してもよい」と答えた者の割合は,男性56.1% 女性62.4%で女性の方が多いので、正です。ア誤　イ正　ウ正　は?のみです。?が正解。

エは「年齢別」を見ます。「防災・防犯のためであれば,必要最小限の範囲で個人情報を共有・活用してもよい」と答えた者の割合は30代30.5%より40代27.6%の方がすくないので、誤です。

[40] mixiユーザー 02月22日 08:51

問 5 下線部 d に関して,ジョージ・オーウェルが1949 年に発表した『1984年』は,ビッグ・ブラザー(偉大な兄弟）が支配する監視社会を描いた小説であり,現代社会の様々な問題を予見したことで知られている。次の文章を読み,その説明として最も適当なものを，次の?～?のうちから一つ選べ。

□印刷技術の発明は世論操作をより容易なものにし,映画とラジオの出現はその流れを加速させた。テレビが登場し,また技術的進歩によって一つの装置で同時に受信と送信ができるようになると，ついに私的な個人生活は終わりを告げるに至った。全市民,あるいは少なくとも要注意の市民は警察当局による一日二十四時間体制の監視下に置くことができるし，他の通信手段をすべて塞いで政府の宣伝だけを聞かせることもできるのだ。国家の意志に対する完全な服従を強制できるばかりか,あらゆる問題に対して完全な意見の一致を強制できる可能性まで, 今や初めて存在するに至った。
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　（ジョ一ジ・オーウェル『l984年』）

?マスメディアが, 事実に即した正確さよりも疑似イべントの提供に奔走する危険性を予見している。

?双方向性の通信技術を用いて, 個人の行動や思想が統制される危険性を予見している。

?現実世界から切り離された仮想現実（バーチャル・リアリティ）のなかに個人が埋没する危険性を予見している。

?ハッカーによる不正アクセスやコンピュータ・ウィルスにより, 個人情報が漏洩する危険性を予見している。

解説問5
ジョージ・オーウェルが1949 年に発表した『1984年』の監視社会の特徴は, 送信と受信ができる双方向性のメディアによって二十四時間監視されている。そしてあらゆる意見が一致させられてしまうということですから, それに合致する文を選べばいいのです。

?擬似イベントで操作することは書かれていません。
?これはそのままですから正解です。
?仮想現実を提供することも書かれていません。
?個人情報の管理や監視はあるでしょうが、漏洩ではありません。

[41] mixiユーザー 02月23日 08:12

問 6 下線部ｅに関して， J .Ｓ．ミルの次の文章を読み，そこに述べられている考えに即した意見として最も適当なものを，下の?～?のうちから一つ選べ。

文明社会の成員に対し，彼の意志に反して，正当に権力を行使し得る唯一の目的は，他人に対する危害の防止である。 … そうする方が彼のためによいだろうとか，彼をもっと幸せにするだろうとか，他の人々の意見によれば，そうすることが賢明であり正しくさえあるからといって，彼になんらかの行動や抑制を強制することは，正当ではあり得ない。
( J . Ｓ．ミル『自由論』)

?　自動車のシートべルトの着用は，事故が起きたときに本人を守ることになるから，強制してよい。

?　健康な若者がお年寄りに席を譲ることは，誰もが認める正しい行為だから，強制しでよい。

?　飛行機の離着陸時に携帯電話を使うことは，電子機器に影響を与える可能性があるから，禁止すべきだ。

?　クローン人間をつくることは，国際的にも国内的こも世論の強い反対があるから．禁止すべきだ。

　自由とは何かを考えるときに、論者によって自由主義的自由の概念でない場合もあります。たとえばヘーゲルは「自由は必然性の洞察」であるとしましたが、これは必然性にそってこそ思い通りになるという意味で自由なのですが、もしこの原理を立法に適用しますと、必然性にかなっていないことを理由に規制されて、きわめて不自由な社会になってしまいます。ヘーゲル哲学は「自由の哲学」だといわれますが、決して自由主義の哲学ではないのです。

　それに対して、Ｊ．Ｓ．ミルの自由とは「他者危害の原則」と言いまして、他者に危害をかけて、他者の自由を侵害するような行為でない限り、たとえ第三者的にみてどんなにくだらない行為であっても禁じてはならないという原理です。これを原理に法律を制定してはじめて自由な社会が実現するのです。最近「他者危害の原則」がよく出題されていますから要注意です。

?「本人を守ること」は「自己危害」ですから「他者危害」ではありません。

?「他者危害」の防止ガ唯一の目的ですから、万人の認める正義はここでは関係ありません。

?「電子機器に影響」すれば「他者危害」に当たりますので正解です。

?「世論の反対」では「他者危害」は証明されていません。

[42] mixiユーザー 02月24日 08:56

問 7 本文の内容に合致する記述として最も適当なものを，次の?～?のうちから一つ選べ。

?Fさんの考えでは，個人の活動に対する規制が少なく，社会保障が政府に任されている F 国は，自由に暮らすことができる社会である。

? Ｓさんの考えでは，子どもや高齢者の安全を重視し，政府に対する監視も充実しているＳ国は，安心して暮らすことができる社会である。

?　Ｓさんの考えでは，　個人の自由を尊重するあまり，貧困や病気といった問題に政府が取り組まない F国は，不安が多くて暮らしにくい社会である。

? Fさんの考えでは，安全な暮らしを尊重するあまり，個人の自由やプライバシーを過度に保護するＳ国は，息苦しくて暮らしにくい社会である。

解説問7
?F国は「医療も福祉もすべて民間任せ」なので社会保障が政府に任されているとはいえません。

?S国では政府が国民を監視しているが、国民は政府を監視できません。

?Sさんはこう発言しています。「だけどあなたの国ではまるでホッブズの言うａ自然状態みたいに，銃やナイフによる暴力が絶えないでしよう。不況で失業しても本人の責任にされるし．公的な医療や年金もないから，病気や老後の備えはすべて自己責任。それじゃ，安心して生活できず，かえって不自由じゃないですか。」とあるので正解です。

?S国は「個人の自由やプライバシーを過度に保護」しているのではなくて、過度に規制しているので「息苦しい」のです。

□これで本年度分のセンター試験「倫理」の検討を終わります。センター試験はなんと言っても過去問を見直し、慣れることがこつです。過去十年間の過去問についてしっかり反省し、どんな設問にも答えられるようにしておけば満点を狙えます。

□引き続き昨年分の過去問も検討しようかと考えています。と言いますのが、いよいよ過去問をそのまま出題するのが解禁になったようなので、ますます過去問を検討する必要がたかまっているからです。

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