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開催終了サクラ

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2006年04月02日 23:14 更新

 南からの風がひときわ強く吹いた。
 サクラの花びらが散って風に流れていく。
 大きなサクラの木であった。何十年、いや百年以上か、幾多の人間の出会いと別れ、愛憎と闘争を見てきたことであろうか。
 いま、そのサクラの木の下で二人の男が向かい合っていた。
 一人は紺の着流しに雪駄履き。刀を下段に構えている。細面の色の白い顔にやや細身の身体は、全体的な華奢な感じを与えているが構えた剣先に隙はなかった。対する男は羽織、袴に草履履きである。褪せた着物と手甲を見ると旅の者であろうか。伸び放題の月代と無精髭からは旅の長さが偲ばれて哀れを誘う。
「父の敵、覚悟」
 無精髭の男がきっぱりと言った。
「参れ」
 細面の男が、これもきっぱりと返す。
 しばらくの無言の後、無精髭の男が大きく大上段に振りかぶって、すすと進んだ。間合いが狭まる。
 細面の男の左足が動いた。それに連れて左手が動く。
 間合いが急速に詰まって、それぞれの顔が大写しになる。
 そのとき、サクラの花びらが一枚ひらりと落ちて、二人の目線に射抜かれた。
 やっ、と言う声とともに二人の男が交差した。
 ややあって、無精髭の男がどうと倒れた。振り向いた細面の男の眉間にツッ、と血が糸を引いた。
 さーっつと一際大きな風が流れた。
 サクラの花びらがハラハラと風に流れる。
「仇討ちか。無意味な・・・」
 細面の男が虚無的に呟いて、ぱちりと刀を鞘に納めた。
 ゲホ、ゲホ。
 咳が出た。押さえた右手の指の間から血が滴り落ちる。
 男が去った後、その血の上にサクラの花びらが散った。
 倒れた男はぴくりとも動かない。
 サクラの花びらがざーっつと流れて過ぎた。
 風が強くなったようだ。

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