<2025年ロシア軍とウクライナ軍の戦い 第10回 トランプ大統領の仲介外交 6月1日から7月7日>
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第9回の番外編 6月4日付
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関連日記 トランプ大統領のロシア疑惑について 2月19日付 第2回 第4章 トランプ大統領の主張 過去のロシア疑惑への火消しに
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ロシア軍とウクライナ軍の戦いは、仲介役に名乗りを上げる米トランプ大統領の意向を聞き入れ、双方停戦交渉のテーブルに乗る。ウクライナは、停戦に向けて本腰を入れる一方、ロシアは軍事作戦を続ける姿勢を崩していない。そもそも一次政権時代に大統領選挙戦にて、ロシア疑惑がかかったトランプ大統領は、仲裁者として、難しい面があった。プーチン大統領には、選挙戦で力を貸してくれた恩義から、制裁をかけることができない。一方ゼレンスキー大統領には、安全保障に加担する代わりに、鉱物資源の採掘権を獲得した。経済的には、各国へ高い関税をかけて、保護主義に舵を切る。トランプ大統領の仲介外交を焦点に、6月1日から7月7日まで外交や戦闘現場の様子を紹介する。
目次
・第1章 劣勢のウクライナ、挽回に向けて。
・第2章 捕虜交換 ロシアの軍事作戦が続く
・第3章 戦況の行方
・第4章 ロシアの占有地域。西欧諸国の外交
第1章 劣勢のウクライナ、挽回に向けて。
6月1日、ウクライナ軍は大胆な試みをした。広大なロシアの国土に張り巡らされた軍事基地に向って、大胆にも無人機を駆使して、爆弾を仕掛けたのである。名づけて「クモの巣作戦」という。ウクライナ当局は1年半以上準備に費やして、100機以上の無人機を投入したと明かした。ロシア軍の戦略爆撃機など41機に被害が出たとみられる。ロシアの推定のコストは合わせて70億ドル、日本円で1兆円あまりにのぼるとの見方を示した。
欧米の複数のメディアは航空写真の分析などで、10〜20機程度が破壊、もしくは損傷したのではないかと、報じた。
写真=クモの巣作戦の解説図 掲載元 日経新聞 2025年6月2日午前3時42分
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGR0138N0R00C25A6000000/
確かに一連の同時多発的に軍事基地に攻撃を仕掛ける「クモの巣作戦」では、戦況を大きく変えられない。ロシア軍の戦闘能力をいくらか落とす程度にとどまる。大胆な作戦に踏み切り、成功を収めれば、西側諸国に戦闘能力をアピールできる。吉と出るか、凶と出るのか、今後の展開を見なければ分からない。ただし、2025年に入り2度目の実務者協議を翌日に控え、ロシアの代表団の心象を損なったのは確かである。
詳細 クモの巣作戦 NHK キャッチ!世界のトップニュース 更新:2025年6月4日(水)午後3:21
https://www.nhk.jp/p/catchsekai/ts/KQ2GPZPJWM/blog/bl/pK4Agvr4d1/bp/pjQGdgY4Ez/
5月16日に続き、6月2日にもトルコのイスタンブールで、双方ほぼ同じ代表団で、停戦交渉に望んだ。ウクライナ側は、東部4州からの完全撤退、国境沿いのスムイ州とハルキウ州からも軍を引き上げるように迫られた。NATO加盟申請を見送り、軍事力の著しく削減を要求される。主権の維持のためには、受け入れられる内容ではなかった。
実務者レベルの会合では、停戦へ向けた重要な取り決めを交わすのは難しいとの見方もされていた。双方の間で決まったのは、6千対6千の遺体交換、新たに双方捕虜としての拘束者を解放することである。
ロシアは、緩衝地帯の設置を試みるウクライナ領スムイ州での軍事作戦を強化した。6月3日、ロシア国防省は、同州の集落アンドリーウカを制圧したと発表。州都スムイまで20kmへと迫り、ドローン(無人機)の射程圏内に入った。この日、州内では死亡者4人、負傷者28人が出た模様である。
詳細 6月3日のスムイ州での攻防 ロイター通信 2025年6月4日午後1時49分付
https://jp.reuters.com/world/ukraine/NXIHBN55EFPJVN5SQN77YW4RAQ-2025-06-04/
2度目の実務者協議を受けて、1度目と同じく、トランプ大統領とプーチン大統領が6月4日、半月ぶりとなる電話会談を行った。トランプ大統領は4日に自身のSNSで報告すると、「1時間15分の会談で和平に繋がるような進展はなかった」と書き込んだ。プーチン大統領が、6月1日の同時多発的に起こったロシア国内での軍事工場爆破事件の報復を考えていることも明かした。
詳細 電話会談 NHK NEWS WEB 2025年6月5日11時49分
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20250605/k10014826241000.html
アメリカからの支援が先細りしている中、ウクライナは国土防衛へ厳しさを増す。
プーチン政権は、ウクライナを配下に置き、国内の反対意見を封じる。2022年2月24日から始まった「特別軍事作戦」を、ネオナチからのロシア国民を解放するためだと正当化した。ネオナチとは、ナチス・ドイツになぞらえ、ウクライナの民族主義者を差す。
停戦交渉の場では、事実上ウクライナへ主権放棄を迫る内容を突きつけた。仲介に名乗りを上げるトランプ大統領からの経済制裁を交わし、余力がある限り、戦闘を続けていく。
第2章 捕虜交換 ロシアの軍事作戦が続く
6月6日の明け方、ロシア軍が首都キーウを狙って大規模爆撃を仕掛けた。キーウの軍事当局者の話によると、攻撃に伴い3人が死亡したと報じた。
ウクライナ空軍は、ロシアがドローン407機と、弾道ミサイル、巡航ミサイル計45発を発射したと発表した。キーウはドローンと巡航ミサイル「カリブル」の標的になったとしている。
写真=2025年6月6日の明け方の攻撃による被害を受けたキーウの町並み 掲載元 Reuters 6月6日午後7時9分
https://jp.reuters.com/world/ukraine/VS4QT6GI7RMK7J6EUVO5CYFMOM-2025-06-06/
6月17日には、2025年最大規模の首都攻撃を受けた。17日未明、ロシアのドローン(無人機)やミサイルによる大規模攻撃により、少なくとも18人が死亡、151人が負傷した。キーウではアパートの一角が崩れ落ち、下敷きによる犠牲者が確認されている。ゼレンスキー大統領は、ロシアがドローン440機余り、ミサイル32発を発射したとし、「このような攻撃は純粋なテロリズムだ」と非難した。
詳細 6月17日の攻撃 Reuters 6月18日 午前8時
キーウでの2025年最大規模のロシア軍による攻撃前、双方緊張緩和の姿勢を見せていた。交戦するウクライナとロシアの両国は、6月16日付けで、同月2日のイスタンブールでの協議合意を履行した。双方それぞれ6千の遺体交換と25歳未満の兵士や重傷者の捕虜を開放したと、声明を出した。ウクライナ政府によると、16日には兵士1245人の遺体がロシアから返還された。合意事項に従い、ウクライナが引き取った遺体はあわせて6057人に上る。ただちに、すべての遺体が自国の兵士か、確認中だとしている。
一方でロシアは、計6060人の遺体をウクライナに引き渡したと主張。ウクライナは、計78人の遺体が返還されたとした。
詳細 遺体や捕虜交換について BBC NEWS JAPAN 2025年6月17日付
ロシア側が、遺体や捕虜の交換に応じた背景には、西欧諸国の反感感情を和らげる狙いが見える。一方ウクライナ側は、自国の兵士の身を案じて、優先的に捕虜交換を働きかけた。両軍の戦いについては、休まることはなかった。
6月16日から17日迄2日間の日程でG’サミットが、カナダのアルバーター州カナナスキスで開催された。2022年から2024年までの3年間、出席した首脳は、ウクライナへの支援で結束していた。議長国の主催者カナダのカーニー首相は、20億カナダドル(日本円換算14億7000万米ドル)の追加支援を表明していた。当のトランプ大統領は、イスラエルとイランとの戦争へ対応するため、2日目は欠席している。トランプ大統領と入れ替わるように、ゼレンスキー大統領が最終日に出席する。停戦交渉は頓挫し、ロシアに領土を奪われる現状から、追加での支援を要請した。一方的に国土が被害を受けるウクライナは、武器の生産体制も追いついていない。随所にロシア国内の軍事基地をドローンで攻撃しているとはいえ、効果は限定的だといえる。国土が広く、人員も豊富なロシアが、圧力をかけている。ウクライナは、兵員不足により、激戦地から後退していく一方だった。
出席した首脳らは、停戦交渉の仲介役を引き受けるトランプ大統領を意識して、ウクライナ支援への共同声明の採択を見送った。重要鉱物や人工知能(AI)、量子コンピューティング、山火事など6つの分野に関する共同声明で合意した。
詳細 G7サミットについて Reuters 2025年6月18日 午後1時26分付
https://jp.reuters.com/world/ukraine/QLJO3W3CAVLZ3POCUOISAWWSII-2025-06-17/
6月24日から25日の2日間の日程で、オランダのハーグにて、NATO首脳会議が開かれた。ロシア軍の侵攻抑止に向けて、2035年まで各国GDP比に占める国防費を現行の2%から5%へ引き上げる方向で一致した。防衛費増額は、加盟国に応分の負担を求めるトランプ大領の意向に沿う結果となった。いまやトランプ氏は、NATO諸国とロシアの間に立つ。ロシアからの防波堤として、トランプ大統領の求めに応じることが、自国の安全保障につながる。出席した欧州首脳は、トランプ大統領に屈していた。
詳細 NATO首脳会談 2025年6月25日付け 毎日新聞
https://mainichi.jp/articles/20250625/k00/00m/030/404000c
25日に、G7首脳会談で入れ違ったトランプ大統領とゼレンスキー大統領の直接会談が実現する。後にトランプ大統領は記者会見にて、地対地ミサイル「パトリオット」を売却する容易があると表明した。ゼレンスキー大統領は、ミサイルから国土を防衛するため、追加配備をする必要性を理解していた。トランプ大統領は、2期目就任以来、戦争終結に取り組んだ。ゼレンスキー大統領とは直接会談を重ね、停戦の意思を確認した。一方プーチン大統領は、オンラインの形で4度も軍事作戦の目標を聞いたうえで、妥協点を引き出そうとした。領土喪失を避けたいウクライナに対して、ロシアはドンバス地域完全制覇へ向けて邁進し、国境沿いに緩衝地帯を設ける狙いがある。両者妥協点は見出せていない。ゼレンスキー大統領との会談では、停戦交渉についても議題に上った。トランプ大統領は、「プーチンは難しい相手だ。他の戦争よりも難しい」と仲介役としての本音が漏れた。
ゼレンスキー大統領は、英独仏伊・ポーランドの首脳とも会談し、ロシアへ追加経済制裁を課すように求めた。各首脳ともその必要性を理解している。
写真=トランプ大統領とゼレンスキー大統領の会談様子 掲載元 詳細記事 読売オンライン 2025年6月26日11時43分付
https://www.yomiuri.co.jp/world/20250626-OYT1T50085/
ゼレンスキー氏の外交姿勢からも、苦しい状況に陥っていることは明らかだった。停戦交渉においてロシアが突きつけた要求は、主権侵害に相当する。東部地域では、今日も前線で兵士が奮闘している。
第3章 戦況の行方
ロシアの軍事侵攻の狙いの一つは、ウクライナ国土に埋蔵されている「鉱物資源」獲得だとみられていた。現在の目標は、鉱物資源が眠るドンバス地域を含め、さらに西隣のザポリージャ州とへルソン州を含め、東部4州の完全併合だった。陸伝いでロシア本土とクリミア半島がつながることにより、輸送網を構築できる。4州を配下に治めれば、新たな鉱物資源を輸出して、国に莫大な富をもたらす。
ロシア軍は、兵士を犠牲にしてまで捨て身の作戦に出る。ウクライナのシルフスキー総司令官は6月27日に、ドネツク州の要衝ポクロウシク方面に、11万人のロシア兵が集結していると、SNSで報告した。連日50回以上の衝突があり、激しい戦闘が繰り広げられている。ロシア国防省は26日、ポクロウシクの南約10キロ・メートルの村落・シェフチェンコを制圧したと発表した。村周辺には、リチウム鉱床が存在する。全力で圧力をかけて、武力で資源を奪取した。徹底的に武力を投入して、強奪する行為は、国際法にも抵触する。ウクライナメディアによると、同国で確認されている四つのリチウム鉱床のうち2か所がロシア軍の手に落ちた。
詳細 ポクロウシクの戦闘模様 読売オンライン 2025年6月29日22時46分付
ウクライナの国土防衛の任務に当たる貴重な兵士や戦闘機も喪失している。ウクライナ軍によると28日夜から29日未明にかけて、ロシア軍により、ミサイル60発、無人機477機で各地域に攻撃を受けた。防空システムが作動し、ミサイル38発、無人機436機を撃墜するか、または電波妨害で無力化したと明らかにした。一連の攻撃により、ウクライナ軍は大きな痛手を蒙った。防空任務に当たっていたF16戦闘機が、撃墜された。操縦士一人が、死亡した。2024年夏にオランダから戦闘機を供与され、3期目を失うことになった。ロシア軍の大量に遠隔での無人機やミサイル攻撃が効を奏した。
詳細 F16戦闘機撃墜事件 読売オンライン 2025年6月30日14時6分付
写真=オランダ製F16戦闘機 掲載元 SPUTAlK 出展:AFP2023 / JhonThys
https://sputniknews.jp/20230728/f16-16658242.html
西欧諸国の方も停戦へ向けて動き出す。2025年7月1日、西側諸国としてドイツと英国と共に率先してウクライナを支援したフランスのマクロン大統領が、プーチン大統領と電話会談した。仏大統領府によると、2022年9月以来、2年10ヶ月ぶりの会談は、2時間余りに上ったとのことである。早期停戦へ議論に加わるように求めるマクロン大統領に対して、プーチンはきっぱりと拒否した。ロシア大統領府によると、ウクライナへの軍事作戦に対して、「長年、ロシアの安全保障上の利益を無視してきた西側諸国の政策の直接的な結果だと一方的に非難した。いかなる和平合意も「包括的で長期的」であり、「危機の根本的原因の除去」を求めた。具体的に危機について詳しいことを語らなかったとみられる。これまでの言動から、恒久的にNATO加盟阻止が第一条件である。もう一つは
武器や装備品のNATO仕様になることを避けるべく、軍縮である。実務者レベルの会談でも、ロシア側は、ウクライナへ、NATO不加盟と軍縮、東部4州の放棄をあげていた。
マクロン大統領自身も、西欧諸国の防波堤として、ウクライナの軍縮には、納得しがたい。ロシア大統領府によると、両首脳はイラン情勢も協議した。イランによる原子力エネルギーの平和利用に関する正当な権利を尊重することの重要性を共有する。イランの核計画に関する問題を含む中東情勢に関しては、政治的、外交的手段で問題を解決すべきだとの立場で一致した。マクロン大統領の思惑通りの展開にはいかなかった。中東情勢を持ち出したことにより、オンラインの形とはいえ、国内外へ成果をアピールした。
プーチン大統領とマクロン大統領の電話会談 2025年7月2日午前4時17分 読売オンライン
ウクライナは試練続きだった。2025年7月1日、アメリカ政府が、ウクライナへの武器支援の供与を一時停止したと明らかにした。アメリカ国防省は、在庫の枯渇を理由に挙げている。イスラエルとイランの12日間戦争により、中東各米軍基地へ配備する必要性から、ウクライナの方へ向けられなくなっていたのである。振り返ると、6月24日と25日に2日間に及んだNATO首脳会談において、招待されたゼレンスキー大統領は、直接対面したトランプ大統領から、地対地ミサイル「パトリオット」を売却する容易があると伝えられていた。国土防衛のためには、防空システムの強化が必須だった。
写真=パトリオット 掲載元:出展 日本の航空自衛隊のページより
https://www.mod.go.jp/asdf/equipment/other/Patriot/
6月29日には、地対地ミサイルの配備では足りず、パイロットの命の危険を犯して、F16戦闘機が任務にあたり、1機撃墜されていた。米戦争研究所が示したグラフによると、2025年1月から5月まで、ロシア軍による無人機とミサイル攻撃は1日200前後で推移していた。6月以降、1日あたり500前後まで大幅に増加しているのである。ウクライナの頼みの綱は米国だった。外交努力を重ね、支援の必要性を訴えていく。
詳細 アメリカ軍の一時支援停止について 国際報道2025 7月4日午前1時57分付
トランプ大統領も、国土が荒れるウクライナを他人事のように黙ってみているわけではなかった。7月3日にプーチン大統領と電話会談したことを明かした。詳細は伏せたものの、プーチン大統領が、停戦に応じる姿勢がないことを十分理解したとのことである。米国の支援一時停止を受けて、キーウでは7月3日夜から4日未明にかけて、500機を越える無人機攻撃を受けた。
詳細 米ロ電話会談 キーウの最大規模の無人機攻撃について NHK NEWS WEB 2025年7月4日18時58分
アメリカの支援が先細りすると、ロシアを利することになる。トランプ大統領は、2期目就任以来、5度もプーチン大統領と電話協議を重ねてきた。当初は、プーチン大統領から、和平の条件や会談の用意があると意向を伝えられ、多少なり停戦への期待があった。2025年6月以降、先延ばしにするプーチンに振り回され、苛立ちを募らせていた。キーウでの大規模攻撃を受けて、7月4日にトランプ大統領は、ゼレンスキー大統領と電話会談を行った。7月1日に在庫不足から一時支援停止を伝えていた。過去にプーチン大統領との電話会談が不首尾に終るたびに、ウクライナは遠隔での大規模攻撃を受けてきた。停戦する気はなく、ウクライナへ屈服するようにメッセージを送っていることは明白だった。義憤に駆られたトランプ大統領は、「防空システムの強化」を支援する意向を固めた。ウクライナの非常事態庁よると、3日夜から4日未明にかけての、無人機やミサイル攻撃に伴い、首都キーウでは1人が死亡し、子どもを含む26人が負傷した。なお6月25日のNATO首脳会議の会期中で触れた防空システム「パトリオット」を売却するか否か、名言を避けた。
詳細 米ウ電話会談 NHK NEWS WEB 2025年7月5日 午前5時46分付
ウクライナ寄りの姿勢に転じれば、プーチン大統領と渡り合えなくなる。前バイデン政権時代は、射程距離80kmハイマースを含めて、攻撃力のある武器を提供してきた。トランプ政権になり、原則武器を送っていない。パトリオットは、あくまでもミサイルや無人機の迎撃システムであるそもそもトランプ大統領が仲介役として適しているのか、西欧諸国も疑問視している。なぜなら2017年1月20日に1回目の就任時に、選挙戦において、ロシア疑惑が取りざたされていた。選挙戦において、裏で支援を受けていれば、ロシアに対して強く出られない。ウクライナ寄りの姿勢に立てば、裏切り行為に他ならない。トランプ大統領は、仲介役を降りる考えも持さない。ウクライナへの軍事侵攻により、西欧諸国は一致団結して防衛を強化している。
第4章 ロシアの占有地域。西欧諸国の外交
激戦地の一つ、ドンバス地域を構成するルハンスク州の親ロ派のパセチニク氏が、6月30日付けでロシア国営テレビの前で、「完全制覇」を宣言した。モスクワの政府会議でも同様の発言をしている。番組内でもロシアが名々した「特別軍事作戦」の進捗状況を報告していた。6月20日には、「残り20平方キロ」と表明していたのである。6月30日に、プーチン大統領自ら2022年9月30日に、住民投票の末に一方的に併合したと主張するウクライナ東部4州の今後を決める政府会合に出席した。目標として2030年までロシア本土と政治や文化的水準を同等に高める必要性を説く。教育や文化、保健、スポーツの施設建設を再建し、道路や住宅、公共インフラを整備することで、雇用を創出できるとの考えを示した。4州の住民の生活再建のために、移住環境を整え、仕事を与えることで、経済力の向上を狙う。ウクライナ国籍の住民には、率先してロシア国籍を与える。復興に着手することで、ロシア領として既成事実化を図る。
写真=6月30日にモスクワの会合に出席したパセチニク氏(出展タス=共同) 掲載元 詳細記事 東京新聞 2025年7月1日午前8時39分
https://www.tokyo-np.co.jp/article/416173?rct=world
なおロシア国防省は、ルハンスク州の完全制覇を認めていない。7月7日に、新たに東部4州の域外の東部ドニプロペトロウスク州の集落ダチネを制圧したと映像付きで発表した。ウクライナは、「プロバガンダに過ぎない」と否定している。なおロシア国防省は、6月8日付けで同州に進軍したと明らかにしていた。ペスコフ報道官は、スムイ州同様緩衝地帯作りの一環と説明した。なお国防省は、スムイ州でもひとつの集落を掌握したと発表している。
詳細記事 日本経済新聞 7月7日20時28分
ロシアに影響力を行使できるのは、最大の貿易国である中華人民共和国である。7月2日、EU本部のあるベルギーの首都ブリュッセルにて、カラス安全保障上級代表(外相に相当)と、王毅外相が会談した。エストニアの首相からEUの外相に転任して1年を迎えたカラス氏は、ロシアの支援停止を要請した。表向きに中国は、中立の立場を示し、軍事支援をしていない。戦地に残されたロシアが使用した武器からは、中国産が見つかっていた。現に中国からの義勇兵も加わっていたのである。王毅外相は、「(ロシアを)仮に支援していれば、戦争はとっくに終っていた」と侵攻への加担を否定した。複数の消息筋の話として、王毅外相は「ロシアが負けるのを見たくない」と口にしたという。
写真=王毅外相とカラス外相 参考記事 出展 AFP時事通信社より 詳細7月3日付同社日本語ホームページ
https://www.jiji.com/jc/article?k=2025070300746&g=int
中国は非民主主義陣営として、EUと敵対するロシアやイランと経済的に繋がりが深い。共に2001年に発足した緩やかな経済協定「上海協力機構(SCO)」に加盟する。ウクライナが勝利をすれば、NATOが東方へ拡大し、将来的に台湾統一を掲げる軍事戦略にも見直しを迫られる。一方で、ロシアが大勝ちしてしまえば、中央アジアの権益を奪われる恐れが高い。中国の立場からすれば、NATO東方不拡大について、ロシアとの方向性は一致する。一方で、ウクライナとの戦いで早期に決着を付けて、勝利宣言は避けて欲しかった。2023年6月に、ウクライナが、クリミア奪還を目指してヘルソン州とザポリージャ州への反転攻勢失敗を機に、形成は一気にロシア軍へ傾いた。現在はロシアが着実に兵士を犠牲にしながらも実行支配地域を広げている。ロシア側は、軍事侵攻へ多大な犠牲を出している以上、余力はない。一方でウクライナのNATO入りも難しい状況である。中国には決して悪い状況ではなかった。中国は、西欧の民主主義陣営に対して、関与しない姿勢を貫いている。
ロシア軍とウクライナ軍は、確かに2025年1月20日に、米トランプ大統領の2期目就任にあわせて、停戦へ協議が始まった。世界の警察権を担ったアメリカは、中東地域から、西欧諸国への影響力は大きい。その仲裁者としての大役をトランプ大統領が担った。ウクライナ側の兵員や武器不足の現状を見透かして、プーチン大統領は、停戦引き延ばすことにより、攻撃を続ける。トランプ大統領は7日に、ウクライナへ防衛装備品を送ると表明した。ゼレンスキー大統領が求めていたパトリオット用ミサイル10発が含まれている。6月25日に、彼自身、ゼレンスキー大統領の前でこぼした通り、プーチン大統領を説得するのは難題だった。仲裁者としても、過度にウクライナへの加担は避けたい本音が見える。両国の軍事衝突の終焉について、予測が難しくなった。
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