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2024年02月27日23:10

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経済談義第52回:ハイパーインフレ(2):解析的定義

長期連載の経済談義シリーズ第52回です。日本経済超悲観派の僕がその論拠を解説していきます。



前回から「ハイパーインフレ」について書いています。
前回の記事のコメントとして、ハイパーインフレという言葉を使う人は定義を答えられない、というコメントをいただいたので、今回はそれに反論しておきます。


まず前提として、ハイパーインフレの定義があるのかないのかといえば、前回書いたように、定義はあります。
ただ僕の考えは違っていて、ハイパーインフレを特定の数値で定義するのは「適切でない」と考えているのです。



電気工学や機械工学などの工学分野において、系の長期的な挙動を大まかに検討する際に、その解を「定常解」、「振動解」、そして「発散解」に分類して考えることがあります。

まずひとつめの「定常解」は系のパラメータが変化しない解です。
たとえば石油ストーブを焚き続けている部屋の室温が一定になっている状態などを言います。ストーブが発生する熱と、窓や壁から流出していく熱が釣り合っているわけです。

ふたつめの「振動解」は系のパラメータが上がったり下がったりを周期的に繰り返す解です。
旧式のエアコンの温度調節では、コンプレッサーのスイッチが入ったり切れたりするので、室温が上がったり下がったりします。
系に「負のフィードバック」の制御が加えられている場合に発生します。

そして、みっつめの「発散解」は、パラメータが一方向に加速していき、無限に増加していく解です。

コンサート会場などでマイクがハウリングを起こして耳を突き刺すような騒音が発生することがありますね。
スピーカーが発した音をマイクが拾ってしまい、それをアンプが拡大してまたスピーカーから出てくるという、いわば「音の拡大スパイラル」が発生しているわけです。

ポイントは、発散解はゲインで定義されていて、特定の音量だとか、特定の電流値といった、特定のパラメータ値で定義されているのではないというところです。
解析的な定義としては、フィードバックループのゲインが「1」を超えている場合に発散解となります。

発散解は、系に「正のフィードバック」がかかっている際に発生します。ハウリングでいえば、アンプのゲイン(ボリューム)が大きすぎて、それがスピーカーやマイクの減衰率を上回ってループ全体のゲインが1を超えたときにハウリングします。

なお正のフィードバック、そしてその恐ろしさについては、この連載の第42回と43回で取り上げています。



ハイパーインフレについてもこれと同じ観点から定義すべきだと僕は考えています。

物価水準と通貨発行量の間に相互作用があって、それが「正のフィードバック」を形成したときに、両パラメータが相互に加速しあってインフレスパイラルを止められなくなるのがハイパーインフレです。
円ドルがいくらだとか、ビックマックがいくらだといった特定の価格の数値で定義していたのでは本質を見失ってしまうおそれが強いのです。


残念ながら、工学におけるような系の挙動の研究は経済学においては十分に行われておらず、どういう条件の時に解が発散するのかという知見は今のところありません。

ハイパーインフレの定義として特定の数値(インフレ率)を示さないからだめだと批判する経済評論家や経済学者の方がいます。
経済学における系の挙動の研究がまだまだ進んでいないということを、こうした学者さんの存在自体が示しているのだ、と僕は感じています。

(つづく)


連載バックナンバー:
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