為替介入は円安に有効なのか 50兆円の「余裕財源」活用を 国民目線では財務省の隠蔽の疑い 企業にも求められる自衛策
高橋洋一
2023.11/7 15:30
円相場が一時1ドル=151円台をつけるなど円安ドル高が進んでいる。為替介入の「スタンバイ」も取り沙汰されたが、本当に必要な施策は何だろうか。
メディアの報道などで「為替は国力」であり「円安は国力低下」という経済学的に意味不明の意見も少なくない。為替は長い目で見れば単に二国間の金融政策の差で決まるのであって、国力の差を表すものでない。
実は円安で国内総生産(GDP)は増加する。これは、内閣府などの国内機関や、経済協力開発機構(OECD)などの国際機関の経済モデルでも確認されているが、大ざっぱにいえば10%の円安でGDPは1%程度上昇する。
自国通貨安は、自国経済にはプラスだが隣国にはマイナスという意味で、古今東西で「近隣窮乏化」として知られている。というのは、通貨安は輸出主導の国内エクセレントカンパニーに有利で、輸入主導の平均的な企業に不利だが、全体としてプラスになる。このため、どんな国でも自国通貨安はGDPプラス要因になる。
もし国際経済の常識を覆せるなら世紀の大発見だ。つい最近まで「通貨安戦争」などとあおっていたマスコミが、手のひら返しするのは滑稽でもある。
円安によるGDPの増加は、企業業績の好調ぶりで確認できる。直近の法人企業統計でも、過去最高レベルの収益になっている。これで、法人税や所得税も伸びるだろう。さらに国では外国為替資金特別会計の含み益が膨らむことになる。
一方、為替介入の効果はもっても1、2日程度であり、財務省のアリバイ作りでしかない。神田真人財務官は、為替介入を含め「スタンバイ」と言ったそうだが、さすがにズレていると言わざるを得ない。
どうせやるなら、マクロ経済的には円安は政府にとって収入増なので、それらをミクロ的に困っている国民に還元するための「スタンバイ」をすべきだ。
今年度を含む3年度で税収の上振れは15兆円程度、外為特会の含み益は30兆円程度、その他を合わせて50兆円程度の余裕財源がある。財務官にとって国内問題は担当外だが、こうしたことに一切言及せずに為替介入ばかりを持ち出すのは、国民目線では、財務省が財源隠しをやっているようにしかみえない。
財務官が「外為特会の活用」を言わないのは、何らかの思惑があると邪推されてしまい、まずいのではないか。
円安については企業も国に頼らず自衛策をとったらいい。一番簡単なのは外債投資をすることだ。そうすれば、円安の際に投資収益が上がり、円安デメリットを相殺できる。長い目でみれば、輸入だけでなく輸出を行うのも為替対策になる。
防衛予算の増額をめぐり、「1ドル=108円」と予算設定したため、現状の円安が防衛力強化に影を落とし、計画数量の調達困難になっているとの報道もある。これなど、まさに外為特会の含み益を活用すればいい。さらにいうと、防衛装備品移転三原則で、いわゆる武器輸出を制限しているので円安への対応ができない。そうした制限を取り払うことも必要だろう。 (元内閣参事官・嘉悦大教授・高橋洋一)
https://www.zakzak.co.jp/article/20231107-QUCRAQS4NZLOVEYLB2RISU3LFE/
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