鹿児島で自衛隊の新基地建設や部隊増強が続いている。海洋進出を強める中国を念頭に米軍との一体化も進む。基地があることは地方の暮らしにどんな影響を及ぼすか。鹿児島との関わりが深まる沖縄と山口県岩国市周辺の現場を訪ねた。（連載「基地と暮らして 安保激変＠沖縄、岩国」�，茲蝓�
太平洋戦争末期の沖縄戦で最初の激戦地となった沖縄本島中南部・宜野湾市。戦跡がいくつも残る嘉数高台公園からは、米軍普天間飛行場が見渡せる。１０万人がひしめくように暮らす市街地のど真ん中に、広々とした滑走路が横たわっている。
３日、常駐する輸送機オスプレイの近くに、全長７５メートルで世界最大級の大型輸送機Ｃ５が飛来していた。「でかいねえ」。沖縄防衛局の委託で「外来機」を監視する７０代男性は望遠レンズをのぞいた。
別の基地から来る外来機は離着陸を繰り返す「タッチ・アンド・ゴー」訓練などで特に爆音を響かせる。市は飛来しないよう強く求めているが、同局のまとめでは２０２２年度は３１２６回（うち夜間２１回）を数える。
滑走路に近い地区には、常駐機も含め１日当たり約３４回の騒音が響く。最大は１２０デシベル。「飛行機のエンジン近く」に相当し、聴覚に支障を来すレベルだ。
高台でレンズを構える監視人は交代で２４時間態勢。大半が高齢者で、月数回で数万円を得るという。ある男性は「何も話せない」としつつ、複雑さものぞかせた。「『孫の小遣いに』とやっているが、お金もらって米軍機を待つってのも妙な話さ」
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小学生少女が米兵３人に暴行され、住民の怒りが爆発したことを受け、日米両政府が飛行場の全面返還に合意したのは１９９６年１２月。この年、米軍機は学校や病院の上空を避け、深夜飛行を制限することも日米で合意している。
だが、いずれも守られていない。西之表市馬毛島への米軍機訓練移転など鹿児島の基地問題で「日米合意は極めて重い」と繰り返されるが、普天間ではその軽さが際立つ。
「政府に対応してもらっているが、なかなか前に進まない」と松川正則市長（６９）は話す。迷走の末、政府は名護市辺野古への移設を条件とし、その賛否が市民を分断する。
２０１８年に副市長を辞めて立候補した松川氏は自公政権の支援を受け、２期目の今は移設容認の立場だ。「埋め立てが始まり、反対しても止まらない。現実的な対応が必要」と強調する。
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首相らとの会談を重ねる松川市長。普天間のオスプレイ訓練について「馬毛島移転」を示唆したことがある。島が売買合意され、オスプレイ訓練移転案も報道された時期の２０年３月。市議会で「（当時の）菅官房長官から提案が出てくる」と答弁した。
取材で真意を問うと、「あらゆる方策を探る中、市議の問いかけに応じて『一つの手法』と答えた。官房長官ともよく会っていたが、馬毛島の話はした覚えがない」と説明し、こう訴えた。「国防は国の専管事項。この厳しい環境をなんとかしてくれと頼むしかないんです」
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