吉原由香里六段が現在の囲碁界や囲碁界の未来を語ってくれています。
吉原六段といえば、若い頃から普及に力をいれておられ、囲碁界の貢献度は随一の棋士、、説得力がありますね。
『ヒカルの碁』ブームを率いた吉原由香里六段が語る“囲碁界の未来”【後編】
https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/75042
将棋ブームに押されている囲碁界。最近では、戦前に創設され数多くの名勝負を生んできた「本因坊戦」の優勝賞金が2800万円から850万円になったり、二日制七番勝負を一日制五番勝負にしたり、リーグ戦を止めてトーナメントにするなど、大幅縮小ぶりが話題となった。
今後、伝統文化である囲碁をどう継続し、発展させていけばいいのか。低年齢化、国際化、囲碁AIの台頭など、新しい局面や課題も次々出るなか、かつて大ブームを巻き起こしたマンガ『ヒカルの碁』を監修し、普及活動に注力している吉原由香里六段に、囲碁界復活のための処方箋を聞いた。
仲邑菫女流棋聖をはじめ、いま囲碁界で活躍している人の低年齢化が進んでいますが、それは子どものころからやっていたからなのでしょうか、それとも他に要因があるのでしょうか。
吉原由香里さん(以下、敬称略) ひとつは、囲碁が強くなるための環境が以前よりはるかに整ってきたことが大きいと思います。やる気のある子なら学べる場もありますし、学習できるツールもたくさんあります。
ただ、10代の棋士の活躍は、囲碁界にとっては明るい展望といえますね。
吉原 もちろんです。菫ちゃんがテレビのインタビューで「これから入ってくる若い子のためにも尊敬される存在になりたい」と話していて、すごい時代になったなと改めて実感します。
今後は女性が一般(男女混合)棋戦でタイトルを獲る可能性もありますね。
吉原 十分にあると思います。特に菫ちゃんは14歳にしてあのレベルですからね。
井山裕太本因坊もインタビューで、「仲邑さんがタイトルを挑戦したとき、それを受ける立場でいたい」と話していました。井山さんはリップサービスでそういうことを言うタイプではないので、本当に評価しているのだと思います。
碁が強くなるツールというと、近年はインターネットで強い人と対局することもできますし、囲碁AIも登場しています。
吉原 そうですね。私たちの時代は碁を打とうと思ったら、相手がいるところに行く必要がありました。
そして、強くなるために強い人がいる碁会所を探したものです。そこで運良く強い人に出会えて打ってもらえたとしても、上手な方からすれば自分より明らかに弱い人と打つことは指導になります。
ですから、その方のご厚意によるものですし、熱心に指導してくださるがゆえにちょっと怖い方もいたりして、それはそれで緊張しました。
今はいくらでもインターネットで世界中の強い人と打てますし、わからないことがあればAIに聞くこともできます。
AIがますます進化すると、棋士の出番がなくなるという人もいますが。
吉原 そうなるかもしれませんが、やはり人間に教わったほうがいいですよね。AIはしゃべらないので、AIの手を理解するのにはそれなりの棋力や受け取り手の咀嚼力が必要なのに対し、人間は適切な言葉をかけて導いたりもできます。
また、人間は好きな打ち方、パターンがありますが、AIがその人に合ったアドバイスをしてくれるかというと、まだそこまで優れてはいません。
たとえば私もそうなんですが、「攻め」が好きな棋風でもAIは形勢判断が優れているので、バランスのいい手しか教えてくれません。だからいくらいい手を教えてくれたとしても私の感覚では勝てる気がしませんし、そのあと打ち継いでいけないのです。
その点、私は師匠(加藤正夫名誉王座)も攻めの棋風だったので、師匠に育ててもらえたことがありがたかったですね。
私に合うアドバイスをしてくださるので、素直に頭に入ってくるし、その通りに打つと本当に勝てるようになるのです。
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インタビューはまだまだ続きます。
吉原さんらしい冷静で鋭い着眼の意見は参考になります。
週刊「碁」廃止、本因坊戦縮小など逆境の囲碁界ですが、明るい未来がやってくると良いですね....
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