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2023年01月21日17:25

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【laboratory完成稿】第九十三回 文芸部A 王都作 自由課題「幸せ。…誰の?」≪二幕もの・1幕目≫(第九十一回 テーマ選択「初詣」企画案でした)


前の話
https://mixi.jp/view_diary.pl?id=1983505822&owner_id=9270648


〈あらすじ〉
≪1幕目主役は武尊≫
"便利袋界のカリスマ"営業マン・月岡武尊。彼は体力は常人の1.5倍!のはずが仕事始めに出先で倒れ、即入院。初詣のとき「無病息災、家内安全」願うも、早速破る結果に…。それでも転んでもタダじゃ起きない。院内でダチが出来た☆


〈登場人物〉
≪1幕目≫
男性月岡武尊(ツキオカタケル (44))1978年生まれ。今月のアホ。そもそも出世欲が無い。潤滑油的存在
鄭葉(テイヨウ (43))1979年生まれ。武尊の妻。翔と諒介の母。ノリと流れでヤンキーになった過去を持つ両幕アンカー。今回も呆れる
少女鄭翔(テイショウ (12))2010年生まれ。武尊・葉の長女。猛進型の小6
少年月岡諒介(ツキオカリョウスケ (10))2014年生まれ。武尊・葉の長男。日和見小4
おじいさん月岡幸二(ツキオカコウジ (68))1954年生まれ。武尊の父。穏和で冷静

女性国後藍(クナシリアイ (34))155cm、44kg。コラムニスト兼作詞家。病持ち
女性星野カナヨ(ホシノカナヨ (35))180cm、60kg前後。
男性山田貴夫(ヤマダタカオ (23))カナヨと藍のアパートの別室住人の一人



〈本文〉
≪一幕目≫
2023年、元旦の昼間
ここはひなびた小さい神社
見た感じヤンキー風情の家族が来ていた
高学年の小学生が2人、それぞれ茶色い硬貨を数枚投げ入れ

女の子 “今度こそ大画面のモニター買ってもらえますように!!!”
男の子 “去年遊べなくなった◯◯と仲直りしたい…”
母っぽい中年女 “コイツ(夫)がヘマせんように…”
その夫 “今年も病まず無事に過ごせるように……そして、家族は健やかに”

よくある初詣の風景である

――――

同年1月4日8:55頃、千代田区神田にある小さな某ビルテナント6階にある某商社のフリーアドレスエリア内のテーブルの片隅に広げた個人所有のノートパソコンが突然ダウンした。原因は湘南乃風・若旦那(旧)風の姿形の男性が突然前頭部をCPUの真上に落としたからだった。他、異常はなかった
その音がして、近くにいた別の人間が即座に駆けつけ、男性の意識があやふやなので救急車を手配。男性は車内で何度も「頭・・・イテテテ!」と訴えたと救急隊員から聞いた、やれやれ
(後日壊したPCは当人が弁償した)

同日10:00頃、患者氏名:月岡武尊は虎の門病院に搬送される。氏名と生年月日と住所は彼所有の運転免許証で確認された。入院してからしばらく安静にせざるを得ず、元々アクティブな彼には相当ショックだった

翌日の昼頃か、武尊の父・月岡幸二は自らの仕事場を急遽早退し息子に面会。このときのことを振り返った息子いわく、随分と髪型も服装も乱れ、取り乱したことが見て取れたという
確かめたいことを一言二言交わした彼は息子に「母さんは別の日に見舞に来る」と伝え、病院を後にした

脳神経外科4床室の勝手に慣れてきた頃、同じフロアの個室に入院していた国後藍と仲良くなった。きっかけは、ある日の午前中に武尊が簡単な検査の帰りにフラッと個室の並びを通ったとき……
普段はウンでもスンでもない、ともすると無機質すぎる各病室の閉まった引きドアの中に、1つだけ開かれていたのがあった。武尊は覗いちゃいけない、解ってる、のに、なぜか室内を覗いてしまった
中には小柄な若い女性が背筋を伸ばしてヘッドフォンを着けたままゆっくり細く白い体とクリームイエローで艶のあるセミロングヘアーを揺らしていた。おそらく一旦ブリーチしてる…。目が合ったときサラッと
「やぁ」
「ぁあ…」
悪くなかった感触が互いの間を流れ、それはそのまま続いた

しばらく彼女の病室で話し込んだ
「あの、、、病室の番号とお名前は?そちらの病室へ届けたいものがあるので」
武尊は一瞬迷ったが、変なことはそうそう起こらないだろうと考え
「◯08号室、ツキオカタケルです。あなたのお名前は?」
彼女は迷うことなく
「クナシリアイ、です。よろしくお願いします」
どちらからとなく、サイドテーブルの上に置かれたメモキューブから紙を一枚千切り、それぞれ自分の漢字名を書いて交換。藍がすこし微笑んだ
聞くと彼女は持病の定期検査入院で来てると言う
「何度も何度も……もうウンザリだけどね
そう言いながらも、武尊に病院関係者の対応の当たり外れや看護師による抜き打ち聴取や検査などの来やすいタイミング、それから違反スレスレのバイタル調整(コラむかっ(怒り)むかっ(怒り))など些細なネタを色々尋ねられて、内心ワクワクソワソワした
“自分の知識が求められてる!”
他愛ないことなのに気持ち弾ませながら喜ぶ
“こんなこと超久々!”
武尊も藍のそんな感触を知ってか知らずか、ポンポン小気味よいテンポで答えてくれるところに嬉しくなった
彼も、ただ自身が得をするから聞き出しただけでなく、後日妻と雅美さんの主治医探しに役立つと分かっていた
それから間を置かず、武尊がTwitterの裏垢(アカウント)を久々に更新した際に
“東京の大病院のひとつTの裏話たっぷり聞けちゃった…うお〜!、ここで晒せない話だらけ顔(嬉し涙)(困)”
と小出しにするほどワクワクが押さえきれなかった

――――

この数日後に、武尊の妻・葉が事務的に面会
武尊も淡々とそつなく会って消化
葉の帰り際に一言
「子供たちは?」
彼女からはそっけなく
「来ない、って」
彼も
「そっか、翔も諒介も忙しそうだからな……」
とだけ呟き、送り出した

――――

さらに数日後、藍からもらっていたクッキーのお礼を渡しに例の個室に行ったときに感じ慣れない人気(ひとけ)がしたので、中に入ると長身の女性がいた。彼女のほうから
「あの・・・どうかなさりましたか?」
「いえ、国後さんどうしてるかな、って」
彼女はふんわりと笑って、迎え入れてくれた。優しいなぁ…と武尊は感慨に浸った
お互いに簡単な自己紹介をした後、しばらく空間をともにした
フルネームは星野カナヨ。彼女はフリーのノンフィクション系が得意な雑誌社出のライターで、藍と同じアパートに暮らしているという
「最近は取材で外出が多い中、合間を見てここに来てるんだ」と、つけ加えた
あと、彼女が目をキラキラ輝かせながら
「かつてオダジマタカシとナツハラタケシに憧れたぴかぴか(新しい)だからかな、「タ」で始まる名前にアンテナ立っちゃうんだ」って聞いても、武尊には全く馴染みがなく、彼はその2人の名前の漢字と顔と印象が浮かばず困ったあせあせ
“おそらくカナヨさんに俺の伯父が今も現役で書いてる武闘硬派ライターの金城昭って知ったら驚くから迂闊に話せないな、とも考えたり…本当は言いたくてたまらない!”
この日はもう一人来客があり、カナヨに同行していた山田貴夫。彼とも話した
「やあ」
「こんにちはぴかぴか(新しい)ぴかぴか(新しい)ぴかぴか(新しい)
武尊は
“何だこのぴかぴか(新しい)は?”と思ったが、とりあえず流した
再訪日は週5で保育士をしている貴夫の休みにある程度は自由の利くカナヨが日程を合わせたという。
貴夫から2人にフランクに
「よければ緑茶飲みます?」
「ありがとー♪」
「じゃ、お言葉に甘えて」
話されたのは主にベンチャー企業の動向と単元株の話。どこの銘柄がこれから買いで、今売るならソフト産業の銘柄だな、とかああいうの。国後ちゃんもこっそり小耳に挟んでてほっこりスマイル元気で何より
さらに会話は続く。この中で人となりが出る出るウッシッシ手(チョキ)
トップバッターはカナヨで
「最近読んでよかった記事ってなかなか巡り会えないんだよねー表情(やれやれ)
で、貴夫が
「わかるよ。職場で面倒見る子供の相手から解放されてウェブニュース見ても“だから?”ってやつばっか
ここで武尊
「何?ジャンル絞り込んでもつまんないの?」
あらかた出そろったところで国後ちゃん
「それもメンドクてしなーぃがまん顔。それでさ、まだまだウラ話あるけどどうするexclamation & question
と、彼女がそれを話し始め、その間に案外シャイなカナヨもちゃっかり国後ちゃんから院内の裏情報までガッチリ聞き出した
このとき集まった全員LINE交換
「じゃあこれから国後ちゃんで表情(嬉しい)
藍の手元にある、月岡の名刺。
彼からは
「これ持ってればスマホ使えなくても俺に連絡できるでしょウインク
不意に眠くなって目の前の視界がぼやけながら
"ごく最近知り合った程度の私なんか恋愛のストレート・・・いや、ヒーシンクスナッシングオブミー、つまり全く眼中に無いだろう、けど……"
彼女はそれを左手に軽く持ちながらため息を吐いた

その後、余りの激暇更新中だった武尊の意識下に人知れず相当なフラストレーションが溜まった
これを病室内の人間や備品に八つ当たりする代わりに……ある日の昼下がり、4床室のベッドが3台空っぽになったタイミングで、彼を中心にあの連中がここぞとばかりにバカ騒ぎした
ことの起こりは、国後ちゃんが一時帰宅から病院へ戻った際に持ち込んだBlu-ray DiskプレイヤーとPS5のエンタメセットうれしい顔うれしい顔表情(嬉しい)ウインク
後日師長からの聞き取りによれば、4人ともそれぞれの事情で去年の11月頃から特にストレスを溜めまくった反動で弾けたことを認めているがく〜(落胆した顔)

因みに国後ちゃんは予定より早く退院ウインク
主治医と担当ナースたちから喜ばれた女性アートカプセル星

武尊は妻の葉からこっぴどく
「何でいい年して病院で騒ぐぷっくっくな顔exclamation & question
「だって飽きちゃうんだも〜ん
むかっ(怒り)
当然妻からはボロクソ罵られるも、無事退院祝
帰宅直後に子供たちから
翔(実娘)「いつものことでしょボケーっとした顔メンドイ」
諒介(実息)「…(ノーコメント)」
ちなみに別れに至らないのは、武尊がオナニー派で、知り合った相手を口説かないから。クリーンでガキのごとく騒ぐだけ
現に葉は過去に武尊本人から
「前に営業から宣伝にまたがった仕事絡みで(元人気プログレ?ヒップホップ?系バンドの)ゲ◯乙女フロントマン「K谷の活動名+人間性」の単語でググったら、彼と当時人気のあった女性タレントのベ○キーとのやり取りのLINEスクショ晒されてて、吐き気がしたの。ああいうの「ホント嫌」だから。俺からは決して起こさない。保証できるくらいちっ(怒った顔)
たしかに潔さは満点だけど、だからこそ妻は難儀ボケーっとした顔ドウスリャイイノヨ…
ここだけの話、武尊と葉の夫婦生活は2番目の子供・諒介が生まれてからはほとんど無く、普段はさほど気にならないが、たまに葉のほうから誘ってもあるときはやんわりと断られたり、また別のときはハッキリと「ごめんね考えてる顔あせあせ(飛び散る汗)あせあせ(飛び散る汗)」と謝られることも少なくなかった。葉にとってこの点は見過ごせないほどの不満の種になっていた
彼女は気がつくと、GooglePlayストアからマッチングアプリ1つをダウンロード。画面を見て
“ヤバっ!”
速攻削除して、その勢いのまま心療内科を予約したが、呼吸がますます荒れ、心臓が高鳴り脈打つのを強く感じた

――――

MRIで撮影が終わり
虎ノ門の医師からMRIフィルムの中の怪しげな写りを指されながら
「そうねぇ、特にこことそこ気になるぅ」
とつぶやかれ、軽くゲンナリした武尊はさらに精密検査を受けることになり、NCNP病院(国立精神・神経医療センター)に予約票と診療情報提供書をここの地域連携室へ送らないとならなかった
「紙かよぅ」
葉からぶっきらぼうに
「しゃあないでしょ、アンタが悪いから」
検査の当日朝から、武蔵野市にあるその病院に行きバックレずに無事受けて家路に

退院して数日経った頃、国後ちゃんからLINEメールが届く
「思い切って書きます。月岡さんのこと、一人の人間としてとても好きです。もっと、健全な意味で、ですが、交流を深めたいと思いました。そちらが可能でしたら、返信ください。国後」
武尊はチラッと戸惑ったが、来月開く予定の花見に誘うことにした


≪2幕目へ続く≫
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