第１巻から第５巻を読み終わりました。全43巻，読破までの道のりは遠い。ここまでの読書メモです。
� ｜羚顱つ�鮮は儒教（礼教）という文明の国。倭（日本）は素っ裸の褌一本，文明のない国であり，今も文化はあるが文明はない。
�◆ヾ攅颪禄戎禿�までが濃厚な身内，十親等の年長者が不意にやってきても，「伯父上」 として，長者に対する礼をとらねばならい。
�� 日本の中世は真言密教の修法が信じられていた時代。雨を降らすのも男女の産み分けも病気を治すのも人を殺すのも，すべて真言密教の魔法で可能だった。
�ぁ＼里鰐酥擇世辰燭箸いΔ里郎�覚である。近代戦の残酷さに比べればとるに足らない。
�ァ．蹈轡△簔羚颪�革命を必要としたのは，国家が民衆の暮らしのすみずみまで面倒をみるという体制でなくてはどうにもならないような魔窟だったから。
�Αゝ廓鰐餌欧箸いΔ里老鈎弔鯀箸鵑任罎�ときに，一騎あたり，乗り換え用の馬を十頭内外は曳いてゆく。
＜以下引用＞
第２巻 韓のくに紀行
P132
話題を，わずかに転ずる。当時の「倭」の習俗についてである。このことについてはさきに多少ふれた。つまり，中国体制や朝鮮の李朝体制の原理である儒教（礼教）のそとにいる民族であることをのべた。
江戸っ子の切符を，「五月の鯉の吹き流し」などといわれるが，中世末期の倭というのはじつにそのようなものであった。褌一本に太刀を振り回して駆け回る姿はどう見ても儒教的ではない。ついでながら儒教というのは朱子や何やらの学者の間でこそ思想だが，しかし体制としては「礼教」という瑣末な形式主義にすぎず，人間を一原理で持って高手小手に縛り上げ，それによって人間の蛮性を抜き，統治しやすくするという考え方である。これを文明といってもいい。あるいは文明というのはそういうものかもしれない。
例えば新中国にあってさえ，このことに変わりはない。毛沢東思想によって生活のすみずみまで律してゆくという中国のふしぎさを，なにかかんちがいしてやたらに悪口を言ったり，逆にむやみに感動したりする現代倭人がいるが，それが中国文明というものの当然なあり方なのである。日本には文化ーーたとえば平安文化や室町文化，もしくは元禄文化ーーがきらびやかに存在したが，かつて文明を起こすことがなかった。そのため「倭」というわれわれにはどうも「文明」ということが体質的によくわからないぐあいにできている。これは決して欠点ではなく，文明というのは元来荷厄介な面もあり，そのことは中国の儒教文明の末期をみても，あるいはインド文明と回教文明にこんにちなお押しひしがれているインド民族をみてもわかる。
その点からいえば，倭は元来，素っ裸の褌一本なのである。そのときどきによって，インドから法服を借りたり，中国から宮廷の衣冠束帯を借りたり，明治後は西洋から洋服を借りたりしてきた。たとえばヒッピーという新しい秩序と価値観という文明が世界の一角におこると，さっそく新宿にヒッピー・スタイルの青年があらわれるのである。それが倭人というもので，文化は興すが，決してみずから文明というこのおそろしいものを興そうとしない。
P190
韓国にあっては，李朝式の儒教によって，十親等までが濃厚な身内とされる。日本人もおなじく孔子や孟子を読みはしたが，とてものこと，こういう本格派の儒教社会の人間のシガラミというものは理解できない。
ついでながら孫というのは二親等で，伯父は三親等である。これを基準に十親等までが身内ということを考えてゆくと，気が遠くなる。人によっては何千何万人ということになり，それに配偶者の十親等までを含めると，どれほどの数になるのであろう。たとえば見たこともない十親等の年長者が不意にやってきても，
「伯父上」
として，長者に対する礼をとらねばならず，たいていの韓国人はそういう礼を日常的に実践している。もしその礼に外れれば，人間のクズとして袋叩きにあわねばならない。
第４巻 洛北諸道ほか
P20
中世というのは，その当時，真言密教の修法がいかに信じられていたかを理解しなければ，その歴史も文学もその時代の人の心もわからない。ときに地球科学として旱天に雨を降らせることもできたし，また医学として男女を産み分けさせることや，病んでいるものを癒すことや，あるいは人を呪殺することもできた。真言密教は西洋でいう魔法である。東洋の場合，魔法が悪魔の側になくて体制の側にある。さらに西洋と違っているのは，魔法が，真言密教という，思想を論理化したという点で完璧ともいうべき体系を背景にもっていることである。
P181
日本の戦国期は，単に乱世ということでとらえるのはまちがっている。経済，文化などの面で新興のエネルギーが沸騰しはじめていたころであり，政治の面でもかならずしも治安が悪かったわけではない。戦国中期以後はよき大名の領内などは，平安期や室町期よりも治安がよかったようにもおもえる。さらには戦争といっても敵味方千人が合戦してせいぜい死ぬのは二，三十人ほどであり，近代戦の残酷さからみれば，とるにも足りない。ことさらこういうことをいうのは，昔は野蛮で残酷だったという見方が多分に錯覚だということをいいたいためである。
第５巻 モンゴル紀行
P82
ロシア人の金の採掘者が根城をかまえている。その金を密輸しようとする清国人たちが裏町にチャイナ・タウンを営み，これら黄金と毛皮で儲けたあやしげな紳士たちの社交場が栄え，裏町の路上を流刑者や前科者が靴音を忍ばせて歩いている。売春婦，酔っ払い，そして追いはぎがイルクーツクの名物で，警察はあって無いような存在だったらしい。
（中略）
その後，わずか百年後のイルクーツクで，こういう情景は想像もできない。古典的な自動車をよく洗い清めたようなこの街で，われわれのように夜間，淋しい街路を歩いていても，身辺の危険などいっさいない。密輸業者どころが中国人そのものまで消えてしまっており，十九世紀のイルクーツク名物だった賭場もなく，酒場もなく，この整然たる社会主義体制のなあkでは追いはぎの出る隙間もない。中国が革命を必要としたのは，国家が民衆の暮らしのすみずみまで面倒をみるという体制でなくてはどうにもならなかったように，ロシアもまた，もし革命がなかったら，自制力を喪った社会は社会そのものが魔窟のようになってしまっていたに相違ない。
P243
中国の戦国末期の趙の国が，匈奴のまねをして軍制を騎馬式に変えたと『史記』ではいうが，なんといっても趙は農業国のはずであり，騎馬軍の実態はおそらく大したことはなかったにちがいない。
なぜなら，騎馬民族というのは軍団を組んでゆくときに，一騎あたり，乗り換え用の馬を十頭内外は曳いてゆくのである。行軍や戦闘で馬が披露すれば（乗用の馬は疲労しやすい）どんどん活力にみちた馬に乗り換えてゆく。匈奴というのはネコもシャクシも，乗り換え馬をもっているのだがそういう贅沢は，農耕地帯の国では不可能にちかく，ひるがえっていえば，乗り換え馬をもたない騎馬軍というのはカッコウだけのもので，内実は弱い。趙の国の新設騎馬軍の兵たちは，それだけの乗り換え馬を持たされていたであろうか。
日本史の場合，平安末期に関東平野で成長した騎馬武士たちは，関東一円がほとんどが牧場のようなものであったため，乗り換え馬はふんだんに持っていたらしい。
かれらがのちに，騎馬戦に不得手な平家を圧倒すべく西国へ大遠征するとき，中級の武士でも数頭の乗換馬をもっていたといわれる。平家はおそらく将領クラスでないと，それが可能でなかったにちがいない。
＜以上引用＞
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