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2022年09月09日20:01

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KGB出身のプーチンが情報に振り回される^^;

ウクライナ戦争の情報戦で引っ搔き回されたプーチン
斎藤 彰 (ジャーナリスト、元読売新聞アメリカ総局長)
2022年9月8日

 出口の見えないウライナ戦争――。プーチン露大統領の手痛い誤算の背景として、同国情報機関による終始楽観的な戦況見通しがあったことが、米ワシントン・ポスト紙特別チームによる調査報道でこのほど明らかにされた。侵攻の動きを事前察知し、世界に向けて警告していた米側インテリジェンスとの質的差も浮彫りにされた。

周到な情報準備も、報告は楽観的なものばかり

 ワシントン・ポスト紙は先月、ウクライナ戦争がロシアによる軍事侵攻開始から6カ月の節目を迎えるのを機会に、ベテラン記者を総動員し、米欧、ウクライナなど各国政府、軍・情報関係者を中心に精力的なインタビュー、背景取材に着手、その分析結果を数回に分け大々的に報道した。

 この中で特に注目されるのが、冷戦時代の国家保安委員会(KGB)に代わり、クレムリンの戦争立案・遂行に中心的役割を演じてきた「連邦保安庁(FSB)」の存在だ。

 FSBは2019年まで、部内の「ウクライナ課」に30人程度のスタッフを擁してきたが、その後、思い切った改革に乗り出し、今年2月の侵攻直前には、160人に大幅増員された。ウクライナ各州に専従要員を送り込み、国じゅうにスパイネットワークを張り巡らした。

 プーチン大統領がひとたび「ウクライナ侵攻」を決断すると、FSBは、ゼレンスキー政権や軍内部に潜伏させていたスパイ網を通じ、ロシア軍が展開すべき具体的侵攻作戦、予想されるウクライナ側の反応などについて、クレムリンに詳細にわたる報告を行ってきた。

 その核心部分は「同国政権は(侵攻後)短時間のうちに崩壊する」というものだった。

 ウクライナ側の執拗なレジスタンスの可能性については、ほとんど言及しなかった。

 ゼレンスキー政権の「短期崩壊」を前提に、「傀儡政権」樹立準備も完了、それを支えるウクライナ側の中心人物たちまで根回ししていた。その中には、かつてウクライナ大統領を務め、政変で2014年にロシアに逃亡したビクトル・ヤヌコビッチ氏、ウクライナ野党党首でプーチン氏とも親交を深めてきた新興財閥のビクトル・メドベチュク氏らが含まれていた。一方、ウクライナ現政権の情報機関はすでに、彼らについては「FSB同調者」としてマークしていたという。

 しかし、FSB本部は、こうしたウクライナ情報機関の警戒ぶりに気づいた様子はなく、ロシア軍侵攻開始「最終段階の数日間」には、首都キーウ周辺に潜伏する工作要員たちのために用意した「居住用アパート案内」や「傀儡政権」樹立後に続々とモスクワから潜入が予想される要員たちのための受け入れに関する細かな指示を現地に頻繫に送っていた。

 ワシントン・ポスト紙が入手したウクライナ側の機密情報ファイルによると、FSBのウクライナにおける主たる任務は、「政権の内部崩壊」「ゼレンスキー大統領追放」「親露政権樹立」にあり、同政権内部に潜伏させる要員たちの活躍に期待を寄せていた。そのうちの何人かは指示に従い、ウクライナ国防省の作戦妨害に乗り出したが、中には、秘密工作資金を着服したり、侵攻開始直後に嫌気がして謀反を起こしたりした者もいた。

 FSBの戦況見通しも全体として、楽観に満ちたものであり、ゼレンスキー大統領の強靭な反抗姿勢や、同大統領に対するウクライナ国民の我慢強い忠誠ぶりに関しては、ほとんど言及がなく、戦争が困難に直面し、長期化することについては、プーチン大統領にまともな報告を上げてこなかった。

なぜか伝えられなかった「実際の」情報

 FSBが、なぜ見通しを誤ったかについては、いまだミステリーとなっている。

 特に、侵攻決定に先立ち、FSBはひそかに、ウクライナ国民を対象に広範囲にわたる独自の世論調査を実施していた。

 それによると、回答者の大多数が「ロシアに占領されたら徹底的に抵抗する」と答えており、ロシア軍を�牴鯤�者�瓩箸靴憧新泙垢覿�気は当初から存在しなかった。にもかかわらず、FSB展望は「侵攻部隊は市民から歓迎され、すみやかに親露体制が回復される」との楽観論に立っていた。

 しかもFSBは、「首都キーウに向けた電撃作戦により、ゼレンスキー政権は数日間で転覆され、大統領は殺害、身柄拘束あるいは直前の国外逃亡により、政治空白が生じ、新体制樹立が可能となる」ことを前提とした戦争計画まで作成していた。

 ところが、実際には、FSB要員たちがロシア軍部隊とともにキーウ近郊に迫った時点で、早くもウクライナ軍の反撃に直面、撤退を余儀なくされるに至った。

 ロシア軍参謀本部情報総局(GRU)もほぼ、FSBと同様の報告をクレムリンに挙げていたという。

 このようにロシア側のウクライナ侵攻作戦に関するインテリジェンスがいかに間違いだらけだったかは、その後の戦況が如実に物語っている。

 ロシア軍は首都キーウ制圧を断念後、当初の作戦を転換、ウクライナ南部および東部諸州攻撃に主力を注入してきた。そしていったんは、ドネツク、ヘルソン各州を占拠したとみられていた。

 しかし、ウクライナ軍は「首都制圧」というロシア軍側の出鼻をくじいたばかりか、去る8月29日、南部などでも領土奪還目指し猛烈な反撃攻勢に転じ、特にヘルソン州周辺では、集結した数万人規模の露軍部隊相手に今なお五分五分の戦いを続けている。

 ウクライナ軍は、東部ドネツク州のいくつかの集落についても、すでに奪回したと伝えられる。さらに、ゼレンスキー大統領は今月4日の演説で「われわれはすべての領土を解放する」とさえと述べ、ロシアが併合した南部クリミアの奪還にも乗り出す姿勢を明らかにした。

 一方のウクライナ側の治安・保安体制も、当初は堅固とは程遠い状態であり、ロシア側のスパイ潜入摘発、かく乱工作回避にかなり手を焼いていた。しかし、米中央情報局(CIA)、英秘密情報部(MI6)などからの情報支援を得て、去る7月には、ゼレンスキー大統領陣頭指揮の下に、小学校時代からの友達だった身内のイワン・バカノフ同国情報局長を突如解任、他にも内通者の一掃など、非常措置がとられている。

 いずれにしても、プーチン大統領は、FSBによる「早期傀儡政権樹立」という見通しを真に受けてきた結果、今や、まったく出口の見えない長期戦を強いられていることは間違いない。

「ロシア侵攻説」を伝えるも西側諸国は懐疑的態度

 これと対照的な活躍を見せてきたのが、米英両国のインテリジェンスだった。

 特に、CIAを中心とする米側各情報機関は、ロシアの侵攻開始に先立つ1年以上前から、クレムリン、軍部、情報機関内部にスパイを潜り込ませ、プーチン大統領が着々とウクライナ侵攻作戦の準備に乗り出し始めていることを察知していた。

そして、2021年10月には、ジェイク・サリバン大統領補佐官(国家安全保障担当)、ウイリアム・バーンズCIA長官らが、バイデン大統領に対し、より具体的なロシア側の侵攻着手のための「ウォー・プラン」について極秘ブリーフィングを行った。

 これを受けて、バイデン大統領は早速、数人からなるインテリジェンス・チームをモスクワに派遣、プーチン大統領に直接面談した上、「わが方は、すでにクレムリンが何をしようとしているか、すべて把握している。侵攻に踏み切った場合、(ロシア側に)深刻な結果を招くことを知るべきだ」と警告していた。

 しかし、プーチン大統領は現実にはこれを無視して、侵攻計画を強行したことになる。

 ワシントン・ポスト紙の調査報道によると、米側情報チームは、プーチン大統領のみならず、英仏独など西側同盟諸国首脳に対しても、同様の事前ブリーフィングを行い、それぞれの外交チャンネル通じ、クレムリンにウクライナ侵攻を思いとどまらせるよう働きかけを促していた。

 このうち、英国政府はMI6を通じ、ロシアの侵攻計画について米側と同様の情報をある程度まで把握しており、米側インテリジェンスより確度の高い情報と突き合せた上で、他の同盟諸国に対しても、ロシア軍による早期ウクライナ侵攻について警戒を呼び掛けていた。

 ところが、ドイツ、フランス両国首脳は、ロシアのウクライナ侵攻に直前まで懐疑的態度を示していた。

 特に両国当局者は、説明に当たった米情報機関のトップであるアブリル・ヘインズ国家情報長官に対し、かつてジョージ・ブッシュ政権権時代に米側インテリジェンスによる「イラク核保有」説で振り回された苦い経験にも言及した上で、「今回の場合も、ロシアが実際に侵攻に敢えて踏み切るとは思えない」「わが方の情報機関もそうした動きを察知していない」などと否定的見解に終始していたという。

 しかし、米政府当局者たちが、「ロシア軍侵攻切迫」を信じ込ませるのに最も手を焼いたのが、ゼレンスキー大統領以下、当事者であるウクライナ政府側だった。

 特に昨年11月、ブリンケン国務長官がゼレンスキー大統領を英スコットランドのグラスゴーにひそかに呼び出し、ロシア軍侵攻開始が時間の問題となりつつあることについて、クレムリン内部の動き、ロシア軍の国境沿いの展開など詳細にわたる情報を示しながら、厳重な警戒を促したが、このときも、大統領は「過去に何度も、ロシアは似たようなフェイントをかけてきた」などと述べ、半信半疑だった。

 その数週後、大統領は側近のドミトロ・クレバ外相、アンドリー・イェルマク首席補佐官をワシントンに派遣、そこでも米側からさらに克明なブリーフィングを受けさせたが、それでもウクライナ政府側は、去る2月24日の侵攻開始の直前まで信じていなかった。

 米側情報当局者は侵攻後、最近になって、「ウクライナ側情報機関にはロシア側の�爛皀哀蕕燭銑瓩�入り込んで暗躍していることは見え見えなので、あれ以上の核心に触れる機密を事前提供することは避けた」「しかし、侵攻後は、わが方はより積極的にウクライナ側に情報提供するようになった」と語っている。

 その後去る7月、ゼレンスキー大統領が同国情報機関のトップであるバカノフ情報局長の解任、局長以下の思い切った人事刷新に踏み切ることになったが、これは決して偶然のことではなく、米情報機関の後押しがあったことは間違いない。

 し烈極める米露情報戦の中にあって、かつてKGBで活躍し、情報活動を最大の武器にしてロシア最高指導者にまで上り詰めたプーチン氏が、今回のウクライナ侵攻作戦では、結果的に米側のインテリジェンスに引っ掻き回され、思ってもいなかった苦戦を強いられていることは、まことに皮肉というほかない。
https://wedge.ismedia.jp/articles/-/27849
>一方のウクライナ側の治安・保安体制も、当初は堅固とは程遠い状態であり、ロシア側のスパイ潜入摘発、かく乱工作回避にかなり手を焼いていた。

日本の場合、モグラを駆除したら霞ヶ関が空っぽになるかもねw

今回のウクライナ戦争は、情報戦で常に米英がロシアに勝ち続けていたという事です。
KGB出身者で情報戦に長けてきたプーチンの下に、情報が上がって来なくなっていたとは、なんとも皮肉です。

落とし所がないロシアにとって、ウクライナからの撤退はプーチン政権の崩壊です。
日本は北方領土を無血侵攻して取り返すチャンスなのだけど^^;
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