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2022年08月02日19:46

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シューベルト遺作に臨むピアニスト河村尚子、「あえて上機嫌」な曲の背後に思い巡らす

シューベルト遺作に臨むピアニスト河村尚子、「あえて上機嫌」な曲の背後に思い巡らす
2022/07/31 11:00、読売新聞 配信より

クラシックガイド
https://www.yomiuri.co.jp/culture/music/20220725-OYT1T50153/

ドイツ在住のピアニスト、河村尚子が、シューベルトの晩年のピアノ・ソナタを立て続けにリサイタルで取り上げている。残すは遺作となった最後の2曲。駆け足のシリーズ演奏会で何を伝えようとするのか。(松本良一)

平和への願い 奏でる
シューベルトのソナタはピアニストにとって難物だ。ベートーベンのように明確な起承転結がなく、いつまでも楽しげに歌い、踊り続けているような趣がある。でも、彼女の場合、それは苦にならないようだ。

「シューベルト自身が音楽の根源的な喜びに心を奪われ、無心に音と戯れているかのようで、私の気性に合っている」

「シューベルトの音楽は身近な日常生活の中に心地よい美を見いだす」と話すピアニストの河村尚子

明るいけれど、諦観が漂うソナタ

今年、最後の4曲のソナタを2曲ずつ、2回のリサイタルで取り上げる。3月の最初のリサイタルではD894、958を取り上げた。「神格化」されがちな晩年の作品を四角四面に捉えるのではなく、即興的な「遊び」をもって弾き、快活な側面を描き出した。「明るいけれど、どこか諦観が漂う。健康がすぐれず、身体はつらかったはず。だから、精神は逆に明朗さを求めたのかもしれません」と思いをはせる。

9月のリサイタルでは、作曲家が31歳で死を迎える数か月前に完成させたソナタD959、960を取り上げる。「肉体的苦しみをやわらげようと音楽に没入し、あえて上機嫌に振る舞っている。でも、死は間近に迫っている……」。この上なく美しい、この世との「お別れ」を感じ取っている様子だ。

この雰囲気を表現するのは至難の業。刻一刻と移り変わるハーモニー、内声のフレージング、ちょっとしたアクセントやテンポなど、わずかな変化をすくい取らないと、とたんに凡庸な音楽に堕してしまう。

 「以前は、細部の表現を刹那の感覚で捉えるだけでした。今は、楽譜を徹底的に読み込み、背後にあるメッセージに思いを巡らす。そしてシリアスになりすぎないよう、素直な気持ちで音楽に向かいたい」

 これを機に、シューベルトの音楽にさらに深く分け入るつもりだ。いずれはレコーディングをする考えもあるが、「今はまだ、録音に残すレベルには達していない」と慎重だ。繊細極まりない作曲家と、誠実に向き合う。

 リサイタルは9月13日、四ツ谷の紀尾井ホール。(電)0570・00・1212。


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