mixiユーザー(id:57818185)

2022年07月18日21:41

15 view

出産育児一時金増額へ「かえって費用増す?」懸念とは

出産育児一時金増額へ「かえって費用増す?」懸念とは
7/18(月) 9:30配信


毎日新聞
=Getty Images

 出産した人に健康保険から支給する「出産育児一時金」(現行42万円)が2023年度に増額の見通しになった。出産費用は上昇しており、政府集計では19年度で平均46万円と一時金支給額を上回る。子育て世帯の負担は重く、増額は歓迎だろう。ただし、増額に伴い、かえって出産費用が上がるのではないかという懸念もある。なぜか。そこには出産費用やその負担をめぐる複雑な事情がある。【毎日新聞経済プレミア・渡辺精一】

 ◇13年据え置きを「大幅増額」へ

 日本は国民皆保険で、日本に住む人は何らかの健康保険に加入する。出産育児一時金は、出産した人が、加入する健康保険から一定の支給を受ける公的制度だ。

 健康保険には、大企業の会社員や家族らが加入する組合健保▽中小企業の会社員や家族らが加入する協会けんぽ▽公務員や家族らが加入する共済組合▽自営業者やフリーランスが加入する国民健康保険――などがある。

 妊娠や出産は病気ではないため、出産費用は自費負担が原則だ。帝王切開や吸引分娩(ぶんべん)など「異常分娩」は健康保険が適用されるが、正常分娩は適用されない。そこで出産費用の経済的負担を軽減するため、出産育児一時金を設けている。

 現行制度では、妊娠4カ月(85日)以上の人が出産すると、子1人につき原則42万円を支給する。内訳は、基礎額40万8000円と産科医療補償制度の掛け金1万2000円。産科医療補償制度とは、出産時の医療事故で重い脳性まひとなった赤ちゃんと家族に補償金3000万円を支払う制度だ。

 支給額は、出産費用の動向を踏まえて改定する。09年10月に現行42万円になってから13年にわたり据え置かれているが、近年、出産費用は上昇している。

 厚生労働省の集計によると、公的病院での正常分娩の出産費用(差額ベッド代など除く)は19年度で平均44万3776円。12年度の同40万6012円から9.3%(3万7764円)も上昇した。

 岸田文雄首相は6月15日の記者会見で、出産育児一時金について「私の判断で大幅に増額する。安心して妊娠、出産できる環境づくりを進める」と述べた。

 政府は現在、妊婦への調査などで出産費用の実態を分析しており、結果を踏まえて具体的な上げ幅を議論するという。自民党の「出産費用等の負担軽減を進める議員連盟」(小渕優子会長)は5月、一時金を「40万円台半ば」に引き上げるよう提言していた。

 ◇出産費用なぜ上昇「要因わからない」

 出産育児一時金は事実上、出産費用をカバーする役目がある。実際の出産費用が支給額を上回るのなら増額は当然だろう。

 しかし、出産費用や出産育児一時金には複雑な事情もからんでいる。ポイントは2点ある。

 第一に、出産費用の実態が不明朗なことだ。正常分娩は自由診療で医療機関の価格はまちまちなため、厚労省は「出産費用は増加しているが、なぜ増加しているのか要因がわからない」という。

 出産費用は地域差も大きい。厚労省集計によると、都道府県別では、最も高い東京都が平均53万6884円なのに対し、最も低い鳥取県は34万1385円と20万円近い開きがある。なぜこれほどの差が生じるのかという分析も行われていない。

 医療機関では、事前に出産費用が明示されず、さまざまなサービスが上乗せされた結果、退院時の請求額が高額になり驚くというケースも少なくないようだ。

 子育て支援の充実を訴える市民団体「子どもと家族のための緊急提言プロジェクト」は22年4月、18年以降に出産した1236人(有効回答1228件)の出産費用を調査した。出産・入院のトータル費用は、9割超が42万円を超え、51万〜60万円が30%と最多で、61万〜70万円が22%と次いだ。

 半数以上は医療機関から「入院予約金」を求められ、金額は6割超が「5万円以上」だった。出産費用には、個室代▽エステ▽マッサージ▽特別な食事▽新生児の医療費――なども含まれ、同プロジェクトはこうした加算も高負担の要因とみている。回答者からは、出産が健康保険対象外で、病院間の差が大きいことなどへの不満が目立ったという。

 出産費用が高額化し、地域や医療機関の差は大きいが、その要因すらわからない――。出産費用が透明化されていない現状では、出産育児一時金が増額されても、医療機関がそれに乗じて出産費用をつり上げる「いたちごっこ」が繰り返される可能性がある。

 ◇組合健保「自力で出産費用捻出」のジレンマ

 第二のポイントは、出産育児一時金を負担するのは健康保険であり、政府ではないことだ。

 少子化が進むなか、出産費用の負担を軽減することは、子どもを安心して産み育てる環境を作る支援策であり、それ自体に異論の余地は少ない。

 だが、出産育児一時金の仕組みは、出産費用を社会全体で支えているわけではない。19年度の一時金支給実績をみると、協会けんぽが39万件、組合健保が30万件でそれぞれ加入者の1%前後、国保は11万件で同0.4%程度だ。当然、現役世代が多い健康保険ほど負担が多い。つまり、現役世代が自分で負担する保険料で自分の出産費用を捻出する構図だ。

 とりわけ組合健保は、公的な財政支援がないばかりか、後期高齢者医療保険制度や国保の財政を肩代わりする負担が過大になり財政悪化に苦しんでいる。負担はいわば「シニア世代への仕送り」で、その規模は自らのための医療・給付費に匹敵する。

 特に、アパレル、化粧品、外食業界など女性の比率が高い組合ほど、加入者に対する出産数の割合が高いため、一時金増額は組合の財政悪化につながるジレンマを抱えている。

 「出産育児一時金を私の判断で大幅に増額する」といえば、聞こえはいいが、その原資のほとんどは現役世代が負担する保険料だ。「国のフトコロ」は痛まず、いわば「自分の出産費用は自分の保険料からまかなえ」と言っていることになる。

 出産費用を保険適用すれば、自己負担は軽減でき、費用の透明化につながるという意見もあるが、議論は進んでいない。岸田首相は、出産費用に地域差があることを理由に、一律の保険適用には否定的だ。仮に保険適用した場合、健康保険間の公平な負担をどう定めるかという問題はつきまとうだろう。

 日本の子育て予算は、国際的にみても低水準だ。経済協力開発機構(OECD)によると、国内総生産(GDP)に対する子育て関連の公的支出(17年)の割合は、日本は1.79%でOECD平均の2.34%を下回る。支出の充実が求められるのはもちろんだが、給付の透明化や中身の見直しは大前提だろう。
0 0

コメント

mixiユーザー

ログインしてコメントを確認・投稿する