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2022年07月09日15:18

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映画 ”リコリス・ピザ”

”リコリス・ピザ”

音楽評論家界隈で絶賛されていたので見ることに。
ちなみに監督のポール・トーマス・アンダーソンは過去、数々の受賞歴
(私はどれも未見)があり、今作も本年度アカデミー賞監督、作品、脚本賞に
ノミネート。


1973年、ハリウッド近郊、サンフェルナンド・バレー。
高校生のゲイリー・ヴァレンタインは子役として活躍していた。
アラナ・ケインは将来が見えぬまま、カメラマンアシスタントをしていた。
ゲイリーは高校の写真撮影のためにカメラマンアシスタントとしてやってきた
アラナに一目惚れする。
「君と出会うのは運命なんだよ」
強引なゲイリーの誘いが功を奏し、食事をするふたり。
「僕はショーマン。天職だ」
将来になんの迷いもなく、自信満々のゲイリー。
将来の夢は?何が好き?……ゲイリーの言葉にアラナは「分からない」と
力なく答える。それでも、ふたりの距離は徐々に近づいていく。
(公式HPより)

いわゆる若い二人の一夏の出会い、的な映画。
ただ、大きな出来事は起こらず、ゆったりと話が進み、
二人ともフラフラと夢を求めながら、さてどうなる? みたいな。
でも、そのエッセイのようなささやかな流れが、
当時の彼の地のキラキラした雰囲気(監督の出身地)、時代の空気と相まって、
なんとも言えない、いい味わいというか余韻が残る作品でした。
どこか名画”アメリカングラフティ”に似た感じとでもいいますか。

若い二人といっても歳の差が10歳もあるというズレがユニーク。
ゲイリーはウォーターベットを売ったり、ピンボール屋を開いたりと
子役をやっていたせいか大人びているけれど、
切れ物かというとそうではなく、ニキビが残る憎めないキャラ。
アラナの方も25歳なのにバイト生活で、ゲイリーにそそのかされて女優を
目指したり、有名な俳優や監督と知り合って調子に乗ったり、
そうかと思えば真面目に選挙ボランティアに参加したりと、
まだ自分の道が定まっておらず、大人になりきれていない。
子供が大人びたり、大人が大人になりきれない、
誰にでも覚えがある二人の設定のどちらにも共感します。

二人の姉弟のような、仕事仲間のような、親友のような微妙な関係、
時には互いに他の相手に目移りしたり、そんな様子がいじらしかったり、
微笑ましかったりします。 
ああ、こんな関係、いいなあ、青春やな、って。

二人を演じる自然体の演技がこれまたよろしい。
ゲイリーは監督の盟友である俳優の息子、アラナは三姉妹の人気バンドHAIMの
末っ子メンバー。どちらも映画初出演、そして美男美女というわけではないけれど、
すごく人間味溢れる終始にこやかな表情が素晴らしい。

タイトルの”リコリスピザ”というのは当時実在した有名なレコード屋の
名前ですが、この映画にはなぜか出てきません。
ただ全編、あまり有名曲はないけれど当時の曲がずっと流れていて心地よく、
多分、その選曲がリコリスピザ的なんでしょう。

二人はお互いのことが心配になると、とにかく相手の元に走り出します。
今ならまず携帯で連絡取ろうとするのでしょうが。
でも、そうやって相手のことを思って、とりあえず走るってのが良かった。
今より不便だったかもしれないけれどいい時代だった、
そして走ることを厭わない、がむしゃらな若さがあった、
そんなことを思い出させてくれる素敵な作品でした。

https://www.youtube.com/watch?v=rJ0SkhQdIos


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