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2022年07月04日08:46

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【映画日記】『ガンパウダー・ミルクシェイク』、『クライ・マッチョ』、『ザ・ユナイテッド・ステイツvs.ビリー・ホリデイ』

 7月3日、日曜日。

 午前中は薬が残って身体が怠く、新作映画チラシの整理を進めつつも、ほぼグロッキーといった体。

 夜23時前に外出。

 新世界国際劇場で洋画3本立オールナイト。


●『ガンパウダー・ミルクシェイク』

【暗殺組織“ファーム”に属する腕利きの殺し屋サム(カレン・ギラン)は、ある日、標的の娘である8歳9ヶ月の少女エミリー(クロエ・コールマン)の身を匿った事で、逆に組織の標的とされてしまう。次々と現れる屈強な追手達と対峙しながら2人は図書館に飛び込むが、そこは、元殺し屋である3人の女性が仕切る場所だった。この3人と、同じく殺し屋である母の加勢を得たサムの激闘は更にヒート・アップする!!】というスジ。

 フランス、ドイツ、アメリカの合作。ド派手なアクションが全編を覆うバイオレンス・アクションである。肉弾戦、銃火器戦、カー・チェイスのオンパレードだ。

 これは快作だ! 面白い、面白い!! 

 監督はイスラエル出身のナヴォット・パプシャド。共同監督を務めた『オオカミは嘘をつく』が、クエンティン・タランティーノに絶賛された俊英だ。

 主演のカレン・ギランが可愛い。撮影時、33〜34歳だったはずだが、もっと若く見える。助演女優陣も、レナ・ヘディ、カーラ・グギーノ、アンジェラ・バセット、ミシェル・ヨ―と動ける人ばかり。悪玉のボス格を曲者山椒役者のポール・ジアマッティが演じているのも嬉しい。

 ボウリングの球、麻酔薬、ガトリング銃、機関銃、ショットガン、メリケンサック、ナイフ、チェーン、トマホークなどなど、それぞれの小道具を生かしたアクション描写がお見事! 細かくカットを重ねている箇所も有るけれど、ガチャガチャしておらず、とてもスムーズな編集で、アクションの流れがしっかりと判るように作られているのも好感触。(ミシェル・ヨーが繰り出すチェーンを使っての首吊り殺しの元ネタは、ひょっとして『必殺!』シリーズの三味線屋勇次では!?)

 蛍光色を基調とした画造りもスタイリッシュでイイ感じ。どこかタランティーノ作品を想起させるシーンが幾つも有る。マカロニ・ウエスタン風のメイン・テーマも印象的。

 これはオススメだ。とても面白く観た。


●『クライ・マッチョ』

【1979年のアメリカ合衆国テキサス州。カウボーイ・ルックの老人マイク(クリント・イーストウッド)は、落馬事故を起こして以来孤独な日々を過ごしていた。そんなある日、マイクは元雇い主(ドワイト・ヨーカム)から、「元妻が引き取った息子のラフォ(エドゥアルド・ミネット)をメキシコから連れ戻して欲しい」と言われる。それは誘拐まがいの依頼だが、マイクは過去の恩義ゆえ、渋々と引き受け、一路メキシコへ。見つけ出したラフォは放蕩三昧の母親に愛想を尽かし、闘鶏の“マッチョ”と共に路上で暮らしていた。ここからマイクとラフォの米国境への旅が始まる。そんな二人にメキシコ警察や母の放った追手が迫る……】というスジ。

 クリント・イーストウッドが監督、主演、共同製作を兼任。製作時、91歳を迎えていた巨匠の監督生活50周年作品となる。

 撮影が見事。随所で演出の手綱が緩むのが少々気になったが、それでも最後まで見せ切ってしまう手腕は流石と言わざるを得ない。

 本作は老人と少年が繰り広げるロード・ムービーである。これは<自動車の映画>だ。イーストウッドは、冒頭から5台の自動車を乗り継ぎ、アメリカ→メキシコ→アメリカ国境と旅を続ける。その果てに、ラストで、マイクとラフォは<それぞれのこれからの人生>に対する決断をする。そこに至る道程の中で揺れ動く2人の心情が丹念に描かれている。

 イーストウッドも流石に老いたが、それでも尚、色気を漂わせており、それに説得力が伴う事に驚嘆する。本作はマイクがラフォをアメリカ国境まで連れて来る映画だが、同時にマイクのラブストーリーでもある。その恋模様がしみじみと良い。ラフォの最後の決断も、台詞に頼る事無く力強さを伴っており、これまたしみじみと良い。“マッチョ”の奮闘振りも見ものだ。

 映画らしい映画だ。佳作である。

 
●『ザ・ユナイテッド・ステイツvs.ビリー・ホリデイ』

【1947年。人気絶頂のジャズ・シンガー、ビリー・ホリデイ(アンドラ・デイ)に対し、アメリカ政府は彼女の代表曲である『奇妙な果実』を歌わないように圧力をかけ始める。人種差別の凄惨な現実を告発した歌詞が、当時に隆盛していた公民権運動に及ぼす影響を政府は恐れていたのだ。しかし、ビリーは圧力に屈しようとしない。そこで、連邦麻薬取締局のアンスリンガー長官(ギャレット・ヘドランド)は、ファンに成りすました黒人捜査官のジミー・フレッチャー(トレヴァンテ・ローズ)をビリーの傍に送り込み、麻薬の所持・使用の罪で彼女を逮捕して潰そうとする。ビリーは重度のヘロイン依存者であったのだ……】というスジ。

 原作はヨハン・ハリによるノンフィクション『麻薬と人間 100年の物語 薬物への認識を変える衝撃の真実』(作品社:刊)との事。尚。本作の原題は『THE UNITED STATES VS. BILLIE HOLIDAY』だ。

 監督、共同製作は『プレシャス』、『大統領の執事の涙』のリー・ダニエルズ。

 ゴールデングローブ賞(ドラマ部門)の主演女優賞を受賞し、米アカデミー賞の主演女優賞にもノミネートされたアンドラ・デイの成り切り熱演振りは大いなる見所だ。

 ……というか、それしか無い。リー・ダニエルズの演出は『大統領の執事の涙』と同じく冗漫で締まりが無く、登場する個々の人物の描写がボンヤリしてしまっているのが大きな瑕である。131分の上映時間が長い…… カラー映像からモノクロ映像への唐突な移行や、ヘロインによる幻覚シーン、微速度撮影などを駆使しているが、何れもあざとく感じられた。薬物使用に対するビリーの葛藤が描けていないのは致命的であろう。これでは、只のヘロイン中毒者のダメっぷりを捉えただけの作品として心に映る。

 残念な出来、と言わざるを得ない。重ね重ね、アンドラ・デイの熱演が見事なだけに、演出と脚本のアプローチの的外れ振りが惜しまれる。


 といったところで、以上である。

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<右添付画像使用許諾:(C)2021 BILLIE HOLIDAY FILMS, LLC.>
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