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2022年05月06日20:08

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東大は「女子2割」の壁をなぜ超えられない?「男性中心の東大」が生む社会の偏り

東大は「女子2割」の壁をなぜ超えられない?「男性中心の東大」が生む社会の偏り〈dot.〉
5/6(金) 11:00配信

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東京・文京区にある東京大学の安田講堂(写真/GettyImages)

 日本の大学の学部生のうち、男性はおよそ54%。対して東大は約80%が男性だ。なぜ東大では「女子学生2割」の壁を超えられないのか。『大学ランキング2023』(朝日新聞出版)では、その内側で改革を進める第一人者に話を聞いた。

【ランキング】女子学生が多い大学、全国1位は

*  *  *

 19.7%。2021年、東京大の学部生に占める女子学生の割合だ。教員に占める女性教員比率(*)は18.5%。とくに学部女子学生の割合は、この10年ほどで18%台から19%台に微増しているものの20%に達したことはなく、「2割の壁」と呼ばれている。

 そんな状況を変えるべく、21年4月、総長の代替わりに併せ執行部を刷新。8人の理事のうち過半数の5人を女性として再スタートした。「ダイバーシティ(多様性)&インクルージョン(包摂)」を基本理念の一つに掲げ、女性、性的マイノリティー、障がい者、外国人といった多様な人々が居心地よく過ごせるキャンパスづくりをめざす。

 ダイバーシティ、国際担当の理事・副学長に就任した林香里教授は、学内の女性比率について危機感を募らせる。

「日本の男女人口比は半々なのに、東京大の中は社会と全く違う男女比になっています。これは非常におかしなことで、変わらなければならないと強く感じています。めざす女性学生比率はまずは3割、最終的には5割です」

■2割を超えない一番の理由「将来の展望、描きにくい」

 世界大学ランキング上位の大学に目を向ければ、ハーバード大、ケンブリッジ大、北京大、シンガポール国立大、ソウル大などの男女比は、ほぼ5:5。日本はジェンダーバランスの確保に後れを取っている。林教授はこう指摘する。

「学生の大多数は男性ですが、その中でも東京からの進学者の割合が増えていますし、特定の進学校出身者の割合も大きいです。そのため学生の価値観が単一になりがちなのです。これは、多角的に物事を見て新しいものを創造していくという学問の本来の在り方とは逆行していると言えます。こうした中で革新的な学びを推進できるのか、懸念しています」

さらにこうした学生の偏りが、社会にも偏りを生んできたと林教授は考える。

「東京大は長らく男性中心の大学であり、男性の卒業生が政治家や官僚、経営者として日本社会の中心を担ってきました。ですが、それでは多様な価値観を尊重する世の中はつくり難い。今、東京大も社会も変わる必要があるのです」

 なぜ、東京大では学部女子学生の割合が2割を超えないのだろうか。「男性ばかりで居心地が悪いとか、東大生と言うと男性に敬遠されてしまうとか、女子高校生が東京大を選びにくい理由はさまざまでしょう」と答える林教授。しかしそれらよりも重要な問題があるという。

「一番大きいのは、東京大を卒業したあとの将来の展望が描きにくいことだと思います。東京大出身者というと政財界のトップランナーの顔が浮かびますが、そのほとんどが男性。その輪の中に自分が入っていくことが想像しづらいのではないでしょうか。日本社会の構造が、女性が東京大を出てトップをめざすことを躊躇させているとも言えます。女性だからといって将来の選択肢を狭める必要はなく、何でもめざせるんだよということを、周りの大人が伝えていく必要があると感じます」

 その問題意識は、林教授自身の経験からも生まれている。ロイター通信東京支局で記者として働いたのち、幼い子ども2人を育てながら東京大学大学院社会学研究科に入学。ジャーナリズム・マスメディア研究者の道を突き進んできた。

「研究室でオムツを替えたり、学食で子どもを抱っこして食事したり、大変だった思い出はたくさんあります。男性ばかりの中に女性は私一人という状況も数え切れないほどで、マイノリティーの立場から意見を言うことの難しさも感じてきました。だからこそ、今の東京大にいる女性、性的マイノリティー、障がい者、外国人といった方々が気後れせず、やりたいことをやれるようにしっかり支援していきたいと思っています」

■地道なジェンダー教育で男子学生の意識も変える

「男性優位の大学」から脱却し、女性比率を向上させるため、東京大ではさまざまな施策が行われている。「女子高校生のための東京大学説明会」は06年から毎年開かれ、20年からはオンラインで開催。17年からは遠方から通学する女子学生に対して月3万円の家賃を補助。東京大学男女共同参画室が公式で発行する女子中高生向けのパンフレット『Perspectives』は女子学生の学生生活やキャリアについて取り上げる。

支援の対象は学生だけではない。女性教員には希望に応じて男女共同参画室員またはメンター教員が悩みをサポート。育児や介護で研究を一時中断しても円滑に復帰するための支援も実施している。

■個別の仕組みを連携 今後の改革の課題は

 21年7月からは1、2年向けにダイバーシティ啓発の動画コンテンツを用意し、女性をはじめとした多様な人々が共存する意義を伝える。学内で推し進められるジェンダー改革について、男子学生はどう感じているのだろうか。

「賛同する学生、不公平だと異議を唱える学生、さらに全く無関心な学生もいます。女性の立場を改善する取り組みには『逆差別だ』という反論がありますが、ジェンダー改革とは男性を否定して追いやることではありません。学生には、学問においても就職やキャリア形成においても現代社会の仕組みが女性に不利にできているという事実を正しく理解し、多様な人々が互いの違いを認め合いながら切磋琢磨することの素晴らしさを知ってほしいです」

 東京大ではジェンダー改革の中心を担う男女共同参画室をはじめ、グローバルキャンパス推進本部、バリアフリー支援室など、複数の組織が大学生活を支援。成績や友人関係、就職、ハラスメントといった一人ひとりの悩みに向き合う場としては、相談支援研究開発センターとハラスメント相談所が設置され、常駐の精神科医師がカウンセリングを行っている。

 今後の課題は、個別に運用されてきたこれらの組織がさらに緊密に連携する仕組みをつくり上げることだと言う。

「理事就任後に学内を見渡した時、全国トップクラスの仕組みは整っているのに、活動が個別になっていて、学生や教職員に十分に周知されていないところがあると感じました。今後は各組織が情報を共有して、学内設備などのハード面から個人の精神的サポートといったソフト面まで、アイデアを出し合って学生や教職員を応援していきたいと思います」

 ジェンダー改革が推進され、「男性中心の大学」というレッテルが外れた時、そこにはさらなる飛躍が待っているのではないか。林教授は、東京大をめざす女性に向け、応援のメッセージを送った。

「SF映画のような最先端テクノロジーから世界を股にかけた古文書研究まで、東京大には多分野で奥の深いワクワクした学びの世界が広がっています。ぜひ社会を変えたい、真実を探求したいという意欲を持つ女性にたくさん来ていただき、個性を発揮して研究に取り組んでほしいと願っています」

*女性教員比率は教授、准教授、講師、助教、助手、特任教授、特任准教授、特任講師、特任助教、特任研究員の数値

林 香里(はやし・かおり)
東京大学理事・副学長。専門はジャーナリズム、マスメディア研究。ロイター通信東京支局記者を経て、2001 年に東京大学大学院人文社会系研究科より、論文博士号(社会情報学)取得。04 年同大学院情報学環助教授、09 年同教授。21 年から現職。

(文/林 菜穂子)

※『大学ランキング2023』から抜粋
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