前回の続き！
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ネタバレ入りまくりますよ！
テッカマンブレードのキーワードは「悲劇性」（鬱よりはこちらの方が合っていると思う）だと思っています。
残念ながらというべきか、人間には悲劇を好む本能みたいなものが精神に刻み込まれているように感じます。
その悲劇性をこれでもかと詰め込んで、なおかつ破綻させず、さらに悲劇に溺れず、最後まで変身ヒーローアニメの王道を歩みきったのがこの作品。
個人的に悲劇を扱う作品のだいたいは、そこを出しすぎて観てる方の気持ちが鬱になるとか、逆に軽く扱いすぎて薄まっちゃってるとかになりがちに感じます。
そのあたりは好みが人それぞれなので良し悪しではないですけども、自分的にはテッカマンブレードのさじ加減が最も好みです。
さじ加減と書くといかにも技巧的にライン際をコントロールしているように聞こえますが、それともまた違う。
作り手・作品のスケールが大きいので、どれほど大きな悲劇でもそれを内包してしまい、結果的に活かしきってしまう。
薬で毒を中和させるのではなく、体がでかいから勝手に中和してしまうというイメージです。
あえて「スケール」という表現を使ったのにも、個人的には理由があります。
「戦いの前に雷鳴がとどろきはじめ」たり、「タイミングよくヒントがやってきて推理が発展する」など、よくあるご都合主義や陳腐な演出。
ぼくはこれをやられると途端にしらけるタイプなんですが、例外もあります。
それがスケールの大きい圧倒的なパワーがある作品っていうことなんですよね。
喩えると、スピードも重さも迫力も満点の剛速球。
こういうボールを投げられる投手のスケールが小さいものであるはずがなく、勝負所で投げ込むこの手のストレートはわかっていても打者は打てない。
高めの釣り球にバットは思い切り空を切り、キャッチャーはあまりに気持ちいい音をさせてボールを受け止める。
だけどスケールの小さいそこそこの投手が同じような投球をしても打たれるばかりでしらけるし、仮に打たれなかったとしたらそれは相手の実力もその程度か、あるいは茶番か八百長かで、もっとしらけるだけです。
テッカマンブレードにもそういう「ありがちで陳腐な演出」はちょいちょいありましたが（エビルとの決着すらそれだった）、こちらがしらけることはまったくなく、ひねくれたぼくの中にもすんなり入ってきましたから。
そしてこの悲劇性を一身に注ぎ込まれたのが主人公のDボウイ。
注ぎ込まれたなんて生やさしいものじゃないな。
滝のように執拗に、徹底的に、大量に、叩きつけるように浴びせ続けられたというのが正しい（笑）。
おそらくアニメ史上、最も不幸な主人公（苦笑い）。
これでもか、これでもかと襲ってくる不幸に、耐え、泣き、吼え、叫び、全力で抗い続ける。
この悲劇性の一つには、ラダムの洗脳が絶妙だったというのもあります。
彼らの洗脳は、相手の頭の中を完全に入れ替えるのではなく、ラダムへの絶対の忠誠を植え付けるのみで、その他の記憶や人格は人間だったころのままなんですよね。
だから敵テッカマンたちもDボウイと記憶を共有しているし、なんだったら彼への感情も何も変わっていない。
それこそDボウイがラダムへ帰ってくれば、これまで通りの関係を続けることすら難しくないように見えました（事実、ほとんどのテッカマンはDボウイへラダムへの帰参を呼びかけてる）。
それがDボウイにはつらい。
顔だけ同じで人格も記憶もすべて別人のようになっているならまだしも（それはそれでキツイでしょうが）、昔とほとんど何も変わらない相手が、自分のことを何の迷いもなく殺しに来るんですわ。
そしてそれは彼ら自身にすら罪も責任もない。全部ラダムのせいです。
Dボウイもまともなままじゃ、やりきれなくて仕方ないでしょう。
Dボウイといえば、CVは当時若手で、これが初主演だった森川智之さん。
ぼくもテッカマンブレードが出会いの作品だったので、いまだに一番印象に残っています。
そしてこの作品では、今ではありえない、演技の下手な森川さんも楽しめます（笑）。
下手は言い過ぎだけど、初期の頃の決め技「ボルテッカ」の叫びが、聞いてるこちらが「あららら」とズッコケそうになるほどのつたなさで（苦笑い）。
あれはむしろ演技指導をする音響監督の責任じゃないかと思うけど、まあでもその後はメキメキと本来の力量を発揮してゆき、とても若手とは思えないほどの深い演技、激しい演技を見せつけてくれます。
「ボルテッカ」もものすごい迫力で、あまりの声量に収録マイクが壊れたという話は今でも語り草、伝説になっています（笑）。
中の人の話では、Dボウイの双子の弟、テッカマンエビルこと相羽シンヤを演じた子安武人さん。
こちらも当然若手時代ですが、聞くところによるとこの時期の子安さんは、このまま声優を続けるかどうか真剣に思い悩んでいたそうです。
それがこの作品で吹っ切れて、今では大迫力の大重鎮声優になりつつある。
これ以後の子安さんのキャラが好きな人は、ちゃんとテッカマンエビルにお礼を言うように（笑）。
ブレードとエビルのラストバトルも、いずれ超実力派声優となるお二人の、若き日の演技勝負といった面もあり、すごい迫力があります。
あともう一人。
この時代を代表するボイスアクトレスこと林原めぐみさん。
林原さんが演じるアキというキャラも、なかなか珍しい。
林原さんといえば、今は綾波さんと灰原さんとか、どちらかといえば抑えたキャラが有名でしょうが、当時は男勝りの元気印キャラがメインだったんですよね。
アキももともとそういう要素が濃いキャラではあったんですが、物語が進む中、Dボウイと恋仲になり、彼に傾倒すればするほど、なにもできない無力さに涙するしかできなくなっちゃうんですよね。
最終回近くなんて、60年代のハリウッド映画女優かってくらいDボウイのために泣き叫んでばかり（苦笑い）。
当時林原さんも「こういう役は珍しかった」とご自分でおっしゃってるくらいでした（笑）。
テッカマンの設定もまたお見事でした。
テッカマンブレードは1975年に放送していた「宇宙の騎士テッカマン」のリメイク、というより基本設定を参考にしたオマージュ作品になります。
この設定のリファインもよかったんですよね。
中世の鎧のようなイメージだった原作テッカマンを、鋭角的なデザインに変更。
武器も洗練させつつ基本機能は変わらず、だけどボルテッカの位置を額から肩へ移し、複数の大きな発射口にすることで迫力を増す。
ペガスのデザインも洗練され、最初からペガスありきで変身する原作から無理なく設定変更。
カッコイイです。
ただ残念な要素もありました。
その最たるものは作画（苦笑い）。
観てない人、観てなかった世代にとっては、これがネタとしては一番大きいだろうな。
ぼくは基本的に「脚本と演出」に重きを置いてアニメを観ているので、作画についてはそこまでではありません。
それに70年代80年代を幼年期やオタクとして生きてきた身としては、あの程度の作画の粗さとか不安定さは見慣れていて、むしろ「そういうもの」と思って育ってきました（苦笑い）。
それにアニメ制作の現状を考えれば、そのあたりをあまり言うのは気の毒という気がして。
人は足りない、カネは足りない、時間は足りない。
安定した絵を描きたいと思っても物理的に無理というのは、完全な門外漢の自分でもわかる。
むしろ一番悔しい思いをしているのは、絵を描くことを生業にするほど大好きなのに、不出来なものしか発表できなかった作り手の方でしょう。
「それでもプロなら」は正論だし理想ではあるけど、偉そうに言えるほど自分も仕事でプロではないですから。
この正論を言うなら、ごく当たり前の条件の一つとして「自分はどんなにブラックな環境でも必ず最高の成果を出しています」というのがあると思いますが、さて、言ってる中で何人ができているのか。
学生も例外ではないですぞ。義務教育ならともかく、それ以上なら通ってるからには学業で絶対の成果を出していないと。
ただそういうのを差っ引いても、今から観る人が、当時ぼくらが与えられたような魂の揺さぶりを感じるのは難しいだろうな。
それぐらい作画が崩壊しているだけでなく、演出自体が30年前のものだから、感情移入は難しいだろうなと。
そもそも作画崩壊以前にキャラクターデザイン自体が安定してなくて、話によってはまったく別人としか思えないようなキャラデザがあったし（汗）。
もっともあれも、70年代のタツノコプロを観て育った世代には「懐かしい」「これだ！」と言わんばかりの天野喜孝デザインだったので、自分的にはアリだったんですが（笑）。
それにブレードは全50話（特別込）。
だけど制作時間の厳しさからか、しょっちゅう総集編が入り、また演出自体のテンポも今ほどではないので、物語自体がかなり薄まって感じられるかもしれない。
80年代くらいまでアニメは1年物（4クール）が普通で――視聴率が悪かったりスポンサーが倒産したりすれば当然打ち切られますが――、90年代の途中からテレ東系列のものは半年物2クールが主流になってきたんですよね。
ブレードはちょうどその過渡期で、もしかしたら半年物だったら制作期間や予算も含めて、もう少し濃いものを作れていたかもしれない。
ぼくは裏事情を調べたりするのが好きではないので、実際どうだったかはわからないですが。
ただこれらのこれほどのマイナス要因がありながら、なおぼくらみたいなファンが今でもいるのは、それこそ脚本と演出、そしてそれらを支える構成がガッチリしてたからでもあります。
�｜狼紊慷邁次５�憶喪失をよそおう
�⊃靴燭蔽膣屬鯑世匿瓦魍�く
��真実が明らかになる
�に紊�弟やかつての仲間たちに惨殺される
�ダ錣ぢ海韻襪�肉体が限界を迎える
�Ε屮薀好拭鴫修廼�化するも記憶を失ってゆく
�Ш能�決戦で勝利。記憶を失い精神を崩壊させて再度地球へ落下
細かいところは違うかもしれませんが、だいたいこれがテッカマンブレードの骨子で、アーチ型に最終回が一話と重なるように構成されているそうです。
これをはずすことがなかったから、多少のゆらぎがあっても全体としてまったくブレを感じなかったんですよ。
この構成を見ると、いかにブレードが「悲劇のヒーローの王道」を歩んでいたかよくわかる。
あともう一つ忘れてはいけないのが音楽。
この時期、民放キー局のゴールデンタイムアニメの主題歌は、今でも酷評されるものが多いです。
その歌自体は悪くはないけど、作品とまったく合っていないという意味で。
ぼくもその辺は同感ですが、テレ東系列の夕方オタク向けアニメは別でした（あとセーラームーンみたいに子供向けアニメ）。
テッカマンブレードの主題歌は前・後期で「REASON」「永遠の孤独」と二つあるんですが、どちらもブレードのテーマをふんだんに盛り込んでいて、しかもカッコよく、まさしくザ・主題歌！
ボーカルである小坂由美子さんの歌声も女性らしい力強さと哀しさに満ちていて、王道ヒーローと悲劇性とのどちらも見事に表現してくれていました。
だけど個人的には何より第48話「壮烈！エビル死す」におけるブレードとエビルのラストバトルの挿入歌「マスカレード」が、歌詞も曲も歌い手もあまりにも合致して抜群すぎて！
この歌は全編通してこのときだけしか使われなかったんですが、よくまあこれだけこのシーン、内容にピッタリな歌を用意したなと今でも感嘆しています。
個人的に一回しか流れてないのに強烈に心に残っている挿入歌と言えば、他には劇場版マクロス「愛・おぼえていますか」とか、Zガンダム「銀色ドレス」くらいかなあ。
「愛・おぼえていますか」は劇中歌だけど主題歌だから違うかもしれないけど（苦笑い）。
あとはマクロス7「TRY AGAIN」もすごい印象に残ってるけど、あれは最終回だけじゃなく何回か流れてるからな（苦笑い）。
あとブレードといえば、続編にあたるOVAもありましたが、これもまあ賛否両論というか（苦笑い）。
あまりに本編と違って明るいというのが主な理由で、ぼくもブレードは悲劇性とあのラストが染み入っているのでどちらかといえば否寄りではありますが、Dボウイがあの悲劇から立ち直って元気になってくれているだけでオールオッケーってところもあるので、それだけでいいです（笑）。
聞くところによると、本当はもっと違う設定もあったらしいんですよね。
だけどそれが本編を上回って暗い内容なのでボツになったとか。
ぼくも内容を知って、こっちの方がブレードらしいと思いつつ「これは本編以上に救いがないな」と、ボツ判断にうなずいたもんです（苦笑い）。
この設定自体は生きているようで、世界観は本編→幻のOVA→実際のOVAという時系列になっています。
そんなわけでいろいろダラダラ書いてきましたが、作画崩壊やストーリー水増しが苦手という方にはお勧めできません。
でもそういうのは平気で、30年くらい前の演出も気にならないという方であれば、ぜひにおススメ！
そんな方には最終回のフリーマンのこのセリフと、Dボウイの無垢な笑顔に、何度もうなずきながら涙する権利をあげましょう（笑）。
「忘却を苦しみから逃れる手段に使ってはならない。だが彼だけにはそれが許される。いや、許されるような気がする。もし神がいるのなら、それは彼に与えたもうた救いなのだ…」
森川智之さんお誕生日記念！一番好きなキャラは？ 3位「春を抱いていた」岩城京介＆「キョウリュウジャー」キョウリュウシルバー、2位「ジョジョ」吉良吉影、1位「名探偵コナン」羽田秀吉＜22年版＞
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