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2021年12月17日23:17

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獣医学科は「夢を一旦,捨てる場所」

■『動物のお医者さん』が社会に与えた影響とは? 一貫して伝え続けたペット飼育の責任
(リアルサウンド - 12月17日 10:01)
https://news.mixi.jp/view_news.pl?media_id=169&from=diary&id=6780712

「動物のお医者さん」とムツゴロウさんは,獣医に関する誤解を広めた2大コンテンツだと,私を含め,多くの獣医師仲間は言う。

とりあえず,甘美な夢を見て獣医学科の門をたたく人は多い。
かわいい動物を救う,動物の幸せを作る,動物に囲まれて楽しく仕事できる……

とんでもない。

動物はそういう甘い考えを持った人たちが思うほどフレンドリーな生きものではない。
けっこう危険。油断すれば怪我したり,下手すりゃ死ぬこともある。
ペット動物は,人の都合で,キレイキレイしているけど,普通は臭い,汚いのが当たり前。むしろ動物は,その臭いを,生きるるための様々な場面で加圧用しているので,臭わないようにきれいにしちゃうほうが,動物にとっては迷惑な話。

獣医は動物を診療,治療する権限を与えられていると同時に,殺す権限も与えられている。安楽死はもちろん,食肉になる動物も,伝染病のために殺処分しなければならない動物も,獣医師の手によって殺される。
獣医師の所管は農水省。元々が畜産業や食品衛生,公衆衛生などに従事する技術者として養成されるもので,実際,小動物臨床に従事している獣医師は半分もいない。
だから,獣医師全体で見れば,動物の命に見切りをつけた数(あるいは殺す判断をした数)のほうが,動物の命を救った数よりも多い。

特に国立大は,産業分野に獣医師を送り込む役目が大きいので,甘い夢を持って入学した新入生の夢を打ち砕いて,現実をしっかり認識させるところから,獣医学教育が始まる。(もちろん,産業系の獣医師を目指して入学した学生は,やる気満々,勇気づけられるのだが)

そうやって,甘美な夢をリセットしたところから,新たな夢や使命を見つけて,6年間,勉強だけでなく,かなり体力勝負な日々を過ごし,国家試験に臨む。
そして,多くの獣医師免許取得者が,一般の人の想像する「動物のお医者さん」とは違う,幅広い分野に散らばって,社会を支える,地道な仕事をする「動物を扱える技術者」として働いている。獣医師免許があれば,食品衛生監視員や薬事監視員にも従事できるし,人工授精師は畜種単位で免許が出るけれど,獣医師は全ての動物の人工授精が出来る権限を持っていたり。
(あまり大きな声では言えないが,麻薬等の取り扱い,管理にも従事できる)

要するに,人の医療以外の「衛生分野」を全て引き受ける「何でも屋」なのである。
その知識と技術を叩き込まれる学生生活が,どんなものなのか,想像できるだろうか。

ちなみにムツゴロウさんは理学部出身で獣医師ではない。
今にして思えば,獣医師法や獣医療法に抵触しそうなことや,獣医から見たら危険極まりない行為を,よくもまぁTVの前で披露していたものだと思うのだった。
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