第十六話「横須賀到着」
承前
モグラは田舎者なので、「都会では、電車は次から次へとやって来る。」ものと信じていました。
しかし、JR横須賀線のような“行き止まり”の路線に、そんなに多くの本数の必要がないであろうことは、少し考えれば判った筈なのです。
11:40に入ってきた電車が「逗子行き」だと知った時点で、漸くモグラは己の判断ミスに気付きました。
モグラ:「ヤベ。もしかしてギリギリかぁ?」
もはや、否も応もありません。結構乗客の多いその電車に飛び乗り、取り合えず「逗子」に向ったのでした。
乗った時点では、まだそれほど焦りはありませんでした。たった4駅です。20分も掛かりはしないでしょう。
しかし、その余裕は「逗子駅」に着いた瞬間に吹き飛んだのでした。
モグラは、何故か先頭車両に乗り込んでいました。
逗子駅でのアナウンスは、「横須賀方面行き、待ち合わせ2分。」です。
ホームに降り立って振り返ったモグラの目に入ったのは、遥か後方に霞んで見える「駅の乗り換え階段」でした。
モグラ:「げ〜。嘘だろ、おい。」
走り出すのは、モグラの美意識が許しません。しかしながら、歩いていては全く間に合いそうもありません。
美意識を乱さない範囲で、最高速度を出す!
その命題を満たすべく、モグラの足は、普段見せることのない高速回転で動いたのでした。
ええ、「トムとジェリー」の世界を想像してみて下さい。
懸命に早歩きをし、階段を昇り、降りる階段を間違え(左に降りればよかった(涙)。)ながら、何とかギリギリで横須賀方面行きの待ち合わせ電車に乗り込めたモグラだったのでした。
ハァハァ。
ところで、同じ電車には、何人かこの日同行するメンバーが乗っていたようなのですが、モグラは腕時計とにらめっこをしていて、そんなことには思い至りませんでした。
モグラは、本来、時間には厳しい性格なのです。
11:59横須賀駅到着。
改札口が、先頭車両から遠くなかったおかげで、ヒトフタマルマルには、すべり込みセーフのようでした。
前方を窺うと、何だか怪しい集団が集まってこちらを見ています。
知らない人も混じっているようですが、目指す人間ランドマークは、真っ先に確認出来ました。
取り合えず片手を挙げて確認の意思表示をし、モグラは、その怪しい集団に近付いて行ったのでした。
続く
ログインしてコメントを確認・投稿する