第二話「旅の始まり」
承前
本を読み始めると、1時間などは「あっ!」と云う間に過ぎてしまうものです。
「オフ会」に出かける時のモグラは必ずバス内から全てが始まるのですが、この「バスに乗っている時間」というものは、所謂「日常」から「非日常」へと空間が変わっていく為の助走というかエアロックというか・・・、解って貰える人だけ解って貰えたら結構です。
8時着の予定が8:10着。珍しいことではありません。
モグラは、かつて「京都で待ち合わせた友人」へ、広島駅からガクブルしながら言い訳の電話をかけた覚えがあります。
JRの所為にして許してくれる相手ばかりとは、世の中限らないのです。
時間に余裕はありましたが、8:40発の「のぞみ70号」の指定券を購入し、そそくさと乗車口に上がってみると当該列車は既に番線に並んでいました。
広島駅始発だったようです。
人は結構並んでいるのですが、誰も乗車しようとはしていません。どうやら「次の列車」待ちの方々ばかり。
その中を潜り抜け独り乗車してみると、車内にはモグラ独り。
広島始発列車に乗ることは、そんなにも“不遜”な行為だったのでしょうか?
とはいえ、買ってしまったものはしょうがありません。
指定された席に座り、朝なので駅弁は遠慮して、代わりに購入したサンドイッチとお茶をミニテーブルに置いて例の本を膝元に置きます。
東京駅到着予定時刻は、12:46。
九段下に直行して靖国参拝の後、浅草詣でをしてちょっと遅い昼飯でも食おう。
その際、ビールの1本も飲んだところで、エヌ先生は怒りはすまい。
そんなことを考えながら、発車の時間を待ちます。
飲み食いは、車窓から見える絵柄が動き始めてからするのが、モグラの「旅の約束事」なのでした。
続く
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