第十六話「いよいよ体験航海」
乗艦して来たmumuさんと朝の挨拶を交した後は出航を待つだけです。
ぼ〜っと立っているのも何なのでぶらぶらと艦尾に向いました。
例によって我々には「全自動解説マシン」が付いているので飽きることはありません。
ヘリポートの中心に置いてある“機雷状の物”を見て早速「あれは機雷です。模型ですが。」と注釈が入ります。
何故機雷が、と思ったら「ぶんご」は掃海母艦だったのでした。
メインの仕事なんですね。
ヘリ格納庫では「帽子」や「手拭い」が売ってありました。良く見ると手拭いの柄と見えたのは「色々な紐の結び方」です。
何かの役に立つかもしれないので取り合えず1本購入しました。
再ちゃんは帽子が欲しかったようでしたが、頭の大きさがタヌキなので合う型がなかったのでした。
もしあったら笑えたかもしれません。
左舷を歩いていると「はつゆき」の左舷にかずやんさんと北野君らしきシルエットが見えます。結構小さくて分かり辛いのですが一応全員で手を振ります。
提督は写真を撮り再ちゃんはメールを打ったようでした。
その内、向こうの二人も気付いて手を振り始めました。お互い自分の年齢のことは忘れ去っているようです。
流石は「体験航海」です。ここは非日常の世界なのでした。
「はつゆき」に2艘のタグボートが直角に取り付きました。どうやらむこうが先に出航するようです。
見ているとタグボートが「はつゆき」を桟橋に押し付け、その瞬間に舫い綱が解かれたようでした。
桟橋から離れた「はつゆき」は思ったより遥かに速いスピードで沖に出て行きます。
次はこちらの番です。
提督:「「ぶんご」はね、両舷にスクリューが付いているので自力で岸から離れられるのです。」
おっ、おっ、確かに我々を乗せた船は真横に動いて桟橋から離れて行きます。器用な物です。
ある程度離れたところで今度は縦方向に逆進がかかり、「ぶんご」は艦尾から弧を描きながら反転し「はつゆき」の後方に付いたのでした。
ここからが本格的クルージングになります。
「はつゆき」の数百メートル後を「ぶんご」が進みます。
方角を提督に尋ねてみると概ね“北東”へ向っているとのこと。ということは正面は千葉県なのでしょう。
モグラは、ふと学生時代の彼女が千葉県の教員になった時のことを思い出しました。
「22才の別れ」という歌が流行っている頃のことです。
白日夢を見るモグラに陽の光は思いがけなく強く、海面に反射して輝いていたのでした。
続く
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