第十五話「乗艦急げ」
「はつゆき」は手前の桟橋に、「ぶんご」はその向かいに係留されていました。
「はつゆき」に乗るかずやん・北野組と途中で別れた再ちゃん・モグラ組は、奥の「ぶんご」に向かって歩いて行きます。
再ちゃんもモグラも、海自の船に乗るのは去年の“アポなし”乗艦を含むと4回目です。もう慣れたもんです。
タラップの手前でパンフレットを貰い、再ちゃんの後について昇ります。些か揺れるのはタラップの所為ではありません。
甲板へ昇ってから気付いたのですが、「ぶんご」は艦尾を外海に向けて舫っていたのでした。艦首方面は出航するまで立ち入り禁止のようです。
再ちゃんとモグラは、桟橋をやって来る人が視認出来るよう舷側に陣取って提督とmumuさんを待つことにしました。
この時点で10:20ぐらい。葉書によると受付は10:30までとなっています。
あまり動きたがらない再ちゃんと違ってモグラはこういう時じっとしていられないタイプです。次々と増える参加者の間を縫って反対側の舷側に行ってみます。
そちらからは「はつゆき」がよく見えます。こちらは「ぶんご」と違い艦首を外海に向けていました。
桟橋に目を向け歩いてくる参加者の列の中に提督とmumuさんの姿を探しますが見えません。どうやらまだのようです。取り合えず再ちゃんの所に戻ります。
モグラ:「まだみたいだね。大丈夫かな。」
再ちゃん:「連絡がないから大丈夫だよ。」
そう言った後で、再ちゃんは古いネット友達の「オフ会に纏わる悲劇」の話をモグラに聞かせ始めました。
正直モグラには「うそ〜ん、ゲロゲロ。」の内容だったのですが、現実の世の中は油断がならないというためになる話でした。
聞きたい人は再ちゃんと二人で船に乗ってみるといいでしょう。
そうこうする内に10:30になりました。しかし行列はまだまだ続いています。仕方がないので再ちゃんと話を続けます。
モグラ:「mumuさん、今日はロングスカートかスラックスで来るかな。」
再ちゃん:「何で?」
モグラ:「前にチャットで提督がmumuさんに『ミニスカートはわが社の若手社員の目の毒なので云々』って言ってたのを見たんだよ。」
再ちゃん:「でもmumuさん、昨日こっちに泊まったんじゃないの?」
モグラ:「いくら何でも早起きして着替えてくるよ。ワシ等じゃあるまいし。」
などと馬鹿なことを話しているその時、ようやく提督・mumuペアの姿が見えたのでした。
モグラ:「あれ、mumuさんのスカート昨日と一緒かなあ?」
再ちゃん:「いや、昨日とは違うんじゃない。ミニスカートなのは間違いないけど。」
そうです。モグラの予想を裏切って、mumuさんのスカートの丈は、提督云う所の「わが社の若手社員」への配慮を一切無視した短さだったのでした。
そして勿論、再ちゃんもモグラもそれを見てがっかりせねばならない理由など、露ほどもあるはずはなかったのです。
続く
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