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2021年08月14日17:01

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教科書が読めない子ども

 3年前にベストセラーになった『AIvs教科書が読めない子どもたち』の主たる主張は、要するに「教科書が読めない子供はAIに負けてしまうが、教科書が読めればAIに負けることはない。」ということでした。

 著者は数学者の新井紀子さんで、研究者らしく様々な科学的な根拠を示しながら、いわゆる読解力が過去においても現在においても社会的な成功のカギであり、それはAI化がさらに進む未来においても同じことだということを述べています。

 実は、国際的な調査でも、普通に文章が読める人というのは日本人の3割程しかいないことが分かっているのですが、これは世界的に見ればかなり良い水準でもあり、日本人が相対的に頭の良い国民であることも広く知られているのです。

 新井さんの説を当てはめれば、この3割の人が所得の高い層であり、文章を読むということはAIには代えられない機能であるため、今後も変わらないはずだということです。

 逆に文章を読む以外の能力はAIに代えられる可能性が高いため、読解力がない子供達にとっては暗澹たる未来が迫っているということも言っていますが、そのように読解力の重要性を繰り返し述べておきながら、新井さんはいかにして読解力を身に付けるかという点については、あまり触れていません。

 新井さんによれば、例えば本を読み始める年齢などを調査したものの、読解力とのはっきりした相関は見られなかったということで、何をすれば読解力が身に付くという確たるものはないとしています(ただし、読解力はある程度年齢がいってからも身に付くので諦めずに挑戦して欲しいと結んでいます)。

 私も学力の基本は読解力であると考えていますが、塾で様々なレベルの子を教える立場として言えば、文章に慣れていくということは一つの処方箋としの考え方ではあると思います。

 国語がとても苦手という小学生を見ることも多いのですが、短い文章の読解問題をまずは1人で読ませて、とりあえず一通り解かせてみると、非常に適当にどこかしらを抜き出したり、記号問題だけを当てずっぽうで書いていたりということが少なくありません。

 そこで、隣で一緒に声を出して読んであげて、問題も読みながら記号の答えを言わせてみると、意外ときちんと答えられたりします。

 全てに当てはまるわけではありませんが、要するに「教科書が読めない子」というのは、全く理解力がない子ということではなく、読むことから逃げ、読もうとしない子でもあるわけです。

 そういう子は、前述のようにできるだけ短い文章を一緒に読みながら解いて、少しずつ文章に慣らしていくのが得策ではと思われます。

 国語の読解の授業は小中高を問わず実に難しく、コツを掴ませて比較的簡単に伸びる子がいる一方、なかなか上手くいかないことも多いものです。

 新井さんの論とは少し異なりますが、やはり子供の内から本に親しんでいる子は、読むことに抵抗が少なくなるという点でそれなりに効果があるように感じますし、それが読む力の第一段階であるかとも考えられます。

 もちろん、それぞれの能力には違いがありますが、読解力が社会的能力に非常に大きな役割を果たすと言うことが、沢山の科学的エビデンスに基づいて示されている以上、年齢を問わず、読むことの練習をしていくことはとても大切であるはずです。

 まして、子供達がゲームやYoutubeなどに上がる面白い動画であっという間に何時間も過ごせるような世の中にあっては、読むことを意識的に取り入れていかないと、どんどん厳しい方向にいってしまう可能性が高いわけです。

 「教科書を読めない子どもたち」は「教科書を読もうとしない子どもたち」であり、その抵抗感を少なくする工夫を、それぞれの年齢、それぞれの能力に合わせて考えていく必要があるはずです。
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