どこにでも出没しまくる貴女が、どうして飛行機に乗れないのか不思議、とよく言われる。
物事を理詰めで考える傾向が強く、飛行機が飛べる原理もちゃんと理解している貴女が、どうして飛行機に乗れないのか不思議、とよく言われる。
不思議でもなんでもない。あれは、飛んでいるんじゃない。落ちていないだけだ。
あたしの理性や理論をぶっ飛ばすのに、充分すぎるくらいショッキングだった、36年前の今日の出来事。
母の実家である山口県に帰省していたあたしには、ただただ123便が墜ちていく情景と、テレビの中でアナウンサーが繰り返し口にしていた、「垂直尾翼」という言葉と、飾られていた回り灯籠の儚い灯りが、強烈に刷り込まれた。
毎年毎年、この日が来る度、その記憶が迫ってくる。
もし、あたしがあの機の乗客であったならば。
確実に死が迫りくるその時、あたしはあたしの人生に関わってくれた人々に、冷静に謝意を伝えることができただろうか。
でも、あたしはあの機には乗っていなかった。
だからこそ毎年、その記憶に戦くことができる。
まだ、生きているから。
生きている限り、毎年今日が来る度、あたしは戦くのだろう。
「飛行機、乗りたくない〜」
とビビれることの、贅沢を噛みしめながら。
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