【日記】傷害事件の被害者になった話

傷害事件の被害者になりました。このたび解決したので、自分の備忘を兼ね記録しておきます。

昨年11月下旬まだ雪の降らない初冬の未明、札幌市内で死亡交通事故が発生しました。一報の内容は「乗用車の単独事故、乗車２名のうち１名意識なし」。マスコミ勤務で当日夜勤をしていた私は上司と相談の上タクシーで現地へ急行しました。

現着は午前0時40分ころ。郊外の道道、中央分離帯のある片側3車線のほぼ直線の広い道です。街灯がなく、消防車のヘッドライトが頼りの暗い現場でした。焼け焦げた乗用車とおぼしき物体が見え、警察官や消防士、関係者と思われる民間人の姿が見えました。電柱が破損し、電線が垂れ下がっています。破損の仕方も「折れた」というより「粉々」という感じで、相当の力がかかって壊れたのだなと思いました。事故発生より小一時間が経過しており、負傷者は救急搬送された後でした。乗用車が暴走し電信柱に衝突、乗員2名のうち助手席の人物が意識不明（病院で死亡確認）、運転手は軽傷と後に判明しました。

なにしろ午前1時の締切まで時間がほとんどありません。事故車を撮影しようと接近します。非常線などはなく、様子を見ながら近づきました。こうした際は警察官に制止されるまで寄るのがセオリーです。現場を荒らす気はありませんが、暗いので近寄らないと写真が撮れません。クルマの残骸から10mほどのところでカメラを構え、シャッターを切りました。

次の瞬間、私は冷たいアスファルトの路面に背中をつけて倒れていました。左肩に下げていた予備のカメラ、望遠レンズ付きのデジタル一眼レフが降ってきて舗装路面にあたってガシャンという音が聞こえました。若い男の怒鳴り声が聞こえます。どうやら関係者につかみかかられたらしい。衝撃で息が出来ず、しばらく横になっていました。加害者は誰かに取り押さえられた様子。息が整うまで2〜3分、ジッとしていました。

起き上がると周囲には誰もいません。身の危険はなさそうです。つかみかかった相手の顔を見る間もない出来事でした。カメラを構えた左腕をつかまれ、引き倒されたようです。落下したカメラは故障していましたが、なんとか撮影を終え画像を会社に送信。打ち付けた左脇腹が徐々に痛み出しましたが、とりあえずの業務は終了したということで帰社しました。

帰って上司に経緯を報告。服を脱いでみると左脇腹・左右の上腕・左膝が青く腫れています。当直業務が残っているため、翌朝まで働いてその後病院に行くことに。身体は徐々に痛みが増し、ほとんど仮眠できずに朝を迎えました。出社してきた職場長に経緯を報告、その後病院に向かいました。

労災ということでレントゲンを撮り、入念に診察されました。幸い骨折はしておらず、打撲で2週間の治療が必要とのこと。所轄の警察署に向かい被害届を提出。調書をとり指紋とDNAを採取、刑事とともに現場検証を行いました。

その後1週間、刑事から被疑者特定との連絡。19歳の少年だったため、担当は刑事課から地域課少年係に移りました。ケガについては労災であるため治療費は労働基準監督署から会社に支払われ、加害者へは労基から請求されるとのこと。加害者へは会社が機材修理費、被害者たる私は慰謝料を請求することになりました。

要するに暴走行為をする連中がクルマを持ち寄り、数台で速度を競っていたということのようです。一台が制御を失い自爆炎上。チェッカーズの歌にある

「仲間がバイクで死んだのさ　とってもいいヤツだったのに」

というシチュエーションですかね。目の前で知人が事故死したことについては同情しますが、ルールを守って取材している者に暴力をふるってよい、ということにはなりませんよね。

ところがここで事態は予想外の展開となります。傷害事件として民事で争う場合、刑事事件として反省している姿勢を示すため被疑者は被害者に示談を申し入れ、いち早く慰謝料を支払いたがります。刑事事件の取り調べの際「被害者には謝罪の上和解しており、慰謝料も支払い済みです」と言えば十分に反省している、ということになるからです。

今回の被疑者、真っ向から民事で争う構えをとりました。被疑者の代理人すなわち弁護士ですね、そちらから「報道の姿勢がけしからん」という連絡が書面で送られてきて、私も会社の窓口担当者もビックリ。顧問弁護士は「こりゃ裁判ですね。マスコミの仕事で原告になることって、まずないんだよなぁ」と言われました。何度かやり取りをしましたがどうにも向こうサイドの意向が分かりません。揉めれば揉めるほど、刑事事件では不利になるのに…。結局和解に至るまで半年、先日やっと慰謝料が振り込まれました。こちらの要求そのままの額です。先ほど警察署に問い合わせると、未だに刑事事件は解決に至らないそう。未成年でここまで反省しないとなると今後の進路や将来に差し障ると思うんだけどなぁ。気が知れない、と思うことしきりであります。