大トリは「戦場のメリークリスマス」です。
テレビで見たのが最初で、その後、DVDで2回観たことになるかな？
たまきは教授こと坂本龍一のファンでしたけど、この映画が、直接の、ではないけどきっかけになり、彼の音楽に興味を持つようになったのです。
これは1983年公開の映画、ということで、興行収入230万ドルだから、大変なヒットですね。
監督はいうまでもなく、「世界の大島」、大島渚です。
出演者がすごいんですね。
デヴィッド・ボウイに坂本龍一、そしてビートたけしにトム・コンティ。
まあ、この頃、デヴィッド・ボウイと坂本龍一と言えば、世界的に有名で、大変な人気者だったわけだから、それにビートたけしまで出てるし監督は大島渚だし。
ヒットして当然、という条件はそろってますね。
38年前、何と40年近く前だから、教授も30歳くらいで、若いですね。
デヴィッド・ボウイは残念ながら数年前に亡くなったけど、二人の美男子の共演は見ものです。だいぶ話題になったのでしょうね。
しかもこの二人、何だか同性愛的な雰囲気で、ちょっと出来すぎ、というか、その興味だけでもかなり観客を呼べそうです。
たまきはですね、学生の頃（高校じゃないですよ）にホモ、ということにすごく興味があったのです。
レズにはまったく興味なかったけど、ホモには、とても知的な雰囲気を感じていて、何か通常の人が計り知れない、知性の世界があるんだ、とロマンティックに考えてました。
今は、いや、別に同性愛はみな同じ、どうってことなかった、とわかってきたんですけど。
ところでこの映画の原作者は「ローレンス・ヴァン・デル・ポスト」という人で、1942年初頭、日本陸軍が東南アジアに侵攻した際、オランダ領東インド（インドネシア）の連合軍へ派遣され、そこで捕虜になった時の体験を手記にした、ということです。
なのでこの映画のタイトルにもなっているローレンス、というのは
原作者の名前なんですね。
ジャワの捕虜収容所での話らしく、『影さす牢格子』、『種子と蒔く者』という本を後に出版、それを基に大島渚とポール・マイヤーズバーグが脚本化、場所や設定もかなり変えて、実在しない場所、実在の人物とはかなり違う人達のことを描いてるようです。
たまきが最近面白い、と思ったのは、このローレンスさん、ユングに影響を受けた、心理学にかなり凝っていた人なんですね。
だから、原作は読んでませんけど、表面的な現象を描く、というよりも、心理学的な側面から、収容所の人々ーー捕虜とそれを管理、支配する日本人というものを描いているらしい。
大島渚の脚本で、どのくらい（どの辺り）が変化したのかは不明ですけど、この映画では日本人の宗教観や価値観と、捕虜となった雑多な人種の人達、とりわけローレンスの所属する西洋的な価値観との違いについて描いているようです。
その価値観の差異でぶつかり合いながらも、奇妙な友情や愛情が芽生えていく、という話なんですね。
戦争のような地獄の中にも、そういった救いがないと、映画化しても観客だって索漠とした話に、観る気がなくなっちゃうかも。
だからこの映画はどことなくファンタジーのような、現実離れした不思議な雰囲気がありますね。
そう言えば、大島監督って、ホモを扱う映画を、これを含めて少なくても2つ作ってますね。
「御法度」もそうですよ。
そして音楽坂本龍一、出演者の一人がビートたけし、という同じ顔触れ。
偶然かしら？
彼自身はごく普通の結婚をした、ホモなんかには無縁の人のようだから、たまきと同じく、ホモには何か、通常にない高尚な世界がある、と感じていたんでしょうか？
原作者のローレンスにはそういった興味があったわけではなさそうですけど。
でもこの人素晴らしい人で、”他の者たちと一緒になって、基礎的な読み書きから学位程度（標準的な歴史のそれ）の授業を伴った「収容所大学」を組織し、また栄養上の必要を補うため収容所農場も組織した。”
とあります。
捕虜となっても、絶望から自暴自棄になるのではなく、その中で精一杯人々の士気を上げていこうと努力を続けた人、その功績で有名になった人です。
たまきが、「硫黄島からの手紙」に始まり、この「戦場のメリークリスマス」まで、４作品の、（第二次世界大戦を舞台にした）について書いてきた、テーマの一つ（と言うほど大げさなものじゃないけど）が、日本と西洋の価値観の違いだったのです。
粗暴な軍曹、ハラを演じたビートたけしがローレンスに言いました。
「捕虜になる辱めを受けるくらいなら、潔く死のうとは思わんのか
？俺だったら腹を切る」と。
ローレンスが「生きようとすることは恥ではない。たとえ捕虜になっても」と（だったかな？）言うと、「死ぬのが怖いんだ。そうだろ？お前らは臆病なんだ」とハラ軍曹は返すのですね。
たまきはこれを、ボーイフレンドと一緒にテレビで観たのが最初でしたが、映画を観終わってから、
「日本人は生き恥を晒すくらいなら死ぬべきだ、って考えてるんでしょ？たまきはローレンスに賛成。生きることは全然恥じゃないから、絶対自分で死んだりしないよ。たまきは西洋人と同じ考えだ」
と彼に言ったのを、今もはっきりと覚えてます。
どうもこういうことを話し始めると、まるで日本人批判みたいに聞こえるから、困るんです。
大抵の日本人は、この手の話を始めると、黙り込んでしまうみたいで、こちらもちょっと神経質になっちゃいますね。
「だからたまきは嫌われるんだ」なんて思って。
でもまあ、「バンザイクリフ」の話も75年の遠い昔で、今は日本人もだいぶ考えが変わってきてる、と思います。
嫌われついでにもう一つ言うと、心理学の問題があります。
あのですね、1〜2か月前、たまきの受けているオンライン英会話の先生で、ヨーロッパの若い男性がいました。
彼は大学生、心理学を専攻してる人です。
「貴女はセラピストに相談にいったことある？」と聞かれて、「そんなもんない。日本人は誰もそんなとこ行かないの。行く人はね、認知症になった人だけよ」と言いました。
普通の人、そんな年でもない人が精神科なんかに行ったら、「あら、この人精神障害のある人なんだわ」と思われちゃいますよね？
狂人と間違われそうで、人目を気にするわけです。
それにお金だって、必要なことに使うので精いっぱいなのに、そんなものに使うのはお金の無駄遣い、という考えが一般的でしょ？
彼は嘆かわしい、それはおかしい、という態度をしました。
ヨーロッパでは精神科の先生に会うのは普通のことで、心身が健康だ、と思ってる人でも、皆一度はセラピストに会いに行くんだ、と言いました。
定期的に通ってる人も少なくない、と。
そう言えば、アメリカでも、ハリウッド俳優の多くが、定期的にセラピストに相談に行ってるみたいですよね。
ちょっと話は飛躍しますが、この映画で、デヴィッド・ボウイが演じたジャック・セリアズ陸軍少佐は、昔、自分の弟に優しくできなかったことが、ずっと気持ちのわだかまりになっていて、その心の傷がもとで戦争に志願した、という設定でした。
ボウイはミュージシャンで、俳優は本職、というわけではないでしょ？
でもそういう、自分の心の中を自分で探りながら告解する、という演技が、自然にできるんですね。
全場面で、彼が一番演じやすそうにしてたのがここだ、とたまきは感じた。
これがもし日本人俳優だったら、こうはいかないのですよ。
日本人にはそういう習慣がないからです。
これも宗教的な問題からきてるのかもしれないですね。
キリスト教では、「告解」という、自分の罪を牧師さんに告白する習慣が昔あったでしょ？今もそうか知りませんけど。
ハリウッドやイギリス、フランス映画を観てると、こういう場面によく出くわします。
彼らは半ば、自分自身に話しているように、心の中を覗き込みながら闇に眠る自分の気持ちを引っ張り出して人に話そう、としてるように見える。
日本人なら、心の問題なんか贅沢な暇つぶしをしてるくらいなら、現実をもっと見て、今やるべきことをどんどん片付けなきゃ、と考えるところを、彼らは見過ごせない、重要な部分だ、と考えてるんですね。
日本人は働き者で現実的、ふわふわした夢みたいなことをあまり考えない人達、といういい面があるし、それは世界に認められている美点ですね。
でもその陰で、置き去りにされている、心の問題、というものもあるかもしれません。
それは、精神分析の歴史を持たないからじゃないか？と最近考えるようになりました。
西洋には、前述したようにキリスト教などに見られる「告解」の習慣が古くからあったので、「神」という絶対的な、心の底まで見通す存在の前で、正直に心の奥底まで話す、そして懺悔し、神の許しを請う、ということを長年やってきてるわけですね。
それが、教会の牧師ではなく、現代ではセラピストが代わりにやっている、というだけで、元々の習慣として続けてきたのでしょう。
もう一つ、西洋人の脳の使い方は、日本人と少し差異があって、彼らはよく右脳を使う、ということがあるみたいなんです。
だから話す時の表情や言葉の抑揚などが、かなり日本人や他のアジア系と違うんですね。
左脳の使い方が、常に右脳と連携しているように見える、とたまきはずっと思ってました。
だから潜在意識の領域を常に刺激しながら生活してるんですよ、彼らは。
左脳的に、「これは必要なこと」「これは不必要なこと」ときちんと整理して、必要なことだけを効率よくテキパキとこなしていく日本人的なやり方をしてはいても、ちょっと違うみたいなんです。
上手く説明できないけど、例えば戦争ものでお腹に大きく穴をあけられて瀕死の状態にある兵士が、「ママ〜、ママ〜」と叫びながら子供の表情になって泣きじゃくっているシーンなんていうのがあったりします。
日本人では考えられないですよね。
それと、日常的に彼らは日本人の2倍は口数が多いみたいです、映画にもよるけど。
仕事と全く関係のない無駄口を、ひっきりなしに叩いてないと働けない、と考えてるように見えるんです。
おっそろしくブラックなジョークを、オフィスで大事な仕事の話とごっちゃまぜ、というか間に差し入れながら、それでいて仕事一筋の日本人と同等か、それ以上のすごいスピードで仕事をこなしていくんですよ。
これって、右脳をよく使う人の特徴だ、とたまきは考えてます。
この、「仕事に関係のないブラックジョーク」「余計なおしゃべり」こそが、映画を面白くしてる、隠し味になってる、と思うのです。
そしてこれはね、なんと、話し手の潜在意識をひょっこり表に出して人に知らん顔で投げかける、という離れ業になってるんですよ。
例えば、「文学作品」だなどと言って大仰に構えた作品、1作を通して、最後にバン！と出てくる「決め台詞」−−これこそがこの長たらしい話のテーマです、どうですか？感動的でしょ？
という感じのーーーこんなのを、エンターテイメントの映画では、
何回も、仕事の話の合間にブラックジョークとして、人が聞き取れるかわからないくらいの猛スピードで奴らはじゃんじゃん言ってます。ディズニー映画でさえ、です。
あの・・・変な話ですけど、こういう、右脳をよく使うせいで、西洋の映画は面白いのだ、という気がしてます。
左脳的なことだけなら、電気製品のマニュアルを読むのと同じで、「あ、わかりました、これはこうで、それはこうね」とわかってしまえば、余計な時間はそれ以上使いたくない、と思ってしまう。
それが日本映画なんだ、という感じ。
たまきは脚本家志望だけど日本語しかできないし、日本のことしか知らないので、日本映画の為に書くしかないんです。
でも日本人に照準を合わせて書いても、面白いものは何も見つからない、という悩みがあります。
だからなんとかして、ハリウッド並みに面白くするにはどうしたらいいか？と常に考えてます。
だけどね、日本人が、映画にしたいくらい面白い人達になるには、千年かかるかな？と思ってます。
もしこれが、右脳を使わないせいなのなら、千年どころか、永久に無理、ということになるの。
（パート�兇悗搬海�ます）
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