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2021年04月29日15:25

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徳田健一郎・水彩画展

ギャラリー新の前を通ったら、綺麗な桜の絵が目に飛び込んできた。「行く予定だった美術館も全部休館になってしまったしな…」と思い入ってみるコトに。

桜咲く山里や農村風景。菜の花畑。外国の風景、果物が描かれた静物画、雪景色…。色々あったけれど、どれも温かさを感じる絵だった。風景に人は描かれていない。でも、人の温もり…温度を感じる絵。

風景画では、雪景色が好きだった。ロシア絵画は、雪が本当に冷たくて“凍えそうな雪景色”な絵が多いけれど、彼の描く雪景色は不思議と温かだ。徳田氏がいたので、ちょっとお話し出来ました（勿論マスクありで、ソーシャルディスタンスを保ってだよ。画廊には私と徳田氏しかいなかったので、密ではないので念の為）。
彼曰く「雪深い地域に住んでいる人が描く雪は、逃れられないものとして描くので、厳しく冷たい雪になるのではないか？こっちはまだ、逃れようと思えば逃れられるので、そこまでの厳しさは絵に出ないのかも。」と。

カナレットを思わせるフィレンツェ“ヴェッキオ橋”も良かった。カナレットは正確無比に描く印象だが、こちらは水彩だからか淡く、やはり温かみのあるヴェッキオ橋。

蝋燭を描いた『灯』も良かった。蝋燭の絵というと、私は髙島野十郎の絵を思い出してしまうが、あちらは重く内省的（因みに、野十郎が描く蝋燭は全て野十郎の“自画像”なのでは？と言われている）。こちらの蝋燭の炎は、ほの明るくやっぱり温かみがある。ほわ～んとする炎。

柘榴の絵も良かった。果物は苺の絵もあったけれど、私は断然柘榴が好きだったな。御舟も柘榴の絵を描いていたような気がするが、あちらは写実と謂えど何処か幻想的。こちらはきちんと“柘榴”であった。

花の絵が多かったので、「花を描くのが好きなのですか？」と訊いてみたら、「風景の中での花を描くのは好きだけれど、花瓶に飾ってある花を描くのは、ちょっと…。」とのコト。生花が時間経過と共に劣化していく表現…というか現象が「自分には上手く描けないんじゃないか？」とのコトだった。なるほど！と思った。
西洋絵画では、劣化していく花の姿をメメント・モリ（死を思え）として描くコトが多いけど、その死の匂いが彼はあまり得意ではないのかも知れない。風景の中の花は、次々新たな花をつける。確かに花卉の花とはかなり趣が違うよね。

もう１つ面白いと思ったのは、徳田氏は印象派のように外にカンバスを持ち出して絵を描くのは出来ないのだそうな。「時間と共に光が変わってしまうから。」と。描いているうちにどんどん光は変わって行く。それがダメらしい。なので、風景は1度写真に撮る。それなら光は変わらないから。
モネは、その光の変化を絵にして、積み藁なら、積み藁ばっかり絵にしたけれど、なるほど、描いているうちに「あー！光の加減変わっちゃったじゃんよぉ～！！」ってなる人には、向かない描き方なのだろうね。画家にも色んなタイプがいると改めて思う。
他にも面白い制作秘話が聴けた。あと、最近、オンライン絵画教室もあるけれど、あれだと「マチエールが分からないよね。」という話も。やっぱり実物観ないとなぁ。

母の友人が画家なのだが。その人の名前を出したら、彼は知っていた（笑）。「あー！あの人かぁ！」ってなってた（笑）。因みに、その母の友人の画家は彼とは反対に、花卉の花を描くのが好きなのです。