『薬の神じゃない！』感想

〜2014年に中国で実際に起こり、中国の医薬業界の改革のきっかけともなったジェネリック薬の密輸販売事件を映画化。上海で小さな薬屋を細々と営むチョン・ヨンは、店の家賃も払えず、妻にも見放され、人生の底辺をさまよっていた。ある日、血液のがんである慢性骨髄性白血病患者のリュ・ショウイーが店にやってきた。彼は国内で認可されている治療薬が非常に高価なため、安くて成分が同じインドのジェネリック薬を購入してほしいとチョンに持ちかけてきた。最初は申し出を断ったチョンだったが、金に目がくらみ、ジェネリック薬の密輸・販売に手を染めるようになる。そしてより多くの薬を仕入れるため、チョンは購入グループを結成する。白血病の娘を持つポールダンサー、中国語なまりの英語を操る牧師、力仕事が得意な不良少年などが加わり、密輸・販売事業はさらに拡大していくが……〜＜映画.comさんより＞



　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　

去年、評判が高かったのに、遠くの劇場でしか上映されていなくて見逃してしまった作品。
いきなりアマプラ（レンタル）に入ってきたので、迷わず観賞。

めちゃ良かったです！！！！！
始まってすぐに、主人公チョン・ヨンのおかれている状況がテンポよく描かれます。
上海でインドの強壮剤を販売する薬屋の店主チョン。
家賃払えず、父は要介護、妻とは別居中で離婚要請をされている。
息子とは仲良しなれど、妻はどうやら別のパートナーがすでにいて、中国を離れたい様子。

とにかくお金がない。
父親が入院し、高額な医療費（薬代）がかかる状況になって、最初はヤバイだろうと断っていたジェネリック薬の密輸を始めることに。
最初は全く売れなかったが、販路を見出してからは、爆発的に売れるようになってくる。

一緒に薬を売ることになるグループメンバーたちが皆、とにかく個性的！
・最初の依頼人のリュは、３重マスクがユーモラス。妻と赤ん坊がいます。
「オレンジいらない？」が伏線になっていき・・・。
・白血病患者が集まるネットコミュニティ管理人スーフェイは、娘が白血病で、ポールダンサー。
・通訳として雇われたリウ牧師。中国とインドの架け橋になる人物が聖職者っていうのも面白い。
・家族に迷惑をかけたくないと家を出て、屠殺場（←この設定！）で働いている白血病患者のボン。
あだ名は「黄毛」。持ってきた１枚の家族写真。帰省を決めるものの・・・。

偽薬事件を追うツァオ刑事が彼らに絡んでいきます。ツァオ刑事はチョンの妻の弟という設定。

密輸販売しばらくは上手くいっていたんですが、次第に警察から目をつけられ始め、グループは解散。
実は同じジェネリック薬品商売をやっているチャン博士からチョンに「販路を売ってくれ」と内密に商談があって・・・。
もともとお金目当てだけで始めたビジネスだったので、逮捕されたくないチョンは、その誘いに応じてしまったのです。
メンバーは落胆します。「あんなペテン師に奴に大事な薬をまかせるなんて・・・」

時が経って、チョンは縫製工場を営んでいました。
そこに、リュの妻が訪ねてきます。「薬が手に入らなくなって、あの人は自殺未遂を・・・」
聞けばチャン博士はとてつもない値段で薬を販売するようになり、患者たちは買えなくなってしまったと。
チャン博士は密告され、逃亡。

入院するリュを見舞うチョン。白血病の壮絶なる治療を目の当たりにします。
そして心は決まりました。「患者を救わなくては！」

再びメンバーたちに声をかけ、密輸を再開。
今度は患者の負担を軽くするために仕入れ値以下の金額で薬を売り出します。

同じ頃、スイスの製薬会社が警察に偽薬は厳しく取り締まってほしいと要請してきます。
署長から担当になるよう命じられたツォオですが、調べると、実際は密輸されたジェネリック薬品の効果はスイス製のものと同じだとわかりました。
それでも署長は「密輸されたものは偽薬だ」と言い張ります。
どうやらバックには政治の力が？

「Life is money」
「情より法に従う」
「この世の病はただ一つ。貧乏だ。それには治療法はない」
「希望！」

※予告編
https://youtu.be/jgUcGtR09PE

笑いあり、カーアクションあり、スローモーションあり、幻想的シーンあり。
「あ〜、こういう映画が観たかったのよ〜」って、ずっと興奮状態でした。
社会性たっぷり、時にコミカル、時に鋭く刺さり、最後には、涙、涙。

最初はお金のために。それが患者のためにと変わり、その信念を貫いたチョン。
ラストシーンは、やるせないけど、強さと感謝と暖かさで満たされていました。
ちょっと『おみおくりの作法』を思い出したり。
去年劇場で観れていたら、絶対ベストテン入りでした。本当に良かった！！！！！
ほぼ満点の4.5☆