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2021年03月28日20:47

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1通の藻。

毬藻が住む阿寒湖では、毎年多くの毬藻が同胞が生まれる。
毬藻とは藻の集合体である。藻が丸く球状になった個体が有名であるが、実は球状の毬藻以外の糸状の藻も毬藻と呼ばれる。しかしながら毬藻界隈においては真球に近ければ近いほど、美しいとされ、ステータスが高い。阿寒湖の毬藻は特別天然記念物に指定されるほど美しい真球であり、阿寒湖に住む毬藻はその美しさに誇りを持っていた。
また、毬藻は観光資源でもある。あくまでも植物の毬藻は、その見た目の愛らしさからお土産としての人気も高く、土産店にて売られる。しかしながら。阿寒湖の毬藻だけでは生産能力が不足しているため近隣の淡水湖であるシラルトロ湖から藻を輸入しているが、シラルトロ湖産の毬藻は綺麗な球ではないため、人工的に丸く整形しているものが殆どだ。

ということになっている。人間界においては。

実のところ、シラルトロ湖と阿寒湖は水中で繋がっている。100km近くはあろうかという距離だが、2本の水中トンネルで通じており、この水中トンネルを通じて古くから毬藻は交流している。
阿寒湖の毬藻が丸くなるのには阿寒湖とシラルトロ湖の水質の違いからだ。阿寒湖は火山地域に位置するため硫黄の影響を受けやすい。そのため、その実をカプセル状(球体)にすることで身を守った。それに対して、湿原国立公園の中にあるシラルトロ湖においては、周囲からも比較的隔離されており、外界の影響は受けないため、糸状のまま生息している。
また、阿寒湖は近隣の摩周湖や屈斜路湖とも水中で繋がっている。形状を自由に変えられる毬藻の特性を生かして、湖間の水中移動を通して地域交流を図っている。

先日、シラルトロ湖から水中トンネルを通じて、毬藻の手紙が届いた。太い藻が1本、細い藻が4本、太い藻が2本、細い藻が・・・。内容はこうだ。
「こないだの食事会の件ですが、出席者は2名でお願いします。なお、一人は椎茸が食べられませんのでよろしく対応願います。」
藻の組み合わせで、言葉に変換できるようにしている。変換のルール、つまりは約束事を湖間で取り決めているのだ。
同様に摩周湖や屈斜路湖においても水中で繋がっている。また、屈斜路湖は網走湖や道内最大のサロマ湖までつながっており、サロマ湖に至っては洞爺湖、支笏湖といった湖とも繋がりがある。さながら網の目のように北海道の湖が繋がっており、必要に応じて往来がある。
阿寒湖の毬藻においても、藻が生息可能な汽水湖のサロマ湖にはよく遊びに行く。阿寒湖にとってサロマ湖はその大きさからか、兄貴分にあたるため、よく相談事をしている。そのため、途中に通る屈斜路湖には知られたくない内容があるので、球体の毬藻の形状が非常に役に立つ。糸状の何も対策していない藻通信では丸わかりな内容でも。球体では、盗み見ることができない。
そんなある日、阿寒湖に一通の藻が届いた。富士五湖からである。
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