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2021年02月15日20:34

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【伝言板【板外編1】「〜たり」の使い方〈4〉「片たり」の呪縛

 下記の仲間。
日本語アレコレの索引(日々増殖中)【24】
https://mixi.jp/view_diary.pl?id=1977236645&owner_id=5019671

mixi日記2021年02月10日から

 下記の続き。
【伝言板【板外編1】「〜たり」の使い方〈1〉〜〈3〉 「〜たり〜たり」 「〜たり、〜たり」】
http://1311racco.blog75.fc2.com/blog-entry-278.html

 赤い本に書いたのがウン十年前。
 現状は、悪化したのか踏みとどまっているのか……。

 改めてネット検索してみた。気になったのはNHKのサイトかな。
【「〜たり〜たりする」?】
https://www.nhk.or.jp/bunken/summary/kotoba/term/132.html
===========引用開始
Q「〜(し)たり…」と一度言ったら、そのあとも必ず「〜(し)たり」としなければならない、と聞いたことがあります。「たり」は単独では使えないのでしょうか。
A「〜たり〜たりする」という言い方ができる場合には、後ろの「〜たりする」を省くと、据わりのよくない言い方になる場合があります。ただし例外も多いので、いろいろな言い方を吟味しながら、その場に一番ふさわしい表現を見つけるようにしましょう。 

【解説】
 まず、「たり」が単独で表れることはよくあります。例えばこのような言い方です。

   ご飯を食べたりする時間もない。

ここで、「〜たりする」となっているところに注目しておいてください。この形なら、単独で使っても問題はないのです。

また、この文には、頭のほうに「〜たり」を並べて「例示」を増やすことができます。

   トイレに行ったり、ご飯を食べたりする時間もない。

   テレビを見たり、トイレに行ったり、ご飯を食べたりする時間もない。

ところが、最後の「〜たりする」を省くと、少々ぎこちない言い方になります。

   トイレに行ったり、ご飯を食べる時間もない。

このようなことから、「〜たり」は単独では使えない(ただし「〜たりする」なら単独でもOK)というように言われることがあるのです。

では、次のような表現は「間違い」でしょうか。

「愛にはぐれたり 淋しさが涙に負けそうな時は 思い出して みんな ひとりきりじゃないと」(菊池桃子「Say Yes!」1986年)

「去年の暮、僕の旅行中、Tという人の使いというのが来て、(中略)十五分もねばって、部屋の中をのぞいたり、うろつき廻って、女中を困らせた人物があったそうだ。」(坂口安吾「西荻随筆」1949年)

「心なしか、お母さんは少しやせて、お肌もここしばらくの真っ青だったり荒れている感じよりも若返っている気がした。」(よしもとばなな「もしもし下北沢」2009年)

1番目の例は歌謡曲の歌詞、2番目と3番目は作家が書いたものです。いずれも「…淋しさが涙に負けそうだったりする時は」「…うろつき廻ったりして」「…荒れたりしている」とはなっていません。ですが、1番目の歌のメロディーをご存知の方ならわかるかと思いますが(ぼくと同世代ですね)、これでは曲になりません。また文学作品でも、表現上の効果などから「〜たりする」が使われていないものがたくさんあるのです。

「日本語では『〜たり〜たりする』という形になる傾向がある」というように覚えたりしておく程度が、無難なのではないでしょうか。

(メディア研究部・放送用語 塩田雄大)
===========引用終了

〈愛にはぐれたり 淋しさが涙に負けそうな時〉か。知らんわ。いえその、悔しいことに曲自体はうっすら知っています。
 そもそもこういうときは、菊池桃子ではなく、作詞家(売野雅勇)の名前を出すべきでは。
 じゃあ、ミスチルが「違くて」と歌っているからOKなのか? 小室哲哉の歌詞に出てくる怪しげな英語も全部OKなのか?
 ただ……よしもとばなな(ひらがなが正解なのね)はとにかくとして(←オイ!)、坂口安吾ですか。青空文庫を調べた。原文は下記らしい。

去年の暮、僕の旅行中、Tという人の使いというのが来て、ふだん来る雑誌記者と人相態度も異り、十五分もねばって、部屋の中をのぞいたり、うろつき廻って、女中を困らせた人物があったそうだ。

 うーん。これって(中略)の意味があるんだろうか。係り結ばず?の相当の悪文で、わざとやったのではって気さえする。
 いずれにしても、歌詞や芸術文をもってこられてもなぁ。
 末尾の一文は盛大に滑っているし。

 仕事で目にする文章は相当上級者が書いている印象でも、「片たり」に関しては何も考えてない印象。よく出てくる(具体例は書けません)。一応チェックしているが、そろそろ「賽の河原」の気分になっている。
 自分で使う気はない。これに関しては「つい使いそうになった」もない。「片たり」の文を使う人と、物事の考え方が違うような気がする。問題は他者の「片たり」を目にしたとき。修正に大手術が必要なケースを目にすると、「もうどうでもいいか」って気になる。機械的に後ろの「〜たり」を入れればいいのなら話は簡単だが、そんな不自然な整形美人にするなら、ブ●原文でも……と思わなくはない。
 さすがに新聞ではまだ見たことがない……と書いて、イヤな指ざわりが残ったので調べてみた。
【2003年1〜11月の朝日新聞から】
http://1311racco.blog75.fc2.com/blog-entry-234.html
 
 まずは検索結果外の予想外の収穫。朝日新聞とは無関係だけど、直しにくい例だろう。当方なら、機械的に「たり」は入れずに、「メールやネットの掲示板を利用するようになって」などにする。それで「飛躍的に文章力がついた」んだ。すごいなぁ。それは元々文章力があっただけだろう。(←ホントか!)。
 マイナス100がマイナス50になるのは簡単だからなぁ。(←オイ!)
===========引用開始
03-3-3
 いつかメモしようと思って保存しておいたマンガから。
『モーニング』2003 No.7 「よしえサンち」(須賀原洋行)
 ネット上の以下の書き込みが紹介されている。
=======================
あたし自身、元々、文章を書くのが大の苦手だった
のですが、インターネットでメールを出したり、
掲示板に書き込みするようになってから飛躍的に
文章力がついた気がします。
======================= 
===========引用終了
 
 下記は機械的に直してヘンになっていると思われる例。こんなことになるならいっそ「片たり」のほうがマシでは。
===========引用開始
03-5-1
5月9日
 また、当時の担任が少女の悩みを聞いたり、部の顧問が、部員を集めて「仲良くするように」と言い聞かせるなどしたりしたため「関係は良好になった」とも説明した。(朝刊34面)
「などしたりした」は相当クドい。こんな訳の判らない形にするなら、「片たり」のほうがずっと美しい。基本的な問題として、「〜たり」を使った文に「など」は不要。ついでに書けば、「顧問が」の直後の読点は打ってはいけない。とりあえず、次のように書きかえる。
 【書きかえ案1】
 また、当時の担任が少女の悩みを聞いたり、部の顧問が部員を集めて「仲良くするように」と言い聞かせたりしたため「関係は良好になった」とも説明した。
 これでもいいけど、個人的な趣味では「〜たり」と「〜たり」の間がこのぐらいの長さになるなら避けたい。
 【書きかえ案2】
 また、当時の担任が少女の悩みを聞いたことや、部の顧問が部員を集めて「仲良くするように」と言い聞かせたことにより、「関係は良好になった」とも説明した。
「言い聞かせたこと」の直後の「など」はあってもなくてもいい気がする。このままでもほかにいろいろあったニュアンスがある。
===========引用終了

「片たり」に関しては質問サイトでも何回か書いた。一例をあげておく。 
【「〜たり」の使い方】
https://ameblo.jp/kuroracco/entry-12063385328.html

 はっきり覚えていた真打ちは下記。
【13)【句読点の打ち方/句読点の付け方 その13──『記者ハンドブック』の場合 改】
https://ameblo.jp/kuroracco/entry-12264497300.html
===========引用開始
 ちなみに、「読点は文章を読みやすくしたり、記事内容を正しく伝えるために打つ」はおすすめできない書き方。当方は「片たり」と呼んでいる。同書もP.485で誤用の一種にしている。
 ルールどおりなら「読点は文章を読みやすくしたり、記事内容を正しく伝えたりするために打つ」にするべき。もう少しマシな文にしたいなら、〈読点を打つ目的としては、「文章を読みやすくする」「記事内容を正しく伝える」などが考えられる〉とでもすればいい。
 ちょっと意味はかわるが、〈読点は文章を読みやすくし、記事内容を正しく伝えるために打つ〉でもいい。ほかにいくらでも書き方はあると思う。
 近年は「片たり」の文を頻繁に目にするが、新聞は頑固なまでに拒んでいる……はずなんだけど。本当に大丈夫なのか?
===========引用終了

 結論としては、「〜たり」を含む部分が長いと、「片たり」になりやすい。
 つまり、「〜たり」を含む部分を短くするように心がければ、「片たり」は防げる(はず)。
 うーん。これじゃ赤い本から前進していない(泣)。

 実はこの問題に関しては、お蔵入りにしていた(なんかヘンだな)古い読書メモがある。当時、一番売れていた文章読本で、いまでもけっこう人気があるらしい。内容があんまりなんで、書名&著者名は伏せる。関係者から著作権侵害と言われたら、つつしんでいつでも公表する。
 問題は(p.44〜45)の記述。〈見たり、聞いたり、調べていくうちに〉とか〈洗い出した「問い」を選んだり、整理しながら〉とか、こんな短い並列で使うのは、さすがにマズいでしょう。
===========引用開始
(2001年11月29日第一版第一刷/2003年10月17日第一版第六刷)
 ネット情報によると、このところ文章読本としてはいちばん売れているらしい。はじめはけっこう感心しながら読んでいた。そのうち、これは文章読本ではない、って気がしてきた。一種の思想書じゃないかね。
 実用文を対象にして、実践的な説明に徹底している態度には好感がもてる。文章の種類を細分化して書いているあたりも実用性の高さにつながっているが、いかんせん未整理の部分が多いのが残念。実践的な文章読本の書き方のヒントになる記述は多い。
 【引用部】
 私が、最初に文章の書き方を習ったのは、小学校「こくご」の「作文」だった。そこで求められたのは、ひと言で言って、「豊かな表現力」だったように思う。以降、学校で受けて来た文章教育を振り返ると、詩や物語、小説などの鑑賞が多かった。味わい深い文章、豊かな感情表現、余韻や余情……。そういう教育は、自分の内的世界や、情緒を豊かにしてくれた。とても感謝している。
 だが、以降「豊かな表現力」というモノサシを自分でも曖昧(あいまい)なまま、文章全般に当てはめてしまっていた。それで「文章の善し悪しは、とらえどころのないものだ」という、妙な思い込みを長い間持ってしまった。(p.28〜29)
 清水読本の批判を引用するまでもなく、このあたりが諸悪の根源なんだろうな。
 【引用部】
 例えば、「感動」をゴールとする詩や小説と、「説得」をゴールとする小論文は、180度性質が違うものだと分かる。さらに、大学の授業やビジネスで書く小論文と入試小論文も違うのだ。小論文のゴールは「説得」だが、入試小論文のゴールは「合格」だ。やみくもにいい小論文を書いても、合格はできない。その大学・学部で、求めて入る能力がある。それをつかみ、それに見合った方向で、見合うレベルまで、努力して到達することだ。(p.29〜30)
 こういうふうに文章の種類に関してふれている文章読本は、意外なほど少ない。そりゃ、どんな文章であっても根源は一緒と言えなくはない。しかし、現実には文章の種類が違うといろいろな点が違ってくるんだから、しょうがない。
 【引用部】
見たり、聞いたり、調べていくうちに、自分の見解は、見えてくる。(p.44〜45)
洗い出した「問い」を選んだり、整理しながら、それぞれの問いについて、自問自答を繰り返す。(p.45)
 たまたま近い箇所にあったので気になった。本書には「片たり」の文が頻出する。もうメクジラを立ててもしかたがないとは思うが、ヘンなものはヘン。
 【引用部】
 根本思想は、短い文章にも、ごまかしようなく立ち表れてしまう。根本に、人に対して温かい想いを持っている人の文章は、さりげない書き方をしていても温かさが伝わってくる。また、生き方が後ろ向きな人は、何を書いても、どう書いても、やはり後ろ向きな印象が伝わってしまう。(p.104〜105)
「文は人なり」って主張ですね。この書き方に一般的な主張より説得力を感じたのは、著者の世界観に巻き込まれているかね。このあとに、正直に書くと差し障りがあるときなんかの対策が出てくる。
 【引用部】
そういう気持ちにとらわれた時は、書くのをやめ、少し、根本思想が変わるのを待つ。(p.105)
 ここで爆笑して目が覚めた。あのね。こんなに簡単にかわるものは、根本思想なんかじゃないでしょ。
 【引用部】
 文章で大切なのは、自分の根っこにある気持ちや生き方にうそをつかないことだ。(p.109)
 文章はこの点で甘くない。自分の生き方にうそのない文章を書くことは、実は最も有利な戦略なのだ。(p.109)
 このあたりの正論の押し付けには、ゲップが出そうになる。〈実感から出る本物の言葉に勝てない〉なんて書かれていると、「そうだろうな」って気にもなる。たかが文章のことでそんなに熱くなるんじゃない。
 【引用部】
 主語ははっきりさせて書く、そして主語はできるだけ人間にし、あいまいな受け身文を書かないようにするだけで、文章は見違える。(p.187)
 一理ある。ただし、このあとに〈主語があいまいということは、責任があいまいということだ〉とあるように、この記述はビジネス文書を対象にしている。一般にはケース・バイ・ケースだろう。 
===========引用終了
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