mixiユーザー(id:429476)

2021年02月12日16:13

222 view

ミッドサマー

飛石連休の藤井氏が「ホラー映画なのに、舞台が白夜のスウェーデンで画面が明るい。それが逆に怖い。」と言っていて、内容も面白そうだったので、ずっと観たかったミッドサマー。WOWOWで放送してくれたので、字幕版、吹替版共に観られました。吹替版も良かったです。落合福嗣氏がペレの声を当てていて吃驚。でも、ペレの何処か胡散臭い感じが良く出てて良かった。

内容は、ダニーという女子大生が主人公。彼女には、双極性障害の妹がいて、この妹に振り回されて自分もパニック障害になってしまう。そんな中、この妹が両親と共に心中。心がグッチャグチャのダニー。彼女には、クリスチャンという彼氏がいるのだが、この彼氏はメンヘラ彼女を持て余し気味。でも、別れるのも「後悔するかも…。」と煮え切らない。そんな中、大学の友達ジョシュが、夏至祭を題材にした論文を書くと言う。スウェーデンのホルガという共同体から来たペレは「うちの故郷の夏至祭にも来たら。」と誘い、ペレも含む計5人で行くコトに。
山奥のホルガの村は、風光明媚で花が咲き乱れ、とても美しい村だった。その村は、90年に1度の大祝祭の夏至祭が行われる。その祭で行われる数々の儀式。それはとんでもない儀式で、皆はそれに巻き込まれて行く…という話。

顔面グチャグチャとか、背中の皮を剥されるとか、スプラッタ表現もあったケド、あの程度なら私は大丈夫でした。顔ハンマーでガンッ!も、「あ、これ、樹脂だ」って感じがあったし(笑)。でも、マークの生皮マスクは、本物感があったなぁ…。
1番吃驚したのは、冒頭の自殺の儀式で出て来た老人ダン役の人が、ビョルン・アンドレセンだったコト!ヴィスコンティの“ベニスに死す”の美少年タッジオ役ですよ!あの妖艶な美少年、こんなおじいさんになっていたのね!そんな美少年の顔をグッチャグチャに潰すか、アリ・アスター!(^_^;)
余談だが、私は、アンドレセンのオーディション風景の映像を観たコトがあるんですが、(ヴィスコンティが「立って」とか「座って」とか「歩いてみて」とか、アンドレセンに言ってる映像)、その時のアンドレセンが年相応の少年で、可愛く照れて笑ってて、「映画じゃあんなに妖艶なのに、きっと普通の元気な男の子なんだろな。」と思ったのを覚えてる。

映画冒頭にタペストリーが出て来るのだが、実はこのタペストリーには、これから起こるコト(預言)が全て描かれていて、盛大なネタバレをぶっかましてからこの映画は始まる。1回観てからもう1度観ると「なるほど!」と思う。

冒頭のアメリカでの暗いシーン。ところどころに不気味で不思議な絵が出て来るんですが、これがもう既にこれから起こるコトの示唆になってるのね。熊の絵があったり、巫女に導かれた民衆のような絵があったり、月の満ち欠け(1年。四季かな?)の絵があったり。

あと、音。この映画で1番怖いの音楽も含めた音だと思う。ホルガの村での皆で寝る寝室で、ずっと聴こえる赤ん坊の泣き声とか、ダンス勝負の時の中央アジアっぽい不思議な旋律の歌だとか。脳震盪を起こした時の呼吸音だとか。村人の唄う不思議な歌とか。

前述通り、白夜のスウェーデン(ロケ地はハンガリーらしい)なので、明るく、映像も花と緑に彩られ美しい。そこで行われる儀式は、自殺の儀式、性行為の儀式、メイクイーン(女王決めの儀式)、9人の生贄を捧げる儀式。
共同体にいる彼らには、ほぼほぼ個がない。全てのものを平等に分け与えるというシステムにより共同体を維持してる。自殺の儀式では「ホルガでは72歳で命は終わるので、その命を次に分け与える。だから自ら命を絶つ。」だし、悲しみや痛み、性的快楽も皆で分ける。
相互扶助の精神を、意地悪く反対から描いたらこうなるのかな?と思った。小山薫堂氏が「これは究極のシェアの話で、全てシェアするって怖い。」と言っていたが確かに。

あと、私が思ったのは「思考停止って怖い。」ホルガの村の人達って、共同体のルールは絶対で、それに従って生きていて、それって自分で物事を考えないですむので楽っちゃ楽なんだケド、その分、今、自分達がやってるコトに疑問を持たないので、「いや、それ殺人では?」というコトも普通〜にやる。当人にとってはルールに則ってやってるだけだしね。カルト宗教集団とかもそうだね。
これ、上手いなって思うのは、彼らは、ようはカルト宗教集団ってワケではないのよね。古より続く習俗でやってますよなので、村の掟的なモノに近い(根底にアミニズム的宗教観があるのは間違いないケド)。

性交の儀式の時の周りの女性達。最初はマヤの初体験を応援してんのかな?と思ったのだが、そうではなく、あれは、マヤの破瓜の痛みや快楽を“共用”してるんですね。これもシェア。謂わば、シェアセックス(笑)。あれも子作りの儀式だろうから、ルールに則ってやっている。

面白かったのだけど、疑問もあって。これ、どの部分が90年に1度の儀式だったんだろう?
性交の儀式はあれは90年に1度だったら子孫が絶えちゃうから、毎年あるとして(まぁ、あの儀式だけで子供残してるんじゃないとは思うケド)。メイクイーンも「今年の」と言ってたし、写真が沢山あったので、あのダンスバトルも毎年あるのだろう。自殺の儀式は72歳の人がいる時は必ずやるのだろうし(そうしないと不平等になる)、じゃあ、最後の9人の生贄の儀式かな?と思ったが、ペレが両親を失ったダニーに「僕も両親がいない。僕の両親は炎に焼かれて死んだんだ。」って言ってるんだよね。これって、おそらく、ペレの両親は、生贄だったってコトだと思うんだ。ってコトは90年に1度だと計算が合わない。
何が90年?外部から人を呼び込むのが90年なのかな?と思ったケド、長老が「血が濃くならないように、外部から人を招いてる。」って言ってたから、これも違いそう。
あれかなぁ。この儀式、全部纏めて一気にドン!が90年に1度なのかな?この辺りが良く分からなかった。

あと、疑問。この村って9って数字がマジカル数字らしくて、生贄も9人、大祝祭も90年に1度、人の人生も四季に準えていて、9の倍数で決まっているのだけど、18歳〜36歳までは夏の季節で冒険の時代って言ってたと思うの。で、これってペレみたいに村の外部に行って良い時代ってコトみたいなんだケド。
この外部で、通常の文明社会の文化に触れて「あれ?村でやってるコトおかしくね?」って疑問持っちゃった人がいたらどうなるんだろう?と。
村にいる時は、共同体の中で外部情報も遮断されてて、ある種の洗脳状態だと思うけど、外に出て洗脳解けちゃって「おら、こんな村ヤダ!」ってなったらどうすんの?下手したら、警察にたれこむ奴とかいないとも限らないよ?スウェーデンの法律ってよく知らないけど、少なくとも法治国家だから、現代の法律に合わせて処理されんじゃないの?と。これが不思議だった。(正解は、そんなコトまで考えて作ってねえよ!だとは思うが(^_^;))ペレもイングマール(だっけ?)も洗脳解けなくて、外の人間連れて来てて良かった(良かった…か?)ケド。

ダニーが冒頭の暗い映像のアメリカから、ホルガの村に来て、どんどん明るくなっていくのが凄い。彼女に必要だったのは、一緒に悲しんでくれる人達だったのだなぁ〜…と。クリスチャンの儀式を見た後、彼女は、ホルガの皆と一緒に慟哭して、悲しみを分け与えて、生贄の儀式で妹の心中からも、優柔不断で自分をかえりみない彼氏や、諸々のしがらみから解放されて、解放されたからこその最後の笑顔なのだろうな。反面彼女は、これから、共同体という新たな呪縛が出来るのだな。結果、人は何某かに縛られてないと生きていけないのかな?
ペレは最後「特別な存在」になってたから、おそらく神官みたいなモノになったんだと思うケド、神官ってセックスしても良いのかな?だったら、ダニーと結婚するのかな?とも思った。あの、儀式やらなきゃダメなのかな?(^_^;)

あと、思ったのが、ダニーはクリスチャンの何処が良くて付き合ったんだろう?ジョシュの研究取っちゃうし(クリスチャンがジョシュにあんなコト言うから、ジョシュは焦ってルビ・ラダーを盗み撮りしたんだよ)、優柔不断だし、ルビ・ラダー(聖なる書)が盗まれた時も「俺、関係ねえ」と保身に走るし。性欲が強そう以外、あんまり良いところねえぞ、クリスチャン!(笑)
終盤、シヴ(だっけ?巫女長みたいな人)の部屋へ行く前に、クリスチャンが観てるのが、熊が炎に焼かれてる壁画なんだよね。この映画、絵が示唆的に使われててそれも好きだった。
最初の方に出て来るラブストーリーだと言われたタペストリー。村の娘が男に惚れて、ルーン文字のおまじないをして、自分の陰毛をパイに入れ、生理の血を飲み物に入れ意中の男に飲み食いさせ、両想いになりました…と言う物語。これは、マヤがクリスチャンにやったコトなんだなぁ。てか、あの変に赤い飲み物の中には生理の血が入ってたんだな(-_-;)。
性交の儀式の時に催淫剤かがされて、目がバッキバキになってたクリスチャン。この役者さん演技上手!って思った。

ダニー役のフローレンスさんは、慟哭の演技が本当に上手かった。妹が心中した時と、性行為の儀式見た後の慟哭の演技。迫真に迫り過ぎて、私ゃ、凄く怖かった…。
最後、花のローブでモコモコ歩く姿は、花の怪物のようで禍々しかった。

1番可哀相なの、ヤリチンマークかも知れない。スウェーデン美女とやりまくれると思って、軽い気持ちで一緒に行っただけなのにね。フール・ザ・スキン(愚者の皮剝ぎ)で、生皮剥されちゃうし。まぁ、あれ、聖なる木に小便したからだろうケド。

この村の産業の解説で「ホメオパシー(自然薬)」って言ってたけど、この薬って、おそらく、合法ドラッグみたいなモノだろうね。なんなら、グレーゾーンのドラッグも作ってそうよね。この村、出て来る飲み物が、悉くドラッグ入りの飲料水か強い酒なんだ。まぁ、祭りの時期だけそうなのかもだケド。9日間村人はずっとラリってるんだろうな…。

あの花冠に白い衣装。私、世界報道写真展で、北欧の夏至祭の写真を観たコトあるのだけど、本当に、あんな感じの姿だった。花冠に白い服の美女。その時は「わぁ、花の妖精みたい!綺麗〜。」と思ったケド。写真の解説には“古くから伝わる神聖で貴重な祭り”とあったと思う。
ホルガの村。祭りの間だけあの服って言ってたよね?普段はTシャツにGパンだったりするのかな?想像つかん。

ホラー映画なのに、色々考えさせられる部分も多くて面白かったです。

こんな映画作るアリ・アスターってどんな人だろう?と思うも、実際会ったら、案外普通の人なんだろうね(笑)。
4 0

コメント

mixiユーザー

ログインしてコメントを確認・投稿する