mixiユーザー(id:1762426)

2021年01月22日08:40

54 view

コロナ感染で「11日間入院」ー4


次の患者さんの血液検査のために、先生は部屋をあとにした。この病院には、軽症から中等度の患者が入院していた。軽症とは「咳のみで肺炎がなく、呼吸状態がよい人(熱は不問)」、中等症は「肺炎があり、酸素が必要になることがある(IとIIがあり、IIは酸素が必要)」ということだった。

血液検査は治療方針を決めるための指針となっていて、数値が怪しければCTやレントゲンをとって、肺炎の有無、進行状態を調べ、投薬の判断をする。

最初の夕食が運ばれてきた。感染予防のために使い捨ての容器に入っていた。その容器の7割を占めるのは白米、切り身の魚、お吸い物、ほうじ茶だった。食欲はなかったものの、唯一の楽しみだった私はシンプルな彩りを若干寂しく感じたが、療法食なので当たり前だと気を取り直した。

熱が下がらず不安な日々
血液検査の結果、CTについては様子をみることになった。解熱剤と、ひどい鼻詰まりのための点鼻薬を出してもらい就寝しようとしたが、電気を消すと暗闇に吸い込まれそうで、暗くすることができなかった。

30代で基礎疾患のない私がどうしてこんなに症状が出たのだろうとか、いや、そもそも若者や基礎疾患のない人は症状が出にくいという考えが広がっていることも危ないのだろうとか、回らない頭で考えれば考えるほど、自分はどうなってしまうのだろうという不安に襲われた。

シンとした病室の窓からひとり外を眺めると、暗い夜空に浮かぶビジネスホテルの明かりが目に入って、去年の今頃は星空を眺めながら温泉旅館の露天風呂で寛いでいたことを思い出し、もうそんな日々はやってこないんじゃないかと悲しい気持ちになった。気分を紛らわせたくて、昼間に買っておいたテレビカードを使ってテレビをつけた。今まであった日常の全てを遠くに感じながら、割れそうに痛い頭痛と闘いながら夜を過ごした。

翌日親友が、電気を消せない私の目が休まるようにと、アイマスクやドライシャンプー、軽食などを差し入れてくれた。嬉しくてたまらなかった。翌日以降は、母が毎日差し入れを仕事帰りに届けてくれた。人生で隔離された状況など経験したことがなかったから心細く、治るまで出られないと思うと精神的に辛かったけれど、入院中に支えてくれたのは、友人や家族との絶え間ないラインのやりとりや、終始温かい言葉をかけてくれる会社の方々、大切なひとたちの優しさだった。

数日たっても39度台のまま、解熱剤も効かなくなっていた。39.9度の熱で頭痛もひどく、トイレに立つのがやっとで、目を閉じても眠れない日々が続いていた。

2度目の血液検査後に、医師から、アビガンとステロイド吸入薬のオルベスコの投与を考えているが、アビガンは”催奇形性(妊娠時の胎児奇形)の危険”があるから、妊娠している可能性はないか、それから高尿酸血症、肝障害も起こり得る副作用なので、どうするか相談したいと言われた。藁をもすがる思いだったので、投薬をお願いした。

アビガンを開始後もまだ高熱は続いた。先生からは、結局ウィルスと闘えるのは自己免疫だけで、アビガンはもしかしたらコロナに効くかも?くらいでエビデンスはないので、諦めずに頑張って自己免疫で乗り越えようと励まされた。水分を大量にとることで脱水を防ぐことができ、それがコロナの合併症である血栓症の予防にもなるので、引き続き沢山摂るようにとも言われた。

翌々日にはCTもとった。そして、肺炎がいくつか見つかった。広範囲に広がっていたそうだ。ショックだったけれど、入院していなかったらと思うと、医師に診てもらえる状況が本当に有り難かった。肺炎への対処として、デキサメタゾンというステロイド薬も加わった。この薬を開始して2日くらいした頃から熱が下がり始めた。同時に割れそうに痛い頭痛と重い倦怠感が少しずつ和らぎ始めた。

入院11日目、ついに退院!
症状がやや緩和してくると、外を観察する余裕が少しでてきた。仕事の電話をしている40代くらいの人や、ご夫婦のように見える初老の2人が廊下の窓から外を眺めていたり、その一方で、ものすごく咳き込んでいる人や、鼻からいくつかの管がつながっている若い人など、他の患者さんも時折見かけた。

この人たちは皆、コロナ陽性者なのか…そう思うと自分もコロナなのに、コロナ陽性者とあまり接触したくないと感じてしまう自分がいた。医師や看護師、スタッフの方々がどんな思いで診察や世話をしてくれているのかと、いたたまれない気持ちになった。


アビガンとデキサメタゾン投薬を続けて5日目くらいから顕著に症状が改善していき、薬をやめても目立った症状が無い状態が72時間続けば、退院できることになった。入院から11日目、ついに退院の日がやってきた!

1 0

コメント

mixiユーザー

ログインしてコメントを確認・投稿する