※ここから先はゲームブック【パラグラフジャンプを超えて】のネタバレがあります。できれば、本作をプレイしてから、もしくは行き詰まってから読むことを推奨します。
ぜろです。
日曜ゲームブック【パラグラフジャンプを超えて】をプレイしています。
この物語は、作者である梧桐重枝氏が、自らが急な病に倒れたときの絶望と、そこからの回復の道のりから着想を得て描いたものです。
作中の操作キャラクター、澤井康夫は梧桐重枝氏が多分に自己投影したキャラクターで、梧桐氏の入院当時の感覚や体験を、虚構のオブラートに包んで表現してくれています。
さあ、今回は最終回です。すでに物語の枠を抜け出て、メタ視点からの語りに入ったこの作品の、最後の仕上げと感想です。
本作のリプレイはかなり特殊です。
プレイヤーの「僕」が読みながら攻略を進める場面と、作中の「僕」が作品中で行動する場面が混在し、ゲームブックのプレイ感覚をつかめない人には、分かりづらいかもしれません。
しかし、そうしたメタ視点と物語の融合そのものが、本作のテーマにも通じることから、あえてそのようにしています。ご了承ください。
●アタック01-13 最後の謎
僕は、エンデの問う、真の主人公は誰か、という問いに完全に回答した。
ゴゴゴゴゴ、と音が響く。
エンデの説明によれば、それは次元の壁がつながった音だという。
僕が、澤井康夫だけでなく、梧桐重枝にまで干渉してしまったために、そうなったのだそうだ。
エンデは、僕、というか澤井と梧桐をこのままここに留まらせたいようだ。
「どうせ希望はないんだし」なんて言っている。
そのとき、どこか違う階層から「そんなことはない!」という小さな叫びが、聞こえた。
エンデは、最後の謎を出すという。
まあ、この場所に永遠に留まればいいよって言いながら、抜け出すための出題をしてくるなんて、このエンデもそうとうわかりにくく、まわりくどくなっているよな、と思う。
「この冒険を終わらせたいなら解けばいい…… 『指はたくさんあるけれど、一枚目の指と三枚目の指とに、はさまれてる二枚目の数いくつ?』
…梧桐先生ったらこの謎を最後に出したくて紙にこだわったんです。」
もう、澤井康夫のTwitterにはヒントはない。
これは澤井康夫ではなく、梧桐重枝の問題だからだろう。
だが、とっかかりはある。
わざわざ「1枚目」「3枚目」の間に挟まれた「2枚目」と言っている点。
梧桐重枝が「紙にこだわった」と言っている点。
……どうやら結局、印刷した方がわかりやすそうだな。
印刷する前に、ひとつ確認する。
この作品の本文全体に対し「指」で検索をかけてみた。
1枚目には、「指」がたくさん出てきた。「指輪」を持っているせいもあるのだろう。
対して3枚目には、「指」はひとつだけ。
ふむ。なるほど。
だいたいわかったが、僕はあえて、作品中の「指」を全部強調表示にしたうえで、3枚のPDFを印刷した。
3枚目の白黒反転はやっぱりひどかった。黒いインクが多すぎて、紙がしなしなになっている。
それだけではない。白抜き文字の小さな文字の明朝体は、黒塗りに完全に負けてしまっており、読みにくいったらない。
これを本当に印刷してプレイしてもらうのなら、文字のサイズや書体はもう少し考慮した方がいいと思う。明朝体は厳しい。
さて、それでも3枚の用紙は印刷できた。
僕は、上から3、2、1と並べた。
3枚目に「指」は1か所しかない。1枚目にも同じ位置に「指」のひとつがある。
僕は3枚の紙を柔らかいものの上に置き、3枚目の「指」をペン先でぐりぐりしてやった。
そして、紙をめくる。
2枚目のそのポイントは、澤井が少々幻覚と現実を混同しはじめている頃に出た選択肢のひとつを指していた。
・「君の能天気さには」→5293 6 1 7 9 0
この一文の、意味のない数字の羅列と思われていた部分だ。
その中の、ある数字を示している。
ちょっとずれていたけど、そこはプリンタの問題かもしれないので、意をくんでジャンプした。
●アタック1-14 円環構造と無限の階層
エンデが、別れの挨拶をしている。
「思い返せば、 いろいろな階層の知識や道具を共有し、いろいろな登場人物を操作し 『あなた』はここまでやってきました」
「私はエンデ…遠藤……常に 『あなた』 の傍にあり、『あなた』 の人生の最後に避けては通れぬものです」
「この話がまるで分からなかったって?いいんです。分かろうが分かるまいが、 どんなストーリーにも人生と同じで終わりは来ます。『あなた』 の悪あがきでいくつかの世界がつながってしまったせいで、 私はこの話を終わらせに行かなければ…」
「ほら、 世界が閉じる……。 またいつかお会いいたしましょう。 『あなた』 の終末にでも」
エンデは、作中の登場人物、遠藤であった。
そしてその役割は、人生の最後に迎えに来る者、か。ENDの遠藤、ということか。
エンデとは、えんどコイチの「死神くん」だったようだ。
物語はもう終幕に向かっている。すでに僕の操作を離れ、読者の視点だ。
梧桐重枝は完全に、この作品の登場人物となった。
「階層がつながった」ためだろうか。梧桐重枝のパソコンのモニターから、澤井康夫や白骨遺体が飛び出してくる。
澤井康夫の創作キャラクターである白骨は、第1階層のキャラクター。
農魔導士って言っているから、「農魔導士ほんとの冒険」に登場したジンケなのだろう。
梧桐重枝を投影したキャラクターである澤井康夫は、第2階層のキャラクター。
さらにここで判明した。澤井康夫の一人称は、「ワシ」であった!
でも、あえて直さないよ。リプレイ中では「僕」だよww
そして作者の梧桐重枝は、作中に登場してしまったことから、第3階層のキャラクターに位置づけられてしまった。
それを見ている我々読者は第4階層ということになる。
作中の梧桐重枝は、突然の重い病がいかに厳しく、悔しかったのかを語った。
そしてその悔しさをバネに、力へと変換し、生きていく決意をするに至ったと、語った。
そして最後のパラグラフに飛ぶと、そこはカーテンコールだ。
これまでに紹介した人物のほかに、梧桐重枝氏が作中の登場人物になってしまったために、今この原稿を打ち込んでいるという、ペンネームではない作者本人が、第5階層の人物として紹介された。
さらにテストプレイヤーの方々。
あいさつを終え、それぞれがぞれぞれの階層へと戻っていく。
それを見届けたところで、この物語は幕を閉じるのだ。
完。
●感想
感想を完走って書きたい。
ごちそうさまでした。
私は梧桐氏からあらかじめ、ある程度事情を聞いていたこともあり、作品背景についてはすんなりと理解できました。
最後の「階層」の話をすると、今、これを書いている私は、第6階層ということになるのでしょう。
でも、これを書いた時点で私すらも作品に巻き込まれ、登場人物として組み込まれてしまうのでしょう。
そして、これを見ている第7階層の読者が存在する、と。
そんな、円環構造と無限連鎖の物語でありました。
わかっていたけれど見事というほかはないですね。
Twitterの仕掛けなんて、ものすごいです。
澤井康夫さんのTwitterの日付から、いつ頃からこの作品に取り組んでいたのかがよくわかりますね。
私、いつもゲームブックのリプレイを書いていますが、別にプレイがうまいわけでも、勘が鋭いわけでもありません。
むしろこういう謎解きは解けないほうだったりします。
だから今回もけっこう早い段階で、ヒントのお世話になってしまってました。
むしろ、ほとんど自力で解いていないと言ってもいいです。
「不意の悪寒」の「うかんむり」はヒントを頼りましたし、「7番目の素数」は偶然答えが見えてしまいました。
指輪の「99」も本来とは異なるアプローチです。
これではとても、完全解答なんて言えたものじゃありません。
今作も本当にとびきり難しいパラグラフジャンプをたっぷり仕込んでくれましたね。
私が気づけなかった「うかんむり」については、ああ、なるほど、とうならされました。
Twitterの存在については、もうちょっと作中のヒントが多めでもよかったかな、と思いました。
作品そのものから離れて何かする、という発想にはなかなか到達できないものだからです。
でも、それも含めて仕掛け自体は本当にすばらしい。
作者の実体験が作品に多分に反映されているとのことで、絶望に支配され、さらに薬で混乱と狂気の度合いが増している表現など、壮絶でした。宇宙的恐怖を感じるくらいに表現されてました。
当時の作者は、処女作を書き上げた直後に突如重い病に倒れ、どれほど絶望したことでしょうか。
そして病床の頃の様々な経験や感覚を、幻想幻覚に至るまで詳細に語ったのが、この作品なのだと思います。
最後にきちんと、作者が生きる方向に向いてくれて、よかった。
《暗黒通路》を抜け出すために、「左手薬指の指輪」を使います。
これは、身近で大切な人の存在が、作者に力を与えてくれたということを意味しているのだと思いました。
後日作者本人に聞いてみたところ、「指輪を手に入れるときに骸骨になるのは、結婚は人生の墓場だからだ」などとうそぶいていました。
そこまで意味が込められているのなら、私の推測は間違っていないのでしょう。
物語が終わり、メタ世界の語りに移行する際に、マップの形から14を割り出します。
ここで14に飛ばすというのは、14がゲームブック界における有名な番号である、ということではあるのですが、その番号を選んだことは、重要な意味を持ちます。
14はグレイルクエストで、死んだときに直行する番号です。
だけど、それはデスナンバーではありません。
むしろそこで準備を整え、再生するための番号なのです。
だから物語からメタに脱却する際の番号に14を選んだのは、作者の再生への意志のあらわれだと思っています。
ちなみに私のこのリプレイも、「アタック01-14」で終わってるんですよ。
偶然ですけどww
遠藤=エンデという正体も、ほう、とうならされました。
そして私の妄想の中では、リプレイ中でも書きましたが、えんどコイチさんの漫画「死神くん」に重なりました。
読んでない方ごめんなさい。「デスノート」の死神なんかと違い、やや人情派寄りの死神さんです。
人の死にまつわるエピソードを毎回1話完結で描くという、稀有な作品でありました。
それをギャグタッチな絵柄でやるものだから、いい感じに表現がソフトになっていて、好きな作品でしたね。
そんな遠藤ですが、実は意外なところにも登場していたんですよ。
作者のTwitterで公開されている【新作『パラグラフジャンプを超えて』発表記念インタビュー】です。
最後まで読み進めると、「(インタビュアー:遠藤 終)」となっています。
こんなの、気づけないよ! どれだけ仕込んでいるんだよ作者は!
それから、私の中ではこの作品、「無限のリヴァイアス」というアニメ作品のオープニングテーマ「dis-」の歌詞にものすごくシンクロしました。
特に「凍りついてる海の裏側でいつか見た現実と幻想(ゆめ)が交差する」という一節がかなりぐっと来たので、途中のサブタイトルに入れてしまったくらいです。
でもそこだけでなく、すべての歌詞が、この物語のテーマとシンクロしているように感じられました。
この作品では、澤井の身体を借りて表現を柔らかくしていますが、作者本人の内面の闇まで、かなり深くえぐっています。
そのために自然と、読者自身も自らが抱える闇と向き合うことになるかもしれません。
読む人によっては、自身に投影してそこまで行ってしまい、大変疲れてしまうかもしれませんね。
私ですか? 私も、こんな軽妙な文章しか書くことできないですけど、あるんですよ闇。
まあ、そこをここで語ることでもないので詳細は省きますが、大切な人との早すぎる喪失体験が、私の人生に大きな影響を及ぼしていることは間違いありません。
この作品、語り口が多すぎるので、いつまでもぐだぐだっと感想が書けそうな感じではあるのですけれど、このあたりで筆を置かせてもらおうと思います。
また何か語り足りないことを思い出したり思いついたら、ふとTwitterでつぶやくかもしれません。
そんなわけで、今回もPDF3枚にもかかわらずの超大作、お疲れ様でした。
前作といい今作といい、絶対にお金取るべきだと思うんですよね。
無料で配布する方が失礼な気さえしてしまいますよ、この出来だと。
それではまた、いずれ何かの作品のリプレイでお会いしましょう。
ゲームブックリプレイ【パラグラフジャンプを超えて】目次
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