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2020年12月07日09:02

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キリシタン紀行 森本季子ー301 聖母の騎士社刊

紀州の秘境 龍神と教会ー14

 シスター大島の話によれば、
 「父は私の入会で非常な衝撃を受けるとともに、カトリックへの関心を深めました。旧一高時代の後輩だった戸塚文卿神父様の著書『カトリックの信仰』をボロボロになるほど繰り返し読んだそうです」
 神は徐々に、龍神に蒔く種を和歌山で準備されていた。
 昭和十六年(一九四一)から都市人口の疎開が急を告げるようになり、二十年に入ると空襲が本格化した。どの都市も危険にさらされた。和歌山市もいつ米機の来襲があるか分からない。大島家では故郷・上山路村、西へまず家族が疎開することになった。西には仙吉氏の二男・哲郎氏が祖父の医業を継いでいた。
 この上山路村・西を疎開先としたもう一家があった。大島夫人はぎのえさんの妹、伊津恵さんが嫁した吉中好信氏の家族である。はからずも、この集落に大島、吉中両家という熱心なカトリック信者たちが集まることとなった。戦争という激浪によって、彼らが和歌山県の海岸から逆に日高川をさかのぼってこの源流地域に押し上げられたと言えよう。
 しかも、この西は前述したように龍神地方最初の、そして唯唯一のカトリック者であった伊藤勇太郎さんの墓がある土地だった。彼のいとこ、山本キヨ子さんが言ったものである。
 「まるで、勇太郎さんが一人じゃ淋しいから、と呼んだみたい」
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