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2020年12月01日08:18

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キリシタン紀行 森本季子ー296 聖母の騎士社刊

紀州の秘境 龍神と教会ー9

「龍神村史」によれば
 土地が水分を吸収して飽和状態になったところの大雨だったので集中豪雨のほとんどが河川に殺到した。大型の山崩れが各所に発生して河水を堰き止め、これが決壊して被害を増大した。現在カトリック教会の建つ日高川対岸の山は六地蔵山と呼ばれるが、
八月十九日未明、下柳瀬六地蔵山が突如崩壊し、濁流を堰き止め上流一帯は瞬時にして大湖となってしまった。(「龍神村史」)
 この突如出現した大湖は水深四十メートルにも達したという。出口を塞がれた激流は谷間を埋めたのである。
 灯をつけたままの民家が川上へ押し流されたり、あるいは渦巻状 に流され、柱にしがみつき、屋根に上り、互いに助けを求め合っていた。それも束の間のことだった。崩壊より生じた災害ダムは一挙に決壊し、(中略)下柳瀬八十三戸のうち七十戸が流出し、死者八十三人を出した。(前掲書)
 中山路村下柳瀬の小集落(小柳瀬、応地、原、日浦など)はことごとく土砂に埋没するか、激流に飲み込まれてしまった。道路は寸断、橋という橋は流出。
 「そりゃもうひどいもんで、このあたりで生き残ったもんはたんとはなかった」
 数日後、たまたま知り合った村の老女が、祖父母から聞いたこととして私に語ったものである。
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