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2020年10月31日16:08

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映画 "AWAYDAYS アウェイデイズ" (ようこそ映画音響の世界へ)

AWAYDAYS アウェイデイズ


1979年イギリス北西部の港町を舞台にした若者の物語で、
当時のポストパンクの音楽やファッションが使われているということで鑑賞。

主人公カーティは中産階級の家庭で育ち、一年前に母を亡くし、
父と仲の良い妹と暮らしている。
アートスクールを中退し公務員の下働きをしながら、
ライブハウスやサッカーの試合に行ったりするだけの退屈な日々。

そんなある日、エコー&バニーメンのライブでエルヴィスに出会い、言葉をかわす。
実は以前父と行ったサッカーの試合で、相手チームのファンと乱闘を起こしていた
グループ”パック”の一員だったエルヴィスをカーティは覚えていたのだ。
パックに憧れていたカーティはエルヴィスにグループに入れてくれるように頼む。
しかしエルヴィスは逆にパックは危険だから近寄るなと忠告し、
やっと音楽や哲学について語り会える相手ができたと喜んだ。

忠告にも関わらず、カーティはパックのサッカーの応援遠征(AWAYDAY)に
ついていき、みんなに認められるために乱闘に加わリ、その活動にのめりこむ。
一方、エルビィスは自分の想いがカーティに届かず苦脳する。
次第に遠征での乱闘はエスカレート、内輪揉め、最愛の妹に起こったトラブル、
と事態は深刻な状況に、、、。

オープニングのカーティーが初めてパックの遠征に参加できる喜びで
駅まで全速力で走るシーン、そこにULTRAVOXの”YOUNG SAVAGE”
という曲が見事にマッチして、なかなかゾクゾクっとする始まりでした。

前半はそんな感じで若者たちが鬱屈した気持ちを乱闘で爆発させたり、
共通の趣味の相手が見つかってカーティとエルビィスが意気投合していく様や、
カーティが妹を大事にする和やかなシーン、カーティのモテ話とか、
まあまあ共感というか、理解できる感じで楽しめました。

しかしカーティがパックのみんなに認められようと暴力的になっていくにつれて、
なんでそんなに喧嘩したい? と違和感が。
人を殴って興奮する事は共感はできないけど、まあわからんでもない。
でもそもそもアート系で定職を持つ中産階級の若者が粗暴な労働者階級の集団に
積極的に入りたい、認められたいっていうのが理解できない。
最初の乱闘で興奮を覚えたかもしれないけど、自分も痛い目にあったり、
可愛い妹や実態をよく知るエルヴィスの忠告を無視してまで。

それだけでなく、パックのボスは30歳で子供もいるのになんでガキみたいに
暴れまくってるん? とか、乱闘での刃物や御法度だったクスリの使用、
そして裏切り。エルヴィスはカーティへの想いを一人でこじらせてるし。
どんどん登場人物の気持ちについていけなくなり、
それぞれが悪い展開になっていくという、
なんともモヤモヤした感じで終わってしまいます。

まあそんな感じで、ストーリー的にはなかなか納得感を得られないものの、
登場人物の鬱屈した感情にぴったり(ずっと曇り空の天気にも)な音楽、
彼らの当時のファッションとか、映画全体の雰囲気は一貫していて、
そういう点ではそれなりに評価できるし、
はまる人にはめちゃくちゃにハマると思います。
昔見た、やはりパンクスに憧れる少年を主人公にした”THIS IS ENGLAND”にも似てるし。

ULTRAVOXは私の音楽人生に多大な影響を与えた大好きなバンドの一つですが、
残念なことにこの映画で使われているのは初期の曲、
つまり初代のボーカル、ジョン・フォックス時代のもので、
私が好きな二代目ボーカルミッジ・ユーロ加入前。
シンセ、ドラム、ベースは同じメンバーですが、初代はポストパンクの荒削りな音、
二代目はそれに対してシンセとミッジのセンスあるギターがうまく噛み合った、
大ヒット曲”VIENNA”に象徴されるようなヨーロッパダンディズムを感じる音で、
結構違いがあります。

この映画には確かに初代ULTRAVOXの音の方があっていて、
初代もなかなかいいなと再認識しましたが、
他にもエコ&バニ、ジョイ・ディビジョン、キュアー、キャバレー・ボルテージと
なかなかのダークな曲者ばかりと徹底していて、
曲名やバンド名を知らなくても塔場人物の気持ちや乱闘シーンにマッチしていて、
その点は評価できます。

そしてもう一つこの作品に重要なのは、パックの面々のファッション、
ナイロンパーカー、フレッドペリーのポロシャツ、アディダスのスニーカーが
なんともスポーティでお洒落! 
この頃から彼らのように地元のサッカーチームを同じスタイルで応援する集団が
CASUALS(カジュアルズ)と呼ばれ始め、そしてその一部がAWAYに遠征に行き
暴れまわり、”フーリガン”と呼ばれるようになったという。
その辺の雰囲気を忠実に再現しているのもこの作品の見どころ。

この映画、本国では11年前に公開された作品で、
それをスペースシャワーが買い付けてこの度日本公開となりました。
すぐに日本に入ってこなかったのはやはり共感しにくいストーリーだったせいで、
それでも公開したのはやはり音楽とファッション、
当時の若者の生態をリアルに映像化しているというからなんでしょう。

見る人を選ぶ映画だとは思いますが、それなり見どころはある作品でした。

https://www.youtube.com/watch?v=y0WzQQa1i-w&feature=emb_logo



ちなみに、この映画を見た日がサービスデイだったのでついでに
”ようこそ映画音響の世界へ” を見ました。
タイトルに偽りなしの、ハリウッドの名作、スターウォーズ 、地獄の黙示録、
トップガンとかを例に、映画音響の歴史、音響テクニックのあれこれ、
レジェンドが語る苦労などが名作・名場面で綴られる見ごとなドキュメンタリーでした。
映画館の音響で見れて良かった。
できれば最後の解説抜きの”名場面一挙見せ”をもっと長くやって欲しかったです。

https://www.youtube.com/watch?v=_1jQLCjtdDM


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