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2020年10月16日00:49

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本当の自分

 人気女優のT.Yさんが亡くなって3週間程が経ちました。(誰もが知っていらしゃるお名前ですが、私のようなものがお名前を挙げるのはおこがましい限りなので、イニシャルにさせて頂きます。)

 私はあまりドラマや映画を見たりする方でもなく、T.Yさんについて綺麗な女優さんという以上の印象もないのですが、生まれてすぐのお子さんがいる中で、突然のように死を選ばれたことは、それなりにショックでしたし、亡くなってすぐの頃、元生徒など何人かの人から「T.Yさんは何で亡くなったんですか?」というようなことをLINEで聞かれたりもしたこともあり、少し自分なりに考えてみました。

 私は心理学の本を読んだりはわりとしますし、不登校の子の心の内面を推測しながら支援を進めることもありますが、心理学の専門家ではないので、はっきりしたことは言えませんし、想像の域を超えないということはまずお断りしておきます。

 人気女優にして、新婚さんでもあり、2人のお子さんを残しての死に、当初は不可解で何故だか分からない、という声ばかりでしたが、その後少しずつ明らかになって来た背景もあります。

 ほとんど間違いないこととしては、T.Yさんは鬱病か、または少なくとも鬱のような状態にあったということで、借金苦とか病苦のようなはっきりとした理由でもなければ、鬱に陥っていない限り、生まれたばかりのお子さんを置いて亡くなるようなことができるわけがないのです。

 専門家の中には、入院したり薬を服用したりという重い鬱病ではなくても、軽い鬱病の方が衝動的な行動に出やすいと言う方もおられますし、あるいはそういう感じだったのかとも考えられます。

 鬱の原因としては、当然コロナ禍の社会情勢が一つ目としてあり、それはこの5月からの数ヶ月で芸能人の方が次々と自ら命を絶っていることからも明らかでしょう。

 ちなみに今年の8月と9月の自殺件数は、昨年を3割程増えており、特に女性は4割増とのこと、失業などでお金や将来の不安が募るばかりでなく、以前は取れていた人とのコミュニケーションが不足することにより、コロナの前までは保てていた生きる希望を失ってしまうということもあり得る話でしょう。

 さらに、T.Yさんの場合は、そういったことに拍車をかける、全ての根本となる非常に大きな原因を抱えていたようです。

 T.Yさんは、14歳でお母さんを癌で亡くし、そのこと自体も非常に大きなことですが、その直後にお父さんが再婚され、新しいお継母さんには3人のお子さんがいらしたそうです。

 そのことについてT.Yさんは、「私の家は複雑だから…」と具体的に多くのことを語ることはなかったそうですが、20年程前ある小説の解説を書いておられ、そこにはご自分の家について

「足早に台所を通り過ぎる時、一人の人間として父が必要とした女の人が、彼女の子供達のために食事の支度をしている。晩の食卓の賑やかな景色が私にはガラス越しのものに見えた。」とつづり、

「私は父に人生を好きに生きてくれたらいいと思っていた。連れ子という荷物がいることを面倒に感じられたくなかったのだ。その思いが自分の心に無理を課していたとは気付かなかった。」と続けています。

 まだまだ甘えたい思春期の時期にお母さんが闘病の末に亡くなって、ただでさえ寂しさがこみ上げてくるような日常の中で、疎外感が募るような新しい生活を強いられ、どんなに厳しい毎日だったかは想像に難くありません。

 最後の一文は、お母さん亡き後、お父さんには甘えたかったのに、その気持ちが叶わなかったということをよく表しています。

 そのような御家庭にありながら、T.Yさんは、原宿でスカウトをされ、一気にスターダムを駆け上がっていきます。

 デビュー当時、T.Yさんは、「複雑な家庭なんで戻る場所がないんです。だから絶対にこの世界で頑張らなきゃいけない。」と時折周囲の方に漏らしていたそうで、その後押しも押されぬ人気女優になっていくわけですが、恐らくは、心に秘めた苦しい思いを隠しながら、生きることを強いられていたはずです。

 T.Yさんはのことを知る方々は、「真面目」「優しい」「気配りができる」「明るい」「テレビで見るまま」といった印象を皆さん口を揃えて語っていらっしゃいましたが、それは芸能界という抜きつ抜かれつの、浮き沈みの激しい世界で生きていく知恵という部分が大きかったようにも思われます。

 そしてもしかすると、ごく親しい人に対しても、本当の自分の苦しい思いを話すようなことはなかったのではないかとも、考えられます。

 お母さんに甘えたい、お父さんに甘えたいという10代の時の気持ちを、きちんと消化できず、その思いをある意味隠しながら生き続けたことで、T.Yさんの精神は実は全く満たされていなかったという大きな背景があり、その中でコロナ禍での仕事が減ることや、あるいは産後鬱のようなものも引き金となったのかもしれません。

 心理学者の加藤諦三先生によれば、本当の自分と今生きている自分が乖離すると、生きることに虚無感を覚え、人に対して真に親しみを感じられず、人生に希望が持てなくなると言うことなのですが、T.Yさんについてもそのようなところがあったのではないでしょうか。

 そして、本当に苦しみを打ち明けられ、心から甘えることができるお母さんの下へと旅立っていったということのように思えてなりません。

 本当の自分とは、絶対に認めたくない自分であったり、隠しておきたい自分であったり、人には知られたくないない自分であったり、本当は恨んでいる人を好きでいなければいけない自分であったり、とにかく目を背けたくなるような自分自身であるわけですが、その部分にきちんと対峙して生きていくことが、実はとても大切なことなのです。

 先述の加藤諦三先生は、「自分自身を知るための努力が最大の努力」とも言っていますが、要するに、認めたくないことを認めること、見ないようにして来たことに気付くこと、そしてそれを格好を付けずに、周囲の人に対してオープンにしていくことということだと思います。

 T.Yさんとも沢山共演した、人気俳優のM.Hさんも、7月に自ら命を絶ったわけですが、残っていたメモ書きの中には「本当は苦しいのに、苦しくないふりをして笑っている…」という記述があったとも伝えられ、あるいはT.Yさんと同じようなところがあったのかもしれません。

 私などが言うのもおこがましい限りなのですが、T.YさんとM.Hさんのご冥福をお祈りするとともに、私達が生きている者として「本当の自分」について改めて考えてみることが、御供養の一端になればと感じている次第です。
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